LeRomand’unTricheur. ――その邦題「とらんぷ譚」に魅せられたことばの錬金術師中井英夫が、十年を費やした連作「幻想博物館」「悪夢の骨牌」（泉鏡花賞受賞）「人外境通信」「真珠母の匣」を一冊に集成した。

時は一八八八年、霧深いロンドンの街に跳梁する謎の殺人鬼「切り裂きジャック」の正体を追う日本人の美青年探偵、鷹原惟光と、医学生、柏木薫。

「地球市」と呼ばれるその世界は、全長1500フィート、七層から成る要塞のごとき都市だった。

土曜の夜のお楽しみ、カクテル片手に山伏が今宵も始める殺人譚。

宴の興も醒めやらぬ夏の宵、陸軍少将邸に時ならぬ銃声が轟く。

あの親友シェリイが、今度ばかりは気もそぞろだった。

毎朝、今日こそ逮捕されるという思いで目が覚める。選挙戦がいかに苛酷であろうとも、絶えず心をよぎる。

それはオコナー上院議員にとって、再選をかけた選挙戦のさなかの出来事だった。

灼熱の太陽に喘ぐパリが漸く黄昏れた頃、不意にカケルを見舞った兇弾―その銃声に封印を解かれたかの如くヨハネ黙示録の四騎士が彷徨い始める。

「蠅がいない。蠅抜きでどうして、中世のギルドが運営できるんだ。

サム・レイナー、二十八歳。海軍航空基地所属の一等兵曹。

呼吸するように本を読む主人公の「私」を取り巻く女性たち―ふたりの友人、姉―を核に、ふと顔を覗かせた不可思議な事どもの内面にたゆたう論理性をすくいとって見せてくれる錦繍の三編。

ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで甦った。この怪現象の中、霊園経営者一族の上に殺人者の魔手が伸びる。

失踪した少女を追い、探偵は狂気の庭に足を踏み入れる。

絶海に行方定めぬ小船が一艘、瀕死の有明男爵と忠臣久留須左門、そして親友と謀り内心で男爵を憎む大曾根五郎が飢渇に喘いでいた。

ミサイル・フリゲート艦「ターナー・ヴァン・ザンド」の副長、ダニエル・レンソンは複雑な思いだった。

艦長のベンジャミン・シェーカーは艦橋にたたずんでいた。

ジェーンはためいきをついた。

ニューヨーク中で時間が狂い始めた。時計がどんどん遅れていくのだ。

裁判官による説示。被告人ハリエット・ヴェインは恋人の態度に激昂、袂を分かった。

癌で余命いくばくもない往年のTVスター、フィンキー・リンキー。

道に迷ったジェネットはトラックが突進してくるのを呆然と見つめた。絶体絶命。

『日本探偵小説全集2江戸川乱歩集』『D坂の殺人事件』につづく乱歩の短編集成。

『算盤が恋を語る話』につづいて、大正十四年七月から十五年十月にかけて発表された十編「百面相役者」「一人二役」「疑惑」「接吻」「踊る一寸法師」「覆面の舞踏者」「灰神楽」「モノグラム」「人でなしの恋」「木馬は廻る」を収録、短編作家時代の掉尾を飾る作品集である。

東に人の弱みを探してゆすり、西でネタを拾って小説を書き、南に薄倖の少女を救い、北では美女を侍らせての豪遊……やることなすこと図に当たり意気揚々の影男。

諦めよく帰ったはずの依頼人は、複数の事務所に同じ話を持ち込む諦めの悪さを併せ持っていた…。

両足両手を切断してなお舞台に立ち続けた名立女形、沢村田之助、その周辺で起こる連続殺人の謎を追う時代ミステリの秀作。

人形に隠された手紙が明かす眠れる殺人、人生のほろ苦さをリリカルに描く青春ミステリの佳品。第六回鮎川哲也賞佳作。

発見された団地でないとしたら、赤ん坊はどこに住んでいたのか。

深夜。丘陵地帯を車で流していたデッカーは、不審な動きに目をとめた。

不思議な魔法で生徒の心を掴んだ小学校教師の愛情溢れる教育法。その華麗なマジックの陰に隠された藤田先生の秘密とは。

夢も見ない眠りから覚めたとき、彼は病院の寝台に横たわり、すべての記憶を喪っていた。

連続毒殺事件。被害者の性別や人種はまちまち。

一九三八年、チェイスの処女作である本書の登場で、本格推理王国のイギリスに、はじめてハードボイルド派が誕生した――富豪令嬢を誘したギャング、この獲物をねらう第二のギャング、冷酷無惨な殺し屋にタフな私立探偵、性と倒錯と非情……ハードボイルド派の

ここ“エッグ・スタンド”はカクテルリストの充実した小粋な店。

女の名はオリーヴ・マーティン、現在、無期懲役の刑に服している。

ユダヤ人であった父親は強制収容所に連行され二度と帰ることはなかった。

マエストロ・ルイス・パッサウ。世界屈指のオーケストラ指揮者でありながら、ナチやKGBとの関係が噂される謎めいた人物。

生れ故郷のドイツ、一家で移住したニューヨーク、ギャング抗争のさなかに過ごしたシカゴ、そしてハリウッド映画界へ―自らの生涯を振り返るマエストロの話は、あたかもアラビアン・ナイトのごとくつづく。

日本シリーズを目前に控えた東京ヒーローズの桂監督が、東京タワーで不可解な失踪を遂げた。

ヴィクトル・ユゴー街のアパルトマンの広間で、血の池の中央に外出用の服を着け、うつぶせに横たわっていた女の死体は、あるべき場所に首がなかった。

騒々しかった休戦記念日の晩、ピーター卿はベローナ・クラブを訪れた。

わが国広告業界の歴史を回顧しながら、一世紀に跨る殺人の謎を解く筆者畢生の大作。

その朝、休暇を返上して警察本部に出頭したフィンチ首席警部を待っていたのは、いささか風変わりな事件だった。

美貌のミステリ作家の山荘で、芸術家揃いの姉妹を次々と襲う戦慄の連続殺人。

どうしてこんな物語を思いつくのか見当もつかない。そんな小説はお好きか。

逃げる女に殺し屋どもが迫った。双眼鏡を握るスティーブンの手に力がこもる。

わたしはP・K・ディック、SF作家である。わたしの親友のニコラスが、ある日神秘体験を得た。

「困っちゃった、わたし、人を殺したの」結婚するから別れて欲しい、と言われ、かっとなって相手を突き飛ばしたところ、打ちどころが悪くて死んでしまった、という友人の告白を聞き、内縁関係にある女性で結成したグループの面々が架空の犯人をでっち上げたまでは良かったが、

妻のヘレンがひらいた女ばかりのパーティを逃れて、シャンディ授業はメイン州の海岸地帯にやってきた。

がんばれ、関西。難事件を関西弁パワーで解く連作ミステリ。

山奥に武家屋敷さながらの旧家を構える会社社長が、まさに蟻の這い出る隙もないような鉄壁の密室の中で急死した。

人間そのものを根底から変えてしまう発明。

気がついた時、ジャロウは七カ月間の記憶を失っていた。知人たちのもとを訪ねるが、誰ひとり彼のことを知らない。

開館の準備が進む博物館で、任命されたばかりの館長さんが墜死するという椿事が発生した。

ヘレンは恐ろしくなって、台から電話を払い落とした。友人だというその女の声は、はじめ静かで、ほほえんでいた。

いま、ぼくは最愛の息子を殺そうとしている。それなのに彼は微笑すら浮かべて…。

1917年1月のある日曜日、戦場で5人のフランス兵の身に何が起きたのか。

殺人の疑いのある死に際会した場合、検視審問を要求するべきか否か。

『マクベス』が上演される舞台上で大胆不敵な殺人事件が発生。ママの明晰な推理の行方は。

殺人を犯して妻とともにアメリカじゅうを逃げ回る脱獄囚、赤毛の男。そして二人の逮捕を命じられたNY第十九管区の刑事。

人工知能を研究しているダイアー博士は研究中止命令の内示を受けて愕然とする。

文芸サークル内での盗作問題と恋の鞘当て。それがやがて殺人に発展し…。

就職しアパートで一人暮らしを始めた清水真弓は、絶えず隣家からの視線に晒されている感じに悩まされる。

愛し合っていた筈の妻が突然失踪し、投身自殺する―なぜ、どうして。

第5回鮎川哲也賞最終候補作。失踪した息子を捜して欲しいという依頼を受けて一人息子とともに調査に乗り出した女流作家。

ロンドンから70マイル。ここ田舎町のデントンでは、もうクリスマスだというのに大小様々な難問が持ちあがる。

第5回鮎川哲也賞受賞作 平穏な生活を送っていた女子大生に送り付けられた写真。

ある町で、ある外科医が妻を殺し、バラバラにしたその体の一部を四人の子供の体内に埋めこんだ。

〈夢宮殿〉、それは帝国中の臣民が見た夢を集め、選別し、解釈する調査機関だった。

『11枚のとらんぷ』を筆頭に、『乱れからくり』等数々の名作でわが国推理文壇に不動の地位を築いた泡坂妻夫が、この一作をもってデビューを飾った記念すべき作品―それが本書冒頭に収めた「DL2号機事件」である。

十七世紀のイタリアを舞台にふたりの麗人と死せる者たちを巻き込んで展開する古風な惨劇。

スウェインズヘッド丘陵の懐深い懸谷で、ある日、腐敗し相好の区別もつかなくなった死体が発見された。

夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々―江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。

傭兵艦隊提督マイルズが回想する冒険の数々。機知と勇気だけを頼りに戦いを挑むマイルズの本領が発揮される。

惚れた男はねむりねずみ。

『スペイン階段』のリヴァイヴァル上映を観た帰り道、サリーは一台の車があとをつけてくるのに気がついた。

傷ついた心を癒す旅に出た香島紀子は、山間の村で急に増水した川に流されてしまう。

余命数か月と宣告されたトッドハンター氏は、残された期間に有益な殺人を犯そうとの結論に達した。

そもそも一杯の酒につられて素性の知れぬ男の話なんかに耳を傾けたのが間違いだった。

コーンウォルに療養中の父チャールズを見舞うコナン・ドイル。そこには、なんとホームズとワトスンも療養に訪れていた。

改装なったナイトクラブ《カジノ》で、看板スターのこびとが殺された―サイズのばらばらな十一本のストッキングで首を吊られて。

「ドルフから聞いてないんですね。

ピーター・ウィムジイ卿の兄ジェラルドが殺人容疑で逮捕された。しかも、被害者は妹メアリの婚約者だという。

昨年末、「虚無への供物」の物語が始まる12月10日に急逝した中井英夫の未刊行作品集成。

実業界の大物、相川操一の娘、珠子は東京で一二を競う美貌の持ち主、そしてその兄、守は探偵好きの大学生だった。

女子大生と円紫師匠の名コンビここに始まる。爽快な論理展開の妙と心暖まる物語。

ノースカロライナでサルベージ業を営むギャラウェーの前に一人の男が現れた。

本の街神田神保町でビルの所有者でもある古書店主が不可解な死をとげた。

狩猟に反対し、銃など手にしたこともない息子が、雪深い森のなかで死体で発見された。

神出鬼没の破天荒なキャラクター“猫丸先輩”が登場する、痛快無比のデビュー作品集本格、ハードボイルド風、怪談調、シリアスタッチあり、スラプスティックあり、の7編を収録。

偶然手に入れた歌川広重の浮世絵が、敏腕TVプロデューサー朝比奈に過去の事件を思い出させた。

ここロベリア・フォールズではアーチェリーが盛ん。

グラスが二つ載ったテーブルを挾み、対峙する二人の男。夏の末以来、塩の湯A旅館に居つづけの湯治客だ。

ある時は辺境惑星の一介の中尉、ある時は極秘任務に就いた傭兵艦隊の提督――二重生活を送るマイルズは、隠密作戦を成功させたが敵に追われ、艦隊を引き連れて地球まで逃げてきた。

ジェヴレンに乗り込んだハント博士らは、ある日突然全人格が他者のものとすり変わってしまう人物が、ジェヴレン社会に頻出していることを知った。

架空戦争に敗れたジェヴレンの社会は倦怠の極にあった。