内なる宇宙
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本書は、J・P・ホーガンのデビュー作である傑作、『星を継ぐもの』に始まるシリーズの第4部である。米国では1991年に発表され、日本では1993年にハードカバー(上・下巻)で翻訳、出版され、その後、創元SF文庫に収録された。 評者はこのシリーズが大好きだったのでハードカバー版が出版された時点で購入したが、なぜか読むタイミングを逃してしまって積読したまま30年が経過。今回、第5部が訳出されると聞いて、それまでに読まなければと思って手に取った次第。確認のために事前に第3部『巨人たちの星』も再読した。 本書上巻には、ホーガン氏自身が本書の注目ポイントと執筆の経緯を記した“日本語版への序”が掲載されているが、その冒頭に、1986年の第25回日本SF大会にゲストとして出席したことが書かれている。評者は会場大ホールの客席に座っている氏を見かけ、必死の思いで話しかけて握手してもらった。それ以来、氏は評者にとって特別の作家のひとりになった。にもかかわらず積読本がまだ多数あることについては懺悔するしかない。(閑話休題) 本書は本棚に30年以上積んであったので、表題を見てインナー・スペースの話ではないかなどと想像していたのだが、実際に読んでみると想像していた内容とはかなり違っていた。 予想外だったのは、肝心の“内なる宇宙”を心の中にではなく世界の中に設定していたこと。そしてその世界のシーンがあまり多くないこと。少なくとも上巻の中盤には“そちら側の世界”に行くのかと思っていたけれど、やっぱりホーガンらしく、物語の基盤となる“こちら側の世界”の状況をしっかり説明して固めた上で物語を進めるため、舞台が“内なる宇宙”に移るのは下巻の半ばを過ぎてからだった。 しかし、上巻の冒頭、プロローグで過去のシリーズ作品の流れを説明した後、本編はいきなり異世界の描写で始まる。実はそれが“内なる宇宙”なのだけれど、それが“どこ”に存在して、既存の現実世界と“どのよう”に関係しているのかはすぐには明かされない。それが本作の最大の謎であり、それを説明することが本書のテーマだからだ。 ホーガンは、序文で、自分は魔法が登場するようなファンタジーを書く気はないが、魔法世界が存在するSFを書いたと言っている。その言葉通り、『星を継ぐもの』と同じ宇宙の一隅に基本的な物理法則が現実世界とは異なる世界を作り出して魔法が存在することにしてしまう。その設定があるからこそ、その世界でハント博士とダンチェッカー教授が活躍できるのだ。 主な舞台は、ガニメアンのガルースが総督として管理を任されている惑星ジェヴレン。ブロヒーリオら独裁的権力者が突然いなくなったために市民は自由を謳歌し過ぎて混乱しているという設定は、社会派SFへの関心を深め始めていたこの頃のホーガンらしいと思う。 本書は、デビュー作である『星を継ぐもの』から続く“発見の物語”であると共に、その後の作品で徐々にその比率を高めていった社会体制(の変化)に対する作者の見解と、“謎解き”の後に発生する世界をあるべき姿に戻すための行動までを描いた小説である。その意味では、いかにもホーガンらしいし、その時点でのホーガンらしさがすべて含まれていると思う。それに加えて、永瀬唯氏が解説で書いているように、情報宇宙と人工生命テーマというホーガンの新しい挑戦が見られる小説である。 ガルースから惑星ジェヴレンの混乱について相談を受けたハントはダンチェッカーらと共にジェヴレンを訪れて、混乱の原因が、巨大コンピュータ・ネットワーク・システムのメモリ空間に自然発生した知性体たちが魔法世界を築いていて、我々の世界に進出しようとしていることに気付く。彼らの上司コールドウェルは、事態の悪化を防ぐために2人にその世界に行って、その住人たちを説得するよう指示する・・・。 ニーヴンのウォーロック・シリーズは、魔力の源泉となるマナというエネルギーを設定することによって魔法が実現する世界を生み出したが、ホーガンは本書で基本的な物理法則が現実世界とは異なる世界を生み出して魔法が存在することにしてしまうのだから凄い。発想も凄いがある意味で強引な方法と言えるのではないか。 ただ、その世界ではなぜ魔法が使えるのかよくわからない。エントヴァースのデータを直接操作することができるヴィザーがハントの魔法を実現させていることは理解できるが、エント人の一部が魔法を使えるのは何故なのだろうか。修行によってヴィザーと同じようにエントヴァースのデータを操作する能力を身につけたと言うことなのだろうか。 コンピュータ・システムのメモリ上の仮想空間に知的生命体が発生するというアイデアは、本作以前にも書かれていただろうし、何編か読んだ記憶もあるが、そこを魔法世界にして、その住人が現実世界への侵略を企てているという話をここまでの長編にしたのは本書が初めてではないだろうか。 ところで、見出しに「解決方法に無理があるかも?」と書いたのは、クライマックスで触れられているエントヴァースの今後についてである。 テューリアンは、エクソヴァースへの転生を望むエント人のために遺伝子工学技術を使って宿主の生体を改良することを計画していると書かれているが、そもそもエント人の宿主になることを希望する人(ジェヴレン人に限らない)がいるのだろうか。宿主となる者は自分の意識を奪われてエント人に体を乗っ取られるのに・・・ ヴィザーが人間の分身をエントヴァースに送り込むことができたのは、エントヴァースがデータ上の世界だからである。安易にその逆をすれば良いというが、エクソヴァースはデータ上の世界ではない。極論すれば我々の世界もデータで構成されていると言えるかもしれないが、ガニメアンやヴィザーといえどもこの世界にエント人の意識を持った人間を作り出すことはできないだろう。もし、その可能性を考えるならば、意識を持たないロボット“義体”が適切ではないだろうか。それならば遺伝子工学技術を使って作り出すことも可能かもしれない。 ところで、このシリーズには、中央集権的なコンピュータ・システムは登場するが、ロボットやパーソナルなAIはまったく出てこない。何故なのだろう。 その他、感想、疑問点など 本書の英語タイトル“ENTOVERSE”が、指輪物語のエントからきていると聞いて驚くと同時にそういう意味かと半分納得する。(今年指輪を読んだので) 上巻では、アヤルタとアヤトラが語感が似ているのでややこしい。 シバン警察の副署長オベインは登場人物一覧表に載っていたので重要人物なのかと思っていたが、ほとんど活躍しなかったのでちょっとがっかり。 下巻では、ヴィザーがエントヴァース用にハントたちのコピーを作成するが、その扱いが『火星の遺跡(2001)』の「第一部 最大の敵は自分」と同じだと思う。 ゴンドラ・クラブのニューロカプラーで目を覚ましたハントにはウォロスでの記憶が少し残っていたと書かれているが、それまでの記述からすると、ハントにこの記憶が残っているのはおかしいと思う。 本書の14年後、2005年に発表された第5部は、再びブロヒーリオとの戦いになるらしいけれど、いったいどんな話になるのだろうか。 | ||||
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終盤までは正直ストーリーに大きな動きはなく退屈でした。所々挿入される「内なる宇宙」での話であろう節も、初めて『星を継ぐもの』のプロローグを読んだ時のような???感。 後半になってくると、ヴィザーやジェヴェックスが与える架空世界がどうやら人類には刺激が強すぎる、というか現実で生きていく意義を見失わせるものであることが分かってきます。そして最終盤になって、ジェヴレン人倒錯の原因がこのジェヴェックス、ひいてはアヤトラという唐突に解脱したような面持ちで民衆に語りかけたり発狂してしまう特異人種にあること、そして唯一理性的に見えるアヤトラであるニクシーが、ヴィザーなどのコンピューターシステムの認知構造に逆に関与することができること(これによって世界をデータとして認識していたヴィザーに、人間が見ているような認識の仕方を与えることが出来る)、アヤトラの中では認識構造がそのままで認識する世界が全く違うようなパラダイムシフトの逆ver.が起きていることが明かされます。ニクシーは内側の世界から私たちの世界に浮かび出てきたという...。自分でも書いていてよく分からないが、ここからの世界観がすごく面白い。 人間は感覚器官を通して外界を認識しているのだから、私たちが認識している事物は主観的な認識構造に依拠しており、認識される前の「物自体」が何なのかは知る由もないというのがカントの考え方ですが、この考え方がヒントになるのかも?何にせよ設定が格段と難しくなりましたがその分面白い。次回ジーナどうなる!?読むのが楽しみです。 | ||||
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3部作だと思っていたのが、4作目があると知り購入しました。さすがJ. P. モーガン、面白かった。 | ||||
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此で完結していたはずのに、まだ続きがあるなんて。 絶対に嬉しい新版です。 | ||||
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このシリーズはとにかく面白い。 今のAIの発達を考えると、ぞっとするほどリアルなのだ。 | ||||
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