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内なる宇宙



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内なる宇宙の評価: 4.21/5点 レビュー 39件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.21pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全39件 1~20 1/2ページ
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No.39:
(4pt)

解決方法に無理があるかも?〔上・下〕(ネタバレ有)

本書は、J・P・ホーガンのデビュー作である傑作、『星を継ぐもの』に始まるシリーズの第4部である。米国では1991年に発表され、日本では1993年にハードカバー(上・下巻)で翻訳、出版され、その後、創元SF文庫に収録された。
 評者はこのシリーズが大好きだったのでハードカバー版が出版された時点で購入したが、なぜか読むタイミングを逃してしまって積読したまま30年が経過。今回、第5部が訳出されると聞いて、それまでに読まなければと思って手に取った次第。確認のために事前に第3部『巨人たちの星』も再読した。

 本書上巻には、ホーガン氏自身が本書の注目ポイントと執筆の経緯を記した“日本語版への序”が掲載されているが、その冒頭に、1986年の第25回日本SF大会にゲストとして出席したことが書かれている。評者は会場大ホールの客席に座っている氏を見かけ、必死の思いで話しかけて握手してもらった。それ以来、氏は評者にとって特別の作家のひとりになった。にもかかわらず積読本がまだ多数あることについては懺悔するしかない。(閑話休題)

 本書は本棚に30年以上積んであったので、表題を見てインナー・スペースの話ではないかなどと想像していたのだが、実際に読んでみると想像していた内容とはかなり違っていた。
 予想外だったのは、肝心の“内なる宇宙”を心の中にではなく世界の中に設定していたこと。そしてその世界のシーンがあまり多くないこと。少なくとも上巻の中盤には“そちら側の世界”に行くのかと思っていたけれど、やっぱりホーガンらしく、物語の基盤となる“こちら側の世界”の状況をしっかり説明して固めた上で物語を進めるため、舞台が“内なる宇宙”に移るのは下巻の半ばを過ぎてからだった。
 しかし、上巻の冒頭、プロローグで過去のシリーズ作品の流れを説明した後、本編はいきなり異世界の描写で始まる。実はそれが“内なる宇宙”なのだけれど、それが“どこ”に存在して、既存の現実世界と“どのよう”に関係しているのかはすぐには明かされない。それが本作の最大の謎であり、それを説明することが本書のテーマだからだ。

 ホーガンは、序文で、自分は魔法が登場するようなファンタジーを書く気はないが、魔法世界が存在するSFを書いたと言っている。その言葉通り、『星を継ぐもの』と同じ宇宙の一隅に基本的な物理法則が現実世界とは異なる世界を作り出して魔法が存在することにしてしまう。その設定があるからこそ、その世界でハント博士とダンチェッカー教授が活躍できるのだ。

 主な舞台は、ガニメアンのガルースが総督として管理を任されている惑星ジェヴレン。ブロヒーリオら独裁的権力者が突然いなくなったために市民は自由を謳歌し過ぎて混乱しているという設定は、社会派SFへの関心を深め始めていたこの頃のホーガンらしいと思う。
 本書は、デビュー作である『星を継ぐもの』から続く“発見の物語”であると共に、その後の作品で徐々にその比率を高めていった社会体制(の変化)に対する作者の見解と、“謎解き”の後に発生する世界をあるべき姿に戻すための行動までを描いた小説である。その意味では、いかにもホーガンらしいし、その時点でのホーガンらしさがすべて含まれていると思う。それに加えて、永瀬唯氏が解説で書いているように、情報宇宙と人工生命テーマというホーガンの新しい挑戦が見られる小説である。

 ガルースから惑星ジェヴレンの混乱について相談を受けたハントはダンチェッカーらと共にジェヴレンを訪れて、混乱の原因が、巨大コンピュータ・ネットワーク・システムのメモリ空間に自然発生した知性体たちが魔法世界を築いていて、我々の世界に進出しようとしていることに気付く。彼らの上司コールドウェルは、事態の悪化を防ぐために2人にその世界に行って、その住人たちを説得するよう指示する・・・。

 ニーヴンのウォーロック・シリーズは、魔力の源泉となるマナというエネルギーを設定することによって魔法が実現する世界を生み出したが、ホーガンは本書で基本的な物理法則が現実世界とは異なる世界を生み出して魔法が存在することにしてしまうのだから凄い。発想も凄いがある意味で強引な方法と言えるのではないか。
 ただ、その世界ではなぜ魔法が使えるのかよくわからない。エントヴァースのデータを直接操作することができるヴィザーがハントの魔法を実現させていることは理解できるが、エント人の一部が魔法を使えるのは何故なのだろうか。修行によってヴィザーと同じようにエントヴァースのデータを操作する能力を身につけたと言うことなのだろうか。
 コンピュータ・システムのメモリ上の仮想空間に知的生命体が発生するというアイデアは、本作以前にも書かれていただろうし、何編か読んだ記憶もあるが、そこを魔法世界にして、その住人が現実世界への侵略を企てているという話をここまでの長編にしたのは本書が初めてではないだろうか。

 ところで、見出しに「解決方法に無理があるかも?」と書いたのは、クライマックスで触れられているエントヴァースの今後についてである。
 テューリアンは、エクソヴァースへの転生を望むエント人のために遺伝子工学技術を使って宿主の生体を改良することを計画していると書かれているが、そもそもエント人の宿主になることを希望する人(ジェヴレン人に限らない)がいるのだろうか。宿主となる者は自分の意識を奪われてエント人に体を乗っ取られるのに・・・
 ヴィザーが人間の分身をエントヴァースに送り込むことができたのは、エントヴァースがデータ上の世界だからである。安易にその逆をすれば良いというが、エクソヴァースはデータ上の世界ではない。極論すれば我々の世界もデータで構成されていると言えるかもしれないが、ガニメアンやヴィザーといえどもこの世界にエント人の意識を持った人間を作り出すことはできないだろう。もし、その可能性を考えるならば、意識を持たないロボット“義体”が適切ではないだろうか。それならば遺伝子工学技術を使って作り出すことも可能かもしれない。
 ところで、このシリーズには、中央集権的なコンピュータ・システムは登場するが、ロボットやパーソナルなAIはまったく出てこない。何故なのだろう。

 その他、感想、疑問点など
 本書の英語タイトル“ENTOVERSE”が、指輪物語のエントからきていると聞いて驚くと同時にそういう意味かと半分納得する。(今年指輪を読んだので)
 上巻では、アヤルタとアヤトラが語感が似ているのでややこしい。
 シバン警察の副署長オベインは登場人物一覧表に載っていたので重要人物なのかと思っていたが、ほとんど活躍しなかったのでちょっとがっかり。
 下巻では、ヴィザーがエントヴァース用にハントたちのコピーを作成するが、その扱いが『火星の遺跡(2001)』の「第一部 最大の敵は自分」と同じだと思う。
 ゴンドラ・クラブのニューロカプラーで目を覚ましたハントにはウォロスでの記憶が少し残っていたと書かれているが、それまでの記述からすると、ハントにこの記憶が残っているのはおかしいと思う。

 本書の14年後、2005年に発表された第5部は、再びブロヒーリオとの戦いになるらしいけれど、いったいどんな話になるのだろうか。
内なる宇宙〈下〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈下〉より
4488013635
No.38:
(4pt)

「内なる宇宙」の意味が分かるにつれ面白くなっていく

終盤までは正直ストーリーに大きな動きはなく退屈でした。所々挿入される「内なる宇宙」での話であろう節も、初めて『星を継ぐもの』のプロローグを読んだ時のような???感。

後半になってくると、ヴィザーやジェヴェックスが与える架空世界がどうやら人類には刺激が強すぎる、というか現実で生きていく意義を見失わせるものであることが分かってきます。そして最終盤になって、ジェヴレン人倒錯の原因がこのジェヴェックス、ひいてはアヤトラという唐突に解脱したような面持ちで民衆に語りかけたり発狂してしまう特異人種にあること、そして唯一理性的に見えるアヤトラであるニクシーが、ヴィザーなどのコンピューターシステムの認知構造に逆に関与することができること(これによって世界をデータとして認識していたヴィザーに、人間が見ているような認識の仕方を与えることが出来る)、アヤトラの中では認識構造がそのままで認識する世界が全く違うようなパラダイムシフトの逆ver.が起きていることが明かされます。ニクシーは内側の世界から私たちの世界に浮かび出てきたという...。自分でも書いていてよく分からないが、ここからの世界観がすごく面白い。

人間は感覚器官を通して外界を認識しているのだから、私たちが認識している事物は主観的な認識構造に依拠しており、認識される前の「物自体」が何なのかは知る由もないというのがカントの考え方ですが、この考え方がヒントになるのかも?何にせよ設定が格段と難しくなりましたがその分面白い。次回ジーナどうなる!?読むのが楽しみです。
内なる宇宙 上【新版】 (創元SF文庫)Amazon書評・レビュー:内なる宇宙 上【新版】 (創元SF文庫)より
4488663346
No.37:
(5pt)

相変わらず面白い

3部作だと思っていたのが、4作目があると知り購入しました。さすがJ. P. モーガン、面白かった。
内なる宇宙 上【新版】 (創元SF文庫)Amazon書評・レビュー:内なる宇宙 上【新版】 (創元SF文庫)より
4488663346
No.36:
(4pt)

次作が楽しみ

此で完結していたはずのに、まだ続きがあるなんて。
絶対に嬉しい新版です。
内なる宇宙 下【新版】 (創元SF文庫)Amazon書評・レビュー:内なる宇宙 下【新版】 (創元SF文庫)より
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No.35:
(4pt)

佳境

このシリーズはとにかく面白い。
今のAIの発達を考えると、ぞっとするほどリアルなのだ。
内なる宇宙 上【新版】 (創元SF文庫)Amazon書評・レビュー:内なる宇宙 上【新版】 (創元SF文庫)より
4488663346
No.34:
(5pt)

いいかも

とても楽しいい。シリーズ5が早く和訳されるといいな。
内なる宇宙〈上〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈上〉より
4488013627
No.33:
(5pt)

シリーズ第4弾

とても楽しいい。シリーズ5が早く和訳されるといいな。
内なる宇宙〈下〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈下〉より
4488013635
No.32:
(5pt)

物理学に弱くてもOK

「星を継ぐ者」シリーズの最終章というか、スピンオフ作品の様な物語りです。物理用語や宇宙科学など端々に難解用語が出てきます。作品のプロローグで作者は、「ファンタジーを書くのはやぶさかではないが、自分流で描きたい」の通り、起承転結に描かれています。20世紀後半に作られたヒット映画は、何かしらに於いてこの作品がヒントになったのではないかと思わせる記述が多く、私は幾つか浮かびました。大人のファンタジー。
内なる宇宙〈上〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈上〉より
4488013627
No.31:
(4pt)

現実世界のイデオロギーの対立が,既に予知されてると。

バウワーの考え方って,社会主義者そのものですよね,絶対下巻読まなきゃです。
内なる宇宙〈上〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈上〉より
4488013627
No.30:
(5pt)

こういうテーマで来るとは思わなかった!

実は上巻を読み始めたところ、著者ホーガン氏の「魅力的な女性描写」がちょっと何だかなあという感じで、さらにスピード感がなかったために期待薄。かなり薄でスタートしたのであった。
 テューリアンとジェブレン人の相容れない人種的傾向のはなしかと思いきや、ストーリーは熱狂的に宗教に走るジェブレン人とその奥に隠された世界・・・。
 前半からは予想できない展開。ジェブレン人がジェヴェックスにこだわる理由に気がついたのは、自らの心の中を深くまでウェザーに見せることを許した女性ふたりだったというのがすごい。そして地球人の宗教観をきちんと反映させながらもハントやダンチェッカーの視点からみてストーリーが進むところも見所だった。
内なる宇宙〈上〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈上〉より
4488013627
No.29:
(4pt)

宗教と「人工生命」

上巻に続いて、緊張感のある場面の連続で始まる。ここでようやくもう一つの「世界」とジェベックスがつながる。ワープの原理とか、異世界に行く原理がなんとなくわかるけど、そういうのはありなのだろうかと基礎知識のないわたしは思ってしまうのだけど、見ようによってはまだまだ先があるような終りだった。
 違う世界に生まれたいという願望。それはこちらの世界からしたら甚だ迷惑なことでもあるが、ウェザーは「それは禁止してはいけないことだ」と判断する。すごい。なんかウェザーがすごい。わたしの方が「それでいいと思っているのか」と確認されるみたい。ただのSFじゃない。科学的な生活における宗教、「人工生命」について考えさせられた。
 それにしてもホーガン氏の大団円は、あまりに大団円すぎてどうなのだろうという気がする。
内なる宇宙〈下〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈下〉より
4488013635
No.28:
(5pt)

難解、でも面白い。

前作を読んでから、20年ほど立っていたが楽しく思い出しながらよませていただきました。
内容は、かなり難解ですが、下巻も楽しみです。
内なる宇宙〈上〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈上〉より
4488013627
No.27:
(5pt)

今なら理解できるが・・・

これだけ情報という存在がしっかりと独立して意識されて「膨大なビットの間に漂う世界」というものが理解できる今だからこそ本書で書かれている内容はすんなり頭に入ってくるが、マトリックスすら映画化されていない1990年代に本書を読んだ人はどのように感じたのだろう。
そのころに読んでいたら私は恐らく全く物語についていけなかったろうと思います。

ハント、ダンチェッカー、コールドウェルという人間代表の相変わらず優秀な3人に加えて女性が加わりとてもいい味を出している。
そこに「星を継ぐもの」から積み重ねられてきたキャラクターが多数登場しSFオールスターのような様相を呈している本書なのだが、それに加えて情報世界での登場人物が加わりかなりキャラクターがこんがらがってきます。

2010年前後によく映画で描かれた「仮想空間」による生活や世界がその20年前にしっかり描かれていることにいささか驚きます。
SF作家というのは20年も世界に先んじて物語を紡ぐ能力があるのかと思うと今現在次々と出版されているSFに興味がわいてくる、そんな一冊。

外への膨張は物語としても一旦インフレを迎えて、最終的には内に、そして別の世界へと帰着する。
素晴らしいシリーズでした。
内なる宇宙〈下〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈下〉より
4488013635
No.26:
(5pt)

虚構と現実の間で

本書を読んで私が最も驚いたのは
「まさにユヴァル・ノア・ハラリがホモ・デウスの中で述べていた問題提起そのものじゃないか!」ということ。
サピエンス全史で全世界を席巻したあの知の巨人が提起している問題をその20年ほど前にすでにSFという物語に乗せて表現していた作家がいたことに驚きを禁じ得ません。
そして虚構と現実の更に向こう側の世界、というよりこちら側?の世界にまさにSF的な筋書きを用意してくれている本書は、長い時間経過だからこそ味わえる登場人物たちへの親近感とともにSF世界を味わえるという極上の読書体験をさせてくれる。
「上」の段階ではやっと問題がすべて出そろったというところでしょうか。
その過程がすべて面白くまるで地球の人間世界のメタファーのようでもあり、それだけならつまらないなぁと思っていた私の鼻を明かしてくれました。
すぐさま「下」に取り掛かります!
内なる宇宙〈上〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈上〉より
4488013627
No.25:
(5pt)

星雲賞受賞の人気SF作家が仮想現実世界を予言

『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』三部作の続編である。1981年の『巨人たちの星』から10年ぶりとなる。単独でも面白いSFだが、これら三部作を読んでからどうぞ。

作者のジェイムズ・P・ホーガンは、わが国にファンの多いイギリスのハードSF作家だ。
1978年4月に出版されたデビュー作『星を継ぐもの』は、日本では1981年の星雲賞海外長編賞を受賞(本作も星雲賞受賞)。後にアニメ界で活躍する岡田斗司夫、庵野秀明、板野一郎らが参加した日本FS大会の大阪開催シリーズ(DICON)の1986年大会に、ホーガンは招かれた。そして、1991年4月まで放映されたNHKアニメ『ふしぎの海のナディア』の最終回タイトルは「星を継ぐもの‥‥」である。

上述の三部作は、1つの物語の最終局面で、あらたな「謎」が浮かび上がるという、いかにも日本人好みの展開になっている。アメリカSFにはない凝った構成である。シャーロック・ホームズと同じで、日本人はイギリス人と通じる部分があるのかもしれない。
]]></article>
<article><![CDATA[
本作は、冒頭でホーガン自身が述べているように、『巨人たちの星』に続く謎は無いとされていた。円環の理(→魔法少女まどか☆マギカ)は閉じたはずだった。だが、ジェヴレンの混乱はどうなったか――。

物語は、ホーガンと同じイギリス人作家トールキンが描くようなファンタジー世界から始まる。
一方、ジェヴレンでは新興宗教が興り、狐憑きのような教祖が民衆を扇動していた。こうした宗教は、人工知能システム「ジェヴェックス」を取り上げられ無気力になっていたジェヴレン人に浸透しつつあり、統治を任されたガニメアンのガルースの手に負えない状況になっていた。ガルースは、やむを得ず、旧知の地球人物理学者ヴィクター・ハント博士に助けを求める。ハントは、生物学者クリス・ダンチェッカー、フリージャーナリストのジーナらをともない、ジェヴレンを訪問する。

ジェヴレンへ到着するなり事故に巻き込まれたハントは、薬物やセックスといった闇の世界に迷い込み、一方、ジーナは、ジェヴェックスやヴィザーが提供する仮想現実の恐るべき副作用について気づく。
そして、ジーナが闇の勢力に連れ去られるところで、上巻が終わる――どうです?ヒロインが敵に連れ去れてるなんて、日本アニメの脚本のようでしょう(笑)。
内なる宇宙〈上〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈上〉より
4488013627
No.24:
(5pt)

トールキンのファンタジー世界が異星人のコンピュータ・ネットワークの中に‥‥

後編――救出されたジーナは、記憶が書き換えられ、ハントたちをスパイするように刷り込まれた。日本アニメにもよくありますね。ヒロインがヒーローの敵側に取り込まれる話が。ホーガンの面白いところは、それを超能力や魔法ではなく、ホーガン流の科学的舞台装置でやり遂げてしまうところ。本作は、あくまでハードSFなのです。

物語は、新興宗教の指導者で巨悪ポジションのユーベリアスが、かつての政治的指導者が兵器工場としていた惑星アッタンへ向かうところで佳境を迎える。向上としての機能を失ったはずのアッタンに、果たして何があるのか!?
ハントはついに、宗教指導者の豹変ぶりは狐憑きではなく、「内なる宇宙=エントヴァース」に由来するものだという仮説に至る。一行は、全知全能ヴィザーのバックアップを得てエントヴァースへ転移したはずだった。だがそこで、思わぬ危機に直面する――そして、物語は大団円を迎える。

なお、ホーガン自身は冒頭で、ファンタジーは書けないと言っているが、『造物主の掟』(1983年)はファンタジーの要素を取り入れていた。本作に登場するエントヴァースは、それを超えた舞台設定になっており、それを比較するのも面白いだろう。
エントヴァースには超能力や魔法のような力が存在するが、これを打ち破るのに、同じ力ではなく、「スター・ウォーズ」をヒットさせたアメリカという国の遊園地や攻撃ヘリを持ち出すのは、イギリス人特有のジョークであろう。

本作の真骨頂は、コンピュータ・ネットワークや人工知能が人間に及ぼす副次作用を仮説提起しているところにある。そこには、サイバーパンクのような難しさはないし、『攻殻機動隊』や『マトリックス』のような厭世観もない。科学は常にハッピーエンドをもたらす。
私たち技術屋は、ハント博士やダンチェッカー博士と同じく、これらのシステムを「便利な道具」としてしか見ていない。だが、皆さんはどうだろうか。ネットに常時接続し、Siriやスマートスピーカーを使い、スマホのカメラを通してみる仮想現実に慣れることで、何か生活の変化は起きていないだろうか――いや、変化は起きていても自覚はないだろう。そこから「内なる宇宙」が始まる‥‥
内なる宇宙〈下〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈下〉より
4488013635
No.23:
(5pt)

このようにして神の奇跡は終わり、人は科学を作り出した。

本作では惑星上の巨大コンピューター内に発生した仮想世界と、主人公達のいる宇宙、その相互のやりとりが見所。
戦闘の描写や神の奇跡にばかりページが費やされる事は無く、作者の思う人の歴史の真実と、こうあるべきという人の姿勢が、主人公達の行動となって随所に表れる。
それはとても明るく前向きなもので、科学が暗闇を照らす一筋の光であるのと同じように、主人公達のユーモアや皮肉はこの世界を形作っている。
著者も別途述べているように本書はファンタジーではない。もしもファンタジーであるならば、主人公達はこうするだろうというユーモアを、作品中で見せてくれる。

主人公達の冒険を見せるために本書があるのではなく、科学者ハントや何人かの登場人物を通じて、科学的なものの見方や姿勢を、歴史の謎に立ち向かうその面白さを読者は見せつけられるだろう。

「瞬間移動トロイドの特異点を抜ける物質は、手品みたいに空間をくぐり抜けて向こう側に表れるのではない。
物質はそこで破壊される。そのあとに残った情報だけが移動して、向こうへ出たところで有り合わせの素材からもとの物質を再構成する。」

なぜ神の奇跡の時代が終わり、科学が生まれたのか。
科学者ハントと、過去から来た優しい巨人達を通じてそれを学ぶのに、本書はふさわしいであろう。
内なる宇宙〈下〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈下〉より
4488013635
No.22:
(5pt)

SF版水戸黄門 !

おもしろかった~!
「星を継ぐ者」シリーズにも大興奮したけれど、これはまたちょっと違った味わい。
読了後最初の感想は「うむ、これは水戸黄門だな」でした。モテ男ヴィックと欠けるところなき才色兼備の女性との絡みはいささか目障りですが、それも、由美かおるの入浴シーンとでも思えば無視できる。お約束ですもんね。
そんなことより、ファンタジーからこのレベルのハードSFまで、いや、すべての文学作品が、人間を扱う限りは結局悪玉・善玉(あるいは善なる心と悪意)の対立構図から逃れられないのかね、と情けなく思い、絶望的になりますが、であれば、ほとんどコメディのフィナーレは痛快の一言。なんだかんだ言ってもやっぱり「この印籠が目に入らぬか!」は気持ちいいです~。これだけでもじゅうぶん楽しめる。

でも、それでおしまい、ではありません。作者が意図したことなのかどうかはわかりませんが、読み終わった後もずっと、「神」や「信仰」というものについて考えてしまいました。そして、「神が存在するかどうかは何とも言えない。だが、仮に存在するとしても全能には程遠い」というかねてよりの見解に自信を持った次第(^^)。
内なる宇宙〈下〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈下〉より
4488013635
No.21:
(4pt)

物理学とかわからなくても楽しめます

前三部作を読んでから、期待して読みました。
私は就寝前に少しずつ少しずつ読むので、混乱しないよう、登場人物や人間関係をメモしながら読み進めました。
いやー楽しめましたよ。
物理学もコンピューターのことも全くわからない私ですが、
物語そのものが面白く、読んでないときでもふと内容を思いだし、その世界に漬かってしまいそうになるほどでした(笑)
ホーガンさんのSFは、ワケわからなくても楽しめます。

(蛇足)
下巻でのコールドウェルとカラザーとの緊迫したやり取りのシーン :
コールドウェル『そうですか、じゃあ、どうすればいいんです?』
との問いに、カラザーが一言
『わかりません』
と答えたのには、大爆笑してしまいました…いえ、読めば分かってもらえるかと…
内なる宇宙〈上〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈上〉より
4488013627
No.20:
(4pt)

難しいことはわかりませんが

単純に、読んで面白く楽しめました。
物理学とかコンピューターとか全く理解できない私でも、細かい理論の説明箇所に??となりつつも止まることなく読み進めば、ストーリーは追えますし、ワケわからないピースが徐々にきちんと収まっていきます。
ああ面白かった、読んで良かった、と思えました。
ガルース、カラザー、ハントにダンチェッカー、皆キャラが立って楽しませてくれました。
テューリアンやガメニアンのおおらかさ、攻撃性の無さは、癒しにさえなります(笑)
内なる宇宙〈下〉Amazon書評・レビュー:内なる宇宙〈下〉より
4488013635

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