量子宇宙干渉機
※タグの編集はログイン後行えます
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
量子宇宙干渉機の総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
量子力学の多世界解釈に基づいて展開されたストーリーで、物語のはじめ、QUICという装置の開発のあたりまではハードSFと言ってもいいくらいにしっかりとした理屈が感じられました。ただ、私が面白く感じたのはそこまでで、後ろの3/4くらいは量子力学でもなんでもない単なる古典的なパラレルワールドへの転生というか憑依というか、それが延々と続くだけのファンタジーでした。多くのSF作品と異なり、メインプロットとは直接関係ないSF的な仕掛けや視点がほとんどない点もちょっと物足りません。 かと言って純粋にファンタジーとして面白いかと言うと、そこも微妙で、物語の中核にある出来過ぎたユートピアは(別世界にしても)リアリティが感じられず、登場人物が多すぎてストーリーを追いかけるのにも疲れてしまい、日本人からすると東洋文化のステレオタイプもややうっとうしく感じられてしまいます。 SFとしての理屈の根底の部分については、記憶は持ち帰れるのに他の媒体による情報伝達は絶対ムリ、みたいな設定でしたが、そうなると人間の精神だけが何か物理学の中で特殊な位置に置かれてしまい、その部分の説明がないのもすっきりしません。一方ではQUIC/QADARの原理とDNAの構造や生物進化との関連性を指摘していたりもしているので、この「人の精神だけが多世界を移動できる」という設定が余計に引っかかってなりません。全体として、"Scientific" というよりは "Spiritual" な fiction かなぁ、というのが私の印象でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
私は壮大なスケールのSFと本格ミステリ味とを融合させた「星を継ぐもの」を嚆矢とする"ガニメデ"三部作を愛好しているが、その三部作以外の作者の作品は何故か読んでいなかった。今回、ある新聞書評で本作を採り上げていたので読んで見たが、驚いた。 QUIC(量子干渉相関器)を開発した主人公の物理学者のヒューが政府主導の正体不明のプロジェクトに参加するという体裁で物語が始まるのだが、その前段の量子論、進化論、多元宇宙に関する記述が圧巻。まず、多元宇宙はSF(本作もSFだが)で良く採り上げられるテーマだが、本作では一歩進めて量子論と組み合わせ、「量子が干渉し合っているのは多元宇宙における別の宇宙に存在する相棒(群論で言えばSU(1)。互いに別人では無く、行動の結果は確率的に(多数決で)決まる。QUICも多元宇宙の全ての宇宙に存在する)」として、干渉の対象を量子というミクロな世界から人間(マシン)同士へと拡張するという驚くべき発想。また、「進化論の危機」として、「ランダムな突然変異と自然淘汰の累積では現実で観察される出来事を説明するための革新的な力を持っていない」と、「ドーキンスvsグールド」において、ドーキンスの<漸進説>を否定して、グールドの<断続平衡説>を支持するかの様な記述になっているという勉強振りにも驚く。量子論と進化論の教科書に成り得る解説。そして、正体不明ではあるが、プロジェクトの目的が「多元宇宙における相互コミュニケーションを進化の力学に結び付け」て「人間の思考・行動、人間性の本質に纏わるあらゆる要素に影響を及ぼす」らしいとあってはスケールが壮大過ぎる構想。 そして少し進み、プロジェクトの主任がその目的を「第三次世界大戦を防ぎ、"種の保存"を行なう」ためと告げ、益々大事ではあるが、一瞬やや現実に戻った感じ。量子論的多元宇宙と戦争回避とがどう関係しているのか気になる所だが、ヒューの同僚が「脳が多元宇宙のコミュニケーションに反応している」と発言して、またもや読者は高度な思惟に包まれる。そして、「多元宇宙では全てが等しく現実なので、結果の違いは通常は"時間"として知覚されるものを遡って本人に伝えられる」とヒューが認識して、読者への示唆ともなる。ヒューの同僚が製作したQUADARは「直観力の増幅器」なのである。更に、ヒューの同僚はこのオクタゴン・プロジェクトの目的を「政府の意思決定を支援し、専門家達の不可避の災いを回避するための道を明らかにする事」と発言し、ヒューは危惧を抱くが、QUADARの実験台となったヒューは短い"時間"の間に人格転移を繰り返すという異常な体験を味わう...。別の同僚の回答は「QUADARが多元宇宙を通して主観的な体験の通常の流れに横方向の成分を付加している。そのために隣接する宇宙への横向きの揺らぎが生じている」と"量子ゆらぎ"を明喩して飽くまで量子論的解釈である。そしてこれは「無数にある別の現実をじかに体験出来る」事を意味する(人格転移も起こり得る)。主任はプロジェクトの中止を指示するが、困った事にこの選択が多数決で選ばれるとは限らない...。本作は短い書評を書くのが無理な内容で、紙幅の関係で後は"お楽しみ"という事にさせて頂くが、(既出のモノを含めて)東洋哲学(仏教)、脳科学、数学、信号理論、言語学、歴史学などの諸学問及び研究者達の人間模様を通して「(現実)世界の人々の繋がりの尊さ」を謳った内容となっている。物語性こそ乏しいものの、「量子論的多元宇宙+(グールド的)進化論」という卓抜した発想を基に「(現実)世界の人々の繋がりの尊さ」を謳った傑作だと思った。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
読み物としてはお得意の科学者vs体制と云ったホーガンワールドが展開されてワクワクしながら読み進められますよ。 発刊されたのは1996年なので多元宇宙論(マルチバース)、インフレーション理論、超ひも理論等がまだ産声を上げた時期なので仕方がないところではありすが、現代の物理学は一般人の認識を遥かに超えちゃっているので仕方ないところですね。 干渉機が他宇宙の人間の意識の中に入り込むとか、他宇宙を座標で認識することが出来て任意に干渉できちゃうというかなり荒唐無稽な強引な設定です、また前記の通り物理学的な記述の部分は現在の理論にからするとかなり怪しいのですが、筆者がもう故人なんで改稿はできないし、「エッエエ〜」と言うところは多々あるとは思いますが解説書ではなくあくまでも読物なのでとやかく言うのはやめますね。 舞台になったロスアラモスは言わずもがなですが、本書も国家規模の重大案件がkeyになっています。物語で使用するアイテムも品揃え豊富でさらにホーガンらしく高品質なので色々楽しませてくれると思います。ただ、前記のことがあるので星は一つ減らさせていただいました。 ホーガンの読物は多少で良いと思いますが宇宙物理学や量子物理学などを少しかじっておくとより楽しめると思いますよ。本書でそのちら方面に興味が湧いたら読みやすいコミック版の解説書もあるくらいなのでそちらもお薦めしておきますが、現在の物理学はSFをはるかに超えた現実離れした世界です、どっぷりはまっちゃいますよ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ホーガンをはじめて読んでから 30年ぶりに 読みました。 今も示唆があり、おもしろいです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
国際紛争が悪化するばかりの今自分がいる世界から 平行宇宙の中の理想郷へ脱出するという話ですから、一見、作者は湾岸戦争前後の現代社会に絶望しているように見えます。 が、最後まで読むとけしてそうではないことが分かります。 実にヤンキー的なリバタリアニズムと仏教的な中道的思想がなぜか多世界解釈を通じて融合してしまう、一見乱暴な話ではあります。 ですが、この人間性の可能性として提示されるアメリカの良き時代を彷彿とさせる50年代的な理想郷は、歴史背景的には無理があるなあと感じさせながらも、結構魅力を感じさせる世界です。 確かに、権力や強欲に囚われず、他人に過度に干渉しない、理性的で楽天的で寛容な社会、市民が政府なんか気にしない社会、いいですね。そうあって欲しいものですね。 面白いのは、ハードSFを書きながらも作者は、現代の科学技術の進歩の速度は速すぎると感じていることです。 仕事とガジェットに埋もれて汲々としている日本人は、もっとこういう楽天さを持つべきなのかもしれません。 どうも最近の日本人は「生存競争」という社会的強迫観念に蝕まれすぎているような感じがします。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 7件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|