キッド・ピストルズの冒瀆 パンク=マザーグースの事件簿
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最近光文社にてシリーズが復刊されたキッド・ピストルズシリーズの第1作が本書。 | ||||
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山口雅也なので期待して読んだんですけど、普通でした。 | ||||
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未読の方はご注意ください
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パラレル英国だからこそ許容できる大胆な構成が見事に嵌まっていて面白い。 かといってその奇抜さにおんぶに抱っこというわけでもなく、犯人や被害者の心理描写も巧みであり、意外性もある。ペダントリーも鼻につかない程度でちょうど良い。 また四つの短編のいずれにも偶然の要素が加わっており、少なからずそれらは謎を解く上での重要なキーとなっている。 事件を構成する偶然と必然の奇妙な関係性はのちの著者の代表作『奇遇』に繋がるテーマの萌芽が感じられる。 | ||||
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多元世界が舞台の本格ミステリ。一読の価値あり! | ||||
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警察よりも探偵の力が強い並行世界上の英国・ロンドンを舞台に、マザーグースを モチーフとした事件に挑むパンクファッションに身を纏ったスコットランド・ヤードの 捜査官キッド・ピストルズとピンク・Bが(シャーロック・ホームズ・ジュニアら 探偵士と)ともに挑む連作短編がまるで外国文学の翻訳のような文体で描かれている。 本作の作品世界はバタフライエフェクトにより現実世界と微妙に異なる並行世界上の 英国であるものの、警察よりも探偵の地位や力が強いのは、架空のおはなしでは 非常に愉快ではあるが、現実社会でこれが行われると、世間が探偵に十分な着手金と 成功報酬を支払うことができるほどの収入を得ている依頼人の捜査や推理が優先され、 貧しさゆえに探偵への依頼ができないか、できたとしても質の低い探偵にしか依頼を することができず、貧しい犯罪被害者が報われないディストピアと化すことに 気付かなければならない。 なお、作中の『1839年制定の警視庁法(Metropolitan Police Act 1939)』は実在の 法律だが、実際の法律は作中のような警察官を私的に雇うことを認めるものではない。 『「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件(The "Victual and Drink" murder case)』 第二次大戦前に女優として活躍したものの、度重なる不幸により50年間で 体重400ポンドにもなった巨漢の老婆が青酸カリにより殺害される。 完全に心を閉ざした彼女に生前直接接触できていたのは自分が雇った秘書という 名の世話係と資産を管理している弁護士のみで、唯一の相続人で彼女から 交際相手を奪った妹のみだったが、五十年間一度も接触することはなかった――が あらすじ。 人生で大きな挫折を経験し、立ち直れないまま50年もの間、占いという希望的 観測や雑誌・小説による追体験によってカタルシスを得る姿は、ある意味本作が 発表された1991年において、近い将来同様の問題が表面化することを予言しているか のようでもあり、如何にして着想を得たのか実に興味深い。 『カバは忘れない(Hippopotamus can remember)』 経営不振の動物園の園長で作家でもあるトマス・リヴィングストンが園長室で ダイイング・メッセージを書きかけたまま刺殺された状態で発見された。同じく 刺殺されたカバとともに。 従業員のモシェシュと呪術師のンゴゴはキンシャサから戻ったばかりでシェラトンに 宿泊しており、動物の死体を売って糊口をしのいでいた日本人剥製師の工藤は 昨晩麻薬取引の嫌疑で警察に拘束され、三十歳年下の若妻は男と逢瀬を繰り広げ、 言い争いをしていた獣医のヘンリー・プリーストはソーホーのクラブでトランペットを 演奏していたというアリバイがあった。 行為そのものは同じであるにもかかわらず、ところ変われば聖なる行為が犯罪に なるという妙が描かれるとともに、アフリカ系黒人に対して差別感情を抱いていた 白人が、同じく差別の対象であったはずの黄色人種である日本人を頼らざるを 得ないという関係性は一種のアイロニーとさえ思える。 『曲がった犯罪(The Crooked Crime)』 時代錯誤な選民意識の強いグレンヴィル伯爵夫人が経営するカラオケクラブで、 伯爵夫人、隣に事務所を構える美術評論家兼作家兼探偵のライト、 シャーロック・ホームズ・ジュニアそしてキッド・ピストルズの四人がポーカー に興じていた。 二日後、マットという現代アート作家を支援していたフェントンが スコティッシュ・フォールドを買い求めたペットショップのオーナーそして フェントン自身が連続して殺害される事件が起きる。 現代アート作品とゴミは紙一重であり、ウ●コがアートになるのかならないのか という会話を通じて、物の価値は物そのものがどうなのかではなく、 その物にいくら値段を付けたのかで決まるという現実を示唆していると同時に 一見すると自分には不可解に見える他者の行動には何かしらの理由が存在すると いう教訓と戒めを与えている。 現実世界における例として、バンクシーを挙げることに異論を挟む者はいるまい。 世の中の全員がただの落書きだと断じたらそれはただの落書きだが、 一人でも値段を付けて買う人間が現れたらそれはもうアートになってしまうと いう好例である。 また、作中に日本のビールが売られているビールの自動販売機という、 英国には存在しない(現実世界の英国では法律上の問題もありアルコールを 自動販売機では売らない。清涼飲料水やキャドバリー・チョコレートなら売って いるが、そのすべては防犯上の理由から室内にしか設置されていない)ものが 登場するが、並行世界上の英国を描いている以上、それは存在するということに なるのだろう。非常に便利なシステムである。 『パンキー・レゲエ殺人(The Punky Reggae Murder)』 冒頭の著者まえがきにも記載されているとおり、推理譚は中上流階級、 特に欧米文学では白人のものであるというイメージを覆すという目的から、 この話の舞台はレゲエとジャマイカン・コミュニティが舞台となっている。 1970年代まで英国のラジオといえば公にはBBCしかなく、BBC以外のラジオ放送は 非合法あるいは北海上の船の上から送信する脱法的な海賊放送であり、その背景と して当局の取締がユルかったのと、BBCでは流れないようなマニアックな曲で あったり、公序良俗に反するような曲を流す海賊放送に一定の支持があったという 背景を知っておかなくてはならない。 (一つの例として、QUEENおよびフレディ・マーキュリーの生涯を描いた映画 『ボヘミアン・ラプソディー』でも、3分以内でなければ楽曲は流さないという BBCのポリシーに反発し、Capital Radioで曲を流したシーンは記憶に新しいだろう) あと驚かされたのは、『左利き用の小切手帳』が存在すること。最初は前章の ビールの自動販売機のこともあり嘘つけと思っていたが、調べてみると 現実世界の英国の大手銀行(バークレイズ、ロイズ、ナットウエスト、HSBC)の ウェブサイトを調べてみたところ実在するらしく、自身が左利きで英国在住経験 そして小切手帳を所有していた経験があったにもかかわらず、それをリクエスト しなかったのは不覚であった。 | ||||
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山口雅也氏の人気シリーズのキッドピストルズシリーズの1作目に当たる作品。 既に13人目の探偵士にてその世界観は確立されているが、それに英国の童謡のマザーグースをモチーフとして取り入れた短編連作作品となっている。 世界観は破格だが、そこで展開される事件と解決に至る流れはまごうことなき正統派の論理的本格ミステリーとして構成されている。 4編収録されているが、特に3話目の曲がった犯罪はこの著者が展開する逆説の論理により奇妙な状況が論理的に帰着する流れが最も端的に表現されたおり、一番の読みどころだろう。 | ||||
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警察官の質的低下のために探偵士の方が地位が高くなったというパラレル英国で、冴えない探偵士たちにこきつかわれるキッド・ピストルズとピンク・ベラドンナの凸凹コンビが活躍する連作短編集第一弾であります。 設定は大ボラなんですが、事件並びに解決は意外にオーソドックス。奇抜な推理に走りがちな探偵士に対し、何気ない手がかりから堅実に論理を組み立て、真相を見破るパンク刑事の名推理が冴え渡ります。 収録作中のベストは「曲がった犯罪」。ヴァン・ダインをそのままパクったみたいな登場人物に大笑いでした。 | ||||
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