(短編集)

日曜の夜は出たくない



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初公開日(参考)1994年01月
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日曜の夜は出たくない【新版】 (創元推理文庫)

2019年01月30日 日曜の夜は出たくない【新版】 (創元推理文庫)

「だいたいお前さん達は想像力ってもんが足りなさすぎるよ、新聞や雑誌にひょいひょい乗せられて、やれ空飛ぶ人だ空中散歩者だってはしゃいでるんだから――もう少し頭使って自分の考えで物を云いなさいよ」そう言い放ったこの、仔猫みたいなまん丸い目をした童顔の小男こそ、名探偵猫丸先輩その人である。コミカルな筆致と切れ味鋭いロジックで読者を魅了し続ける本格推理作家、倉知淳の第一作品集。デビュー25周年を祝し新版刊行開始!(「BOOK」データベースより)




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日曜の夜は出たくないの総合評価:7.09/10点レビュー 23件。Bランク


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(7pt)

殺人方法も様々な連作短編集

倉知淳氏のシリーズ探偵猫丸先輩のデビュー作で、同時に倉知氏自身のデビュー作でもある。
本作は連作短編集で、7編の短編+α×2という構成になっている。そう、本作も若竹七海氏や西澤保彦氏の某作品と同じ、各短編に散りばめられたミッシングリンクが最後に明かされる趣向の短編集になっている。
さてそれについては後に述べるとして各編について順繰りに感想を述べていこう。

第1編「空中散歩者の最期」は猫丸先輩のキャラクターを語るのにうってつけの一編と云える。
導入部の幻想味、大掛かりなトリックによる真相と、大御所島田荘司氏が書きそうな作品。この真相については最初は眉唾物でなかなか信じられなかったが、高さと加速がつけば確かにありうるかもと納得。個人的には空中散歩者が宙を飛ぶ原理の着想が面白く、空中散歩者を主人公にした超能力物を読みたいと思った。

2編目の「約束」はガラリと趣向が変わって、ちょっとびっくりした。
子供を主人公にすること自体がもう卑怯とも云える泣ける一編。もう冒頭からその雰囲気満点である。
本作は隠された人間の悪意を看破する物で、若竹七海氏の作風を思わせる。ちょっと作りすぎのような感じもするが、こういう話に本当弱い。

「海に棲む河童」は1編目と同様、ファンタジックな物語で幕を開ける。
これも島田荘司氏の『眩暈』や『ネジ式ザゼツキー』を想起させる、一見ファンタジーとしか思えない話が実は真実であった事を論理的に解明する話。
面白いのは冒頭に付された御伽噺ががものすごい方言で読み難いことに配慮して、作者が本編終了後にその標準語訳を付けているのだが、今度は逆に注釈が多すぎて却って読み難くなっているところ。この辺は海外ミステリの過剰なサービスへの揶揄とも取れ、ブラックユーモアが効いている。

「一六三人の目撃者」は上演中の劇の最中で殺人が起きるという、夏樹静子の『Wの悲劇』を思わせる作品だ。
純粋にロジックで犯人を解き明かす1編。プロバビリティーの追求にのみ焦点を当てた本作は、従って最後に明かされる犯人の動機は一切謎のままに幕が閉じられる。
本作では猫丸が劇団員の1人として登場する。しかもかなりの演技派らしく、いつもと違う猫丸が見れる貴重な1編。

「寄生虫館の殺人」はどこかで見た事のある題名だが、中身は全然違う。
ちょっと強引過ぎるミスディレクションだなぁと思った。

NHKの受信料集金者が怪談のような奇怪事に遭遇するのが「生首幽霊」。
これはプロット創作の裏側が推理を重ねる事で見えてくるぐらいにかなり作り物めいた作品だ。長いアパートという設定で容易にある程度八郎が遭遇した事態の真相も予測はつく。

構成上、最後の短編なのが表題作「日曜の夜は出たくない」。
これは素直に上手いと認めよう。出来としても一番いい。よくあるサスペンス物だが、小技が効いていて、作者のミスリードになかなか抗えないようになっている。
そして明かされる真相も甘酸っぱい恋のノロケのようで微笑ましい。これが本作ではベストかな。

さてこれら7編の後、これらの短編に共通するキーワードがエピローグで明かされるが、これははっきり云って解明不可能、凝りすぎだろう。一応自分なりになんとか解き明かそうとチェックをしていったのだが、これほどまでに細部に渡ってチェックしないと解らない仕掛けだったら、驚愕とか感心とかを通り越して呆れるしかない。

さて本作で探偵役を務める猫丸という人物。その後シリーズ化されているが、確かに面白いキャラクターだ。当初は単なる小さな事件に興味のある素人探偵の域を出ていないキャラだったのが3編目と4編目では船頭のバイトだったり、劇団員だったり、と意表を突くシチュエーションで絡んでくる。
それが私をして猫丸というキャラクターに好感をもたらせることになった。

一番面白かったのはやはり4編目での劇団員としての猫丸だ。他の作品とは違うきびきびとした振る舞いは、俳優としてもその道のプロに演技を認められるほどの技巧派だと評され、そのギャップにニヤニヤしてしまった。

ただ1作目でアマチュア奇術クラブや同人誌、町内会の趣味の会合や断食会にも参加したりとどこにでも首を突っ込むと紹介されている割にはそのヴァリエーションが乏しかったのがちょっとがっかりだ。それについては次作以降に期待しよう。

しかしデビュー作である本書は脱力系でマイペースだと窺っている作者倉知氏の性格とは反比例して1作ごとに趣向を変えるなど意欲的な試みに満ちている。各編の感想にも述べたが島田荘司風ミステリあり、ハートウォーミングストーリーあり、ロジックのみを追究したミステリあり、サスペンスありと様々だ。
おまけに自身もエピローグで述べているように全ての殺害方法が違う。墜落死、凍死、溺死、毒殺、撲殺、絞殺、刺殺。デビューに向け、当時の全てを吐き出したような書きっぷりだ。そしてその努力が報われるように、本書はその年の『このミス』のベスト20にもランクインされ、現在も活躍が続いている。

ただやはり気になるのは読者が推理しようとするにはあまりに情報が少ないことだろう。私は与えられた謎を推理するのが好きなので、本作でも自分で謎解きに挑みながら読んでいったが、全敗してしまった。
しかし真相がぽんっと膝打つものであれば良いのだが、本作では真相に導くためにこじつけているようにしか感じられないのが惜しかった。しかし先に読んだ『占い師はお昼寝中』ではその辺は解消されているので、これはデビュー作ゆえの脇の甘さだろう。
これが私の負け惜しみかどうか、他に本書を読んだ人の意見を聞きたいところだ。


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No.22:
(4pt)

面白かった

面白かったです。
日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)Amazon書評・レビュー:日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)より
4488012647
No.21:
(2pt)

カッコ悪い種明かし

作風も死亡原因もバラバラの七編を,メタフィクションとしてまとめる最後の二編.
これをありとするのか,なしとするのかが,評価の大きな分かれ目のように感じます.

自分としては苦手な分野でもあるため,最後に一気に冷めてしまったクチなのですが,
それを差し引いたとしても,気付きようのない,アンフェアとも触れられていた暗号を,
作中の人物にその存在から解答まで全てを喋らせ,『種明かし』をする様子にしらけます.

また,これまでの事件は実は…と,さらに続くもう一つの『種明かし』についても,
推理や状況などに逃げ道を作られたようで,著者なりのおふざけの類なのでしょうが,
実際に違和感を覚える部分もあったため,重ねて評価を下げてしまったのは否めません.

これがシリーズの一作目であり,自分は講談社ノベルスに移った頃からの読者ですが,
もし,最初に手にしていたのが本作なら,おそらく追い掛けてはいなかったと思います.
そして,改めてこのシリーズは,唐沢なをきさんのイラストで読みたいと再認識しました.
日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)Amazon書評・レビュー:日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)より
4488012647
No.20:
(4pt)

初期作品集

倉知淳の作品はしっかりしたプロットが魅力なのですが
作品一つにアイデアを詰めすぎなところがあるのが少々難点の短編集。
猫丸先輩のキャラクターに少々振り回されるもののミステリーとしては
秀作揃い。ライトすぎないミステリー。
日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)Amazon書評・レビュー:日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)より
4488012647
No.19:
(1pt)

わからない

作者、シリーズ共に初めて読みました。純粋に推理を楽しむべきもので、猫丸さんのキャラクターが魅力なんだと思いますが、私には脈略のなさ、オチのなさ、必然性のなさが馴染めず、面白いと思えませんでした。
日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)Amazon書評・レビュー:日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)より
4488012647
No.18:
(4pt)

倉知氏のデビュー作にして凝った短編集

本作が倉知氏のデビュー作となる。
デビュー作でいきなり短編集というのが異色だが、一見バラバラのような作風の短編で、これでこのまま普通に終わるのかと思いきや、最後の最後で凝った(まあかなりお遊びが過ぎるが)展開が待ち受けており、連作短編集になるという著者の技巧派としての遊び心が満載の本格短編ミステリー集に仕上がっている。
一部、トリックが非現実とか言っている人がいるが、こういうテイストの作品にそういう批判は無粋というものだ。
日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)Amazon書評・レビュー:日曜の夜は出たくない (創元クライム・クラブ)より
4488012647



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