占い師はお昼寝中
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初版刊行(参考)
種別
短編集
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あらすじ
評判
占い師はお昼寝中の評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 B ランク
占い師はお昼寝中の総合評価:
6.56/10点 レビュー 9件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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渋谷の道玄坂の老朽ビルの一角に「霊感占い所」なる事務所を掲げてはいるものの、生来の怠け者の性分から一向に商売っ気のない辰寅叔父。そこに大学入学とともに上京し、社会勉強も兼ねて助手のバイトとしてお邪魔した美衣子のコンビが織成す安楽椅子探偵型連作短編集。
まず「三度狐」は挨拶代わりの一編といった作品で、実に内容はストレート。
続く「水溶霊」では2作目であるがテイストはちょっと陰鬱な感じで異色な作品である。
次の「写りたがりの幽霊」は依頼人の話、辰寅叔父による霊鑑定、その後の真相解明とストレートな流れで小粒な印象だ。
往々にしてこういった連作短編集にはクリスマスを扱った作品が挟まれるが、それが本作「ゆきだるまロンド」。
5作目の「占い師は外出中」ではなんと助手役の美衣子が叔父に代わって霊鑑定を行うというスピンオフ的な作品。
最後を飾る「壁抜け大入道」は占い所を辰寅叔父が出て、実地検証に乗り出す事に。
本作は北村薫を起源とする日常の謎系ミステリで、殺人事件は一つも起きない。
また表紙ならびに挿画が若竹七海氏の『ぼくのミステリな日常』と同じ朝倉めぐみ氏であることからどうしてもイメージがダブってしまう。倉知氏の筆致も軽妙且つコミカルなところで、それを助長しているようだ。
さて出来映えだが、これは!と目を見張るものは正直云って、ない。謎の難易度も比較的軽めで、作品によっては霊鑑定に入る前に真相が解ったものもあった。
まず「三度狐」だが新居、小学生の子供、転校と自然に連想される環境の変化でかわいい犯行が自然に見えてきた。紛失物のありかに関する論理はちょっと危ういが、確かに子供の頃、床下によく潜っていたなぁと思い出した。
次の「水溶霊」も犯人はすぐ解るものの、この作品の主眼はやはりその動機。
確かにドロドロした内容ではあるが、美衣子が云うようには魂が冷えるような話ではないと思う。こういう陰湿な話は同趣向の話では若竹七海の方が上か。
なぜかクリスマスをテーマにした短編には名作が多く、そして「ゆきだるまのロンド」も例外ではない。冬の寒さを心温まる話で温める傾向にあるのか、ほっこりとなる優しい話だ。
不器用な旦那の秘密のプレゼントだと気付くと全てがするするするっと解けていく。特に美衣子の目を通して語られる依頼人の主婦の描写に対する視線が暖かで、ドッペルゲンガー現象というホラーなモチーフを扱いながら、終始物語はその主婦の近所で語られ、日常のよくある風景が目に浮かぶように打ち解けた雰囲気で語られるのもいい。
以上三篇が真相もしくは犯人が解った作品。それ以外の3編はどちらも解らなかった。
「写りたがりの幽霊」は普通に流れる物語にそのまま流された感じ。
心霊写真のトリックがこっちとしてはすごく興味があったのだが、それが意外にも大したことなく、子供の悪戯の域を出ていないのがガッカリ。
「占い師は外出中」も全く逆を想定していた。
最後の「壁抜け入道」は子供の視点という事を考慮に入れれば大入道の謎はギリギリフェアか。昨今の怪奇・幻想的な謎は話半分に読んで頭に入れるに限るというのが最近解ってきた。
全般を通じて共通するテーマというのは辰寅叔父の人間観察力によって暴かれる人間心理そのものだろう。魑魅魍魎の仕業としか思えない怪奇現象を解き明かす手掛かりは依頼人を取り巻く人間達の思惑によって起こる不自然さにある。これらの人間が彼らの不都合を取り繕うがために結果的に起きてしまった一見不可解な事象を人間の行動心理を以って解き明かすのが本作の主眼である。
それは大学生の美衣子がバイトがてら助手を続けているのが母親の頼みというきっかけはあるものの、自身の人間観察に役立つからだという動機に重きを置いているところからも明らかだ。
また本作の特徴として面白いのは従来の本格ミステリの依頼人が持ち込んだ事件を探偵が解き明かすというフォーマットは踏襲しているものの、依頼人にはそれらの謎が怪奇現象などではなく、人間によって為された事である事を直接依頼人には説明しないところにある。
霊鑑定士の辰寅叔父の依頼人に対してはあくまで彼らが持ち込んだ怪奇現象に対する対策を告げる―時にはお札を発行する―段階で留まり、それらが人為による物だとは決して教えない。しかし、その真意はほとんどその依頼人周囲の人間に―時には依頼人本人に―彼のアドヴァイスによって成される行為によって仄めかされ、悟らせられる(ようにしている)。
したがって霊鑑定の後、辰寅叔父と美衣子の間で成される謎解きはあくまで彼の推論であり、証拠も何もないので、実は単なる1つの解釈に過ぎないのだ。この辺が倉知氏の本格ミステリに対するしたたかな視座だと見た。つまり推理で解ける事が必ずしも真理では無いと既に自覚的であるように取れるのだ。だからこの占い師という設定は作者にとってミステリを書くには最適だろうと感じた。
またこの2人の問答を読むに当たり、もしかしたら実際、占い師なぞは仕事が終わった後、お客さんの背景についてこんな風にあれこれ想像を巡らせているのかもしれないなどとも思ったりもした。
倉知氏を取り巻くミステリ作家仲間から伝え聞く彼の人と成りから想像すれば、辰寅叔父は色濃く作者の性格が反映されているものと思える。書けば年末のランキングに入るほど、才能があるのにもかかわらず決して多作とは云えない作者の創作姿勢は、人を見抜く能力が卓越しているにも関わらず出来れば楽に暮らしたいと、金儲けに頓着せず宣伝なども行わない辰寅叔父とかなりダブる。
なかなか特徴がありつつ、面白い作風なのでこの寡作ぶりは勿体無いが、クオリティを下げない事ためなら、やはりこの作家はこのペースでいいのかも。残りの未読作品を読むのが楽しみだ。
▼以下、ネタバレ感想