いざ言問はむ都鳥
- 本格ミステリ (563)
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読みづらい | ||||
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澤木喬という作家がいる。この作家が現在著している作品はこの『いざ言問はむ都鳥』という1990年に出版した4編の短編を収めた短編集1作のみ。しかしこの短編集、一読忘れがたい印象を残す。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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《日常の謎》ですが、コージーな雰囲気は希薄で、植物を中心 とした風景を淡々とスケッチしていくような静謐で硬質な作風。 本作は、1990年に発表された作品なのですが、 エコロジーに対する考え方に時代を感じました。 ■「いざ言問はむ都鳥」 休暇を、鳥海山の高山植物群落で過ごした「ぼく」と樋口はその帰路、 早朝の道ばたに点々と散らばている都忘れの紫色の花びらをみつける。 一体、誰が、何のために毟ったのか? 淡々とした筆致とはそぐわない重大な犯罪が扱われている本作。 のちに、本作の事件が再度クローズアップされることになります。 ■「ゆく水にかずかくよりもはかなきは」 夜桜に取り囲まれた人気のない地下鉄の駅で、ひたすら 子ども用の切符を買い続ける、釣り人と思しき奇妙な男。 数ヵ月後、その男の記事が新聞に載っている と、樋口が「ぼく」のところに言いに来て……。 「ぼく」が男を無意識的に“釣り人”と看做していた ことに対するホワイダニットが、なかなか巧妙です。 ただ、冒頭で「ぼく」が嘆いている環境破壊の問題と奇妙な男の謎を無理やり 結びつけるオチは、かなり力業であるため、正直呆気にとられてしまいました。 ■「飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」 講座のアイドル的存在・お桂ちゃんの自宅でぼや騒ぎがあった。 彼女の部屋にあった金魚鉢が凸レンズ の役割を果たし、出火原因となったのか? 一方、「ぼく」は、お桂ちゃんの父親が高枝切り鋏を購入して いたのを目撃したのだが、彼らの家には植木はないはずで……。 傍目には、幸福そのものに見える家族が抱える「闇」。 ■「むすびし水のこほれるを」 講座の院生が、車に轢かれて死んだはずの 黒猫が生きて歩いていたのを目撃し……。 「いざ言問はむ都鳥」 の事件の真相(?)が明らかに。 | ||||
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1990年に出た単行本の文庫化。 ミステリには向かないタイプの作家だと思う。「謎」というものの意味とか面白さを、まったく分かっていないのだ。 本書には4編の短篇ミステリが収められている。探偵と語り手は植物学者で、いずれの謎にも植物が絡んでくる。しかし、どの謎にも必然性や意味が感じられない。植物を絡ませるために無理をしていたり、プロットと謎が遊離してしまっていたり。ミステリという物に対する勘や感覚が根本的に欠けているではないか。 植物の話や、ストーリーの叙情性には魅力があると思う。別の分野で頑張って欲しい作家だ。 | ||||
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北村薫の衝撃的なデビューで打ち立てられた「日常の謎」派は、その後、若竹七海、加納朋子、青井夏海、光原百合ら多くのフォロワーを生んだ。やや違う作風へと転じていった若竹七海と入れ代わりに近藤史恵の名を加えてもいいだろう。御本尊を除いて女性ばかりというのはともかく、ここでいう「フォロワー」というのはあくまで肯定的な意味である。偉大な才能によって先駆された新ジャンルへの参加者という意味であり、上にあげた作家の誰一人として先人を安易に模倣している者はいない。その意味で、北村のすぐ後にデビューし「北村薫は二人いらない」と酷評を受けたせいか一冊で消え去ることになった沢木喬ほど不幸な作家はいないだろう。外面的な共通点だけでこんな暴言を吐く評論家というのは、要するに印象派の画家もロマン派の作曲家も一人ずつしか必要とせず、微妙な違いなど判りもしないのだろう。また、少し気負った感じを受ける題名で引いてしまった人もいるのではとも思える。 だが、内容は気負いどころかデリケートそのもの。丁寧に、緻密に組み立てられた文章で、ひたひた、ひたひたと小さな謎を盛り上げていく。各篇の読後の余韻もすばらしい。「日常の謎」派の花園に最初に咲いた美しい成果として、まだお読みでない方はぜひ読んでいだだきたい。上にあげた作家たちのファンは特に。最後に作者の復活を切望しておきたい。これがデビュー作なのだからブランクはそう関係ないと思う。もしこれだけの人が沈黙したまま終わったら同時代人の私たちの負う責めは大きい。 | ||||
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