昭和20年9月21日、神戸・三宮駅構内で浮浪児の清太が死んだ。虱だらけの腹巻きの中にあったドロップの缶。

両親を海難事故で亡くした六年生の紫郎は、岩場に耳を当て、海のつぶやきを聞くのが好き。それは母の声のように響く。

幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。

おなかがすけばおいしい食事をつくってくれるし、おもしろい話もしてくれるべんりなロボットを手に入れたエヌ氏。

誰を兵隊にとるか、徴兵係のちょっとした故意が一個人の運命をどのように変えただろうか。

エヌ博士の研究室を襲った強盗。金のもうかる薬を盗んだのはよかったけれど…。

身の安全と出世を願う男の生活にさす暗い影。絶対に知られてはならない女関係。

岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村。この地に昔から伝わる手毬唄が、次々と奇怪な事件を引き起こす。

松山地検庁舎の怪火で事務官が焼死、事故として処理された。

友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。

福岡市の香椎海岸で発見された男女の死体。汚職事件渦中の某省課長補佐と愛人の心中と誰もが思ったが…。

戦国の頃、三千両の黄金を携えた若武者が、七人の近習を従えてこの村に落ちのびた。

瀬戸内海に浮ぶ獄門島-南北朝の時代、海賊が基地としていたこの島に、悪夢のような連続殺人事件が起こった。

白昼の銀行を舞台に、巧妙に仕組まれた三千万円の手形詐欺。

前任地での仕事の引継ぎに行って来るといったまま新婚一週間で失踪した夫、鵜原憲一のゆくえを求めて北陸の灰色の空の下を尋ね歩く禎子。

周五郎絶筆!連載途中で中断した『おごそかな渇き』を収録。

芸能界に確固たる地位を築いた大歌手、橘百合子。

筒井康隆のハタリ!ハタリ!「アフリカの爆弾」ほか

木々高太郎全集〈5〉わが女学生時代の罪ほか (1971年) [Jan 01, 1971] 林 髞

人類の進化の果てで起こる驚愕の事態。