迷路荘の惨劇
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タイトルを見た時点で「こんなの絶対面白いやん!」と期待してしまったのですが、迷路のような屋敷見取り図などが挿入されるわけでもなく、 | ||||
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物理密室トリックと論理、人間ドラマが光る佳作。 | ||||
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未読の方はご注意ください
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短篇と近い時期に読むことになったので、せっかくだから短長両作品の変化点を意識しながら読んでみた。【注1】 事件の遠因となる人間関係と第一の殺人事件まではほぼ共通ながら、現場の倉庫を馬車置き場と設定するとともに、馭者を金田一耕助の旧知の人物としている。 短篇では、第一の事件後すぐにクライマックスの騒ぎへ飛び、その所為で警察関係者は省かれていた。その点、本作では井原老刑事をはじめ富士署の刑事が登場して、関係者の訊き込みや秘密通路に洞窟の探検等々にぎやかに活躍することに加えて、名前だけながら、東京での協力として等々力警部も登場する。なんでもこれらの刑事が追加されたのは、中篇からとのこと。 中篇から本作への追加としては、馭者の譲治を含めて、短篇でチョイ役たちへの役割が大幅に増やされて、第二の殺人事件が構成されている。ただしこの追加された密室殺人は、現場で対抗心を燃やした井川老刑事とのやり取りで「金田一耕助っていやな野郎なのである」(P.302)なんて一文は楽しいけれども、なにしろトリックが明白すぎてつまらない。本文中にも金田一耕助の言葉として、「子供だましの密室のトリック」(P.443)と書かれているとおりである。あの程度のトリックなら、さすがに刑事に気づいてもらいたいw 金田一耕助シリーズでは、概ね彼と刑事たちの関係は良好であるが、彼を敵視する刑事もちらほら登場する。本作は長篇化されただけあって、昭和五年の事件に並々ならぬ執念を燃やす井川老刑事が、金田一耕助になかなか辛辣に対抗していて印象的。 「あんたの眼のまえでつぎからつぎへと事件が起こってるんですぜ。それにもかかわらずあんたただウロチョロするばかりで~あんたそれでも名探偵ですかい」(P.379)なんてのは、原作ファンの読者はまだしも、ドラマ視聴者の多くが思っているだろうことを見事に代弁していたw 一方、金田一耕助が呼ばれる理由となった謎の男(甲野信也/真野信也)を演じた人物が長短作品で異なっているのがステキだ。『金田一耕助の帰還』の解説では、「片腕の男に扮した人物が全て異なっている点」(P.435)と書かれているので、中篇でもさらに別の人物だったようだ。 短篇の最大の弱点は、迷路荘と謳いながらその要素が不足していたことだが、本作では洞窟探検の冒険要素が大幅に加わっている。読者によっては、またかと思ってしまうかもしれないが【注2】、特に二階堂黎人の『聖アウスラ修道院の惨劇』は本作からフィーチャーされたのではないかと憶測してみたが如何だろう。通常あの作品のフィーチャー元は、小栗虫太郎の「聖アレキセイ寺院の惨劇」とされるようだが、本作も「惨劇」が共通してるし、地下通路の構造を考慮すると……。 短篇から長篇では、新たに追加されたキャラも多いけれど、新旧で名前が変更されたキャラも多い。 種人(たねんど)に合わせて、一彦⇒一人(かずんど)、辰彦⇒辰人(たつんど)と変更したのは、より華族っぽくなったし、絲を糸に変えた理由も判るが、甲野⇒真野、朋子⇒陽子の変更の理由はわからないw 陽子は終盤、地下で襲われて意識不明となり一旦退場するのだが、事件が終了した後、耕助が最後に解説する前に、元気になった彼女が姿をみせ、地下での彼女の冒険が語られるという厚遇wを受けている。 しかし追加されたシーンで冒険サスペンス味は増えるものの、事件の解決に結びつくわけでもない。(すでに解決している) わざわざこのシーンが加えられた理由はなんだろう? 地下の暗闇を跳梁して殺人を繰り返す犯人というイメージは、まさしく『八つ墓村』なので、セルフオマージュして冒険浪漫要素を追加したかったという理由はあっただろうが、かなりとってつけ感が強いし、陽子と篠崎の秘書奥村の恋愛要素があるわけでもないので、やはり『八つ墓村』に較べると評価は下がるw 奥村と云えば、オリジナルの短篇には、めずらしく動転した耕助が「奥村はどうした!」と叫ぶシーンがあったが、この長篇版ではなくなっている。 もうひとつだけ。 地下迷宮要素が大幅に増えて、もっとも割を食ったのは犯人かもしれない。 犯人に対して、「~と、口にするとき、金田一耕助の口調には、きたないものでも吐き捨てるような嫌悪のひびき」(P.423)があると厳しい。短篇ではそこまで悪しざまには云われてなかったが、まぁ長篇では罪も増えてるから仕方がないか。 となると、やはりタマ子がかわいそう。 彼女は、「出目金みたいな眼をした、ちょっと可愛い女中でさあ」(P.102)とよくわからない描写をされているが、個人的には、のび太のママを思いだしてしまった。たしか玉代だったか? 彼女も独身時代は美少女に描かれていたり、方や眼鏡を外すと、目が数字の3のようになってたり、よくわからないんだよw 【注1】 短篇「迷路荘の怪人」が収録された『金田一耕助の帰還』の解説や、Wikipediaによると、短篇と長篇の間に中篇版もあったらしい。中篇版を読む術は知らないが、この短中長の作品は、著者の作劇法を研究するにはもってこいの作品であろう。目撃された片腕の男の正体が変更されているところなどは、如何にも著者が云うところの、コネコネクチャクチャ小説の実践なのだが、それにも力量が必要だと理解できるw 【注2】秘密通路探検の要素は、なんといっても『八つ墓村』が有名だが、それ以外にも、『不死蝶』や「廃園の鬼」で使用されている。 | ||||
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本書は「オール読物」昭和31年8月号に「迷路荘の怪人」という題で発表された中篇を、新たに長篇作品として加筆・修正を施し、東京文芸社から昭和50年5月に刊行された横溝正史の推理小説である。名探偵・金田一耕助シリーズの一つであり、時系列としては「犬神家の一族」の後、「女王蜂」の前にあたる。 昭和25年の秋、金田一耕助は戦後の新興財閥・篠崎慎吾から依頼され、富士山麓に建つ豪壮な洋館「名琅荘」を訪れる。元伯爵・古館辰人から譲り受けたこの屋敷は近々ホテルとして再出発する予定だったが、真野信也という左腕の無い男が、宿泊した部屋から忽然と姿を消す事件が起きたという。 名琅荘は随所に抜け穴があるため消えたこと自体は不思議ではないが、隠し扉を知っていたことや片腕が無いことから、二十年前に起きた惨殺事件や逃亡した容疑者との関連が強く疑われた。名琅荘の名残りを惜しんで由縁の人々が集まるなか、馬車の座上で古館辰人の絞殺死体が発見され、金田一は凄惨な連続殺人事件に巻き込まれていく……。 名琅荘の地下には広大な洞窟が広がっており、犯人が秘密の通路を跋扈して殺人を行うところは「八つ墓村」や「不死蝶」を彷彿とさせる。新興成金に屋敷ばかりか妻まで売り渡してしまう斜陽族の悲哀が描かれ、フルートが重要な小道具として事件と関わってくるあたりは「悪魔が来りて笛を吹く」を思い出した。また、本作には「黒猫亭事件」で重要な役割を果たし、金田一耕助の盟友でありパトロンでもある風間俊六も登場する。 多くの名作長編と共通する要素を持つ「迷路荘の惨劇」、個人的には非常に面白く読むことができた。名探偵である金田一以上に、お糸婆さんや井川老刑事といった個性的な登場人物がいい味を出しており、忍者屋敷のような迷路荘という舞台装置も話を盛り上げるのに効果を発揮していたと思う。 かなり残酷な描写も出てくるのだが、読後感が爽やかなのはさすが横溝正史といったところか。ストーリーもよく練られており、ラストシーンの金田一らしい計らいも実に粋でよかった。ただ、因果応報な結末を知った読者は、鼠がこの上もなく恐ろしい存在だと感じるだろう。 <登場人物> 古館種人 … 明治の元老。富士の裾野に名琅荘を建てる。 古館一人 … 種人伯の嫡子。妻の浮気を疑い凶行に走り惨死。 古館加奈子 … 一人伯の美しい後妻。日本刀で切り捨てられた。 古館辰人 … 一人伯と先妻の間に生まれたひとり息子。元伯爵。 糸女 … 種人伯の妾。名琅荘を取り仕切る老女。一人伯を軽蔑。 尾形静馬 … 加奈子の遠縁。一人伯に左腕を切断され行方不明。 速水譲治 … 名琅荘の御者。風間俊六が救った混血の戦災孤児。 お杉 … 名琅荘の女中。金田一が案内された和室を担当する。 戸田タマ子 … 名琅荘の女中。真野信也をダリヤの間へ通した。 真野信也 … 名琅荘に現れた左腕の無い男。密室から姿を消す。 天坊邦武 … 元子爵。古館辰人の母方の叔父。八字ひげ。 柳町善衛 … 元子爵。古館加奈子の実弟。有名なフルート奏者。 篠崎慎吾 … 名琅荘を譲り受けた敏腕実業家。風間俊六の盟友。 篠崎倭文子 … 慎吾の妻。古館辰人と離別した公卿華族の末裔。 篠崎陽子 … 慎吾の先妻の娘。抜け穴で父のライターを拾う。 奥村弘 … 慎吾の秘書。陽子と古館辰人の死体を発見する。 風間俊六 … 土建業・風間組の親分。金田一の同窓でパトロン。 森本医師 … 経験豊富な警察医。死体の検証などを担当する。 深尾看護婦 … 森本医師が信頼をおくベテラン看護婦。 田原警部補 … 所轄の若い捜査主任。金田一の噂を知っていた。 井川刑事 … 静岡県警の老刑事。二十年前の事件を執念で追う。 小山刑事 … 静岡県警の刑事。捜査のため東京へ派遣される。 江藤刑事 … 静岡県警の刑事。 久保田刑事 … 静岡県警の刑事。若くて威勢がいい。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 | ||||
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とにかく、前半の尋問シーンが長くて読むのが辛くなってきたけど、屋敷の地下にある洞窟通路に入るシーンから面白くなってきて、夢中で読んでしまいました。 最後の数ページの真相には納得です。 | ||||
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角川文庫昭和53年1月30日第十四版にて読了、 復帰作だからか全盛期作品に比べて文章は読みやすいが、読書の推進力のような魅力が低く、気が向いたときに少しずつ読み進めたので読み終わるまでほぼ二月かかってしまった、 得意とするモチーフを再利用した作者自身による自作のパロディ作品のような物語、 | ||||
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中学生当時、TBS系の連載ドラマでこの作品に巡り会いました。 民放では、Gメン’75の次に放映されていましたが、懐かしくてDVDを購入し、現在でも時々楽しんでいます。 キャスティングが素晴らしく、原作とドラマ映像との比較もまた楽し。 レビューを見ますと、他の名作群に較べて多少低いようにも見受けられますが、個人的にはお気に入りです。 | ||||
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