吸血蛾
- 名探偵 (559)
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「吸血蛾」は横溝正史の長編推理小説。名探偵・金田一耕助が登場する。雑誌「講談倶楽部」に昭和30年1月から1年間連載されたもので、その前に連載していた「幽霊男」で金田一に助けられた三橋絹子も登場する。事件後は結婚して引退したが、いまも金田一と親交のあることが描かれており、風采はあがらないけれど信頼できる有能な探偵として紹介しているあたりは微笑ましい。 近ごろは婦人服飾界の第一人者とまで言われ、モデルたちの憧れの的になった浅茅文代は、斬新で独創的なデザインを売り物とする一流のデザイナーであった。文代に直属する七人のモデルたちは「虹の会」というクラブを結成し、絶対に他のデザイナーのモデルにはならず、そのことを誇りにしていた。 ある日、銀座裏にある某雑誌社の地下グリル「黒猫」で打ち合わせをしていた文代のもとへ、弟子の村瀬徹が小箱を持ち込んでくる。彼に箱を預けたのは狼のような犬歯を持った謎の男で、箱の中から出てきた林檎を目にした途端、文代は気を失って崩れ落ちた。その林檎には鋭い歯で齧り取られた跡が残っていたのである。 それから暫くして、新東京日報社主催のファッション・ショーでとうとう事件が発生する。足をくじいた文代の代わりにモデルを勤めた滝田加代子が、片方の乳房を噛み切られた惨殺死体となって、文代のアトリエに送りつけられたのだ。ギザギザとした乳房の血だまりには、なぜか一匹の蛾の死骸が漂っていた。それは狼男による恐ろしい連続殺人の幕開けだったのである……。 金田一耕助シリーズのなかでこの作品が変わっているのは、なんといってもファッション業界が舞台に選ばれている点ではないだろうか。金田一ものだと連続殺人自体はありふれており、そもそも本作はデザイナーやモデルなど登場人物が多いのだが、ここまで次々と殺されていく作品はめずらしいように思う。最後の方はいったい誰が生き残るのだろうかと心配になるほどだった。 さらに狼男のエピソードや蛾のモチーフまで本作には盛り込まれており、切断された女の片脚をアド・バルンにぶらさげて空を飛ばすなど、死体の演出にも過剰なまでのサービス精神が感じられる。狼男の正体が早々に明らかにされ、さらには二人一役であることも示すことで、読者にまだ何かあるのではないかと期待させる構成はじつに見事だった。 「偶像姦(ピグマリオニズム)」という言葉も印象的だ。昔、キプロス島の王ピグマリオンは象牙に彫った美女を愛したということだが、狼男も狂おしいほどの愛を模型人形にぶつけていたようだ。ムッシューQなる謎の人物もそうだが、この作品にはいびつな愛情や執着を持った人物が数多く登場する。 意外性のある犯人とはいえ、本作でも金田一は精彩を欠いており、多くの犠牲者を前に手をこまねいている状況が続く。等々力警部の様子など可哀想になるくらいだ。最後の最後にようやく真犯人を探り当て事件を解決するのだが、重要なところは犯人の告白にたよっていたりして、金田一が活躍したとはお世辞にも言えない事件であった。 <登場人物> 浅茅文代 … 新進服飾デザイナー。虹の会は専属モデルクラブ。 滝田加代子 … 虹の会のモデル。菫色の蛾。 有馬和子 … 虹の会のモデル。緑色の蛾。 葛野多美子 … 虹の会のモデル。藍色の蛾。 志賀由起子 … 虹の会のモデル。赤色の蛾。 赤松静江 … 虹の会のモデル。青色の蛾。 日高ユリ … 虹の会のモデル。橙色の蛾。 杉野弓子 … 虹の会のモデル。黄色の蛾。川瀬に好意を持つ。 村越徹 … 文代の弟子。以前は日下田鶴子の愛弟子だった。 朝子 … 文代の内弟子兼女中。四谷のアトリエに住んでいる。 増山半造 … 文代が経営している服飾店ブーケの支配人。 松崎女史 … 文代のアトリエ主任。敏腕デザイナー。 操 … 松崎女史のもとで働く縫子。死体が入った人形箱に躓く。 節子 … 松崎女史のもとで働く縫子。操とは隣同士。 河野 … 松崎女史のもとで働く裁断師。人形箱を受け取る。 長岡秀二 … 某大会社の重役。文代のパトロン。 川瀬三吾 … 新東京日報社の記者。ファッションショーを担当。 日下田鶴子 … 文代の登場で落ち目になった女流デザイナー。 田沢京子 … 日下デザインのカクテル・ドレスを着たモデル。 三橋絹子 … 金田一に助けられたことがある服飾店の経営者。 江藤俊作 … 文代を目の敵にする毒舌老人。趣味は昆虫採集。 栄子 … 俊作の自宅である昆虫館の女中。中学を出たばかり。 松田喜作 … 一流の人形工房であるM・C商会の支配人。 片山敏子 … 喜作の秘書。 内海 … M・C商会の発送主任。 三竹亭小楽 … 東亜劇場で一本脚の裸踊りを操った盲目の芸人。 伊吹徹三 … 文代がパリで同棲していた無国籍者。狼憑き。 まあ坊 … 満月のような顔をしたデブの男。ヒロポン中毒患者。 ヒロさん … まあ坊の兄貴分。のっぽ。ヒロポン中毒患者。 坂崎薬剤師 … 双葉薬局と双葉アパートの主人。 樋口警部補 … 四谷署の捜査主任。 海野警部補 … 武蔵野署の捜査主任。 山口刑事 … 四谷署の刑事。 池田刑事 … 武蔵野署の刑事。 村上刑事 … 警視庁の刑事。 山崎刑事 … 警視庁の刑事。 佐藤刑事 … 警視庁の刑事。 小森刑事 … 警視庁の刑事。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 | ||||
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<他作品にも絡むネタバレあり。注意!> 『講談倶楽部』で連載されていた『幽霊男』が終了して三カ月後から、同雑誌に連載された作品。 というわけで、中島河太郎は「『幽霊男』『悪魔の寵児』【注1】などのように、もっともサスペンスの効果を強く表面に出した系列の作品である」(P.293)と最大限に好意的なコメントwをしているが、死体から切断した脚をアドバルーンにぶら下げて飛ばすわ、ストリップ劇場のダンスに合わせて躍らせるわ、被害者候補の一群は順序良く殺され、警察は警護もつけずに毎回歯噛みし……、 つまり通俗エログロ作品であるw 一応「犯人」をうまく隠せてはいるのだが、これも著者がしばしば自嘲するところのこねこねくちゃくちゃのパターンで、最後に気が変わって犯人を変更しても、ちょいちょい文章を修正すれば、ストーリーが成立する類であった。 ムッシューQの登場には、腰が折れそうになった……ww 獣の牙を持つ謎の襲撃者とくれば、アルセーヌ・ルパンと明智小五郎が、それぞれ『虎の牙』という同名の作品で対決したので、まずはそのオマージュと言うか、パクった印象が浮かぶが、著者が本書でチャレンジしたかったのは、ディクスン・カーばりのホラー味の醸成だろう。金田一耕助にはなかなかそぐわない最新のファッション業界が背景の作品だが、それ以上に、西洋狼男伝説を装飾に持ってきているのが特徴である。 その意味では、虎の牙ならぬ“『狼の牙』”とすべき作品ではあったが、あまりに芸がないと考えたのか、死体に残されたり、被害者のもとに事前に送られてきた蛾の標本を題名に取っている。 しかし、この思わせぶりの手掛かりに対して、(かなり怖れたとおりに)表面的な誘導の裏に隠された深い意味などまるでなかった。さすがに少々コケ脅しがすぎる。少なくとも題名を背負える重みくらいはないと……。 そして、ホラー味の醸成がうまくいったかと云えば、甚だビミョー、正直云えばうまくいってない。 冒頭に登場する妖しい人物=いの一番に殺されているといういつものセオリーは、そこに双子の人物入れ代わりを組み合わせる工夫はあるものの、狼男伝説に関しては結局置いてけ堀である。狂犬病に寄せるのかと思ったがそうでもない。獣のような鋭い牙に関しても、生まれつきそうだったというだけ。あれでは、普通の食生活が難しいだろう……。 西洋狼男伝説ではなく、せめて和風の狼憑きを背景にすれば著者の持ち味も出しやすかったように思うが、当時は固定のイメージを払拭させる方向に苦慮していたのかもしれない。 というわけで、あまりストーリーテリングに感想はない。 村越徹は今で云うオネエだが、作中一貫して変性男子と形容されている。夢枕獏の『蒼獣鬼』のキーパーソンの少年が、変性女子と呼ばれていたのを思い出した。現代では差別用語にされそうだが、調べてみると仏教用語のようで、変性男子/女子はへんじょうなんし/にょしと読むらしい。 ついでながら、本書のキーパーソンの名前が、中後期の明智小五郎の登場作品(つまり通俗もの)に登場する明智の妻と同じ「文代」なのは、何らかの意味があるのかないのか……w 【注1】 『悪魔の寵児』の連載は、『面白倶楽部』。 | ||||
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「金田一耕助」シリーズ第5弾。前作に引き続き楽しく読ませていただいた。 本作は最後の最後まで犯人が分からなかった。途中、「怪しいな」と思う登場人物がいたが、見事に予想は外れた。本作自体がそういう設定で描かれたようで、金田一耕助の活躍も控えめであった。 犯人の殺人動機はともかく、被害者を生み出してしまった原因については、いつものことながら横溝先生の人間洞察力が煌めいているように感じた。実に楽しかった。自作も楽しみに読もうと思っている。 | ||||
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「狼男」が登場する通俗もの。 他愛のない物語と言ってしまえば、それまでですが、 横溝作品に愛着を持っている人なら、 それなりに楽しめるでしょう。(私も、その一人です) 犯人を知った時、「アッ、コイツだったのか!!」という人と、 「なぁーんだ、やっぱりコイツか!!」という人に分かれると思いますが、 横溝作品を読み慣れている人は、気が付きやすいかも知れません。 この作品でも、沢山の人が殺されますが、 「生存者」が生きている喜びを噛みしめつつ、物語は終わります。 | ||||
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