死仮面
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本書は表題作の「死仮面」と「上海氏の蒐集品」を収録した横溝正史の推理小説。「死仮面」には名探偵・金田一耕助が登場する。 ●死仮面 「死仮面」は昭和24年5月号から12月号まで雑誌「物語」に連載された作品。一度も書籍化されないまま幻の作品となっていたが、横溝正史の長編全作品の刊行を目指していた評論家の中島河太郎が発掘した。「八つ墓村」は昭和24年3月から連載がはじまったので、「死仮面」とは同時に連載していたことになる。 8回連載されたうち7回分は発見できたが、昭和24年8月号だけがとうとう発見できなかった。当時の横溝正史は「悪霊島」の執筆に全力を傾けており、その後は療養に入ってしまったため、やむなく中島氏が補ったようだ。第4回にあたる「妖婆の悲憤」と「校長の惨死」の章が中島氏の筆によるものだが、読んでいて違和感はまったくない。なお、横溝正史オリジナル版は後日発見されており、春陽文庫で読むことができる。 死仮面殺人事件の物語は、「八つ墓村」事件を解決した金田一耕助が、帰りに岡山県の刑事課へ立ち寄り磯川警部を訪ねたところ、図らずも異常に薄気味悪い事件の話を聞かされる場面から始まる。 岡山市のマーケットの奥で窮死した女とデス・マスク、父の異なる三姉妹の確執、川島女子学園に暗躍する跛の男、川島夏代女史の夢遊病と春子刀自の胸像、白井澄子が形見に受け取った螺鈿細工の小匣、地下室に隠された秘密と陰謀など、事件の根底に横たわる恐ろしい謎がしだいに明らかになっていく。すべてを理解した金田一の声音には、この男にしては珍しいほど憎悪と怒りのひびきがあった。 一方、この作品にはユーモラスな場面も多く登場する。白井澄子に初めて会った際、「や、や、こ、こ、これは……ぼ、ぼ、ぼく、き、き、金田一耕助です」などと吃り吃り挨拶し、がりがりがりと五本の指で頭のうえの雀の巣をかきまわしたうえ、あはははとバカみたいに笑う金田一など実に微笑ましい。本作ではたびたび吃ったり頭をがりがりかいたりする金田一の姿を見ることができるので、読んでいてとても楽しかった。 <登場人物> 野口慎吾 … 醜く貧しい彫刻家。アケミのデス・マスクをとる。 山口アケミ … 慎吾と秘密の同棲生活を送り肺結核で死んだ女。 葉山京子 … キャバレーの踊り子。殺人犯。アケミと同一人物。 加藤静子 … 新橋の名妓・駒代。3人の男と1人ずつ娘を儲ける。 川島夏代 … 駒代の娘。川島女子学園を経営。参議院議員。 川島泰造 … 夏代の父。駒代と恋仲になるも結婚できずに病死。 川島春子 … 泰造の母。川島女子学園の創始者。故人。 川島圭介 … 夏代が養子にした春子の親族。美青年の英語教師。 上野里枝 … 駒代の娘。夏代が引き取り川島学園の教師にした。 上野某 … 里枝の父。駒代との不倫していた中学校教師。故人。 山内君子 … 駒代の娘。母と夏代を頼るも躾に耐えられず家出。 山内一夫 … 君子の父。駒代の年下の恋人。殺人で捕まり獄死。 古屋舎監 … 川島女子学園の寄宿舎を管理する女性。 白井澄子 … 川島家の窓に影を見た生徒。養育者の夏代を崇拝。 田代邦子 … 川島女子学園 新制高校三年A組の級長。 黒田 … 川島女子学園の生徒。テニス・コートで跛の男と遭遇。 徳山 … 川島女子学園の生徒。テニス・コートで跛の男と遭遇。 来島 … 川島女子学園の生徒。跛の男に赤インクを投げつける。 島田 … 川島女子学園の生徒。古屋舎監と共に跛の男を追跡。 萱原 … 川島女子学園の生徒。古屋舎監と共に跛の男を追跡。 沢井 … 川島女子学園の生徒。古屋舎監と共に跛の男を追跡。 藤田 … 川島女子学園の生徒。火事になった寄宿舎で鐘を叩く。 内海弁護士 … 川島夏代の顧問弁護士。遺言状の立ち会い人。 磯川警部 … 岡山県警の古狸。金田一とは旧知の仲。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 ●上海氏の蒐集品 横溝正史の絶筆とされる「上海氏の蒐集品」は「野性時代」の昭和55年7月号と9月号に分けて掲載されたもの。名探偵・金田一耕助は登場しない。アブストラクトの絵を描く上海氏とファーター・コンプレックスを抱く少女の出逢いから始まり、戦争や高度経済成長によって人生を狂わされた男の生きざまや、悲しいすれ違いが胸を打つ。感情を抑制した文章も内容によく合っていた。 <登場人物> 上海太郎 … 戦争で記憶を失った画家。上海生まれで人間嫌い。 古池亜紀 … 上海氏がお気に入りの草地で仲良くなった少女。 古池類 … 亜紀の母。戦死した夫を憎んでおり形見は処分した。 古池信太郎 … 類の夫。結婚後も三人の女と交渉があった。 現場監督 … K団地の建設現場監督。亜紀の情人となる。 小説家 … 大会社の重役タイプ。上海氏の面倒を見ていた。 | ||||
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<『死仮面』の感想のみ> 『八つ墓村』が連載されていた時期に併行して連載されていた作品。 本作が終了した時点で『八つ墓村』はまだまだ継続連載中だったのだが、物語としては、該事件が解決した後、挨拶かたがた磯川警部を訪れた際に、上記の男の話を聞かされたという冒頭。 金田一耕助の東京でのパートナーとして有名な等々力警部は、本作執筆時点で「黒蘭姫」に登場済みではあるが、著者からはまだその位置に意識されておらず、本作にも警察関係者として「警部」が登場するものの、姓は一度も記載されないw 巻末の「解説」によると、著者自身の言葉で「当時、私はなぜかこの作品を毛嫌いし、本にしなかった。話が陰惨すぎたせいであろう」(P.215)との一文が残っているらしいが、それほど陰惨とは思えない。この程度ならば、著者はいくらでも書いているwし、四年後に上梓された似た題名の「生ける死仮面」などは、本作より遥かに気持ち悪いww 本作でも冒頭で死体姦をやや匂わされるものの、主たる舞台は川島女子学園であり、白井澄子なる女学生視点の個所もあって、むしろジュブナイル的な雰囲気もあるくらい。 あるいは、そんな全体設計と相対的に相容れない点もあるということで嫌ったのかもしれないが、単行本から漏れ続けた原因は、掲載誌が中日新聞系の地方のマイナー誌だったことが大きいのではないだろうか。 特筆すべきは、中島河太郎は本作を国会図書館で"発見"したものの、連載ひと月分だけ欠落しており、その部分は中日新聞の協力で捜索キャンペーンまで行っても発見できず、中盤の「妖婆の悲憤」と「校長の惨死」の二章は、やむなく彼が代筆したらしい。 後続の部分から、欠落部にはどんなエピソードを追記しなければならないかは概ね類推できるにしても、見事な代作と言っていいだろう。 中島河太郎は、今後欠落部が発見されれば、当然代作箇所は差し替えられるべきと書いていて、実際に後に欠落部は発見されたのだが、この角川版は代筆Ver.が継続して使用されているw ま、大人の事情というやつだが、それだけ自然に繋がっているからと言える。 とは言え、発見されたというのだから、それを読んでみたいと思うのがオタク心であるw で、完全版で発売された春陽文庫のものを検索したところ――古本が\34,962からの値付けであったww(2023/6/16現在) いやこれはムリムリ。 なのだが、県内の図書館で検索してみたところ、一冊だけ発見した。 わたしの県では、県内図書館の蔵書は最寄りの図書館に取り寄せる申請ができるので、近日トライしてみるつもり。 | ||||
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『死仮面』は、死人の顔面からつくったデスマスクや屍姦といった、金田一ものでも都会を舞台にした通俗スリラーによく見られるエログロ色の強い発端から、お馴染みの複雑で陰湿な血縁関係のドロドロ劇へ、更にそこから女子校を舞台にした学園サスペンスへと、異色の展開をみせる作品だ。本格推理としては物足りなさを感じたが、古い因習や伝説がのこる寒村や孤島がにあう金田一耕助が、珍しく女子校に降臨した学園サスペンスとして読めば、スリリングな展開で飽きることなく、楽しく一気読みさせる作品になっている。 併録されている『上海氏の蒐集品』は、終戦から高度経済成長期へと、変容してゆくこの国の風景を、おそらく作者自身のものであろう感慨・感傷がにじんだ文章で、しっとりと書き綴っている。その移ろいゆく時代の波に翻弄されてきた者たちの人生の哀切が、ひそやかなミステリ劇のなかに、静謐にたゆたっているような、味わい深い好編になっている。 | ||||
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書店で現物を確認したが、巻末の但し書きを見る限り、用語自主規制もある不完全な旧版を、そのまま復刊したらしい。 あくまでも以前に角川文庫で発売されたものを復刊するというスタンスならば、それで良いのだと文庫編集部は思っているのだろう。 そのまま棚に戻し、購入しなかった。 川端康成や三島由紀夫なら大文学者だから復刊時に用語自主規制をしてはならないが、横溝正史や山田風太郎ならしてかまわないと考えるなら、それは圧力団体の傲慢だ。 こんな言論表現の自由への弾圧を平気で許している側が、自分たちこそは政権に騙されない目覚めた市民だと身勝手に思いこんでいるのだから、まったくアホらしい世の中だ。 | ||||
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旧版の解説にもあるとおり角川文庫版「死仮面」は、掲載雑誌の一部が見つからず、中島河太郎が補筆した不完全版である。 その後、欠号部分が見つかり、春陽文庫で完全版として刊行された。 しかし、いわゆる不適正語彙などの修正が行われており、厳密な意味では完全版とは言えない。 今回の改版は、単純な再刊ではなく修正などがない完全版の刊行を望む次第である。 | ||||
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