死神の矢
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本書には表題の「死神の矢」と短編の「蝙蝠と蛞蝓」が収められている。記憶が曖昧であるが「蝙蝠と蛞蝓」については過去に読んだ記憶があり、おそらく〔金田一耕助ファイル〕の方にも収載されていたのではないかと思う。 「蝙蝠と蛞蝓」は文庫本でも30ページ弱とかなり短いが、それでも十分に金田一耕助を楽しめる。その魅力をギュッと凝縮したエッセンスのような感じである。 「死神の矢」は殺人動機に深く同情を呼び起こされた。自分は殺人を美化する趣味や肯定する意見の持ち主ではないが、本作に登場する真犯人とそれにまつわる人たちが何故殺人に至ったのかという気持ちが伝わってくる。「蝙蝠と蛞蝓」がエッセンスであるとするなら、「死神の矢」は抽出前の全てを含んだものとしても良いかもしれない。 第13弾もゆっくり楽しみたいと思う。 | ||||
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「蝙蝠と蛞蝓」の感想のみ。 一人称の視点人物が、金田一耕助を「蝙蝠男」呼ばわりする一風変わった作品。 長短合わせて90作以上ある金田一耕助探偵譚の中で、短篇で最初に書かれた本作に対して、最後の短篇作品はずばり「蝙蝠男」である。 著者はその後何作も長篇作品を上梓しているし、本作と17年後の「蝙蝠男」に内容の繋がりはないが、本作を意識しての作品だったのではないか。 ところで、短篇第一作としての本作は、かなりの異色作である。 口の悪い視点人物の湯浅が、新しい隣人の耕助を内心で蔑んでおり、その彼に身の潔白を証明されて、最後は蝙蝠が好きだなんてのたまうプロットからしてそうだが、アパートの大家の名前が剣突剣十郎という名前であったり、「人間蝙蝠――(中略)こんな題名をつけると、江戸川乱歩の真似だと嗤われる」(P.212)等々、ユーモラスに演出している。 間違ってもベスト10などに入ってくるような作品ではないが、ほのぼのラストといい、なかなか印象的な佳作で、これが金田一耕助ものとしては最初の短篇なのだからわからんもんだw 当時『獄門島』が連載中であり、本作の直後には「黒猫亭事件」が控えていたから、この時期の著者はノリにノッてたと言っても過言ではない。 | ||||
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本書は表題作である「死神の矢」と「蝙蝠と蛞蝓」の2篇を収録した横溝正史の推理小説。いずれの作品も名探偵・金田一耕助が活躍する。金田一が蝙蝠男扱いされ、殺人事件の犯人として小説に書かれてしまう愉快なエピソード「蝙蝠と蛞蝓」は短編集「人面瘡」の方で感想を書いたので、ここでは表題作の「死神の矢」について述べることにしたい。 ●死神の矢 「死神の矢」は昭和31年3月「面白倶楽部」に短篇として発表され、その後長編化された作品。考古学者で弓の蒐集家としても知られる古館博士は、娘の早苗に3人の青年が同時に求婚したため、奇抜な婿選びを強行する。ギリシャ神話の英雄ユリシーズの妻ペネローペが行った婿選びのように、トランプのハートのクイーンを的として波間に浮かべ、それを射抜いたものを娘と結婚させるというのだ。 ところが、婿候補のひとりが心臓を矢で射抜かれた状態で発見されたところから事態は急変する。偶然博士の屋敷に居合わせた金田一耕助は、早苗の友人だったバレリーナ三田村文代が一年前に服毒自殺を遂げていたことを知る。はたして文代の自殺と今回の事件に関連があるのか金田一が推理していた矢先、今度は別の婿候補が犠牲者となったのであった……。 美しい令嬢にろくでなしの求婚者たち、弓比べでの婿選びと舞台設定はよく出来ている。重要なアイテムとして弓と矢が登場することや、古舘博士とヘンリー・メリヴェール卿の相似など、横溝が敬愛する作家ジョン・ディクスン・カーの影響を強く感じた。 ヒロインの婿候補が次々と殺されていく点は「女王蜂」と似ているが、話の展開はまったく異なる。主人公が活躍する女王蜂と比べ、こちらは脇役がいい味を出しており、バレーの師匠である松野田鶴子や、オネスト・ジョンの情婦朱実など強く印象に残った。細かいところで気になる点はあるものの、弓比べで放った自らの矢によって殺されていくという筋書きも面白い。 本作での金田一耕助はあまり活躍しないどころか、連続殺人が終わるまでわざと事件を解決しなかったように見受けられるのだが、それもまた金田一の優しさなのだろう。最後に真相が語られるとき、話を聞く人々の眼から涙があふれ落ちるが、金田一自身もたえきれず目頭を指でおさえてしまう。それほど哀しくも胸をうたれる物語であった。 <登場人物> 古館博士 … 考古学者で弓の蒐集家。奇抜な婿選びを強行する。 古館操 … 古館博士の妻。早苗が七つの時に交通事故で死亡。 古館早苗 … 博士の娘。バレリーナ。三人の男から求婚される。 佐伯達子 … 操の死後雇いいれられた早苗の家庭教師。 加納三郎 … 古館博士の助手。身分違いの早苗に思いを寄せる。 お君 … 古館家の女中。 お菊 … 古館家の女中。 高見沢康雄 … 早苗の求婚者。金持ちの道楽息子。 神戸大助 … 早苗の求婚者。金持ちの道楽息子。 伊沢透 … 早苗の求婚者。金持ちの道楽息子。 松野田鶴子 … 松野バレー研究所の経営者。孤児の文代を養う。 三田村文代 … 早苗のバレー友達。睡眠剤の飲みすぎで死亡。 相良恵子 … 早苗のバレー友達。 河合滝子 … 早苗のバレー友達。 八木健一 … 貸しボート屋ちどりで働く少年。三本の矢を盗む。 美代 … 貸しボート屋ちどりの看板娘。 駒田準 … 元プロボクサー。キャバレーの用心棒をしている。 杉原朱実 … 駒田準の情婦。キャバレー「焔」のダンサー。 田口京子 … 神部大助と関係のある女のひとり。 内山警部補 … 所轄の捜査主任。女王蜂事件で金田一とは旧知。 川合刑事 … 所轄警察の刑事。 井筒刑事 … 所轄警察の刑事。 古川刑事 … 所轄警察の刑事。 江藤刑事 … 警視庁の刑事。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 | ||||
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高名な考古学者の美人令嬢の花婿選びをめぐる連続殺人で、同著者の『女王蜂』や『犬神家の一族』などを想起させる部分が多々ある。三人の花婿候補のなかで、海のうえに浮かべた浮標に付けたハートのクイーンのカードを、弓矢で射ぬいた男を婿とするという、奇抜な花婿選びから物語は始まる。「戦国時代の武家じゃあるまいに…」と、松本清張以後のリアルズム重視の推理小説や、近年のミステリでは、まず有り得ないような設定だが、これが有り得るのは、横溝作品のようなクラシカルな《探偵小説》の世界だからだろう。とりわけ目新しいトリックなどはないが、競技に使われた色違いの矢で、花婿候補が次々に殺されるという殺人演出や、バレエの公演が進行するステージに、黒ずくめの死神のような人物が突如出現する、大時代的に芝居がかったクライマックスなど、推理小説でもミステリでもない、古式ゆかしき《探偵小説》ならではの物語世界を味わえて、とても楽しんで読み通すことのできる作品だった。 『蝙蝠と蛞蝓』は短編集『人面瘡』にも収録されている。金田一耕助を蝙蝠男と揶揄して嫌悪する主人公が、金田一が無実の罪におちいる小説を執筆するというユーモラスな内容。ごく短い掌編ではあるが、山椒は小粒でピリリとのように、ミステリとしての切れ味からラストのオチまで見事なお手並みで、金田一ファン必読の味わい深い良作になっている。 | ||||
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以下ネタバレ注意! 三人の中の誰かが仇で皆害虫のような人間だとしても全員殺してしまえ!というのはどうかと。 金田一耕助も最後の殺人を止めようとしなかったし、いくら警察ではないとは言え倫理的に問題があるでしょう。 他の作品であえて真実を一部伏せたりして犯人や協力者を守ったのは情状からして納得出来たのですが…。 一転、蝙蝠と蛞蝓の方は構成が新鮮で面白かったです。 語り手の書いていた小説の続きが読みたかったなぁ。 | ||||
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