夜の黒豹
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夜の黒豹の総合評価:
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全1件 1~1 1/1ページ
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ホテルで殺害された娼婦の乳房には、不気味な青蜥蜴の絵が描かれていた!複雑極まる愛憎劇の裏に隠された事件の真実に金田一耕助が挑む!話自体は非常にドロドロしてるんですが、最後のほうで金田一耕助が事件の要点をまとめあげそれらの謎が一つ一つ解きほぐされていくのはやはり横溝の本格に対する真摯な姿勢が現われていて良かったです!ただ、この時代の小説でふしだらな中学生女子をみせられるとはさすがに度肝を抜かれましたが(笑) | ||||
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星島由紀という少女が殺されて、いとこの岡戸圭吉が犯人ではないかと疑われる。物語の中では、殺人の動機は由紀の財産である、ということになっているのだが、当時(1960年)の相続法では、いとこに相続権はない。当時の相続法は現在のそれとほぼ同じで、死亡した人(被相続人)の配偶者、子ども、親、または兄弟にしか相続権はない。相続法の内容はちょっと調べれば分かることだから、登場人物が勘違いしているという設定なのかと思ったが、物語のおしまいになっても、やはり由紀の財産がいとこの岡戸圭吉に行くものとされている。由貴には配偶者も親も子どもも兄弟もいないので、本来、彼女の財産は国庫に納まるはずである。 作者が相続法を知らなかったのだとしても、編集者が教えるべきだろうと思うのだが、編集者も知らなかったのか、あるいは知っていても、岡戸圭吉に相続権がないと物語が成立しないので、黙っていたのだろうか。 犬神家の一族でも、物語内で相続法に反する奇怪な遺言が提示されていて、その遺言のせいで殺人事件が起こることになっている。横溝正史は相続法を無視することに決めていたのだろうか。 【追記】 犯人の行動は合理性を欠いていて、犯人の目的の達成を難しくしている。 この物語のおおもとのプロットがよくないのだ。少し手直ししたら、もっとよい物語になったと思うのだが。 | ||||
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<ネタバレ注意> マジックの走り描きだろうが、多少の絵心がないとそもそも蜥蜴だと認識してもらえる画なんて描けないから、それだけである程度容疑者が絞られるうえに、特定の人物を指し示そうとするならば、画の雰囲気というかタッチをそこそこ似せる必要がある。一方でそれが個性的であるならば、そんなもの犯人がなんで残すねん問題が出てくるので、よほどの愉快犯でもなければとてもリスクに見合う行動とは思えない。【注1】 しかし本作では、そのあたりを考察することは一切ないw さらに納得できなかったのは、マジックで描かれた蜥蜴の画が左向きなことに対して、金田一耕助は「やっぱり右へお向けになるでしょう。特殊な場合をのぞいてはたいていの人間がそうかくと思うんです」(P.282)と宣っていること。最初の“被害者”葉山チカ子は、鏡に映して自分で書いたから左向きに描いてしまい、以後はそれに合わせるために左向きに描かざるを得なかったという理屈である。それを聞いた等々力警部も、「金田一先生、これはあなたのおっしゃるとおりです。いや、恐れ入りました」(P.283)と応じている……。 待て待てちょっと待て。わたしはこのところお絵描きにはトンと御無沙汰ではあるが、左向きに描く方が自然にできるぞ。 わしはたいていの人間には含まれないんかい。 少数派になるのかもしれないが、少なくとも恐れ入るような論理展開でないのは確かである。 そのあたりが甚だナンセンスに感じたが、それは置いておいて、雑誌初出時の「青蜥蜴」は題名に冠するにはキャッチーなガジェットではあると思う。 ところが、翌年の単行本化に中って題名は「夜の黒豹」に改められた。 なるほど目撃された犯人らしき人物は、漆黒のコートを纏ってしなやかに歩いていたというが、イメージとしては弱くて、なんとも中途半端である。もちろん表紙のような黒豹の仮面を被っているわけではないw なぜ改名する必要があった? 「青蜥蜴」は乱歩すぎるとでも判断されたかw 後期の金田一耕助ものによくあるように、本書も警察小説の色合いが濃いのだが、上述したナンセンスを除けば悪くはない。300頁を超えるので著者作品の中では長尺の部類だが、飽きることなく読めた。 目撃者の轢逃げを除いて、事件は三件の安ホテルで発生する。 後のいわゆるラブホテルだが、昭和30年代後半にはまだその名称はなく、設備やシステムもラブホに至るまでの過渡期にあるようで興味深い。 ま、当時の風俗等々いろいろと興味深いのだが、日本を代表する名探偵の登場する本格探偵小説の一作として読んでしまうと、大いに混乱すると思うので、映画やドラマで金田一耕助を知った若い読者は、本書ではなく迷わず有名作品を手に取るべきだろう。 しかしほぼ電子化されている金田一耕助シリーズは、その時期によって採算計算やその他の条件が随分違うのか、価格に大きなブレがあって、本書が800円オーバーというのは、やや低評価にしている理由のひとつだ。 ……そういった入門者が検索して、本書を最初に選ぶことはまぁないかw 【注1】「ア、オ、ト、カ、ケ」の件もあるので、犯人は大真面目だというのがなんとも……。 | ||||
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非常に外連味のある発端から始まって、やがて被害者の生活が露わになり、犯人に疑われた者の趣味が明らかになるにつれて、まるでカストリ雑誌のような猟奇的な雰囲気に覆われ始める――というまでは良いのだが、次第に複雑な、というよりも複雑すぎる人間関係が示されてゆくと同時に、いくつかの犯罪は実は無意味であったという結末へと落ち込みそうになることに少々の危惧を抱く。最終的にはどうなったのか、ということはさておいて、少なくとも「階段を降りる」だけならばそこまで足跡は残らないのではないか、と疑問に思ったことは指摘しておきたい。全体としては期待外れ。 | ||||
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「夜の黒豹」は横溝正史の長編推理小説。昭和38年3月「推理ストーリー」誌で発表された「青蜥蜴」という短編を、翌年長編化した際に「夜の黒豹」と改題された作品で、名探偵・金田一耕助が登場する。いわゆる岡山ものとは異なり、江戸川乱歩的なエログロ猟奇サスペンスを楽しめる通俗ミステリである。 昭和35年11月18日。渋谷にある「ホテル女王」のベルボーイ山田三吉がある部屋を通りかかったとき、細目に開いたドアの隙間から水が溢れてきているのに気づく。声をかけても返事がないので、思い切って部屋へ踏み込んだ三吉が目にしたのは、ストッキングでベッドに拘束された女の姿だった。娼婦とおぼしきその女は猿轡で口を塞がれ、むき出しの乳房には「青蜥蜴」の絵が描かれている。 三吉が助けた女は名を葉山チカ子といい、一緒にいた男はこういう戯れをよくするので、事を荒立てないでほしいと頼むのだった。三吉も変わった趣味をもつ男女のよくあるトラブルだとしか思わなかったので、口止め料をもらい黙っていることにしたが、実はこれが恐ろしい連続殺人事件の始まりだったのである。 その一週間後、今度は芝高輪町にあるホテル「竜宮」で女の他殺体が発見された。ホテル女王で起きた事件と同様に、裸の女の首にはナイロンのストッキングが喰い込んでおり、乳房の間には青いマジックで蜥蜴の絵が描かれている。被害者の名は水町京子、有楽町に巣食う街娼であった。 翌日新聞を読んで出頭した三吉の証言により、この2つの事件は連続猟奇事件の様相を呈してくる。また、京子と一緒だった男はチカ子の相手と似ており、全身ヌメヌメと光る素材でできた黒ずくめの服装で、まるで黒豹のようであったという。その男はもちろん疑われたが、宿帳の記載はでたらめで住所も名前もまったく判らなかった。 チカ子の顔を間近で見た三吉は唯一の目撃者であり、スター気取りで事件のことを吹聴していたが、夜道でひき逃げに遭いその命を落とす。そして焦る捜査陣をあざ笑うかのように、3人目の犠牲者が向島の連れ込み宿「みやこ鳥」で発見される。しかも殺されていたのは、娼婦ではなくまだ15歳の高校生・星島由紀であった……。 前半はラブホテルで起きた「青蜥蜴」事件を皮切りに話が進んでいくが、この物語の主軸は後半で語られる、岡戸圭吉と星島由紀を巡る複雑な人間関係にあると言えるだろう。一度では憶えられないような複雑な家庭環境は横溝作品の醍醐味であり、血のつながらない親子の問題や、親族間の確執などがたびたび登場する。 シンプルなストーリーの作品であり、犯人も自然と判明する構成のため、推理を楽しめるかというとそうではないのだが、絵画に造詣の深い金田一耕助の姿が垣間見られるのは本作のいいところ。近江秋子が代表を務める「芙蓉会」というグループや、星島麻耶子や中条奈々子のことを事件に関わる前から知っていたり、銀座の画廊で開催された遺作展を訪れていたりと、絵を見ることが純粋に好きなのだということがよくわかる。 終盤、証拠を残さぬ犯人を金田一たちがどう追い込んでいくかという部分は強引ながらも面白かったのだが、結末があっさりしていたのは残念。金田一耕助を目の敵にし、たびたびバカにしていた牧野警部補がこっぴどくやられるといった、カタルシスのある見せ場が欲しかった。 <登場人物> 山田三吉 … 渋谷にある「ホテル女王」のベルボーイ。 尾崎くに子 … 三吉のガールフレンド。新宿の小料理屋で働く。 葉山チカ子 … 「ホテル女王」で殺されかけた女。胸に青蜥蜴。 水町京子 … 芝高輪町にあるホテル「竜宮」で殺された街娼。 星島由紀 … 向島の旅館「みやこ鳥」で殺された女子高生。 佐々木麻耶子 … 自動車事故で亡くなった由紀の母。閨秀画家。 佐々木裕介 … 由紀の父。聖ニコライ病院の勤務医。 星島重吾 … 元職業軍人の資産家。麻耶子の亡夫。由紀の実父。 岡戸圭吉 … 丘朱之助というペンネームで活動している漫画家。 岡戸竜平 … 圭吉の父。双竜会の元ボス。現在は堅気の実業家。 岡戸志保子 … 竜平の二番目の妻で圭吉の母。星島重吾の妹。 岡戸操 … 竜平の三番目の妻。楢山子爵の娘。先夫とは死別。 岡戸竜太郎 … 竜平と最初の妻の息子。圭吉の異母兄。 岡戸珠実 … 竜太郎の妻。懐妊している。 中条奈々子 … 新進女流画家の未亡人。佐々木祐介と婚約中。 中条辰馬 … 奈々子の亡夫。中条組のボスだった。 宇津木慎策 … 毎朝新聞の文化部記者。金田一とは協力関係。 牧野警部補 … 向島署の捜査主任。金田一を目の敵にしている。 樋口警部補 … 大東館を所轄管内にもつ大崎署の捜査主任。 加納警部補 … 高輪署の捜査主任。病院坂で金田一と旧知の仲。 稲尾警部補 … 代々木署の捜査主任。 浜本刑事 … 向島署の刑事。 辰野刑事 … 高輪署の刑事。 田所刑事 … 高輪署の刑事。 新井刑事 … 警視庁捜査一課所属の刑事。等々力警部の腹心。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 | ||||
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シリーズを順番に読み進めています。今回は『夜の黒豹』、楽しませていただきました。 本事件は金田一耕助がいなければ迷宮入り間違いなしという展開です。まさに金田一耕助の本領発揮でグイグイ引き込まれていきました。ただ人物相関図が濃密で、読んでいる途中で誰が誰の姻戚だか分からなくなってしまったところもあり、少し読み返すところがありました。 シリーズ第10弾も手にしたいと思います。 | ||||
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