白と黒
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全1件 1~1 1/1ページ
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団地に住んでいた経験のある自分としては、十分以上に愉しめました。個人的にかなり好きな作品です! | ||||
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<旧表紙版で再読?> わたしが所持している本は、平成9年に<金田一耕助ファイル>シリーズの一冊として新装再販されたもので、当時は付箋を貼ったりマーカーを引いたりしていないから、購入してから読んだのかがどうもはっきりしない。記憶がアテにならないので……。 とは言え、前に読んでいればなにかしら引っ掛かりがあってもよいのだが、それがまるでない。もしかすると買いっぱなしで今回初読かも……w 本作を読んで、なんとも懐かしさに襲われ、ついで淋しく感じた。 本作では、核家族の新しい住居形態として、都会通勤圏で絶賛増殖中だった新興団地が舞台となっている。わたしの幼少時代はもう少し後だが、よく似た団地で暮らした記憶を持っている。 わたしが少年時代に住んでいた団地は、一棟40世帯ほどが住んでいたが、5階建てでもエレベータはなく、各階の横方向を繋ぐ廊下もない。ひとつの階段で繋がる1~5階までの10世帯がお隣さんの感覚だ。こどもたちにとっては、共有の階段がどーのというよりも、同学年で同性のこどもがいるかが重要ポイントだが、母親たちは、――味噌醤油の貸し借りまでは記憶にないものの――作り過ぎた食事や、里に帰った際の土産などは、お向かいさんや上下一階層くらいに差し入れしあうような付き合いが珍しくなかった。 就学年齢以下のこどもや赤子は、必要に応じて、互いに預けあったりしていたようにも思う……。 その中でも、自分たちの向かいの一世帯はTHEお隣さんで、その間にはガスメーターやダストシュートがあった。本作の日の出団地の設定とほぼ同じだw【注1】 日の出団地――特に本作の舞台となる17、18号棟の住人たちは、半年前程度に知り合ったばかりで、そこそこ「ご近所さん」としてつき合いながら、過去の生活や現在の仕事についてはよく知らないといった状況が、著者の意識した設定である。 この設定は、そもそも金田一耕助が住居を構えた緑ヶ丘町に云えることで、彼が長年居候していた「松月」の離れから世田谷に近い緑ヶ丘に転居したのは、作品内の理由はともかく、メタ的には、そんなポッと出の人間関係のもと発生する犯罪事件に彼を絡ませやすくするためだったと考えている。 勝手な憶測に過ぎないが、本作の原型となった「渦の中の女」は昭和32年の作品だという。ビミョーなところだが、日の出団地ではなく緑ヶ丘町を舞台にしていたのではあるまいか?【注2】 だから、本作を手に取った多くの読者は、まず当時新興の団地とあいかわらずよれよれ和服の金田一耕助の組み合わせに違和感を感じたと思うwが、この意味で、団地を舞台にした事件に金田一耕助が絡むのは必然だったのではないだろうか。 ただし、怪文書が横行するプロット上の必要もあるが、本作の住人たちは割に活発な関係性を構築している。上述したように、わたし自身の記憶でも、当時の団地生活にはそれなりの「ご近所さん」つき合いがあった。 残念ながら現代では「隣の人はなにする人ぞ」化がさらに進み、同じマンションに半年どころか十年以上住んでいても、隣人たちとはすれ違う際に軽く挨拶する程度で、履歴・来歴はまったく知らないというのが珍しくなくなった。表札も出さないから、名前すら知らない……。 そんな薄い関係も、悪人が増えた現代社会では、やむなしの面もあるとは思うが、一方で淋しく感じた所以であるw ちなみに、冒頭・中間・結末で登場するS・Y先生は、明らかに正史・横溝だが、この表記スタイルははじめてであるうえに、「詩人」と記されている。一種の諧謔かと思ったが、このS・Y先生、推理小説における顔のない死体テーマについて、金田一耕助からレクされている。 『黒猫亭事件』での先生のように、自ら熱く語ったりしていないところをみると、「著者」とは別人と考えるべきかw もしわたしの想像通り、団地が舞台に選ばれたのが、原型作品ではなく新聞連載時の昭和35年だったとしても、「上海氏の蒐集品」の執筆は、中島河太郎が想定したよりも5年ほど遡れるかもしれない。 【注1】エレベータがついていない団地では、わざわざ下まで降りる必要のないダストシュートが便利だった。もちろん細かいゴミ分別などない時代の話でもあるが、わたしの記憶によれば、こどもが落ちる可能性(おそらくどこかの団地では現実に事故があったのだろう)から、いつの頃からか使用禁止になって、金属蓋が開閉できないように溶接されてしまった。そういった思い出を語り合える家族や友人がすでにいないのが悲しい……。 【注2】そこまで手を出すつもりではなかったが、原型作品を集めた『金田一耕助の帰還』を入手して、確認するのも一興か……。 | ||||
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「白と黒」は横溝正史の長編推理小説。昭和32年11月「週刊東京」で発表された「渦の中の女」という短篇を改稿・改題し、昭和35年11月から翌年12まで「日刊スポーツ」にて連載された作品である。名探偵・金田一耕助シリーズの1つだが、「獄門島」「八つ墓村」「犬神家の一族」など長編の代表作がいずれも地方を舞台にしているのと対照的に、この作品は東京都心にある団地を舞台にしている点がめずらしい。 ある日、金田一耕助は昔馴染みの須藤順子という女性と町中で偶然再会した。順子に懇願され、世田谷にある「日の出団地」を訪れた金田一は、彼女の部屋で怪文書を見せられる。その内容は、順子が結婚しているにもかかわらず、バーでホステスをしていた頃にパトロンだったクイーン製薬専務の日疋恭助とよりを戻したというものだった。夫の達雄はそれを信じ、家を出て行ったまま戻らないのだという。 また、最近「日の出団地」では根も葉もない男女関係を告発する怪文書があちこちにばら撒かれており、同じ団地に住む岡部京美に届いた時は、自殺未遂を引き起こすほど追いつめられたらしい。ついこの間できたばかりの新しい団地だけに、入居している人々が少し前まで見知らぬ相手だったことも、お互いに対する疑心暗鬼を生じる原因となっていた。 順子はその怪文書の主を洋裁店タンポポのマダム・片桐恒子ではないかと疑い、恒子の所へ直談判に訪れたが、彼女はそれを強く否定したという。そんな話を金田一にしていたところ、順子の部屋の真正面で死体が見つかったという騒ぎが起きた。建設途中である20号棟のダスト・シュートで見つかった女の死体は、上半身が真黒なタールで覆われ焼け爛れており、顔の判別もできなかった。屋上に設置された窯に何者かが穴を空け、熱いタールがしたたり落ちていたのである。 服装などから死体は片桐恒子と判断されたが、マダムの写真は一枚も見つからず、彼女の前身を知る者も一人として見つからなかった。コールタールで顔を焼かれた死体はいったい誰なのか、そして事件の日から行方不明の男性はどこへ行ったのか。謎が深まるなか、新たな殺人事件が発生してしまうのだった……。 ニュー・タウンとよばれる団地が次々と建てられていた1960年に連載が開始されていることから、横溝正史は存在感を増してきた団地という現代特有の舞台を利用し、複雑な人間関係や軋轢から生じる事件を書いてみたくなったのであろう。それにしても金田一耕助と団地というのは不思議な組み合わせだ。 「Ladies and Gentlemen」という書き出しで始まる、活字を切り貼りして作られた謎の手紙。この怪文書が巨大な団地に住まう人々の心を疑心暗鬼にし、誤解や偶然が複雑な事件を紡ぎ上げていく。 長い物語の最後、「白と黒」という言葉の意味とともに明らかになる犯人は完全に予想外のものだった。舞台が閉ざされた農村や旧家のお屋敷ではないので、やや情緒に欠けるきらいはあるが、こういう金田一ものもあってよいのではないだろうか。 <登場人物> 須藤順子 … 団地の住人。バーの元女給。金田一は昔馴染み。 須藤達雄 … 順子の夫。保険外交員。怪文書に憤慨し失踪した。 根津伍市 … 団地の管理人。元軍人。ジョーという烏を飼う。 根津由紀子 … 伍市の娘。水島に絵を、民子にお茶を習う。 辻村あき子 … 伍市の先妻。 水島浩三 … 団地の住人。画家。戦後落ち目になっている。 宮本寅吉 … 団地の住人。極楽キネマの支配人。 宮本加奈子 … 寅吉の妻。 宮本タマキ … 寅吉の娘。洋裁店タンポポの針子。 榎本民子 … 団地の住人。 榎本謙作 … 民子の息子。帝都映画に在籍する俳優見習い。 姫野三太 … 団地の住人。帝都映画に在籍する俳優見習い。 岡部泰蔵 … 団地の住人。高校教師。 岡部梅子 … 泰蔵の亡妻。中学校の校長をしていた。 戸田京美 … 泰蔵の義理の姪。洋裁店タンポポの針子。 戸田房子 … 京美の母。故人。 白井寿美子 … 泰蔵の婚約者。梅子が校長だった中学校の教師。 白井直也 … 寿美子の兄。中学教師。 佐々照久 … A紙の学芸部勤務。白井直也とは友人関係。 細田敏三 … 団地の住人。A紙の調査部。佐々が怪文書を相談。 細田アイ子 … 敏三の妻。水島画伯のところによく通っていた。 片桐恒子 … 洋裁店タンポポのマダム。死体はタールまみれ。 河村松江 … 洋裁店タンポポのお手伝い。 伊丹大輔 … 洋裁店タンポポの家主。 日疋恭助 … クイーン製薬専務。順子の不倫相手。 渡辺達人 … 帝都映画のプロデューサー。戦時中は伍市の部下。 立花隆治 … 東邦石油社長。泰蔵の中学時代の後輩。 一柳忠彦 … 民々党の代議士。代議士になる前は弁護士だった。 一柳洋子 … 忠彦の妻。三年前にヨット事故で行方不明。 一柳勝子 … 忠彦の娘。 宇津木慎策 … 毎朝新聞の文化部記者。金田一とは協力関係。 保科先生 … 検死医。 山川警部補 … 所轄S署の警部補。捜査主任。 志村刑事 … 所轄S署の刑事。 三浦刑事 … 所轄S署の刑事。 江馬刑事 … 所轄S署の刑事。 新井刑事 … 警視庁捜査一課所属の刑事。等々力警部の腹心。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 先刻お馴染み、もじゃもじゃ頭の探偵さん。 S・Y先生 … 金田一の親友で詩人。カピという柴犬を飼う。 | ||||
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角川文庫の〈金田一耕助ファイル〉シリーズ18が本作品、『白と黒』である。シリーズは20までなので、シリーズ全体を読み通すという視点からは、『白と黒』は終盤に位置する。いつも通り、期待しながらページをめくった。 これもいつも通り、期待は裏切られることなく、最後まで楽しめた。本作品については私自身の推理力は全く働かず、最後の最後まで真犯人が分からなかった。私自身の推理力が無いことは十分に認めた上でであるが、被害者の死体に“加工”がなされた理由は簡単に想起できたのであるが、加害者の殺人動機が全く分からなかった。ネタバレになることは書かないが、単純な動機かつ安易な手段での殺人を、複雑怪奇な人間関係が覆い隠してしまうことで、ありふれた事件を難事件にしてしまうこともあるんだなあ・・・というのが読後間もない感想である。 さっそくシリーズ19『悪霊島』を注文した。次作も楽しみである。 | ||||
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団地でおこる殺人事件。金田一耕助が乗り込むが・・・ ストーリーは破綻なくうまくまとまっている。 ただ・・・ 細すぎる。人物紹介、会話が「そこまで必要か?」と思うくらい細かい。勿論、良く言えば丁寧なのだが。 もっと、はしょってもいいのでは、と思いつつ読んでいた。 事件の犯人も(意外ではあるのだが)思ったほど盛り上がらない。ふ~んって感じ。 ただこれは「団地」のせいもあるかも。ドライな感じ。 やはり金田一さん物には岡山県のXX村でのおどろどろしさが欲しい。あっさりしてると言うべきか。 本陣、犬神、獄門等々は再度読むかもしれないが、この作品は一回で充分かな。 とは言え、最後まで読ませるのは流石。 | ||||
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面白かったです!普段は、獄門島や、奥深い山間の寒村の名門旧家が舞台のイメージでしたし、その暗闇の中でこそ、金田一先生のもつ性格の明るさで救われるような作品が多い中、これは一気に近代化して、団地や洋食、英語の雑誌など、ずいぶん親しみやすい感じがしました。 始まりの部分はとても面白いのですが、途中から「白と黒」というキーワードにみんなが振り回されすぎて(読者も)最後で解決になるのですが、その道のりが少し長く感じました。 物語中、何よりよかったのは、最後の犯人への反撃者の存在です。(ぜひ読んでみてください♪) しかし! 私がいちばん気になったのは、事件解決後の5人目の被害者の安否です。すごい重要なのに、どこにもかかれていないところから、まぁ無事だったんだな、と推測するしかないのが残念でした。ほかの作品の様に、動機や真相解明の謎あかしにもう少しゆっくり書いてもらえたら「読んだ感」も満点でしたが、 終わり方はさっぱりしています。でも、この作品はこのほうが…良いのかもしれませんね。 | ||||
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