(短編集)
支那扇の女
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表題作の感想のみ。 美奈子の夫で八木夏彦の従兄弟にあたる朝井照三が、ほとんど事件の発端から終盤まで、疑惑だらけの胡散臭さを発散しているw こうなると読者としては、一体どんな大技で朝井の逆転無罪に持っていくのかが興味の中心というものである。 それに対する回答は、なるほどそー来たかと感心したが、なぜだか全体としてイマイチ面白くなかったw あまり分析もしていないが、真犯人の影が薄いと云うのが理由だろうか……。 犯人の動機や心情は、もっと深堀ができるような設定だと思うのだが、せっかく中篇にサイズを膨らませたにも関わらず、そちらの方向には向かわず、多門修まで駆り出して、派手な捕物展開にしていた……。決して悪くはないものの、幾許か物足りなくもあったのが正直なところ。 中島河太郎の解説によれば、半ばくらいまでは元の短篇の面影を残しているらしいが、動機も犯人も違っているとのこと。 そ、それは読んでみたい……w ところで、本作において美奈子と義母や小夜子との仲は、特に悪いわけではないが、親密ではなかったという意味の文が何度か出てきたが、「あの晩は美奈子さんが寝室まで抱いていったそうですよ」(P.134) どうしてなかなか世話しているのでは? | ||||
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本書は表題作の「支那扇の女」と「女の決闘」を収めた横溝正史の推理小説。どちらも名探偵・金田一耕助が登場する。 ●支那扇の女 「支那扇の女」は昭和32年12月「太陽」に掲載された短篇を、単行本化の折に長篇に改めた作品。 昭和32年8月20日の早朝、頻発する盗難事件を警戒し高級住宅地である成城をパトロールしていた警官が、ある屋敷から飛び出して電車に飛び込もうとする不審な女を保護する。その女は児童小説作家である朝井照三の後妻・美奈子で、飛び出してきた家からは頭を割られた姑と女中の惨殺死体が発見されたのだった。 興奮から覚めた美奈子はこう供述する。自分は明治時代に毒殺魔「支那扇の女」として世間を騒がせた大叔母・八木克子の生まれ変わりであり、その血が自分を夢遊病状態にさせ、殺人を犯してしまったのかもしれないと。その一方で警察は、夫の照三が美奈子に「支那扇の女」の生まれ変わりだと思い込ませ、犯罪を誘発したのではないかという疑惑を抱き始めていた……。 この頃の横溝正史は別の雑誌にも「~の女」シリーズを執筆しており、そのいくつかは同様の過程を経て長編化されている。「壺中美人」「扉の影の女」などがそうだが、これらの作品と比べると「支那扇の女」はエロ・グロ描写が少なく読みやすい。時代を超えての因縁話に加え、二転三転するストーリー展開が面白く、意外な人物が犯人だったので最後まで楽しめた。 <登場人物> 福井作太郎 … 「明治大正犯罪史」の編述者。元新聞記者。 佐竹恭助 … 洋画家。八木克子をモデルに支那扇の女を描く。 八木克子 … 毒殺魔・支那扇の女との汚名を着せられ獄死した。 八木冬彦 … 克子の夫。子爵。妻を毒殺未遂で告発した。 八木田鶴子(鶴子) … 冬彦の妹。克子を陥れようと画策した。 八木加根子(泰子) … 冬彦の母。田鶴子と共謀する。 八木春彦 … 冬彦の弟。冬彦に子供がいないので八木家を継ぐ。 八木秋彦 … 春彦の息子。月琴島事件の加納弁護士と昵懇。 八木夏彦 … 秋彦の一人息子で現在の当主。先祖の墓を暴く。 八木晶子 … 夏彦の妻。 朝井照三 … 児童小説作家。八木夏彦とは同い年のいとこ同士。 朝井美奈子 … 照三の妻。八木克子の転生だと信じ自殺を図る。 朝井康子 … 照三の亡くなった妻。 朝井小夜子 … 康子の娘。小児麻痺で足が不自由。 藤本恒子 … 康子の母。額をざくろのように割られ死んでいた。 武田君子 … 朝井家の女中。血溜りのなか惨殺死体で見つかる。 瀬戸口先生 … 朝井家のすぐ近所で歯科医を営む男。 辺見東作 … 朝井照三と仲の良い画家。偽作した過去を持つ。 佐藤貞子 … 辺見家の家事を見ている通いのばあや。 本多勝喜 … 朝井美奈子の実兄。 多門修 … 数犯の前科をもつ男。金田一に心酔し助手を務める。 服部警部補 … 武蔵野署の捜査主任。金田一とは昵懇の仲。 山川警部補 … 成城署の捜査主任。 志村刑事 … 成城署の刑事。 木村巡査 … 成城署所属。巡回中、自殺しようとする女に遭遇。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 等々力警部に誘われ、事件現場を訪れた名探偵。 ●女の決闘 「女の決闘」は、昭和32年1月から4月まで「婦人公論」に「憑かれた女」という題名で連載されたもので、金田一耕助シリーズとしてはめずらしく登場人物に外国人が多い作品だ。 その日は緑が丘の住人たちが集まり、ロビンソン夫妻の送別パーティがなごやかに開催されていた。偉ぶるところが無く、近隣住人とも親しく付き合っていた夫妻が日本を離れることになったため、悪天候でも多くの人々が来訪し二人との別れを惜しんでいた。 ところが、マーガレット夫人の友人である児童文学作家・河崎泰子の登場により、その場の雰囲気がぎこちないものに一変する。彼女は流行作家・藤本哲也の妻だったが、離婚を機に緑ヶ丘から転居しており、事情を知るロビンソン夫妻は招待状を出していなかったのである。元夫との間に悶着があったことを知る人々は、彼女に同情しながらも好奇心を抑えられずにいた。 やがて藤本哲也が新妻の多美子を連れて現れると、パーティは微妙な空気に包まれた。すると、泰子の隣でソフトクリームを舐めていた多美子が、その場に倒れて苦しみ始めたのである。居合わせた金田一耕助の処置により一命をとりとめるが、後日開催されたジャック安永のパーティからの帰り、今度は哲也が毒殺されてしまう。犯人ははたして別れた妻の泰子なのだろうか……。 金田一耕助が若い頃アメリカを放浪していたという話はファンにはよく知られたエピソードだが、そのアメリカ時代の友人であるジャック安永が本作には登場する。金田一が彼をバガボンドと評しつつも、絶対に犯人ではないと言い切る場面などは、二人の関係性がよくわかり見逃せないシーンの1つだろう。 ミステリと呼べるような内容ではないが、コンパクトにまとまっており他の作品にはない面白さがある。題名から連想されるような、二人の女性が直接対決するようなシーンは登場しないのだが、その分彼女たちの情念の深さが感じられる物語だった。 <登場人物> ジェームズ・ロビンソン … 政治学者。英語教師もしている。 マーガレット・ロビンソン … ジェームズの妻。3年前に結婚。 木戸郁子 … 理学博士の未亡人。緑ヶ丘の婦人達の中心的存在。 椙本三郎 … 元海軍少佐。英語教授をしながら絵を描いている。 中井夫人 … さる会社重役の妻。緑ヶ丘でも有名な世話好き。 藤本哲也 … 流行作家。ジェームズの隣人。 藤本多美子 … 哲也の妻。富裕な貿易商の娘。 河崎泰子 … 哲也の前妻。児童文学作家。偽の手紙を受け取る。 井手清一 … 高名な作曲家。藤本多美子の古い友人。 ジャック安永 … 金田一のアメリカ時代の旧友。映画俳優。 島田警部補 … 緑ヶ丘署の捜査主任。金田一とは馴染み。 金田一耕助 … ロビンソン夫妻のパーティに参加していた探偵。 | ||||
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本書には標題になっている長編の「支那扇の女」と、「女の決闘」という短編の計2作品が収載されている。どちらも満喫できた。 「支那扇の女」には異常な性壁を持った登場人物が複数登場する。真犯人が誰なのか、そしてその目的は何なのか。最後まで楽しめた。 「女の決闘」は短編であり、犯人と思しき登場人物の数は少ない。金田一耕助の鮮やかな解決手口が爽やかな読了感を与えてくれる。 本評を書き終える前に、既にシリーズ第9弾を注文した。次作品も楽しみである。 | ||||
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高級住宅街のお屋敷で、二人の女性が薪割りで惨殺され、その現場から走り出してきた女が、警官の制止を振り切って、鉄道自殺をはかろうとした。自殺未遂をはかった女性は、『支那扇の女』と題された絵画に描かれた毒殺魔の女と血縁にあり、その肖像画と自分が容貌もそっくりなことから、自分はその恐ろしい殺人者の生まれ変わりではないかという強迫観念にとらわれ、夢遊病を発症していた。惨劇を目の当たりにしたとき、女は自分が病気の発作を起こしている間に犯した殺人に違いないという恐怖から、発作的に自殺をはかったのであったが…。 凄惨でショッキングな発端から、夢遊病や生まれ変わりというミステリアスで神秘的な設定で、前半すぐにストーリーに引き込まれるが、中盤が、事情聴取や捜査陣の議論に終始して、やや平板な印象を受ける。ただ、二百ページ弱という分量から、ひどく退屈に陥ってしまう前に、派手な銃撃戦の大捕物から犯人逮捕、そして意外な真相の発覚へと、終盤一気に読み終えてしまえる。文章も分量も読みやすい作品だが、中盤の展開にもうひと工夫あったら、さらに面白い作品になっていたのではないかと思う。 併録されている『女の決闘』は、自国に帰国するイギリス人夫婦のお別れパーティーで、女性が毒殺されかけるが、居合わせた金田一耕助の機転で一命を取りとめる。しかし、その後同じ出席者を集めて再び開かれたパーティーで、今度は殺されかけた女性の夫が、同じ毒薬で殺害される…という内容。かなり危うい綱渡り的な犯行だし、謎を解く最も重大なポイントが、帰国したイギリス人へ金田一が問い合わせた手紙の返信で明らかになるといったところも、「そんな重大なことに気づいていたなら、帰国する前に証言しとけよ」と、突っ込みたくなったり、やや無理を感じるところの多い作品だった。 | ||||
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