楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。

「大きくなること、それは悲劇である」。

出産を控えた姉に毒薬の染まったジャムを食べさせる妹…。

染みだらけの彼の背中を、私はなめる。腹の皺の間に、汗で湿った脇に、足の裏に、舌を這わせる。

人が生まれながらに持つ純粋な哀しみ、生きることそのものの哀しみを心の奥から引き出すことが小説の役割りではないだろうか。

魔犬の呪いで妹を失った三きょうだいは、ママと一緒にパパが残してくれた別荘に移り住む。

耳縮小手術専用メス、シロイワバイソンの毛皮、切り取られた乳首…「私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ」―老婆に雇われ村を訪れた若い博物館技師が死者たちの形見を盗み集める。

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。

記憶が80分しか持続しない天才数学者は、通いの家政婦の「私」と阪神タイガースファンの10歳の息子に、世界が驚きと喜びに満ちていることをたった1つの数式で示した…。

こうして書棚の秘密は私とＢ、 二人だけのものになった―― ハリウッド俳優Ｂの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。

ある出版社の社長の遺言によって、あらゆる種類の創作活動に励む芸術家に仕事場を提供している〈創作者の家〉。

美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。

「だって人は誰でも、失敗をする生きものですものね。だから役者さんには身代わりが必要なの。

玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。

きみはなぜ、まぶたを閉じて生きると決めたの―― 共に生きながら、今は遠く離れてしまった「わたし」と「ぼく」。

幼い頃に母親を亡くし、父とも海外赴任を機に別れ、継母を選んだ優子。

東京のはずれに位置する‘まほろ市’の駅前にある便利屋「多田便利軒」に舞いこむ依頼はどこかきな臭い。

魂は身体の細部にこそ宿る 隠された美を掬い取り、やわらかに照らし出す。極上の随筆16篇。

俳句のリズム、いのちのリズム、俳句を発見する歓びにあふれる、小川楓子の第1句集『ことり』 自然や生き物との対話、暮らしの情景……。

大阪の下町で生まれ小説家を目指し上京した夏子。38歳の頃、自分の子どもに会いたいと思い始める。

“わたしたちは仲間です”―十四歳のある日、同級生からの苛めに耐える“僕”は、差出人不明の手紙を受け取る。

ここは万両百貨店外商部。お客様のご用命とあらば、何でも(殺人以外)承るのが外商の仕事。

世界大戦をきっかけに、人工授精が飛躍的に発達した、もう一つの日本(パラレルワールド)。

コンクール入賞者ツアーのはざま、亜夜とマサルとなぜか塵が二人の恩師・綿貫先生の墓参りをする「祝祭と掃苔」。

誰も知らない、ゴッホの真実。 天才画家フィンセント・ファン・ゴッホと、商才溢れる日本人画商・林忠正。

あなたは何から逃げたいですか? 映画原作『犯罪小説集』とあわせてシリーズ累計20万部突破! 著者のライフワーク第2弾 「もう、逮捕でもなんでもしてくれんね」 高校卒業後、地元の北九州を出て職を転々としてきた福地秀明。

耳の中に棲む私の最初の友だちは 涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。

北関東のある町で、中学二年生の名倉祐一が転落死した。

おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でやせっぽちの麦くん。

古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな運命。

「真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う」。わたしは、人と言葉を交わしたりすることにさえ自信がもてない。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」から1年、 村上春樹、9年ぶりの短編小説集。 表題作は書下ろし作品。

横浜で、ミッション系のお嬢様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。

『わたしを離さないで』から十年。

致命的な記憶の死角とは?失踪したクミコの真の声を聴くため、僕は井戸を降りていく。

猫は戻り、涸れた井戸に水が溢れ、綿谷昇との対決が迫る。壮烈な終焉を迎える完結編。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。

Iターンプロジェクト担当公務員が直面するのは、 過疎地のリアルと、風変わりな「謎」――。

侍女のオブフレッドは、司令官の子供を産むために支給された道具にすぎなかった。

その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。

優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。

「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導し……。

あのとき、ふたりが世界のすべてになった―。ピアノの音に誘われて始まった女どうしの交流を描く表題作「愛の夢とか」。

娘の緑子を連れて大阪から上京してきた、「わたし」の姉でありホステスの巻子。

林ちひろは、中学3年生。

日本推理作家協会賞受賞!心に刺さる連作短篇集 島に生まれ育った人々の、島を愛し島を憎む複雑な心模様が生み出すさまざまな事件。

突如ダムが決壊し、濁流が町を呑み込んだ。

“本の町”読長町に住み、書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。

僕はこの世界に左足から登場した―。圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。

墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律に魅せられた外村は、念願の調律師として働き始める。

あみ子は、少し風変わりな女の子。

平均体重100キロオーバー!? 元相撲部球児が打って、投げて、食べる! プロ野球選手の小尾は、身に覚えのないドーピング疑惑で球界を追われた。

「美」は魔物―。

仕事も人間関係もうまくいかず、毎日辛くて息が詰りそう。２３歳の千鶴は、会社を辞めて死ぬつもりだった。