ぼくは呆然としていた。目の前に、三十数年前に死んだ男の墓がある。

イギリスの田舎町。病弱なマシューは、優しく利発な姉に守られ、幸せな少年時代を過ごした。

家に出没するネズミを退治するため、罠を買うようにと妻に命じた夫が目にする光景とは…ぞっとする終幕が待ち受ける「ネズミ」。

ぼくの目の前で、少年がトラックにはねられた。事故のあと町の人間が聞いてきた。

黄昏の列車のなかで、ぼくは目を瞠るほど美しい親子と同席になった。妖艶で饒舌な母親と、うまく舌が回らず涙ぐむ娘。

長編に劣らず短編においてもカーは数々の名作を書いているが、中でも「妖魔の森の家」一編は、彼の全作品を通じての白眉ともいうべき傑作である。

広大な沼地と河口に面し、わずかに水上に出た土手道で村とつながるだけ。その館は冷たく光りながら堂々とそそり立っていた。

フラニー・マケイブ。クレインズ・ヴューの警察署長で、元不良少年。

兄が死んだのは、ぼくが十三のときだった。線路を渡ろうとして転び、第三軌条に触れて感電死したのだ。

ブレアトン女子学院に勤めて五週間の女性教師フォスティーナは、突然理由も告げられずに解雇される。

世の中には、どんな些細な出来事も、語り口ひとつで冒険や、心臓へのひと太刀に変えられる、すばらしい能力を持つ人がいる…。

想い出に値する出来事があるたびに木片を拾う。人生が終わりを迎えるとき、それを薪にして火を熾す―“薪の結婚”。

発端の怪奇性、中段のサスペンス、解決の意外な合理性、この本格推理小説に不可欠の三条件を見事に結合して、独創的なトリックを発明するカーの第一短編集。

英国ミステリ史上、ひときわ異彩を放つ重鎮ブランド。本書には、その独特の調理法にもとづく16の逸品を収めた。

ロンドン近郊の由緒ある屋敷〈白い僧院〉でハリウッドの人気女優マーシャ・テイトが殺害された。

フランスの避暑地に暮らす若い女性イヴは、婚約者トビイの父サー・モーリス殺害の容疑をかけられる。

「死にかけてるのってどんなものかって?もう生きてないんだ。

クリスマス商戦のさ中、デパートのおもちゃ売り場でアルバイトをする十九歳の女性テレーズは、美しい人妻と出会う。

江戸川乱歩の造語である“奇妙な味”は、ミステリにもSFにも怪奇小説にも分類不能の、異様な読後感を残す小説を指す。

ある殺人を犯した罪で死刑囚となった少女イレーナ。

毎年恒例のくじ引きのために、村の皆々が広場へと集まった。子供たちは笑い、大人たちは静かにほほえむ。

クリスマスを控えた町から、二人の少女が姿を消した。誘拐か?刑事ルージュの悪夢が蘇る。

家出少年のホーティがもぐりこんだのは、普通でない人間たちが集うカーニヴァル。団長のモネートルには奇妙な趣味があった。

モリーは14歳、天性の語り手だ。

「復刊ドットコム」で絶大な支持を得た傑作サスペンス、待望の文庫化！ 1954年、イギリスの名門パブリック・スクールで学ぶ14歳の気弱な少年ジョナサンは、同級生ばかりか教師にまでいじめられ、つらい日々を送っていた。

200万円でゲームブックの原作を、謎の企業イプシロン・プロジェクトに売却した上杉彰彦。

異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。

過去への旅が可能となった未来、時間局が設置された。部局はふたつ。

文化大革命で父を惨殺され、人類に絶望した科学者・葉文潔（イエ・ウェンジエ）。

空には暗雲がたれこめ、気温は下がりつづける。目前には、植物も死に絶え、降り積もる灰に覆われて廃墟と化した世界。

1000年後の日本。豊かな自然に抱かれた集落、神栖66町には純粋無垢な子どもたちの歓声が響く。

入り組んでいてせわしない。いつも飛び回っていて、その気になればいやというほど刺せる―“蜂の巣”。

爆弾テロに巻きこまれ、記憶を失った報道カメラマンのグレイ。彼のもとへ、かつての恋人を名乗るスーザンが訪ねてきた。

マロリーが殺された?部下の報告で検視局に駆けつけたライカーが見たのは、彼女のブレザーを着た別人だった。

山中で交通手段を無くした青年クインは、〈塔〉と呼ばれる新興宗教の施設に助けを求めた。

すべてのページに驚きと感動があふれる、いまだかつてない短編集! ホームズがSFに? ベイカー街に住む偉大な探偵が遭遇した緑の血が飛び散る殺人事件の顛末を描くヒューゴー賞受賞作「翠色の習作」の他、空前絶後の想像力を駆使した、鬼才ゲイマンの魅

膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。

画廊で殺されたアーティストの胸には、1枚のカードがタイトルのように「死」と告げていた。

1953年にアメリカのSF雑誌「ギャラクシー」に連載され、1954年に刊行された。

生者の、半生者の、蘇生者の、死なざる者の、そして死者の都パラディス。退廃と背徳の都の墓地に眠る死者の物語8編を収録。

十一月七日水曜日。女子大生の藍は秋のその一日を何度も繰り返している。

すべての絵には、物語がある。 名だたる作家17人による文豪ギャラリー 奇才エドワード・ホッパーに捧げる短編集。

テキサスのさびれた鉱山の町インフェルノの郊外に空から巨大な黒いピラミッド状の物体が落下した。

皮肉屋で独善的な文筆家の父と、人生への希望を失った母の元を離れて大学の女子寮に入った17歳のナタリー。

おれはハリー・ラドクリフ、天才建築家だ。天才だから何をやっても許される。

短編ミステリの名手スレッサー。初邦訳の怪盗ルビイものを含む21編。

短編を書かせては当代随一の名手の代表的短編集。奇抜な着想、軽妙なプロット、論より証拠、まず読んでいただきましょう。

遺伝子工学の天才ヴァージル・ウラムが、自分の白血球から作りだした“バイオロジックス”―ついに全コンピュータ業界が切望する生体素子が誕生したのだ。

その部屋で眠れば必ず毒死するという、血を吸う後家ギロチンの間で、またもや新しい犠牲者が出た。

ジョニーとサムが殺しの容疑をかけられた!災難続きの二人の運命やいかに! おしゃべり時計をめぐる謎に迷探偵が挑む。

無数の凶兆が世界に顕現し、地獄の扉が開いた。

「あと七日」意識をとりもどしたとき、耳もとで言葉が聞こえた。わたしはトリス、池に落ちて記憶を失ったらしい。

一九九一年四月。雨宿りをするひとりの少女との偶然の出会いが、謎に満ちた日々への扉を開けた。