(短編集)
ヒトラーの描いた薔薇
- SF (392)
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本書の特徴は、ジャンル専門誌であるSFマガジン"以外"に掲載された作品を中心に収録している。主にSFマガジンでエリスンをフォローしてきた読者にとっては、「え、これ翻訳あったのか!」と驚くお宝翻訳がつまった本だ。特に某男性誌に伊藤典夫氏の翻訳が沢山掲載されていたことを本書で初めて知り、なぜ専門誌以外にと腹が立ったが、そもそもジャンルに収まってるような作家じゃない、と自分を納得させた。貴重なコレクションをありがとうございました、出版社様。エリスンさん、安らかに眠れ。 | ||||
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読書していて、ある作家に嵌る事がある。作品と言うより、作風、作者自体に強烈に惹きつけらる。そして、年代順から一気に読み進めるとある体験をする事になる。 作者が凄い勢いで年老いて行って話についていけなくなるのだ。 志賀直哉に嵌った中学生時代、作者の本を夢中で読み漁ったら何時の間にか今度買うお墓の話を始めていて引いた事がある。スティーブン・キングでも同じ体験をしたことがある。 で、今度はエリスン。と言っても3作しか読んでないが充分に作者の精神が年老いていく様が分かって何だか悲しくなった。世界の中心でエトセトラにもセンチな部分があったが、なんだか今作はセンチと言うより説教臭いというか年寄りの愚痴みたいに感じた。強烈な暴力性なども鳴りを潜めてしまって悲しい。 ちょっと年上の「エリスン兄貴」みたいにイメージしていた作者がふと気づくと「エリスンジジイ」になっていたという感じ。これがウラシマ効果か(違う) 短編集ばかり故駆け足で読んでしまったので猶の事精神的な衰えをハイスピードで感じてしまって辛かった。 前半の70年代はともかくそれ以降のエリスンはあまり好きではないなあ。前作の死の鳥でも終りの作品はイマイチだったと思ってたらあれも87年か。80年代以降は小難しいだけで愛せない。 読み終えてちょっとセンチになってしまいました。 | ||||
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前回の「死の鳥」は受賞作がズラリと並んだ、いかにも傑作選という一冊だったので、今回は地味な落穂ひろいかと思っていた。 とんでもない。こちらのほうが気に入った。 『恐怖の夜』は黒人差別を描いた強烈な一篇だ。凍えていても空腹でも、黒人はサービスを受けられない。 ゾンビなんか出るよりよっぽど怖い。 『死人の眼から消えた銀貨』も同様のテーマだが、主人公に超自然的な雰囲気があって、不思議な後味だ。 『苦痛神』全宇宙に苦痛だけをもたらす神がいる。嫌な存在だが、なぜか腑に落ちてしまう。 「全知全能でいつも見守ってくださる」と言われるより素直に理解できる。 『バシリスク』拷問されたベトナム帰還兵は、呪われていた。バシリスクの能力が身についてしまったのだ。 大衆の無責任な残酷さに身の毛がよだつ。彼らこそ怪物なのではないか。まさに怒れるエリスン。本書の白眉というべき傑作だ。 『血を流す石像』は、ひたすら殺戮が繰り広げられる。不思議だが痛快だ。 『冷たい友達』運命の恋と見せかけて、この展開。アンチ恋愛小説とでもいうのか。 『クロウトウン』下水道には、もうひとつの世界がある。不快な異世界ファンタジー? 『解消日』は伊藤典夫の翻訳が冴える。解消日の次は酔狂日だ。 表題作は地獄が舞台だが、ヒトラーは門に薔薇の絵を描いているだけで、特に活躍しない。 ヒトラーは若いころ画家志望だった。あの世で罰も受けず絵を描いているらしい。 エリスンがユダヤ人だということを考えると、捻じれた怒りの表現とも思える。この世界は人生だけでなく、死後の審判まで理不尽なのか。 すべてが個性的で、独特の味わいがある。こんな作家はもう出ないかもしれない。 | ||||
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エリスンという作家、その作品は実は決してひねりが多くなく、感性もセンチメンタルでごくごく真っ当--それを圧倒的な文章の鮮やかさで読ませてしまうという、いわば力技任せのトリックスターだと思っていました。 「世界の中心で愛を叫んだけもの」の、閃光を浴びるかのような暴力的な美しさ--「死の鳥」の、汚泥の底から宝石を攫い出すような汚れと美との対比--既刊作品集はまさにそういった印象を裏付けるものだったのですが、本書は、センチメンタルでありながら、もう少し乾いた諦観のようなものを感じさせる作品が多い気がします。 エリスンも年をとるし、いつまでも「なってねぇなぁ」なんて言っている悪ガキではいられないということなのでしょうか...でも、その諦めの境地、落ち着き払った冷静な視線が、なにしろ格好良い!これが技量によるものなのか、作家の経験の積み重ねによるものなのかわからないけれど、こんなに圧倒的に格好良い世界を見せてくれるとは、この作家は本当にすごいと改めて思います。 作品単体としてはさほど傑作と思えないものも含まれていますが(中では表題作が非常に気に入りました)、前2冊を気に入った方には疑問の余地なく必読です。 逆にエリスン初心者なら、「世界の中心で愛を叫んだけもの」から入った方が、ここに至っての格好良さがよく伝わると思います。 | ||||
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1957年から1988年までに発表された短編13編を発表年代順に並べた日本オリジナルの短編集です。彼は34年生まれなので、23歳から54歳までに書かれた作品ということになります。 最初はちょっとかったるいなあと思いながら読んでいました。既刊の2冊に比べるとさすがにレベルが落ちるかなあ。落穂拾い?小粒だし、普通小説もあるし、一万円札のない札入れかなあと失礼なことを考えながら読んでいました。 冒頭の「ロボット外科医(57)」も、60年前にダ・ヴィンチやワトソンを予見していたのはすごいけれど、モダンタイムスみたいなもんだし、「恐怖の夜(61)」などは怒りにあふれているけれど普通小説だし、「苦痛神(64)」はちょっとすごいけれど小粒だし、「バシリスク(72)」もエリスンらしいけど、もう一歩かと。 でも、「血を流す石像(73)」のあたりからなんだか圧倒され始める。既存の体制や社会に対して黙っていられないとういう怒り。それまでにも描かれていたことなのだけれども、よりパワーアップしたというか、ウルトラ・ヴァイオレンス。 一方で、「冷たい友達(73)」では、85年に公開された某アニメ映画の一場面とそっくりな設定があってびっくり。「解消日:Shatterday(75)」は某テレビシリーズ第一話と同じ題名、良く似た設定だけど、記憶では別の話のような感じ。 表題作の「ヒトラーの描いた薔薇(77)」あたりから最終話までは夢中になって読んでいました。70年代後半以降のものは何か変わったという感じがします。目に見える暴力性は少なくなってきたのだけれど、何か凄味が増したというかそんな感じです。特に、最後の「睡眠時の夢の効用(88)」はオカルトじみた話で、どこがとは言えないのですが、なんだかすごい。 もともとエリスンは読まず嫌いだったのです。アシモフのことを、なっちゃいねえ。なんて言ったと聞いていたから。短編集も1冊しか出てなくて、雑誌やアンソロジーを集めなければ読めないし。でも、数年前にどうせ1冊だけだからと思って『世界の中心で愛を叫んだけもの』を読んで驚いてしまいました。凄いじゃないかと。それで、新しい作品も読みたいなあと思っていたら新しい短編集が2冊も出てしまった。良い時代になったものです。 | ||||
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