蜂の巣にキス
- クレインズ・ビュー・三部作 (3)
- 蜂 (11)
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デビュー作「死者の書」で独特の作風にガツンとやられて以来、キャロルのファンです。 ただ、どのあたりからだったか、神様とか宗教色が強くなってきたような気がして違和感を感じ始め、この本も以前購入済みだったのに未読でした。改めて手にとってみればやはりおもしろい。この「蜂の巣にキス」、「薪の結婚」、「木でできた海」はクレインズ・ビュー3部作と呼ばれ、ニューヨーク郊外の同じ小さな町を舞台にした物語なんですが、たまたま「木でできた海」も積読状態になっていたので、この2冊共止まらなくなって半日で一気読みしてしまいました。 他のレビュアーさんもおっしゃっているように、いつもふわふわと非現実的なキャロル作品の中ではかなり現実に足がついた物語です。 新作が書けなくてパニックになっていた作家サムはふと気が向いて生まれ故郷へ。いろいろとなつかしいもの、人に再会し感激している最中に思い出したのは15歳の時に上級生の少女が殺された事件。彼女が川に浮いているのを発見したのは自分だったのだ、しかも警察の捜査にはなにやら不審な点が。これを新作のネタにできるのではないか?と。 今は町の警察署長になっているかつての悪ガキ、フラニー・マケイブや殺人犯人に仕立てられ刑務所で自殺したエドワードの父親と一緒にあれこれ調べ始めます。このフラニーは後に「木でできた海」では主役を勤めることになります。また、サムがお互い一目ぼれで恋に落ちるヴェロニカが怖いです。熱愛とストーカーは紙一重ですね。 キャロルにしてはめずらしく強いて言えばミステリ色の方がファンタジー色よりも強いかもしれません。ただやはりあくまでもキャロル作品。本格推理と勘違いして読むと、なんだこれは?になると思います。 歌うようにリズミカルな独特の文章と、いつもそれを見事な日本語に翻訳された浅羽莢子さん、逝去されたそうで残念です。キャロルの本は本当に名訳でした。 また、時々にさりげなくはさまれる人生訓のような言葉にもうならされます。たとえば「大事なことはいつも手遅れになってからわかる。老いることの悲劇は、長いことかかってやっと学んだ物事を、もう応用できないことにあるんです。」 「我々は理解できる理由や怨恨を捜すことばかりに時間をかけるがそんなことをしても無駄なんです。ただ”そうであるもの”も世の中にはあるんです。その不条理が我々を怯えさせる。なおも捜し続け”理由がないわけがない”と言い続ける。あいにく、いつもあるとは限りません。 天災がいい例です。竜巻やハリケーンが襲ってくるたびに教会が破壊され善良な人が100人は道連れになる。理屈では説明がつけられないから、被害総額を計算し1億ドルと判断する、死者を数えて209名と言う。数字ばんざい!数字なら理解できる。説明はしてくれないかもしれないが、耐えるために必要な1つの秩序を作り出してはくれるんです。」などなど。 殺されたポーリン、気に入れば誰とでも寝て酒飲みで評判は最悪、けれど超成績優秀、強烈な好奇心のままに動き回り、気に入らないといやというほど刺す”蜂の巣”と呼ばれた少女の実像がだんだんと明らかになってくるところもスリリングです。最後の意外な真相は賛否両論かもしれません。が、変わらないキャロル節を堪能できました。よかったです。 | ||||
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大好きなジョナサン・キャロルの作品ですが、何時ものダークファンタジーなら好きなのですがサスペンスはちょっと性に合いませんでした。 一度しか読んでません。 | ||||
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ホラー色が少し抑え目ですが、安心して読めるキャロルらしい本です。 結末は少しミステリーっぽいですが、全体はキャロルらしい退屈のない内容です。 邦訳では最新作であり、初期の頃から悪く変わってないか心配でした。 期待を裏切らないおもしろい本です(キャロルファンには)。 解説にありますが、まだ訳されていない本があるようです。キャロルは日本ではあまり売れないようです。 私の住んでいる市内でも扱っている本屋はかぎられております。キャロル作品は味のある文書と独特の恐さがあり、 どの作品も高いクオリティです。もっと売れると良いのですが・・・・。 | ||||
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キャロルといえば、ダークファンタジー、下手なホラーよりよほど怖い。何が怖いって、何も起きないのに何か変だっていうのが延々つづくあたりがこわい。もちろん、ただこわいだけじゃなく、そこにさまざまな人間どうしの愛が描かれていたりする。だからこそ、それが壊れていくことがすごく怖い理由の一つなのだけれども。 けれども、「蜂の巣にキス」は怖くない。解説で豊崎由美が書くように「これって普通のミステリーじゃん」なのだ。スランプの作家、サミュエル・ベイヤーがかつて子供のころ、若い女性の死体を発見した話をめぐって、調査を開始する。そこで意外なことがわかったり、まきこまれたり、親友に再会したり、とまあそういう話なわけで、おもしろいけど、普通のミステリー。愛読者だと言って主人公に近づいてくるすごく変な女性も出てくるけれど、それほど怖いわけじゃない。蜂の巣というのは、主人公が子供の頃に発見した死体の女性のあだ名なのだけれど、これだってとても不思議な女性として生きていた。でも怖いわけじゃない。スティーヴン・キングがキャロルの作品が好きだっていう話だけれど、そのことに対するキャロルの返事ということもあるのかもしれない。だって、話は「スタンド・バイ・ミー」みたいでしょ。 怖くはないけれども、蜂の巣の死の謎を追いながら、それによってまわりの人間が狙われたり殺されたりと、そんな展開なので、ページをめくる手は止まらない。止まらないけれども、それは本当に、キャロルのエンターテイメントの技術を徹底的に披露してくれている、そういうことかもしれない。主人公はやはり、エンターテイメントの作家であり、メインストリームの文学に対し、コンプレックスを持っているのだから。まあでも、それはキングへのオマージュということと重なりますね。 多分、この小説でグっとくるのは、キャロルが繰り返し描いてきた、親子の愛なんだと思う。この小説には、重要な女性が何人か出てくる。蜂の巣をはじめ、愛読者で謎の女性ヴェロニカなど。でも主人公にとって最も大切なのは、娘のキャサンドラ。別れた三人目の妻とは冷たい関係であるにもかかわらず、娘との絆は強い。自分の仕事や恋愛よりも大切なのだから。でも、その関係がとても強いものであると同時に、変化していくものでもある、そうした移ろいの中に、人間のある種の限界を見て取ろうとする。それが時にひっくり返ってしまうこともある。そもそも、信じていた人間関係が破綻してしまうことこそが、最大の恐怖なのかもしれない。そして、いつもそんな予感がする、それがキャロルの小説の怖さを支えていたのかもしれない。そんなことを思っている。「月の骨」がまさに、生まれてこなかった子供との愛情の物語だった。そして「沈黙のあと」が、どうしようもなく親子関係が破綻してしまう物語だった。だとすれば、主人公のサミュエルと娘のキャサンドラが、むしろ強い絆と、同時にキャサンドラ自身がボーイフレンドをつくり、父親から離れていく、健全な成長にともなった関係の変化が描かれる。親子の愛情は、親にとっては永遠に等しいけれども、子供にとってはそうではない、そうした不対称があるけれども、主人公はそれを受け入れていく。そこには、関係の破綻による恐怖が描かれる余地はなかったのかもしれない、とも思う。その一方で、不幸な親子関係も描かれているし、それもまた、本書のキーポイントにはなっている。 ダークファンタジーを期待すると裏切られるかもしれない(それでも、ヴェロニカ・レイクはそれなりにホラーな存在だけれでも)。けれども、人間関係のある種の不安を描くことにおいては、キャロルらしい作品なのだと思う。ぼくとしては、「月の骨」と並んで、好きな作品、ということになるな。キャロル入門として適切だとはおもわないけれども。 | ||||
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キャロルといえば、ダークファンタジー、下手なホラーよりよほど怖い。何が怖いって、何も起きないのに何か変だっていうのが延々つづくあたりがこわい。もちろん、ただこわいだけじゃなく、そこにさまざまな人間どうしの愛が描かれていたりする。だからこそ、それが壊れていくことがすごく怖い理由の一つなのだけれども。 けれども、「蜂の巣にキス」は怖くない。解説で豊崎由美が書くように「これって普通のミステリーじゃん」なのだ。スランプの作家、サミュエル・ベイヤーがかつて子供のころ、若い女性の死体を発見した話をめぐって、調査を開始する。そこで意外なことがわかったり、まきこまれたり、親友に再会したり、とまあそういう話なわけで、おもしろいけど、普通のミステリー。愛読者だと言って主人公に近づいてくるすごく変な女性も出てくるけれど、それほど怖いわけじゃない。蜂の巣というのは、主人公が子供の頃に発見した死体の女性のあだ名なのだけれど、これだってとても不思議な女性として生きていた。でも怖いわけじゃない。スティーヴン・キングがキャロルの作品が好きだっていう話だけれど、そのことに対するキャロルの返事ということもあるのかもしれない。だって、話は「スタンド・バイ・ミー」みたいでしょ。 怖くはないけれども、蜂の巣の死の謎を追いながら、それによってまわりの人間が狙われたり殺されたりと、そんな展開なので、ページをめくる手は止まらない。止まらないけれども、それは本当に、キャロルのエンターテイメントの技術を徹底的に披露してくれている、そういうことかもしれない。主人公はやはり、エンターテイメントの作家であり、メインストリームの文学に対し、コンプレックスを持っているのだから。まあでも、それはキングへのオマージュということと重なりますね。 多分、この小説でグっとくるのは、キャロルが繰り返し描いてきた、親子の愛なんだと思う。この小説には、重要な女性が何人か出てくる。蜂の巣をはじめ、愛読者で謎の女性ヴェロニカなど。でも主人公にとって最も大切なのは、娘のキャサンドラ。別れた三人目の妻とは冷たい関係であるにもかかわらず、娘との絆は強い。自分の仕事や恋愛よりも大切なのだから。でも、その関係がとても強いものであると同時に、変化していくものでもある、そうした移ろいの中に、人間のある種の限界を見て取ろうとする。それが時にひっくり返ってしまうこともある。そもそも、信じていた人間関係が破綻してしまうことこそが、最大の恐怖なのかもしれない。そして、いつもそんな予感がする、それがキャロルの小説の怖さを支えていたのかもしれない。そんなことを思っている。「月の骨」がまさに、生まれてこなかった子供との愛情の物語だった。そして「沈黙のあと」が、どうしようもなく親子関係が破綻してしまう物語だった。だとすれば、主人公のサミュエルと娘のキャサンドラが、むしろ強い絆と、同時にキャサンドラ自身がボーイフレンドをつくり、父親から離れていく、健全な成長にともなった関係の変化が描かれる。親子の愛情は、親にとっては永遠に等しいけれども、子供にとってはそうではない、そうした不対称があるけれども、主人公はそれを受け入れていく。そこには、関係の破綻による恐怖が描かれる余地はなかったのかもしれない、とも思う。その一方で、不幸な親子関係も描かれているし、それもまた、本書のキーポイントにはなっている。 ダークファンタジーを期待すると裏切られるかもしれない(それでも、ヴェロニカ・レイクはそれなりにホラーな存在だけれでも)。けれども、人間関係のある種の不安を描くことにおいては、キャロルらしい作品なのだと思う。ぼくとしては、「月の骨」と並んで、好きな作品、ということになるな。キャロル入門として適切だとはおもわないけれども。 | ||||
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