木でできた海
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初版刊行(参考)
種別
長編
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あらすじ
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評判
木でできた海の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 B ランク
木でできた海の総合評価:
8.00/10点 レビュー 7件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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それでなくても複雑怪奇なキャロルの作風ですが、この作品が今までで一番ブッ飛んでるんじゃないでしょうか。いかにもキャロルらしいマジック・リアリズム的雰囲気で、死んだ犬が何度も生き返ってくるとか、ご近所の夫婦がある日突然蒸発、誰もいなくなったその家が真夜中に投光機で煌々と照らされ家が囲まれていくとか、おかしなことが起きる現場にはいつもカラフルな鳥の羽根が落ちている、そしてどこからともなく漂ってくるいい香り・・。
そんな時、優秀でおとなしい女生徒が学校のトイレでヘロインの過剰摂取で死亡します。なぜか彼女のノートにはその死んだ犬の絵が描かれていた、そのまったく同じ犬の絵は存在しているはずのない1750年頃の絵画集にもあって・・・。
2度目の妻を愛し、義理の娘を愛し幸せに暮らしているマケイブの前に、若い頃の凶暴な悪ガキだった自分が現れます。そうかと思えば突然自分はよぼよぼに年老いて別の妻と一緒にウィーンにいる・・こうして要約をピックアップするだけでもいかにメタメタな話かわかると思います(笑)。
時空が交差し、タイムワープもののお約束など完全無視で、違う年齢の自分が同時代に存在している、これはパラレルワールドものなのか?それともいつもキャロル作品のバックに感じられるキリスト教的絶対的な何か=神が存在しているのか?ネタばれするのであまり書けませんが、今回は神ではありませんでした。
作品全体を通じてハイ・テンションが持続、それに飲まれて引っ張られ一気読みしてしまいました。非常に荒唐無稽な話でありながら読ませるパワーはすごいです。
ファンタジーでありながらというとおかしいですが、キャロルの小説はとてもアメリカ的です。大味で量ばかり多い軽食を出す安食堂、ハンバーガーにコーク、スラングで乱暴な口ばかりきいているラフな登場人物たち、アメ車、冗談がきついティーンエージャー。今回もそんなものがフルに出てきます。
それでいてさりげなく、深遠な言葉がさらっと読み流してしまいそうな合間合間にはさまれます。
「17歳の頃、死は何光年も離れた星にすぎず、強力な望遠鏡でもなかなか見ることはできない。その後、年を食うにつれて死が遠のく星ではなく、自分の頭めがけてまっすぐ落ちてくるいまいましい小惑星だと気がつく」
「おれは毎日が、つれあいが、仕事が、環境が気に入っている。自分を好きになろうと努力している最中だが、そんなのは先が見えないままいつまでも続いて行く作業だ」
「恐怖は自分が生み出してるんだ。伝染病みたいに外にあるものじゃない。たいていは愛から生まれる。失うことに耐えられないほど何かを愛してる時、恐怖はいつも近いところにある。」などなど。
怒涛の展開のままラストとなり、いったい問題が解決したと言えるのか、それともまったくしていないのかよくわかりませんでした。この終わり方には賛否両論あると思います。自分も正直ここで星1つマイナスでした。それでもこの筆力、迫力には負けました。
また、ずっとキャロルの翻訳を担当してこられた浅羽莢子さんがお亡くなりになり、その後の翻訳はどうかなと思っていましたが、市川泉さんの訳も、今までよりは生真面目な感じですが、これまでの独特のリズムをそのまま継承してとてもよかったと思います。
ただ、翻訳がこの2001年作品で途切れているのが残念です。熱狂的なファンがいるキャロル作品ですが、マニアックなため実はあまり売れないとか・・。2002年から2019年にかけて本国ではすでに5作が出版されているのに。どうかこれらも次々と翻訳してくださるようお願いしたいです。