薪の結婚
- クレインズ・ビュー・三部作 (3)
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クレインズ・ヴュー・シリーズの2作目です。ジョナサン・キャロルはデビュー作「死者の書」でガツンときてからのファンです。が、最近になって何十年かぶりに最初から全作読み直しているのですが、続けて読むとちょっと食傷気味に・・・。なぜかというとパターンが毎回あまりにも同じなことに気がついてしまったからです。 最初は必ずロマンチックなラブ・ロマンスが。それから徐々におかしなことが起こり始める、この世のものではない存在が現れ、妊娠、子供、生まれた子供、生まれてこなかった子供、シャーマンのような存在の不思議な力を持った東欧またはユダヤ人の男性、神の存在・・・すべて同じです。 この作品でヒロインのミランダは、ヴァンパイアのように自分のほしいものをむさぼるだけで人に与えることをしない人間とされ、お話の後半ではその貪欲さのために報いを受けるだろうという話になります。が、話の筋を追っていってもとてもそのようには見えず納得がいきませんでした。 ヒューとの不倫も、ミランダは別れようとしたのに、妻と離婚するから行かないでくれと引き止めたのはヒューの方。ミランダの高校時代のボーイフレンド、ジェームスがあの世から甦って彼女を責めるのは「よその家に侵入してセックスするのを君は断った」「本当ならそうして、そして翌日僕は逮捕され刑務所行き、そして刑務所で真人間になるはずだった」。そんなことを言われても、不法侵入を断った彼女が悪かったとはとても思えません。こんな理由で彼女が責められることが続くのです。 無意識に自分の立場がよくなるように、得になるように行動するのは多かれ少なかれ誰しも同じだと思います。ミランダの行動はそこまですらいっていない、なのに彼女のしたことは神から苦しみや罰を受けなければいけないほどひどいことなんでしょうか。 半分まではスリリングなダークホラーだとかなりわくわくして読んでいたのですが・・その後は納得がいかないのに加えて、またいつものキリスト教的倫理観めいた話になり、なんだかなあと思ってしまいました。今回は前半が星5つ、後半は星3つ・・でしょうか。 キャロル作品は日本では売れないらしく、2001年の「木でできた海」を最後にその後発表された5作は翻訳されていません。これ以上キャロル作品を読もうと思ったら洋書に当たらないと仕方ないのですが、わかりやすい英語なのかどうか、とりあえず一冊は挑戦してみようと思っています。 それから他のレビューアさんも書いていらっしゃいますが、残念ながら逝去されてしまった浅羽筴子さんに変わって市田泉さんが翻訳されていますが、浅羽さんの文章の雰囲気を受け継いで見事な訳になっていると思います。 この方の翻訳でさらに新作が読みたかったです。 | ||||
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キャロルの作品は、日本ではあまり売れないそうです。確かに読み手を相当に選ぶ作品だとは思います。『死者の書』を読んだ時もだったのですが、最初は「なんだかなー」という印象なんです。が、途中に「うわっ」となる瞬間がある。それがキャロルの作品。一筋縄ではいかない。 私はまだに作品しか読んでいないので、どちらも主人公が厭な女・男。この主人公のミランダも、無欲な顔をしてとんでもなく貪欲な女。まさに吸血鬼。全然主人公に気持ちは寄り添えませんが、抗いがたい魅力のある作品です。 | ||||
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ミランダは希少な古書を専門に扱う個人業者で、世界各地を飛び回る忙しい日々を送っていたが、美術品バイヤーのヒューと出会って激しい恋に落ちる。 彼は既婚者ではあったが、妻子と別れてミランダと暮らすことを選び、ハドソン川沿いの町に借りた家で二人の新たな生活が始まった。 ヒューとの幸せな日々が始まるのに前後して、ミランダの周囲では高校時代の恋人だった故人を見かけたり、鍵をかけているにも関わらず自宅に不法侵入の形跡が認められたりと不可思議なことが起こりはじめる。 やがて、待ち望んだヒューとの子供授かったミランダだが・・・ 誤記と見紛う奇怪なタイトルだが、原題(The Marriage of Sticks)の直訳である。 日常から非日常への急転ぶりがキャロル作品の最も大きな特徴と言われるが、このようなタイトルの付け方も彼一流の技巧だろう。 急激な展開に先んじて、不可解な題名とは一見無関係に思える日常場面を比較的長く持続させ、当初の不可解な印象が薄れかけた頃に一気に畳みかける、言わば二重フェイントというわけだ。 主人公のミランダは、元の交際相手から暴行を受けるなど「被害者」として登場するが、実は究極的な加害者という設定。 人間関係は「ギブ・アンド・テイク」で成り立つ部分が多いが、彼女の場合は「オール・テイク・ノー・ギブ」なのだ。 それだけだと遣らずぶったくりの身近にも居る性質の悪い人間を想起するかもしれないが、そこに待ちこまれるのが著者特有のヴァンパイアの定義。 普通、ヴァンパイアと言えば人間の血を吸うという特性を持っているが、利己心のままに他人から奪って良心の呵責を感じないというのはやはり怪物だろう。 これまでの作品が異質との遭遇を扱っていたのに対し、本作は主人公自身が吸血鬼という異質の存在なので感情移入は難いかも知れないが、人間は例外なく他人と関わりながら生きていくわけで、全くのフィクションでありながらドライな世情と相まって啓蒙的だ。 | ||||
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文句なしに面白かったです。 序盤の引きつけが弱いものの、中盤からは一気読みできるほどスピーディーに話が進み、とにかく読むのが楽しいです。面白いです。 テーマもきっちりあって、心に刺さるものがありました。買って読んで良かった。また読み返したいと思います。 この本を読んだら、自分の過去を振り返られずにはいられない。 | ||||
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素晴らしく傑作です。 今迄のジョナサン・キャロルの他の作品も、何度も何度も読み返しましたがこの作品は、たぶんこれから何回何十回も読み返すんだろうなぁと強く予感します。前作の「蜂の巣にキス」では超自然的な要素を一切排した純粋ミステリを著した著者でしたが、今作では今までのキャロル路線に戻って、ダークファンタジー作家としての真骨頂を示しています。その上、人生について深い示唆をしてくれています。本作では、その人生についての示唆の部分が今までの作品より非常に多く重く強く出ています。謎めいた言葉であったり暗喩ではあるのですけれど(薪の結婚という象徴的な言葉も含めて)、何かを訴えようとしているのが、ほとんど物理的な強さになって伝わってきます。ここまで力強いと、こちらとしてもこれを何度も何度も読ん作者が示そうとしていることを、正しく完全にあますとこなく読み解きたいという思いを強く起こさせます。そういう部分が今迄の作品の中で一番強い作品です。 ストーリーの大枠のアウトラインはいつもと同じで、少し陰鬱な幕開けが主人公の徐々に楽しくて素晴らしい人生へと変わっていくのを喜んでいる読者の前に、少しずつ少しずつ提示される違和感、異なる「何か」の干渉の前兆。加速的に物語が変貌を加えていき、我々を悩ませる何かが現れ、主人公は運命と対峙することになります。本作でもそのラインは崩されておらず、今作の主人公は素晴らしい古書の売買を取り扱うミランダという三十過ぎの女性が、アンモラルな、でも魅力的な生活を送っているところで幕をあけます。彼女は同窓のために田舎町に戻り、そこでかつての恋人の死を知ります。彼女にとって初めての恋人のジェームズの死は彼女を打ちのめしますが、彼女のクライアントの一人が紹介してくれた男性、ヒューはその彼女の絶望をもあっさりと塗り替える力をもっていました。妻帯者ではあるものの、知的で陽気でセンスがよくてまっすぐで圧倒的な魅力をもつヒューとの激しい恋に落ちるミランダ。彼の紹介で歴史上の有名人たちとも親しくしていた老婆の友人も出来、ヒューを奥さんから奪い取ることも果たしたミランダの前には彼女がしっかりと目を閉じていれば何も怖いものはなく、何もかもが彼女のものになっているように見えました。 しかし、彼女の素晴らしい運命はここまで。ここから物語はもう一つの見えないけれど確かにある世界の干渉を受けていきます。破滅的で神秘的で、でも知ってしまえば逆らえない力の前に翻弄される彼女は果たして。。思いがけない展開と、人生や愛の捉え方を考えさせてくれる一冊です。ぱっと見には、ハーレクインロマンス+ホラーですが、そんな単純な話ではなくて、もっと深い力と示唆がここにはあります。是非読んで欲しい一冊です。 蛇足ながら、キャロル作品をずっと担当されていた浅羽筴子さんがお亡くなりになり、今作から市田泉さんという新しい方が翻訳されていますが、よくぞここまで浅羽テイストを残してくれたと拍手喝采の引き継ぎです。 | ||||
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