友人の死に導かれ夜明けの穴にうずくまる僕。地獄を所有し、安保闘争で傷ついた鷹四。

一九四二年一月、対馬要塞の重砲兵聯隊に補充兵役入隊兵百余名が到着した。陸軍二等兵・東堂太郎もその中の一人。

物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。

昭和十年一月、書下し自費出版。狂人の書いた推理小説という異常な状況設定の中に著者の思想、知識を集大成する。

「〈自閉〉から往還へ」の軌跡を追い、大江健三郎が「経験の弁証法」により作家であり続けた意味を問う。

昭和29年の洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司・紅司兄弟、従弟の藍司らのいる氷沼家に、さらなる不幸が襲う。

黒死館の当主降矢木算哲博士の自殺後、屋敷住人を血腥い連続殺人事件が襲う。

戦時下の弾圧で壊滅し、戦後復活し急進化した“教団”。その激動と興亡を早逝した天才作家が壮大に描く永遠の必読書。

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。

銀行員ヨーゼフ・Kは、ある日、突然逮捕される。彼には何ひとつ悪いことをした覚えはない。

敗北が決定的となったフィリピン戦線で結核に冒され、わずか数本の芋を渡されて本隊を追放された田村一等兵。

アメリカ最大の文豪であり、怪奇と幻想、狂気と理性の中に美を追求したポオ。彼は類なき短編の名手である。

絶望的な"閉ざされた"状況にあって、疎外された少年たちが築き上げる奇妙な連帯感。

屍体処理室の水槽に浮き沈みする死骸群に託した屈折ある抒情「死者の奢り」、療養所の厚い壁に閉じこめられた脊椎カリエスの少年たちの哀歌「他人の足」、黒人兵と寒村の子供たちとの無残な悲劇「飼育」、バスの車中で発生した外国兵の愚行を傍観してしまう屈辱の味を描く「人

鋭敏な頭脳をもつ貧しい大学生ラスコーリニコフは、一つの微細な罪悪は百の善行に償われるという理論のもとに、強欲非道な高利貸の老婆を殺害し、その財産を有効に転用しようと企てるが、偶然その場に来合せたその妹まで殺してしまう。

書簡体形式を用いた独自の文体で読者を幻惑させる、唯一無二の怪奇探偵小説の名手・夢野久作。

ある冬の夜ふけ、Kが村にやってくる。測量士として城から雇われたのだ。

妹の死。頭を打ち、失った私の記憶。

長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。

母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。

アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。

虚空に黒の光芒を放つ巨星ラヴクラフト。

婚約者・坂庭真実が忽然と姿を消した。 その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。

平凡なセールスマンのグレゴール・ザムザは、気がかりな夢からさめたある朝、一匹の巨大な褐色の毒虫へと変わった自分を発見する。

父親との対峙を描く「判決」、特殊な拷問器具に取り憑かれた士官を取材する「流刑地にて」、檻の中での断食を見世物にする男の生涯を追う「断食芸人」……。

楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。

夢と現実のあわいに浮び上る「迷宮」としての世界を描いて、二十世紀文学の最先端に位置するボルヘス(一八九九‐一九八六)。

1958年の夏。

祖母から聞いた、四国の森の奥深くに伝わる「壊す人」と「オシコメ」の創造の物語を、MとTという記号を用いて書き記す。

ヒマラヤすら圧する未知の大山脈が連なる南極大陸。

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。

神秘主義詩人ウィリアム・ブレイクの預言詩に導かれ、障害を持って生まれた長男イーヨーとの共生の中で、真の幸福、家族の絆について深く思いを巡らす。

天平の昔、荒れ狂う大海を越えて唐に留学した若い僧たちがあった。

開口部を完璧に閉ざされたダッソー家で、厳重に施錠され、監視下にあった部屋で滞在客の死体が発見される。

推理小説マニアの大学生・曳間が、密室で殺害された。しかも仲間が書いている小説の予言通りに。

旅人は彷徨い続ける。文明が衰退し、崩れ行く世界を風に吹かれるままに。

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。

時は24世紀、テレパシー能力をもつエスパーの活躍により、いかなる計画犯罪も不可能となり、殺人はすべて未然に防止されていた。

現在にとって未来とは何か?文明の行きつく先にあらわれる未来は天国か地獄か?万能の電子頭脳に平凡な中年男の未来を予言させようとしたことに端を発して事態は急転直下、つぎつぎと意外な方向へ展開してゆき、やがて機械は人類の苛酷な未来を語りだすのであった…。

すべての絵には、物語がある。 名だたる作家17人による文豪ギャラリー 奇才エドワード・ホッパーに捧げる短編集。

眠った魚のように山あいに沈む町花園。

黒ビロードのカーテンは、ゆるやかに波をうって、少しずつ左右へ開きはじめた。―十二月十日に開幕する中井文学。

初読はミステリ、二度目はホラー。この島の謎に、あなたもきっと囚われる。

設計技師にして発明家のわが友人ロドリックはある夜、自分は神を殺すことができると語った…。

「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」から1年、 村上春樹、9年ぶりの短編小説集。 表題作は書下ろし作品。

お上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり―― 享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。

金欠、妄想、愛憎、暴力。救いようもない最底辺男の壮絶な魂の彷徨は、悲惨を通り越し爆笑を誘う。

良いニュースと悪いニュースがある。 多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。

ある朝突然、“かいわれ大根”が脛に自生していた男。

盲目の三味線師匠春琴に仕える佐助の愛と献身を描いて谷崎文学の頂点をなす作品。

おカッパ頭の少女のなりをした踊りの名手、大道芸人の美少年チイは、風俗壊乱踊りを踊ってワイセツ罪でつかまるが、超能力ぶりを発揮して当局者をケムにまく。

サンフランシスコ、夜。小柄でブロンドの美しい女がカフェに入ってきた。

自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。