カラマ-ゾフの兄弟
- 長門有希の100冊 (48)
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届いてます。ありがとうございました。 | ||||
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そもそも翻訳を技術的に比較するには、原書を精緻に読破できる高度な言語力が不可欠です。本書の翻訳者(プロ)並みもしくはそれ以上の語学力なくして、翻訳の比較をすることはできません。しかるに読者レビュー欄には、もっともらしい比較翻訳論が散見されます。レビューされた方々は、果たしてどれほどロシア語に精通されておられるのでしょうか?もしも相当な語学力をお持ちであるならば、翻訳書には目もくれずに原書だけを精読すればよろしいのでは!まさかとは思いますが、原書を読まずに比較しているのでは?と勘繰るのは、私だけでしょうか? | ||||
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「ぼくが知っているのはひとつ」と、アリョーシャは、あいかわらずほとんどささやくような声で言った。「父を殺したのは、あなたじゃないってことだけです」(亀山郁夫訳) 「僕が知っているのは一つだけです」なおもほとんどささやくように、アリョーシャは言った。 「お父さんを殺したのは、*あなたじゃ*ありません」(原卓也訳) 'I only know one thing,' Alyosha said, still almost in a whisper. 'Whoever murdered father, *it was not you*.' (David McDuff) 英訳は明らかに「ヨハネの手紙4:21」を下敷きにしています。 20「神を愛している」と言いながら兄弟を憎む者がいれば、それは偽り者です。目に見える兄弟を愛さない者は、目に見えない神を愛することができません。 21神を愛する人は、兄弟をも愛すべきです。これが、神から受けた掟です。(新共同訳) 20 If anyone says, “I love God,” and hates his brother, he is a liar; for he who does not love his brother whom he has seen cannota love God whom he has not seen. 21 And this commandment we have from him: whoever loves God must also love his brother. (English Standard Version) whoever loves God/whoever murdered father 父=キリスト教の神様です。fatherは無限定なので「父殺し一般」と考えることもできます。オイディプス王が有名ですが、その娘のアンティゴネーの悲劇も有名です。「神の法」と「人の法」の対立であり、『カラマーゾフの兄弟』はこちらをモチーフにしています。比喩的に「国」の意味もあります。 > つまり、「大審問官」では、いちどとして*イエス・キリスト*の固有名詞が用いられていないということだ。もちろん「彼」がイエスであるとすることは可能でも、そう訳すと、じつはミスを犯すことになる。(237ページ) 亀山氏はいいところに気がつきましたが(☆+1)、もちろん「彼」はイエスではなく God です。神様が直接救ったのだから、イワンは新たな救世主なのです。無神論的ですが神を否定するのではなく、「虐待されている子供(具体的には自分とスメルジャコフ)を放置している」神に怒っているのです。19世紀後半のロシアの状況を反映し、イワンは現世的な救いを神に求める点ではリベラルですが、リベラルと違い「神を殺す」ニヒリストではないのです。『魔法少女まどか☆マギカ』の佐倉杏子みたいなものです。四兄弟は遺伝的にウソがつけない性格ですが(ヨハネの手紙の liar ではないのです)、おたがいに父親を殺したと思い込み、かばいあっています。真犯人はイリューシャです。 英訳の「one thing=it」は whoever murdered father を受けるのではなく、名状しがたい「それ」です。代名詞ではありません。ここのイワンにとっては悪魔的な殺意で、アリョーシャにとっては「悪魔はあなた自身ではない」です。I (only know one thing) ではなく (I only) know one thing と解釈することもできます。イワンが自分だけが it を感じているなら妄想だと言えますが、アリョーシャも it をささやいた(打ち明けた)ため、妄想ではなく現実だと言わざるを得なくなったのです。また代名詞 it が犯人を指すとすると、アリョーシャが「あなたじゃない」と断言できるには犯人を知っている必要がある、つまり彼自身が犯人だとイワンは理解したのです(事実ではなかったが)。 'Brother,' Alyosha began again in a trembling voice. 'I have said this to you because you will believe my words, I know that. I spoke those words to you for your whole life: *it was not you!* For your whole life, do you hear! And it was God who charged my soul with the task of saying them to you, even though you may hate me now for ever from this day forth...' 少しあとになります。you will believe my words, I know that は I only know one thing と対応しているので、it は先ほどの悪魔とは違い you will believe my words という言葉にできない「確信」です。それがかつて God として顕れたので、すなわち「啓示」です。またこういう繰り返しがあります。 spoke those words to you for your whole life saying them to you (even though you may hate me now) for (ever from this day forth) your whole life=ever from this day forth だとわかり、そうすると saying は単なる動名詞ではなく「言い続ける」だともわかるのです。them=my words ですが「それら」でもあり、speak と say に対応しています。speak は過去形になれるが、この say は現在完了や進行形にしかなれないのです。なぜなら my words はイエスの言葉だからです。hate は過去形になれるが live や love はなれません。ここがこの小説で最も重要なところなので、ヒントが出ています。 For your whole life, do you hear! hear は「理解せよ」です。この部分は著者が読者に向けた言葉でもあり、「兄弟」と呼び掛けているのです。つまり「カラマーゾフの兄弟」とはちゃんとテクストを読める graceful な人間のことなのです。アリョーシャ Алёша(Alyósha) はаллю́зия (alljúzija) とのダジャレで英語では allusion、イリューシャ Илю́ша(Ilyúsha) は иллю́зия(illjúzija) で illusion です。 当時のロシアでは真っ当なことを書くと発禁になったり投獄されたりしたので(現代日本も大差なくなりましたが)、ドストエフスキーは小説の見かけを本質とは真逆の、ニヒリスト好みの観念小説にしました。ニヒリズム=リベラリズムの本質は「自分自身を判断の絶対的根拠とする」ことです。ポリフォニーなどテクストの読めない○○の戯言です。アリョーシャの言う通り、今はわからなくても、リベラルな「自由な読み」を捨て、何年でも丁寧に読み続けていけば、あるとき啓示があるものです。それはもはや宗教から離れたものであり、そのとき感じられるものが文学の本当の symphony なのです(バフチン自身が種明かしすると「作品」にならないのです)。しかし日本語訳はどれもその役には立ちません。原文か英訳を読みましょう。 | ||||
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翻訳が上手いのでしょう、とてもスラスラと読めてしまいます。 | ||||
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内容は素晴らしいです。価値観の変わりゆく苦しい時代であるからこそ、読みたい本ですね。 表示されているのは新版ですが、中古だと旧版が配達される場合があるようです。私には旧版が配達されました。内容は変わらないと思うので良いのですが、新版の表紙が好きだったので少し残念でした。 | ||||
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