カーテン
評判
カーテンの評価:
4.33/5点 レビュー 48件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全68件 21〜40 2/4ページ
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カーテンの評価:
4.33/5点 レビュー 48件。 A ランク
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何が重いって、ポアロにしてからが『邪悪の家』で「私のことを人に紹介するなら、比類なき世界一の名探偵と言いなさい」とヘイスティングズに要求したような陽性な気分は、全く漂わせていません。鍵穴からのぞくなんて紳士のやるべきことではないと言うヘイスティングズに「私は鍵穴からのぞいたのだよ」と告げる、苦笑を誘うそのユーモアがわずかな救いとなっています。
「私は法律だ」というせりふこそ吐きますが、それは大言壮語ではなく、むしろ痛みの表白です。神の懲罰が下ることこそが慈悲を受けることだとまで思い込むほどの痛み。
描写自体はいつものクリスティらしく平明ですが、想像しながら読み進めると重く暗い。
主要な登場人物aとbは、現実世界と接続するようなところがあって重いです。
aは、成長の過程で人間関係に恵まれなかったため、いびつな人格を形成してしまった。生き延びるために彼はいかに物狂おしいまでの努力を払ったことか。しかも、それが悲劇を生む。
bは、過去の行為についてやるべきだったかどうかで迷う。今さら取り返しがつかないから肯定してしまえと自分に言い聞かせて楽になろうとするのではなく、肯定と否定をめぐる永久運動にとらわれます。
いずれも現代的なテーマに直結します。
犯人の手口をポアロは、シェークスピアの『オセロ』を引いて説明します。『邪悪の家』でもちらっと同様の説明をしているところを見ると、クリスティにヒントを与えたのは『オセロ』なのかもしれません。
でも、江戸川乱歩が大正時代(「人間椅子」と同じ1925年)に発表した作品を想起させます。クリスティは乱歩を読んでいたのかどうか。戦前の乱歩は海外に紹介されていたのかどうか。
大正時代の日本は、大正デモクラシーという社会現象が見られる一方、変態心理がブームになってもいました(変態といっても、心霊現象や犯罪実録など様々なものを含んでいたようです)。大正デモクラシーと変態心理ブームが、エログロナンセンスとテロとファシズムの昭和へとなだれ込んでいこうという時代の曲がり角。
乱歩作品をその時代の雰囲気の中で読めば猟奇的な娯楽だったでしょうが、現在では一層恐ろしい感じを与えます。
もし人間心理の裏も表も正確に読み取ることのできる人物がいたとして、その敏感な共感スキルを利用して相手の欲望を引き出し、それを肯定して背中を押すような行為をするとしたら?
そして、もし彼がそれを政治的意図を持って一定の方向で行なうとしたら?
そんな巧妙なプロバガンダをやられた日には、抵抗するのは難しいような気がします。その危機感が乱歩やクリスティにあったのでしょうか?