スリーピング・マーダー
- ミス・マープル・シリーズ (17)
- 安楽椅子探偵 (187)
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ポアロものの『カーテン』と同時期の1943年に、第二次対戦下の万が一のことを考えて執筆された作品。 ミス・マープルが登場する〝回想の殺人〟なんだけど、事件の大半を調べていくのは、グエンダとジャイルズの若い夫婦コンビです。 クリスティーのミステリにしては珍しく、著者の「こっちよ、こっち」みたいな誤誘導があからさまな気がしました。それで、話の後半辺りからなんとなく犯人の見当がついてしまって、それが残念なことに、当たってた! いつもは見事に、作者にしてやられてしまうのに。そこがどうにも不満で、拍子抜けした感がありました。 次に読むクリスティー作品では、「あぁあ。まんまと騙されちまったぜ」てなることを期待したいっす。 | ||||
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本書『スリーピング・マーダー』は、原書の英語タイトルも「SLEEPING MURDER」 カタカナにしただけで、なぜ日本語に訳さなかったのでしょう? スリーピング・マーダー? 寝ながら殺人? 寝ながら人が死ぬのをただ待つ、というのでは殺人事件にもなりません。 《寝ながら殺人》と訳すのは誤訳でしょう。 では「眠れる殺人事件」(68頁)とかに訳すのは、どうでしょう。 眠っているのは、殺人事件。 「わたしなら眠れる殺人事件は寝かしておくだろう」(68頁) というわけで、「眠れる殺人事件」という訳も気に入りません。 「回想の中の殺人」(67頁、70頁)ではどう? ピンと来ません。 大方の人々は、死んだ殺人事件だ 「と思っていたのにじつはただ眠っているだけだった殺人事件」(376頁) これはいい翻訳だと思います。 十八年前に起こり、そのあと十八年間もひたすら眠り続けた殺人事件。 「死んだ」殺人事件だと考えるのも無理はありません。 ところがビックリ。 三歳の女の子が階段の手すりのすき間から目撃していたんです! 殺人現場を目撃した恐怖と殺人犯人の誇らしげな「声」が 十八年後に娘となった目撃者の脳裏にリアルによみがえるなんてこと、 あり得ますか。 ニュージーランドから汽船で英国に到着したばかりの 「二十一歳の若い人妻」(8頁)グエンダは 《マルフィ公爵夫人》の芝居を観に連れて行ってもらいます。 ところが劇場で「女の顔をおおえ、目がくらむ、彼女は若くして死んだ」(38頁) というセリフを聞いたとき、グエンダはなぜか悲鳴をあげて失神してしまいます。 なぜ? 「誰かがあの言葉を、あれと同じような恐ろしい、満足そうな様子で言っていました」(44頁) この「誰か」こそ、本書の殺人の犯人に違いありません。 「あれ」とは、《マルフィ公爵夫人》の芝居の舞台。 この「女の顔をおおえ……」のセリフが出てくる戯曲は、 フランス人の作家ウェブスターの戯曲《マルフィ公爵夫人》。 《マルフィ公爵夫人》は、英国人の警部にも有名なフランスの戯曲のようです。 プライマー警部は言います。 「『ウェブスターの作品ですね?』彼は考え深く言った。『フム、《マルフィ公爵夫人》か。猿の前肢ですって?』」(343頁) 彼女が三歳の時に階段の手すりの間から目撃した、恐怖の殺人現場。 地中にはびこる蔓草のように、十八年間も彼女の悪夢となって 意識の深いところで回想され続けてきたのです。 そして今、《マルフィ公爵夫人》のセリフと名演技が引き金となって 彼女の意識の上に一気によみがえってきたのです。 本書を読み進めて行くうちに「ヘレン」という名前の女性が登場します。 「なぜわたし、ヘレンなんて言ったのかしら? ヘレンなんて人知らないのに!」(46頁) 謎の女ヘレン。 冒頭の「登場人物」リストには、ヘレンは「ケルヴィンの後妻」とあります。 ケルヴィン・ハリデイは、グエンダの父。 後妻ともなると、前妻の三歳の娘の記憶にまったく残らないものなのですね。 グエンダの生みの母は、「ミーガン・ハリデイ」(174頁) ミーガンの名前は、「登場人物」リストにはありません。 この「登場人物」リストは、巧妙に仕組まれています。 探偵小説を読みなれている読者には、 「登場人物」リストからだけで殺人犯人が想像できてしまう可能性があるから。 前妻の三歳の娘の記憶にまったく残らなかった理由が分かりました。 「母はわたしが生まれて一、二年後に亡くなり、父はニュージーランドの母の身寄りに送って育ててもらおうとしたのです。それから二、三年後に父も亡くなりました」(48頁) なるほど。 後妻のヘレンの名前は、「ヘレン・スペンラヴ・ケネディ」(89頁) 「ジェイムズ・ケネディ」は、「ヘレンの兄。医師」。 「登場人物」リストには、そうあります。 「ヘレン」は、ジェイムズ・ケネディの「妹」(99頁)なのです。 第7章は「ドクター・ケネディ」 第20章は「少女ヘレン」 兄と妹がそれぞれ独立の章で語られるなんて、彼らはこの小説の重要人物です。 わくわくしてきます。どうなってんだ、この二人。 第24章は、「猿の前肢」(340頁) この単語自体は、前から何度か出て来てはいました。 「猿の前肢(まえあし)」(44頁、359頁) 「わたしはその男の手を見たんです――灰色の、しわのよった――手じゃないわ――猿の前肢」(44頁) 「猿の前肢や死人の夢を見ることはありえただろう」(77頁) 「それからそのことを夢に見た、その中で猿の前肢が動いた」(77頁) キャー、怖い。 でも、安心してください。 猿の前肢は、読者の恐怖心をあおるためだけの小道具です。 もひとつ。付言。現場の目撃者が、猿の前肢を見たからと言って、 殺人犯人は《猿だ》、なんてあわてて決めつけてはダメですよ。 「ダンの『時の実験』――過去をでなく将来を見る……」(34頁) 本書のこの一句にも引き付けられました。 ダンの『時の実験』全体も読んでみたくなり、ネットで探しました。 ダンの「時の実験」の翻訳は、日本では翻訳出版されていませんでした。 ところが最近になって、研究者らしき人の日本語訳がネットの上で公開されていました。 思ったより大部のようでしたので、精読はギヴアップしました。 「過去をでなく将来を見る」というアガサの要約を信じて、本書の読書に戻りました。 過去の殺人事件をあばこうとしている人間が登場すると、 殺人犯人は何か過去をばらされると心配し始め、 昔話を知る口の軽い人間は口封じされそうです。 アガサの作品は、皆が忘れかけている過去の事件は、 将来、新たな殺人事件を生む可能性があると警戒しています。 殺人犯人捜しは、自分も口封じされてしまう恐れのある危険な作業なのです。 殺人犯は、何食わぬ顔をして人を殺せるのです。狂人です。 殺人者は寝たふりをするから要注意です。 寝たふりをして、他人に殺人の疑いを擦り付ける狂人なのです。 | ||||
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ミス・マープル最後の事件ですが、1943年に書かれていたので正確には前作「復讐の女神」が最後となります。出版順が変則的になったせいか、「バートラムホテルにて」「復讐の女神」そして本作と、3作続けて後半にならないと殺人事件が起きないという似たような構成の作品が続くことになってしまいました。 オカルトチックな導入部には、ハラハラさせられましたが中盤から後半にかけて、なかなかスリリングに展開し、最後はミス・マープルがちゃんと事件を解決します。それにしてもヒロインが、ミス・マープルの助言を受け入れて、余計な好奇心を出さじにいればあの人は殺されなかったわけで、ヒロインはちゃんと反省してほしい。まさにミス・マープルの金言「若い人は年寄りを馬鹿だと思っている。年寄りは若い人が馬鹿なことを知っている」が、まんま当てはまります。最後にシリーズでも珍しいミス・マープルのアクションシーン(笑)もあります。 | ||||
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小学生の時から読み始めたクリスティー文庫、引越しのため何度か手放し再購入してきました。こちらの作品については不覚にも、文庫本とKindle版をどちらも購入してしまいました。でも傑作なので再度読むと思いますのでまあいいやです。本作イングランドの田園風景に登場するニュージーランドでのびのび育ったヒロインのグエニーが実に魅力的、『スリーピングマーダー』というゾクゾクするタイトルの持つ不気味さに尽きる‼︎亡き父の無実を証明するため18年前の眠れる殺人鬼を揺り起こす主人公夫婦。ミスマープルに導かれ謎解きをする過程で起きる新たな殺人、そして魔の手はついにヒロインの命まで…。本作でのミスマープルは健康状態が極めて良く、セントメアリーミードを飛び出し大活躍、後半では階段を駆け上がる!美しいイングランドの庭園風景や焼き立てのマフィンと濃いお茶、のどかな中に描き込まれる人物描写の見事さ。描かれる登場人物は普遍性を持ち、現代の日本にでもよく見かけることができるため時空を超えて引き込まれ堪能できる。大好きなクリスティー作品の中でも何度も読みたい物語のひとつです。欲を言えばもう少しミスマープルに登場してもらいたかったし、グエニーの旦那さまのキャラがちょっと不安定、肉付け不足な気もしますが、やはり面白い、オススメします‼︎ | ||||
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若妻グエンダはヴィクトリア朝風の家で新生活を始めた。だが、奇妙なことに初めて見るはずの家の中に既視感を抱く。ある日、観劇に行ったグエンダは、芝居の終幕近くの台詞を聞いて突如失神した。彼女は家の中で殺人が行なわれた記憶をふいに思い出したというのだが…ミス・マープルが、回想の中の殺人に挑む。 | ||||
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