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特捜部Q 檻の中の女
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特捜部Q 檻の中の女の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全80件 61~80 4/4ページ
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檻の中に閉じ込められると言う設定が怖過ぎる。それをカバーするように、主人公と助手は、少しコミカルで軽いけどちょっと極端な感じがする。異性として見ると、主人公の奥方は、少しむかつくな。日本人的な感覚で見ると違うかも…。 | ||||
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全然関係ないですが私はTV朝日「相棒」のファンで、“特捜部”というタイトルから特命係を 連想し、引っかかってしまいました(笑) 結果、正解。主人公の刑事は、杉下右京並みに扱いづらく周囲から疎まれており、でも優秀だったり するのですが、その優秀さが迷いのないものではないのですね。むしろ諦めが妙に良かったり、 保身ですぐ考えを変えてみたり、きれいな女性にはめっちゃ弱かったりと、結構ダメです。 ダメなんだけど肝心なところでの馬力や粘り、運があるのか、事件とも気づかれていなかったり 完全に忘れ去られようとしていた事件を最終的には解決していく。 この作品の面白さは、そのダメ刑事とチームで働くアシスタントたちの個性が 半端なく強い(変人の域を通り越してる印象さえあります)ことと、 彼らが掘り起し、追いかけていく事件の奥にあるものが、かなり陰惨、あるいは悲惨だと いうその取り合わせの妙にあるように思います。 正直、最初は特捜部メンバーのあまりの変人っぷりと、次に何をやりだすか予測が つかないし謎が多すぎで、「ちょっとついていけないかなー」と思ったのですが、 事件が興味深いのでそれを追って読んでいるうち、独特な世界にハマりました。 たぶん、好き嫌いははっきり分かれます。でもハマった人は、まだ文庫化されていない 2作目、3作目をきっと読みたくなると思います。 私もすぐ読みました。次回作、楽しみだなー。 | ||||
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「型破りのデカが官僚機構を踏み越えて活躍する」タイプの警察物です。 (フロストなどと同タイプ) このタイプのミステリーはもしこういうタイプの=「独立した思考の許 された・私立探偵物にあるような個人的な正義感や義務感から行動する、 役所のリアルな手続きは無視して、というような実際の警察にはありえ ないような」人物・探偵が警察にいるとしたら、もし(将来の)警察が こうだったらという設定を楽しむ、そうやってあいた風穴に快感を得る 物だと思います。 そういう意味で「特捜部Q」という隔離部署であるとか正体不明の モスレムの屈強な助手(Gホーネットのカトーのような)などという人物設定 は「お約束通り」というか、良くできていてそれだけでも楽しめるとい う物でしょう。 そして謎解きのほうはまあちょっと犯人の設定には無理があるかもしれ ませんが至極凶悪で異常に執着的な完全主義の犯人の計画のほころびを捜査 でいかに打ち破るかというストレートな物でとてもフェアだから読んでいて 爽快感があるのです。 犯人や被害者の周囲にいる人物の描き方も基本的にヒューマニスティック ですから読後感がよろしい。 | ||||
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評判につられて買ってみました。 刑事ものは、書き尽くされているのかと思いきや、 なかなか面白いです。 主人公と、変人?アシスタントの掛け合いもなかなか。 そして、二人とも実は有能、という辺りが面白い。 表題でもある「檻」も練られています。 読後感も思いの外さわやかでした。 次作も買おうかと思います。 | ||||
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翻訳が悪いのか、そもそもの文章なのかは分からないが、読みにくい 内容は面白いと思ったので残念 | ||||
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北欧ミステリーが百花繚乱していますが本作の舞台となるコペンハーゲンの復習から。 デンマークの首都。北ヨーロッパを代表する世界都市である。市名はデンマーク語の"Kj'bmandehavn"(商人たちの港)に由来する。「北欧のパリ」と比喩される。 日本語では「コペンハーゲン」と呼ばれることが多いが、これはドイツ語名をカタカナ表記したものであり、デンマーク語では「ケブンハウン」に近い。(Wikipedia) 政治的なパフォーマンスから、未解決事件の大事件を専門に捜査する「特捜部Q」が立ち上げられます。厄介者の左遷と、国からの破格の予算獲得につられて設置された特捜部は、暗い地下室に設置されます。主人公のカール・マーク警部補は、捜査で犯人からの銃撃を受け、部下ひとりを亡くし、一人は半身不随になってしまいます。強引で皮肉屋であることから上司から煙たがれていましたが、事件を境にカールの反抗的態度が警察内部で浮くようになり手が付けられなくなりつつあるという設定はよく練られているもののさらにインパクトを強めるためにもうひとひねりしてあります。 そのひねりが、カールのアシスタントとして特捜部Qに配属されたイスラム系移民アサドのキャラです。シリアから亡命して移民ですが、デンマーク人から見ると奇人変人、バックグランドも何やら怪しげです。そこで、デンマークでの移民事情が気になります。1999年The European Values Study によるとデンマークは31ヶ国中4番目に外国人嫌いのようです。特にユダヤ人、ムスリムが嫌いだそうで、その背景を知ったうえで本作を読むとアサドが単なる変人以上に異様にみられることが想像されます。重要キャラクターにイスラム系移民を配置することで中東からの移民のバックグラウンドがストーリーにヨーロッパならではの味付けになっています。本作では主人公よりキャラが立っています。このように社会から歓迎されていないムスリム移民と、組織から期待されていない頭の切れるはみ出し者が新事実を明らかにする程、当時のずさんな捜査が明るみに出て、ますます煙たがれるところは皮肉です。 ストーリーは2人の捜査と並行して誘拐された国会議員の異常な監禁状態が描写されます。なぜ彼女(国会議員)は誘拐されたのか?犯人はなぜ監禁を続けるのかという謎と、事件の真相に肉薄していく2人のプロセスと事件のリアリティがギリギリのところで均衡している点が本作の魅力と言えましょう。 | ||||
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年間ベスト10の常連、スウェーデン作家ヘニング・マンケル描くヴァランダ ー警部シリーズは毎回楽しみな読書体験をさせてくれる。 新たに北欧デンマークからとんでもなく面白い新シリーズが出現した。 ユッシ・エーズラ・オールソンの「特捜部Q」シリーズである。 コペンハーゲン警察内「特捜部Q」。新設部署の仕事は「未解決事件解明」。 特に<興味深い事件>を再検証する。場所は署内の地下室。担当はカール・ マーク警部補一人。カールは直近の事件で仲間二人を失う問題をかかえていた。 物語は衝撃的なシーンから幕をあける。<彼女はつるつるとすべる壁を血まみ れの人差し指でひっかき、分厚いガラスを両手のこぶしで叩いた。> 未解決事件の大量の書類の山の中から、公私にわたり心身ともに疲れたカール が選び出した事件は、数年前におきた美人国会議員の謎につつまれたままの失 踪事件である。 部下(?)として配属されたのはシリア系の「雑用係」アサド。移民社会デン マークでも悪い冗談のような名前である。(ちなみにデンマークは05年にイス ラム教を風刺したため世界中から非難された過去を持つ) 二人組のユーモアたっぷりなやりとりに反し、カットバックで描かれる美人国 会議員がおかれた無残な状況が残虐非道にこまかく描写される。 さらにカールたちの地道な謎解きに加え、犯人と被害者との間にタイムリミ ットサスペンスまで仕込まれていて最後まで息をぬかせぬまま一気に終盤へな だれ込む。 そしてラスト、あまりに通俗的であるにもかかわらずグッとして泣かせる結末が 用意されているのだ。北欧ミステリの傑作がまたうまれた。 | ||||
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全欧ベストセラーというデンマークの警察ミステリイ。主人公カール・マークはコペンハーゲン警察の殺人捜査課の刑事。ある事件で部下二人とともに銃撃され、一人が死亡。相棒は全身不随の状態に。PTSDに陥っていたが新設された特捜部Qの責任者となる。助手として付けられたのがシリア人のアサド。不思議な人物で、捜査能力を持ち、デンマークの運転免許を持たないのに公用車をぶっとばす。物語は2002年と2007年とを行き来しながら進む。デンマークの少壮女性政治家の誘拐。女性の監禁。交互に話が進む中で、マークの背景も明らかに。事実上離婚、その妻の連れ子と暮らしながら、借家人に食事の世話も受け、警察の女性秘書の一人にはひかれ、一人には困りはて、アサドも謎の多い人物で、それでいて人間的魅力も。デンマークが社会変革を進めていた時代が舞台となり、これも興味深い。難点は人名が憶えにくいところか。それでも鉱脈なり。☆☆☆☆ほ。 | ||||
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特捜部Qシリーズ第1作。 面白い。扱っている内容は非常に重く、決して気楽に読む、というようなものではないが、この重量感は非常に面白い。最近は、スティーグ・ラーソンのミレニアム三部作なども含め、北欧系のミステリが盛んに翻訳されているが、この作品、あるいは作家はその中でも特別になるかもしれない。人物の造形などよりもはるかに、事件そのものの特異性が際立っている。スケールのこれだけ大きな事件を扱いながら、それをきちんと着地させる辺りも含めて、とても楽しみな作家だと思う。 さすがに、デンマーク語で読むことはできないが、これだけ北欧系のミステリが充実してくるようだと、本当に何か言葉を勉強してみたくなる。なお、英語版は英国と米国でタイトルが違うようだ。今に始まった話ではないが、いい加減紛らわしいので統一してもらいたい。 | ||||
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このところ、北欧発の面白いミステリーがどんどん紹介されている。 かつて、欧米主導の文学世界が閉塞を感じさせた頃、 マジックリアリズムを引っさげた中南米文学が颯爽と登場して斬新なインパクトを与えたということがあるが、 それを連想するといえば言いすぎだろうか。 このデンマーク発『特捜部Q』のシリーズもそんな中の一つ。 まだ1作目を読んだだけだが、とにかく面白い。 たとえばスウェーデンの作家、スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』シリーズが ヒロインの強烈な個性を軸としているのに対して、 こちらは何か一つこれというものはあまり感じさせない。 むしろ逆に、およそ警察小説の魅力はすべて取り込んであるようなぜいたくな感じがウリではないか。 挫折して傷を背負う刑事。 彼とそれを取り巻く人々の人間味、あるいは人間臭さ。 犯罪とその背景にあるものの濃密さ。 ダブルプロット的に、しかも時間をずらして犯罪と捜査とを描く仕掛けの効果。 ひとつひとつ手がかりをつないで謎を崩していく手際の面白さ。 クライマックスにおけるギリギリの緊迫感。 そして事件の解決に伴う喜びと悲しみ。 中でもこの第1作を支えているのは、絶望的な状況に耐えるヒロインの戦いだろう。 戦いといっても完全に受身であることを強いられているわけだが、 そこで極限まで精神と頭脳を駆使して抗うさまは、壮絶と呼ぶしかない。 シリーズは3作めまで訳されているが、原書は当然ながらその先を行っているというし、 この第1作のドラマ化映画化も進んでいるらしい。 何重にも楽しめそうなシリーズの登場に喝采。 | ||||
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引き込まれて、ぐんぐん読み進んでしまいます が、やはりハードカバー出版ではなくポケットミステリーです 警察小説としては、設定がありえない 犯罪者は、基本的に”狂人”だとは思いますが、 いかに悲惨とはいえ交通事故を発端としてここまでの 狂気に走る犯罪者は皆無でしょう また、被害者の国会議員の障がい者である弟に対する 過度な献身、愛情も、最後のシーンのための伏線であるとしても 過度すぎて感情移入は到底できません 前作、次作にも言えますが、 犯人確保のシーンの、主人公らの対応の稚拙さは 緊迫感が無く、おきまりのハラハラドキドキシーンを演出しており がっかりします おもしろいですが、買わなくてもいいかもしれません 2回読みたいとは思わないですから | ||||
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聊か、無理設定気味で、相当グロテスクなのだけど、引き摺り込まれたら、もう、一気読み。結構分厚いのに、2日で、読んでしまった。 主人公は、まあ、不愉快な男で、イラつくのだが、なんだか、魅力的。きちっと説明できないのだけど、兎も角魅力的。種々、トラウマを抱えながらも、本能的に暴く事が好きなんだろか。脇役の、中東人は、更に、説明のつかない魅力満載、謎満載。 本編、シリーズ初巻ということで、状況説明がだらだら、しかも、時間軸を、行ったり来たりさせられるし、訳のわからん、サイコ風グロ場面が続くので、焦れる事焦れることなのだが、時間のずれが縮まって行く毎に、緊張が昂って、一気に終局へ突入という感じ。興奮できる。 中盤のグロ場面は、聊か、気味悪いが、エピローグでは、お涙頂戴そのものの場面も、なかなかさわやかで、良い気分。 このシリーズ、お値段高いけど、続き読むしかなさそう。 | ||||
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「ミレニアム」というメガトン級のベストセラーの登場でミステリエンタティメントの分野でも非英語圏の北欧からの秀作紹介の機運が高まって来たようです。 本書などその好例と言えるのではないでしょうか? デンマークと言えば日本人からすればアンデルセン童話や福祉国家の印象で「安定した豊かな国」のイメージが強い気がします。 そんな国の警察を舞台にした本書では我々の先入観を崩しかねない、平穏でも牧歌的でもないリアルなデンマークが描かれていて興味深い。 「特捜部Q」まずタイトルがいいですね、早川ミステリらしいセンスを感じさせる装丁もGJ。 結構ボリュームのある本書ですが物語の骨格は至ってシンプル。 故あって新設の特捜班Qをゆだねられたカール・マーク警部補が未解決の国会議員失踪事件の真相に迫るというもの。 実際には被害者である女性議員の視点から見た異様な事の成り行きも交錯する形で描かれており、読者もカールと供に少しづつ明らかになる情報を共有しながら凶悪な事件の真相に近づいてゆくことになります。 設定はシンプルですが人物造形&背景は中々陰影に富んでいて読ませます。 カール警部補は自らも負傷し、仲間を失った事件の影響を思いっきりひきずったままで捜査への熱意を失っており、特捜部Qのトップに着任したはいいが実際には体のいい厄介払いを喰らった状態。 おまけに与えられた部下(というか雑用係)は謎めいたシリア移民のアサドただ一人。 家庭も崩壊しております。 という訳で決して読んでいて素直に共感できるほど主人公の心情は楽観的ではない。 普通なら事件を通して彼の「再生」が描かれて行くのでしょうが、この辺りがアメリカ圏の作品とは異なる印象なのですが意外な程ドライなんですよね。 「ミレニアム」もそうだったのですが主人公の苦悩や心情がきちんと描かれているのに何故かウェットにならない。 かと言って決して「冷淡」と言う訳でも「ハード・ボイルド」でもない、不思議なバランス感覚というか距離感を感じるんです。 犯罪自体の内容も変な意味でエキセントリックなんですよね(副題の「檻の中の女」は実に的確)。 欧米のサイコホラー的な血まみれの惨劇などとは異質なのですが粘着的かつ偏執的な嫌ぁな感覚で、この辺りが意外と「国民性」だったりするんでしょうか(笑)。 今回はシリーズ第一弾ということもあり、多分に主人公を取り巻く状況のお披露目的な側面が強くなっております。 結果として謎めいたアサド氏の背景も明かされてはおりませんし、カール警部補も本格的に立ち直った訳でもありません。 しかし登場人物たちの今後に関心を抱かせるだけの魅力を持った作品であったのも事実。 新作特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)もぜひ読んでみたいと思います。 | ||||
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デンマーク産のミステリーを読むのは初めてだが、特に違和感なく最後まで楽しめた。 ストーリーは容易に想像がつく展開で進んでいくが、犯人、被害者を含めた登場人物の多くが一筋縄ではいかないキャラであり、複雑な過去を持っていたりしている。 そしてそれらの通常ならざる人々が繰り広げられるユニークな掛け合いにぐいぐい引っ張られて最後まで飽きさせない。 陰鬱な監禁もの、もしくは不屈のヒーロー・ヒロインの物語になりがちな構図だが、通常ならざる人々のせいか、読後感は悪くない。 | ||||
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大好きなコーデイ・マクファーディンの「遺棄」上下を読み終わった後に、たまたま続けて読んだので恐怖が倍増。 詳しくはネタバレになるので記しませんが、この特捜部Qと「遺棄」の食べ合わせならぬ読み合わせはおそらく最恐怖。 この特捜部Qシリーズの第一作檻の中の女ですが、比較的犯人像は早くから明らかになります。 それにもかかわらず、最後まで読み進むのが怖い、読みたくない、でも読み進めたいという恐ろしさ。 第三作がはやく訳出されないかと期待しています。はじめはデンマーク語の固有名詞に戸惑いましたがすぐになれました。 ちょうどスティーグ・ラーソンのミレニアムシリーズと同じような雰囲気かな。 たくさん読書をしてきました、海外とくにアメリカものですが。その立場から言っても決して損はさせない一冊です。 | ||||
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近年ヨーロッパ諸国を中心に絶大な人気を獲得しているデンマークのベストセラー警察小説シリーズ「特捜部Q」の第1作です。今年私が読んだ北欧ミステリーはスウェーデンの「黄昏に眠る秋」ノルウェーの「湖のほとりで」に続いて本書が3冊目になりますが、また一作水準が高く抜群に面白い傑作ミステリーと出逢えた幸運を心から嬉しく思っています。私が近年ブームの北欧ミステリーを読んで感じるのは、時に過激さの度合いが強くなるとバイオレンスな残酷描写にも繋がってしまう程の凄絶な人間の情念の部分で、ミステリーのトリックやテクニックの面白さよりも強く印象に残ります。 コペンハーゲン警察の殺人捜査課のベテラン警部補カール・マークは部下二人をそれぞれに死亡と瀕死の重傷で戦列から失い自らも心身共に傷を負った凶悪な銃撃事件からようやく復帰したが長年務めて来た仕事への情熱を失いつつあった。そんな彼に上司が命じたのは迷宮事件専門に再捜査を行う新部署「特捜部Q」を統括する仕事で、執務室が暗い地下室なのに加え部下が正体不明の怪しいシリア人アサド一人だけという呆れた実態に最初は適当にやっていたカールだったが、やがて刑事の本能がムクムクと湧き出し5年前に起きた女性議員失踪事件の再調査に積極的に乗り出して行く。 本書の構成は冒頭から2002年に始まる悲劇のヒロイン「檻の中の女」ミレーデ・ルンゴーの過去の物語と2007年の主人公カール・マーク警部補の現時点での物語が交互に描かれる手法で、勘の鋭い方ならば最初の方で全体のからくりが朧気に見えて来ると思いますが、そこからでもまだまだ大丈夫で興味深く大いに楽しんで読めます。究極の生き地獄と呼ぶべき悲惨な環境でひたすら耐えて生きる悲劇のヒロインの運命がどうなるのか気懸かりでしょうがない思いに引き摺られながら、途中で挿入されるカール警部補が出世の誘いを頑なに拒み続けて世間からどんなに非難されようと全く気にせず執念で捜査に当たる姿勢に女性心理学者モーナへ寄せる愛の愉快な顛末等が示す彼の飾らない人間的魅力や得体の知れないシリア人アサドが垣間見せる意外な実力とカールが彼の独断的な行動に怒りながらも本能的に信じる道を選ぶといった人間味溢れるドラマに感動を覚え、そして遂に二つのドラマが重なり合って終盤に迎える興奮のタイムリミット・サスペンスへと怒涛の如く一気に雪崩れ込みます。私が本書で特にお奨めしたいのは、全ての動的なドラマが終わった後に訪れるある意味とても静的なラスト・シーンで、悲惨な運命の過酷さも先行きに待つ不安をも忘れさせてくれる人間の生命力の奇跡に唯々息を呑み深い畏敬の念に打たれました。 第1作目にしてこの完成度の高さに驚き非情でリアルな迫真の描写と温かな情感に満ちた人間ドラマの硬軟併せ持つ魅力に感銘を受けました。私としては一読後まさしく本物だと確信した次第で、現在の既刊の残り3冊が非常に気になりますので、一刻も早く次作が紹介されます様にと祈ってその日を心待ちにしたいと思います。 | ||||
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大分前の「週間文春」の書評欄にあったので、何気なく読み出したのだが、あまりの面白さに、あッと言う間に読了。 私的には<デンマーク・ミステリー侮りがたし>の一冊。 本筋の女性議員失踪にまつわる<怨念物語>も凄まじいが、それよりなにより<後書き>にもある 超人助手アサドの軽妙に描かれた活躍に、すっかり魅入られた。 この人、本当は助手ではなく、床を拭いたり、タバコの片付けが仕事の部屋の雑用係なんですよ! それが、特捜部の満身創痍のやる気ゼロの大将カールを引っ張って、事件解決の糸口を手繰って行く姿は痛快。 (まるで”どらえもん”みたい) アサドの出自に疑いを持ちながらも、<マァ、いいか>見たいな態度で、どんどん仕事を割り振って行くカール。 この男、最初は口汚い嫌な男なんだが、物語が進むにつれて、どんどん能力を見せ始め、なんとも魅力的に変身してゆく。 本当、TV「相棒」の裏バージョンみたいなこの構成は、気に入る人には相当受けると思う...(と期待) 犯人も動機も、大体290ページ過ぎで察しがつくのだが、ここから二人の連携が更に密になってゆく描写が面白く、 決して興をそぐ事はなく、コンビの活躍に、ページをめくる手が止まらない。 アサドには、まだまだ隠された能力が在る事間違いなく、続編は絶対に読みたい! 今年のミステリーベスト10に入って欲しい一作。 難点と言えば、デンマーク人の名前に馴染みが無いので、登場人物が男か女か直ぐには判別できない事。 ニルスとヘイルが恋愛関係にある、と言われてもしばらくピンとこなかった。 参考>プレイモービル ・ドイツ生まれの玩具。知らなかったので最初はどんな物か想像つかなかった。 | ||||
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最近は、この分野の読み物は日本のものに限ると考えていました。文化の違いは大きいと思います。しかしながら、此れを読んでみて少し考えを変えてみようかなとも思いました。 | ||||
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流行の北欧ミステリですが、本作は軽めの警察小説といったところでしょうか。 イアン・ランキンや、スチュアート・マクブライドのミステリと比べると、次々と手がかりが見つかっていく物語は厚みに欠け、心に傷を負った主人公という姿も類型的で掘り下げにかけるという見方も出来るでしょう。 とはいえ、物語はテンポ良く進み、刑事と助手のコンビの姿も微笑ましいので、値段分。きっちり楽しむことが出来ました。 事件は陰惨ですが、読後感も爽やかなので、ちょっとした楽しい読み物を探している人に十分進めることが出来ると思います。 | ||||
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新刊で読みました。デンマーク発の警察小説で特捜部(チーフひとり)+雑用係(シリア人)のコンビが未解決事件に挑むシリーズ物です。 これがシリーズ第1冊なので,今後シリーズが翻訳されるにしたがって,それぞれのキャラがより明確に見えてくると思います。読んだ感想ではシリア人アサド(が本名かどうかもわかりませんが)がどのような能力を見せるか,魅力かと思います。対して,主人公であるカールはちょっと類型的です。 事件は日本人から見るとちょっと手が込みすぎていて,特に具体的な手段についてはここまでやるか?と思ったぐらいですが,デンマークでは普通の状況なのかもしれません。 図書館で見かけたら借りて読んで,気に入ったら購入なりされるとよいと思います。飛びついて!!すごい というほどでもないです。 | ||||
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