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グロテスク



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グロテスクの評価: 3.94/5点 レビュー 288件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.94pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全288件 101~120 6/15ページ
No.188:
(5pt)

女は「グロテスク」ゆえに美しい

凄い作品だ!
この物語には、人間(特に女性)という存在の中に潜む醜悪な部分がひけらかされている。
これ見よがしに、これでもか、と言うほどに。
不覚にも、そのあまりのエグさに美しささえ感じてしまった。

文学とは、嘘の無い人間の有り様を抉り出す所に魅力があると思うのだが、
その意味で、この『グロテスク』は「嘘の無いフィクション」とも言うべき、
これまで私が知ってきた現代文学の中で、最高の女流文学であった。

桐野夏生氏に関しては、数年前に読んだ『OUT』(講談社)がつまらなかったので、敬遠していた。
(映画も観たけど、同様につまらなかったと思う。あまり覚えていないけれど。)
そんな中、本書が97年に起きた「東電OL殺人事件」をモチーフに書かれている事を人づてに聞いた。
私は、あの佐野眞一氏の問題作を読んで多いに疑問を抱いていたから、
女性側からの視点に興味をそそられたのである。

佐野『東電OL殺人事件』(新潮社)では、殺害されたエリート女性が娼婦という別の顔を持っていた事に対して、
それを「堕落」であるとか「心の闇」であるとか言うだけで、被害者の内面像を描き切れていなかった。
娼婦になることが、どうして「堕落」なのか、全く説明されていなかった。
所詮、世間の下世話趣味に媚びようとする書物であった。

桐野氏は、本書に関するインタビューでこう話している。
「私ね、この世の差別のすべてを書いてやろうと思ったんですね。
 些細な、差別と思っていないような差別」
読者は、実は自分が何度も巡り会ったはずのハッとした瞬間に、どれだけ気付いたろうか。

ユリコが美しすぎるゆえに不幸に見えてしまう、なんて事は普遍的なパターンだとしても、
例えば、「何が悪いのだろう、こんな素敵なことなのに」(141ページ)というセリフ。
姪っ子と情交した後「悔恨に暮れる」カールを尻目に、ユリコはそう思っていた。

ユリコは姉や両親からも「子供の不安感を解消するだけの愛情」(157ページ)を感じていなかったから、
自分の存在を肯定するために、その美貌に群がる男たちを次々に受け入れた。
「私を求める男を拒絶することは、私が私でいられなくなることだ」(145ページ)と素直に吐露している。
近親相姦が重罪であるという下らない幻想に浸る以前に、彼女はすでに「怪物」と化していた。

こうして、語り手の「姉」と「ユリコ」と「和恵」の三者三様の「グロテスク」が語られていくのであるが。
女性が描いた女性の内面像には肝を抜かされた。

究極的にはアイデンティティの問題なのではなかろうか。
興味深いのは、ユリコも和恵も(そして最終的には姉も?)、チャンの「優しさ」に死んでいった点である。
和恵が性の絶頂を初めて知ったのは、殺人犯チャンに優しさを感じた時だった。
自分という存在を肌で感じられた時だった。
おそらく、それはユリコも同様で、だからこそ彼女たちはチャンに殺される事を切望したのだろう。
最終ページの姉のセリフ、「優しくしてよ、お願いだから」が妙に印象に残った。

本書にはまた、佐野書と同じく、後半過ぎから「堕落」という言葉が散見されるのだが、
著者は一体何をもって「堕落」を定義しているのか、また「堕落」とは何なのか考えさせられた。

最後に。
先に引いた桐野氏の話を読むと、その目的は十分に達成されていると思う。
その意味で本書は、我々の無意識を踏み荒らそうとする、挑発的な作品であると言えそうだ。
グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.187:
(4pt)

謎だらけの事件、腑に落ちる回答

映画「恋の罪」から東電OL殺人事件に興味を持ち
関連図書(?)ということで本書を購入
女の嫉妬や葛藤や閉塞感が幼少期から念入りに描かれており
読んでいてだんだん胸が苦しくなってくるが
それだけに主人公が円山町に立つ動機に説得力を感じ
同時にある種のカタルシスを得た
この小説はフィクションだがしかし謎だらけの事件に
同性である著者なりの見地から一つの答えを導き出した傑作といえる
ただし早々にクライマックスが読めてしまったためマイナス1点
グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.186:
(5pt)

心のもやもやを代弁してくれた

途中でつらくなりましたが、読むのは止まりませんでした。
というのは登場人物を自分の高校生、大学生時代と重ねあわせていて
自分をそのままみているようだったからです。
そんな共感を覚える読者も多かったのでは、
と思います。
自分のコンプレックスをまわりに悟られないよう
必死で自分を守り、さも自然に演じていた
学生時代がとても痛々しく感じました。
しかし今となっては当時の自分を冷静に分析できます。
当時の自分と対話したような、懐かしい感慨でした。
そんな痛い自分を思い出し、自分さえも気付かなかった
婚屯としたコンプレックスを見事な描写で表現してくれた
桐野さんはすごいなぁと思います。
誰しも自分の嫌なところは目をつむりたいものです。
本を通して過去の自分と向きあって、
改めて自分の一面を受け入れる作業は
少し成長できたような気にもなります。
そんなきっかけを得られて本当によかったです。

グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.185:
(5pt)

毒毒・・・快楽

桐野節炸裂!
最後の最後は何処かエンターテイメント的にも思えたけど、余りに人間、魂の鏡の裏覗く自分は、他者から見ればグロテスクなのかなー?

しかし、作家桐野夏生はすごい。こんな確固たる文壇にて死生観をはっきり読者に睨み付け読ませる作家もいない。。。

グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.184:
(2pt)

意外な収穫

実在の、被害者の特異性が醜聞を集めた事件。これを下敷きにした作品で、大いに注目されましたね。
誰も手を付けない(色々な意味で)恐ろしい素材。これを勇敢に書いたことは、評価されるべきです。
しかし作者なりの、
「こういう背景、人物像だったら(実在の事件が)あり得るでしょ? 説明つくでしょ?」
という解釈もしくは釈明。そんな印象が拭いきれませんでした。

「フィクションの特権」で追加したキャラクターが、中途半端に映ります。
語り手と妹。どちらも半端です。どうせなら一人にしてしまえば良かったのに。
姉妹の葛藤を敢えて骨格にしなくても、否、しない方が、骨太なストーリーになったように思えます。
配慮があって、こうした書き方にしたのであれば、いっそ完全に捨てても良かったのでは?
残念なのが、本来の主役とその家族。ステレオタイプな矮小化が、話をつまらなくしています。刺繍や極端な倹約ぶり、会社でも壊れたままであることなど。

細かい、ネチネチした、嫌らしいところを書き連ねるために、敢えてそういう構成にしたのでしょう。だからこそ女性読者の琴線に触れたとも言え、さすがに桐野氏は上手です。
登場人物それぞれの、自分に都合の良い視点。どこからどこまでが本当なの? という書き方も旨い。
でも、枝葉だけ? せっかくの素材なのに、勿体ない。
リライトしたら、さらに良い物語になるんじゃないでしょうか? 繊細さを失わずに大胆に書いたら、凄いものが出来そう。やはりこの方、上手ですからね。書き下ろしだったら、また違っていたかも。

蛇足ですが、
読後に一晩考え、つくづく感じたのは、自分の「普通の」幸せでした。
事務職で働き続け、子どもにきちんと対峙し、私の両親への気配りもできる妻。
普通の生活をこなしても褒められることはあまりありませんが、大変なことです。感謝しています。
そして、そういう人物が抱える闇の方が、物語としてはずっと恐ろしいと、つくづく思います。想像すると震えます。
こんなことを改めて考えさせられたことが、思わぬ収穫でした。
グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.183:
(2pt)

グロ控えめ

上・下巻通してのレビューです。
登場人物の多くが独善的で偏狭な上、やたらとヒステリック。
前半の舞台"Q女子学園こそ現代日本の縮図である"という視点の低さを敷衍することによって、
人物を格差社会の隷属下に位置づけ、(故意に?)作品全体を矮小なモノにしている。

複数人の告白体で多面的に話は進みますが、皆一様に整然とした自意識過剰な自己分析型なので、
人物ごとの偏向性が薄く、描き分けが今一つ。その分、読みやすくはあるけど。
各自の告白文が相互で否認しあい、虚実をない混ぜにしたエゴの描き方は、やや冗長。

語り手である女主人公は、読み手の共感や感情移入を拒絶した姿勢ながら、読者離れ対策か、
お得意の"悪意"も控えめなので、中途半端に世を拗ねているだけの女にしか見えなかったり。
打算的で用心深い割には、堕ちるときのあっけなさ。読ませ処にしては、落差の描写が弱いかも。

いずれの女達も、我執の果てに自らが落ち込んだ苦界の道なれば、特に感興も覚えず。
陰惨なだけで毒が足りない。どうせなら絶対的敗者を徹底的に描ききった方が強烈だったのかも…。
グロテスク〈下〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.182:
(5pt)

桐野夏生に清涼感を求めるなど、無知にもほどがある

レビューにざっと目を通したかぎり、桐野作品を読み続けているわけで

はない方々が多数と見受けられる

だいたい清々しい読後感を求めるなら、桐野作品など読むべきではない

清涼感が欲しければ他の作者の作品を読めばよい

桐野作品は登場人物の細部にわたる心理描写が最大の魅力の一つだが

作者自身が社会的な弱者やマイノリティに並々ならぬ執着を持つ以上

作品が重い空気感を有するのは必然だからだ

(「OUT」や「メタボラ」と同様、本作の主要な登場人物は

いずれもある意味で社会的マイノリティだ)

ただし、そうであるからこそ「読ませる」「読み応えがある」

桐野作品にアディクション的快楽を感じる者だけが桐野作品を読めばいい

ただそれだけのことだ
グロテスク〈下〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.181:
(5pt)

人間の内面・・・グロテスク

東京電力OL殺人事件をモチーフにかかれた作品。エリートOLがなぜ売春婦になり、他殺されるにいたったかを、学生時代に”怪物的な美しさ”の少女ユリコの存在に影響されたこと、名門私立高校という中での越えられない差別・階層のエピソードから紐解いていくもの。ユリコの姉・ユリコ・和恵・そしてユリコの殺人犯チャンの語りで伝える。やはり、和恵の書記が重い。重すぎる。でも誰にでもあること、自分のことのようにも思えてくる。外見・家族という努力では超えられないものに挑み、しかし叶わず、仕事というキャリアは手に入れたものの、誰にも女として必要とされない疎外感。
寂しく恐ろしい話です。
しかし己を追い詰めたかなわないものも、実はそれほどの意味がないことで、なにをも自分の存在を支えてはくれない、そんな現実も垣間見える…。
この人の内面を描く筆力と、やはり誰もが実は本当のことを言っていないかもしれないor本当のことを自分の都合のいいようにゆがめてしまう病にかかっている、と思わせるつくりになっているところがまた怖いです。事実は事実として正しく捉えるというのはいったいどういうことなのか、解らなくなってきます。
読んだあとには暗い気分が残りますが、自分の気持ちを受け止めて考える機会になりました。

グロテスク〈上〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.180:
(4pt)

本当にあったの・・

この話が、事件に基づいて書かれているのが「驚き」です。
本当に あったのですよね、実際に「居た」のですよね、主人公が・・・
4人とも「実在」なのでしょうか?・・と思うくらい 4人とも「不思議」です。

でも、現実に生きていたのでしょうから、人間て凄いですね、
日本は「平和」なのですね、「治安」が良いのですね。
それでなくては、もっと早く「やられて」いたでしょうね・・
こんな「生活」は出来なかったでしょうね・・・

** Q学園の「卒業生・関係者」の方は、読まない方が良いですね・・
   一面の真理を衝いているようですから。。
グロテスク〈下〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.179:
(5pt)

複雑な上巻。補助線としてのユリコ。

「グロテスク」は骨太な小説です。
女性が社会で生き抜く上で疎外される状況を描く長編。
女性は男性からも疎外され、女性からも疎外される。

小説は主人公の「わたし」が舞台回しとなって進みます。
庶民で何事も一生懸命すぎていじめの対象になる和恵、
軽やかに勉強もスポーツもこなすミツル。
完璧な美女で娼婦の「わたし」の妹、ユリコ。

上巻では、
登場する若い女性たりは全員、苦しんでいます。
(舞台である女子校の)社会にとけ込む、距離を置く等を選んでいます。
ミツルでさえいじめの気配に怯えています。

ユリコは完全な美を体現するためのフィクションで、
和恵やミツルの地獄を説明するための「補助線」のようなキャラクターです。
ユリコが上巻の主人公だと思いました。
学園生活の欺まんや陰湿さをあからさまにしていく役割を担っています。

そして下巻では和恵が壊れていきます。
グロテスク〈上〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.178:
(5pt)

まさにグロテスクな下巻 -和恵の自意識のゆがみっぷり、壊れっぷり-

「グロテスク」の下巻は、圧倒的に面白い。
小説として完成度が高く、
和恵のグロテスクさに嫌悪感を抱く読者も多いと思います。

下巻は「東電OL殺人事件」をモデルにストーリーが進みます。
設定はほとんど事件と同じ。
とにかく和恵の自意識のゆがみっぷり、壊れっぷりが恐ろしい。
社会(家族や会社)から疎外されていく過程が描かれていますが、
疎外は社会にだけ問題があるのではなく、
本人も充分その原因になっているところが、
救いがありません。
桐野夏生の視点の確からしさが発揮されています。
和恵のグロテスクさを哀れと感じさせるレベルで描く筆力はすごいです。

殺人犯のチャンをめぐるサブストーリーも「ものすごく」面白い。
中国農村部の貧困の現実とその絶望がリアルすぎる。
更にその独白が真実でない可能性も提示して、
ストーリーは「薮の中」となります。

余韻の残り方が凄まじく、
読み終わると脱力します。
「OUT」を超えていると思います。
グロテスク〈下〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.177:
(5pt)

優しくして…

この如何にも女性らしい、
如何にも切ない、
如何にも苦おしい、
如何にも純真な、
和恵の台詞…
頭から離れません

グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.176:
(5pt)

現代の闇をみるようで

怖い。そして、悲しい。止め処もなく悲しい。

この本を読み終わった後に感じた素直な感想です。
この本は、実際のある事件をベースに書いているとのこと。俗にいう、「東電OL殺人事件」
当時のその事件はあくまで、東京の一事件としてしか、関心がなかったので良くは知らなかったが、
この本を読んだ後、色々としらべると本書との関連性がもっと
わかって余計に怖くなった。

物語は、ある有名私立大学に高校から入学した受験勝ち組と
小学・中学からエスカレート式で入学した組の間にある歴然とした
階級差と差別から始まる悲劇を、過去をレビューする形で話しを進めて
いくパターンだが、一人の少女がその差別を、咀嚼できないまま
精神を壊していく話である。

その少女を中心に、前半のメインのインタビュイーの女性とその妹
が、過去現在に色々と絡み合い、物語に厚みを与えている。
但し、一貫していることは、どの登場人物も、階級社会から
距離をとってるつもりで、どうしもないぐらい影響を受けながら
現在においてもまた苦しみを持っている、という事である。

人は誰しも、生まれた場所や環境で、はじめからスタート地点が
ことなっているということは、当たり前の様でいて、その階級社会の
中にはいると、どうしようもない無力感に感じてしまうだろう事は、
容易に想像できる。

しかし、一回その価値観の枠組みに組み込まれた場合抜け出るのは
至難の業なのかもしれない。
人間社会の闇を見るようで、本当に怖い。しかし、悲しい。
この本からは、この二つの感情しかでてこない。
グロテスク〈上〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.175:
(5pt)

桐野夏生さんの最高傑作!珠玉の心理描写!

この2週間位で、桐野夏生さんの小説を10冊位読んだ。

「錆びる心」「光源」「ダーク」「グロテスク」「冒険の国」「残虐記」「ジオラマ」「ローズガーデン」「I'm sorry, mama.」「アンボス・ムンドス」「水の眠り 灰の夢」「顔に降りかかる雨」「天使に見捨てられた夜」

あれ、挙げてみたら13冊だった。

桐野夏生さんの作品は、前に「OUT」を読んで傑作だと思ったが、「グロテスク」の方が更に素晴らしい作品だった。

桐野夏生さんの作品は、女性の犯罪や実際の犯罪というものがテーマになっていることが多く、女性の心理描写には卓越したものがあるが、「グロテスク」のそれは珠玉のものだった。

この作品も実際の犯罪をテーマにしているが、その犯罪をヒントにしただけで、この作品は全く別なものになっている。

この小説の中に出てくる、姉から「怪物」と呼ばれる女性に僕はとても興味をもった。

実際の事件では存在しなかった、このスイス人とのハーフの女性はその美しさが尋常ではないために、彼女を見た人は全て彼女の美しさに賛美の溜息を漏らす。その美しさが「怪物」並みなのだ。

僕は、実際のモデルや女優で誰に当たるだろうかと考えてみたが、誰にも当てはまらない・・・それくらい美しい女性なのだ。

グラビアモデルとしても活躍するが、あまりの美しさのために、年齢に合った雑誌がない。ゴージャス過ぎるのだ。

男性から求められると一切拒否せず、お付き合いをする。

ちょっと、実際には考えられないようなこの女性がこの小説の中では、存在している。

そんなことがあったらいいなという映画や小説の中でしか実現できないような物語だ。

この小説は、また何回か読み返してみたい。


グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.174:
(4pt)

読みだすと止まらない胸糞の悪い傑作

作者は女性である。だから女性の心理を身も蓋もなく描写する。OUTも柔らかい頬もだ。
4人の登場人物はすべて心に暗黒面があり、壮絶な人生を辿る。
私は男であり、彼女らの心理に共感はできない。そのメンタリティは理解出来ない。
しかし読み始めると、この悪意と情念に満ちた毒々しい内容に絡め取られ、一気に読んでしまう。
読んだ後のなんとも言えない読後感は癖になる。
讀人を選ぶ。傑作だが万人にはオススメできない。
グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.173:
(5pt)

東電OL事件の見事な作品化

東電OL事件にヒントを得たこの作品は、慶応女子高校と思われる学園での過酷な階級社会でのサバイバルを伏線として描いている。

語り手は葛飾区と思われるP区に住んでいるが、同級生から「P区に住んでいる人はこの学校ではあなた一人よ、私も実はP区に家があるけど恥ずかしいから親に港区にマンションを借りてもらっているの」といわれるシーンがある。私が入学した山の手の進学校でも、階級差別はなかったが、葛飾区でしかも京成電鉄利用者は私一人だったことからくるコンプレックスや、私鉄がストライキを解除しても京成だけがストライキを断行することが多かったがそれでも学校が休みにならないため、私一人通学するための苦労を味わったことは忘れることができない。

余談になるが、桐野氏はフェミニストの視点(本人はこういわれたくないかもしれないが私にはそのように思える)から人間や人生の闇をえぐることにかけては天才的な作家であり、大傑作『OUT』をはじめ著書は全て読んでいる。一方、東電OL事件は、先進国でありながら女性が良心や自立心があればあるほど過酷な境遇に陥っていく男社会・日本の暗部を象徴する事件であり、私をはじめ、多くのキャリア・ウーマンに「ひとつ間違えば自分も同じことをしていたかもしれない」と思わせるような事件であったので、「桐野氏が描く東電OL事件!」と大いに期待して読んだが、ストーリーはもちろん期待以上だし、こうしたおまけもついてくる貴重な読書経験であった。

「どんな絶世の美女でも、天才でも、諦めるしかない、女に生まれてしまったら」という科白が絶望感とともに、胸に迫る。
大楠道代にそっくりな美人で女であるということで得もしてきたであろう桐野氏の筆によるものだから尚更説得力がある。

もうひとつ付け加えれば、最後のシーンは、三島由紀夫の『豊饒の海』終盤で盲目の美青年と醜い狂女が寄り添うシーンを想起させ、また最終章の「彼方の滝音」というタイトルも『豊饒の海』で輪廻転生の証拠となった滝の記憶とシンクロする、と思うのは三島マニアの関連妄想に過ぎないだろうか。


グロテスク〈上〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.172:
(5pt)

強烈な余韻を残す作品

グロテスク…この、題名に吸引力がある。
一体、何をもって「グロテスク」なのかと、読み始めてみると
その意味などは何処かに飛んでしまい、いつのまにか
上下巻を、読み終えていた。

面白かった…というのとは、ちょっと違う。
いや、どうだった?と問われれば、素直に「面白かった」と答えることは出きる。

4人の女性を中心に展開するストーリー。

過剰とも言える程の、とんでもない美貌を持つ「ユリコ」
頭脳明晰な「ミツル」
上昇志向の強すぎる「和恵」
そして、美貌の妹「ユリコ」の姉。

この姉の語りで、序盤が始まる。あくまでも、マイペースで。
競争意識さえ持てない程の美しさを持つ、妹と比べられることに慣れている様子を
それを何とも思っていないというようなことを、淡々と語る。

そして章が変わる時に、「日記」や「手記」などで入れ替わる。

上巻は4人の女性が通う、Q女子高を中心にして
下巻は、ガラリと変わって成長した「今」を描く。

和恵の手記が、何よりも印象に残った。
彼女の愚かさが痛々しくも、完全に理解出来ない訳ではない自分に驚いた。
昼はエリートOLで、夜は娼婦として町に立つ彼女のことを。
彼女は、ただ人に優しくされたかったのだ。

そして美貌のユリコ。彼女が一番悟っていたのかもしれない。
思えば、彼女には何も執着が無く飄々としている。
そして、中年になり醜く変貌してしまった自分を、嘆く訳でもなく
冷静に見ている。
「私達は怪物よ。そしてその怪物を愛でる怪物に、いつか殺されるわ」と
簡単なことのように言うユリコに、感嘆さえ覚える。

そして、もうひとつ印象に残ったのは、中国人のチャンの語り。
デフォルメされているとはしても、壮絶な国だ。
中国という国を、少し理解出来たような気がする。

読み終えて「グロテスク」の意味が、よくわかった。
題名の意味が理解出来て、唸らせてもらえた。
人は「怪物」にもなる。それも、ごく自然に。
誰にでもある「悪意」。その質と量に、個人差があるだけなのかもしれない。

長々とレビューを書きながら、自分でも一体何が言いたいのかわからない。
巧く表現できないのがもどかしいが、色々な意味で強烈な余韻が残る本。
最後の展開は賛否両論あれど、そういう意味では★5つです。
グロテスク〈下〉 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.171:
(1pt)

ゴシップの域を出ない

文章は上手いがこの人の話っていつもワイドショーの
再現ドラマみたいな感じ。ここまでドロドロなのも
すごいというよりむしろ他に書くべき事を見つけられ
ない作者の表現の幅の狭さの証明だと思う。
ドロドロ以外にストーリー性も人物の掘り下げも何も
なかった。
グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.170:
(4pt)

まぁまぁ

家族に出稼ぎで日本に来た者がおり、夜の和恵と同じ職業についたものがある人間として…涙なしには読めない作品だった。

和恵が副業を始めた心情が、当時の自分の心情とまるきり一緒で、封印していた思い出がどんどん蘇り途中読むのを何度も中断してしまった。

最終章からは、ストーリーの雰囲気が少し変わってきて星新一のようなブラックユーモアも感じさせる作りで、
結局何だったのかが掴めないで終わってしまった。


美君のように深く愛されたい。
グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501
No.169:
(4pt)

まさにグロテスク

あとがきで、文芸評論家の方が書いている内容がぴったりくる。読み終えた後は、とにかく、人間の持つ負の面を吐き出しきった感がする。読み進めるうちに面白いと感じるのは、自分にもいつか起こりうる人生の悲劇だからであろう。私は思うが、社会、世間という枠の中で、順調にはいあがっていける人には感じれない悲哀をもつ人がいる。それをこの小説はあぶりだしている。だから私は面白いと感じた。それはここでは女ということだが、それ以外にもさまざまなマイノリティな方がいる。世間から弾き飛ばされているのにそれでも前を向いていき続けられるかどうか。前を向いて行き続けるのは決して用意ではない。若いころには希望にあふれていて、できるのものがあると思ってはいても、思いのほか、世間の風は強く、はげしい。それでもなおかつ、はいあがって上り詰めて、自分流の幸福を世間の上に築ける人もいるであろうが、それは非常に険しき道であり、わずかだと思う。 世間の荒波に疲れ、やっぱり無理だと思い始めてときから、徐々に転落の人生が待つ。どんどん自暴自棄になり、次第には自分自身のことすらわらかなくなる。佐藤和恵の人生は、その転落する人生をリアルに描いている。 また、この小説が心に刺さるのは、作者自身の心象風景を描きだしたのにしても、多くの人間が自分の問題としてとらえるほどこの人間の堕落さを多くの人が共感するほど持っていることにほかならない。 私自身、転落人生は、ごめんだが、こうならないとは思えないため、この本を教訓にして、人生の光を必ず見つけ、進みゆきたいと念じずにはいられなかった。勉強にはなったので☆4つ。これを機会に桐野作品をほかのも見てみたいと思う。
グロテスクAmazon書評・レビュー:グロテスクより
4163219501

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