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(短編集)

砂の女



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砂の女の評価: 4.30/5点 レビュー 220件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.30pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全220件 21~40 2/11ページ
No.200:
(5pt)

人間の生の哀しい、否、たくましい性(さが)

「砂の女」は、寓意にあふれた作品で、読者はストーリーを遂うのと同時並行的に「なぞ解き」が迫られる中編である。
(初めて拝読したが、途中で何度も映画の「岸田今日子」ののっぺりした顔が脳裏に浮かんでくるのは、如何ともしがたい。。。)
砂の穴の中でも、外の世界でも「大した差はない」のではないか、砂の穴に「居ついてしまう男」
の心理は、人間の生の哀しい、否、たくましい性(さが)なのかもしれないと、ふと思わせる面白さ。
安部公房の奇をてらったかの如き構成が、「理に落ち過ぎず、ギリギリのところで小説の体を保った稀有な作品」と評し得よう。
新潮現代文学 33 砂の女 密会Amazon書評・レビュー:新潮現代文学 33 砂の女 密会より
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No.199:
(5pt)

ページをめくる手が止まらない

深く理解しようとすれば勉強が必要でまたその分学ぶ事の多い作品ですが、物語としても大変面白く、一読の価値がある作品です。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X
No.198:
(5pt)

環境が変わったら誰もが感じること

名前が有名なので購入しました。不本意な異動をした経験がある人はかなり共感できると思います。自分はこんなところにいるべきではない、こんなところ、すぐにでていきたいと思って、環境に馴染まないように努力していたけど、結局その環境に馴染んでしまうことというのはよくあることのように思われます。
 この物語では、砂だらけの村からの脱出を試みる男性が主人公ですが、彼だって、もともといた世界で生き甲斐を感じていたわけでもありませんでした。来るべくして、この砂の村にやってきた。
 人生はそんなものなのかもしれないと気づかされ、ぞっとしてしまう話でした。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X
No.197:
(1pt)

残念‼表紙が汚れてる。ガッカリ。

作品の内容ではありません。

新品を購入したにもかかわらず、表紙が汚れていました。
梱包はこの単行本一冊でしたから、この汚れは何処でついたものなのか?
元々なのか、作業員の手袋、カート等・・・清潔にして欲しいです。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X
No.196:
(1pt)

ボロボロ

保存状態にそこまで期待はしていなかったが表紙や、日焼けが余りにも酷かったので。
返金処理をしたとの連絡もあったが一向に返ってくる気配もないのでレビューしました。
皆さんも注意してください
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.195:
(4pt)

砂の世界に閉じ込められた男を描き、自由・生き甲斐とは何かを考えさせる、現代日本文学の最高傑作の一つ。

安部公房(1924~1993年)は、東京生まれ、満州育ち、東大医学部卒の小説家。『壁‐S・カルマ氏の犯罪』で芥川賞(1951年)受賞。そのほか、谷崎潤一郎賞、芸術選奨等を受賞。作品は海外でも評価が高く、世界30数ヶ国で翻訳され、晩年はノーベル文学賞の有力候補と目された。
本作品は1962年に発表され、読売文学賞を受賞。安部の代表的作品であると同時に、現代日本文学の最高傑作の一つと見做されている。英語、ロシア語、チェコ語、フィンランド語、デンマーク語ほか20余言語に翻訳され、フランスでは最優秀外国文学賞(1967年)を受賞した。
内容は、海辺の砂丘に昆虫採集にやってきた教師の男が、飛砂の被害に苦しめられている部落に迷い込み、女が住んでいるアリ地獄のような砂の穴の底にある家に閉じ込められ、様々な手段で脱出を試みるが失敗を繰り返し、遂にはその生活に順応して、脱出できる機会が訪れたにもかかわらず、逃げなくなってしまったというものである。
私は、あらすじは知っていたが、今般新古書店で偶々目にし、入手して通読してみた。
読了直後の印象としては、極めて重苦しく、不気味ですらある作品である。執筆のきっかけとなった、飛砂の被害に苦しむ海辺の村は実在したというが、舞台は、有りそうで無さそうな、無さそうで有りそうな設定で、また、女の挙動に何とも言えない不可思議さが漂っている。
話の中で、男は、自由を得るために砂の世界から外の世界への脱出を求めるのだが、振り返ってみれば、砂の世界に入る前に男が生きていた外の世界は、自由と言えるようなものではなかった。(だからこそ、昆虫採集などでそこからの逃避を図ったのだ) また、男は、人生の目的・生き甲斐のために脱出しようとするのだが、男の力を必要としているのは、実は、外の世界ではなく、砂の世界に住む女であり、男を閉じ込めた部落なのだ。
つまり、我々は、自由や人生の目的・生き甲斐がどこか遠くにあると思いがちだが、実は、それらは目の前にあるのかも知れないのである。。。
サスペンス・タッチの展開で一気に読ませる点も優れている作品である。(ただ、テンションが下がっているときに読むのはあまりお奨めしない)
(2023年2月了)
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.194:
(5pt)

感想書き散らし

「もうここまで来たしな~、やめるのも面倒くさいな」
「一度始めたら、やりきらないと気がすまない」
「これしか出来ることないもんな、仕方ない」

変化を起こすには、どこかで妥協し、思い切り、「妖怪メンドクサ」を振り切ることが必要です。でも、そうはいってもですよ、私たちの「後回し癖」ってあまりにも快適すぎて、厄介ですよね~。考えることすら後回しにしちゃっても、その時その時を乗り切ることは出来ますから。

口では威勢よく変化や改革を求めておきながら、どこかで現状に甘んじている自分がいる。そんな口達者が世の中にはごまんといます。この本を読んでそのことを実感したとしても、明日からの自分が変わることは想定していない。もしかしたら、「自分はそんなことはないけどな」とか現実逃避なんかしちゃってる人もいるかもしれない。直後には「感動した!」「感銘を受けた!」と言っていても、次の日になったら昨日の勢いはどこへやら、今日食べるごはんのこととか、ストレスフルな職場のこととか、そんなことで頭がいっぱいです。

そう考えるとゾッとしてしまいますね。その場その場をやり過ごせることをプラスと捉えるのではなく、人生の汚点を積み上げていると捉えるのがいいかもしれないです。ポジティブな「意識高い系」の考えより、損失回避の方がモチベーションが強制的に湧いてくるような気もします。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.193:
(5pt)

幾重にも意味がありそう

表現の豊富さ、巧さ、正確さに感じ入る。骨格のしっかりした作品だ。
物語としてしっかり構成されているが、抽象画を観ているような感覚を覚える。
「砂」とは何なのか?
私は「閉塞状況」と解釈して、そこに順応して生きている者と、抗いながらも次第に順応していく者と捉え、現代の日本を象徴する物語として読んだが、幾重にも意味がありそうだ。
何度も読み返してみたい。。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.192:
(5pt)

様々な読み方ができる名作

灰色の日常、理不尽な砂の中での暮らし。いずれも、昆虫採集、蒸留装置というささやかな楽しみが男の救いとなっている。人間が置かれた環境に順応してしまう生物であることを、肯定的に読むことも、否定的に読むこともできる。

少数を切り捨てる行政、掻き出した砂を違法販売する部落、捉えられた男、砂の女。加害者と被害者、強者と弱者が入れ替わる構造が面白い。最後の失踪宣告は、男からするとそれまで生きてきた社会に対する決別の意思表示。

読み手次第で様々な読み方、感じ方ができる名作。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.191:
(5pt)

私たちも砂の中にいるのかも・・・と思った

人間は、結局このお話の主人公と同じように、砂の中に暮らしているようなものかもしれない。そして、そんな砂の中でも、何か1つでもいいから熱中できるもの、自分が集中して取り組めるものがあるとそれだけで人生をそれなりに楽しく生きていくことができるものなのかもしれない、と感じた。少し時間をおいてから、再読してみたいと思う。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X
No.190:
(5pt)

人間、目的さえ持っていればどうとでも生きていける。

NHK「100分de名著」に取り上げられて凄く面白かったので、トライしました。
実は本書を読む前に映画も鑑賞してしまい、それから詳しく解説されたNHKテキストも読んでしまいました。
これは本当に失敗したと後悔しています。
かといって、番組を見なければ、この本を知ることは出来なかったろうし、予備知識なしで本書を読んだ人が羨ましいです。
映画は著者が脚本を担当している上、素晴らしい出来栄えです。
DVDのレビューの中に「原作で全く想像できなかったものを映像化され、びっくりした」というのがありましたが、私は映画を見てから原作を読んだので、文章が映画で作り出された描写どおりで、ある意味、小説を楽しむ想像力を失ってしまいました。
昆虫採集で自分の名前を歴史に残そうとしている教師が、砂丘の中の部落の一軒家に監禁され、そこに住む女と共同生活を送るのですが、こうして書いていくと、あんまり面白そうな話ではありません。
でも今回番組をご覧になられた方の多くは、私も含めて、この作品の魅力に惹き込まれたに違いありません。
番組内のヤマザキマリさんは素晴らしいガイド役をしていたと思います。
私は小説を先に読んでいたら作品の意図が掴めなかったかもしれません。
現実から目を背けて生きていた男が、砂の中の家に閉じ込められ、細々理屈めいたことを語りだすのですが、ストーリー展開が遅い上、一読しただけでは理解しづらい心理描写が多いので、ちょっとウンザリしてしまうんです。
ところが、言葉数の少ない女のちょっとした描写やセリフで、男の言い分をとことん覆してしまうんです。
そこがこの本のユーモアではないでしょうか。
あれだけ理屈で塗り固められていた男が女に欲情を示すと、女がしわがれ声で、
「でも、都会の女の人は、みんなきれいなんでしょう?」
これまた映画では岸田今日子さんがルックスも含めて完璧に演じていたので、本を読んでて、彼女のイメージが全くブレないんです。
この男と女の交流は戦争をイメージさせるものもあるようです。
自分の思い通りにいかない男は、女を腕力でねじ伏せようとしたり、はたまた飲み水を得るために女と労働を共にしたりします。
単なる脱獄ものと違うところは、この男の生きる価値が場所に拘らず、漠然とした昆虫採集から貯水装置を発明することで最終的な目的が大きく変わっていくところです。
これは誰もが想像できなかった結末だったのはないでしょうか?
この小説の主人公は砂の中で生きがいを持っていた女から最終的に男へと変化していきます。
子宮外妊娠を診断された女が半ば強引に砂の家を追い出され、一方、逃げ道が開かれたにも関わらず、そこに生きがいを見つけ、留まることを決意する男に、残酷さと皮肉めいたものを感じました。
生きるというのは場所ではなく、目的が大切なんだということを見せつけられたような気がしました。
それはひたすら当てもなく砂をかくことで喜びを得る人もいれば、新しい発見をすることで承認欲求を得て、喜びを得ようとする、私もこの男のように、今やっている仕事から「新しい何か」を発見することで、生きる糧を見つけていきたいと思いました。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X
No.189:
(5pt)

自由は絶対善なのか?結局、絶対などと言うものはなく、すべては砂のようにうつろうもの

日常の煩わしさから一時逃れるために、砂とハンミョウに魅かれてやって来た主人公が、ハンミョウに砂漠の奥に誘い込まれ捕食されてしまう小動物のように、砂に閉じ込められ自由を失う。当初は反抗していた主人公も、時間を無為に過ごすことに耐えるよりどころを砂かきに感じるようになったりと、徐々に順応してしまう。渇望した自由を手に入れてみても、拠り所をつまらない物に求めてその自由を手放してしまう人の悲しさが面白い。組織で働いていると共感するところが多い。ユーチューブに映画がアップされている。失礼な言い方だが、岸田今日子の若い頃が美人だったので驚いた。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.188:
(4pt)

もしかして自分も「仁木」か

仁木は、村の住民や女に負けたのだと思う。過酷な状況の中で「生きること」が、第一優先の課題になり、生物としての人間そのものになり、思考回路も不条理を受け入れた(不条理とさえ感じなくなってしまった)。
 しかし(ラストのところで)残されていた縄梯子を登り、「砂の穴の中の世界」と「砂の穴の外の世界」を見比べることができた時、我に立ち返って欲しかった。
 「べつに、あわてて逃げだしたりする必要はないのだ。」とまで神経を侵されてしまった仁木は、本当に不憫だ。ただ言えるのは、人間だれしも、ある日突然、仁木と同じ境遇に突き落とされる可能性があるということだ。もしかしたら、今の自分の生活そのものが、砂の穴に(知らぬ間に)突き落とされているのかもしれない。自分が仁木になってしまわないための心掛けは、外の世界を極力見ようと努力することだ。縄梯子があったら取りあえず掴んで登っていくことだ。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.187:
(5pt)

面白いです

今更ですが、読みました。古い時代を全く感じず、砂の世界(異空間)みたいな場所に
すっぽりと入り込める本で、籠もりたい時には最高ですね。
(現実の逃避の世界が楽しめる本でした)
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.186:
(4pt)

教訓ではなく写実として

某NHKの番組で紹介されているのをきっかけに拝読した。

まず正直な感想として、全体的に単調な文体であり、娯楽的な面白さは薄いと感じた。サスペンスの要素があるので、途中まではワクワクしながら読んでいたが、だんだんと読むのが億劫になり、半ば放り出しかけた。

とはいえ週一回の放送もあるので、なんとか最後まで読み終えたが、結果として挫折せず読み通して正解だった。というのも、この作品は終盤・ラストが最も面白いからだ。

主人公の男が砂の中の生活を通して見せる変化の描写には、著者の「社会という砂の中で生きる人間」への鋭い観察眼が表れている。砂の穴という模型(=モデル)を用いて構造をシンプルにする事で、この本質を際立たせている。

最後の一文の衝撃は凄まじく、『雪国』の第二文と同じくらい忘れがたいものとなった。どうやらラストをある種の教訓として捉える方々も一定数いるようである。しかし、私にはどうにも、ここには価値判断はなく、あくまでも冷ややかな、社会に生きる人間の姿に対する写実のように思われた。

私はこの先ふとした時に、この小説のラストを思い出しては、物思いに耽る事になるだろうと思う。娯楽作品ではないので、読んでいて楽しくなるものではないが、不思議な魅力のある作品である。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.185:
(4pt)

理論的な主人公に

100分で名著に取り上げられていたので、読んでみました。
テレビで見た時の印象はもっと幻想的な怖さをはらんだ物語と感じましたが、実際読んでみると主人公の理論的な考えや、科学的な描写があまりにも細かくて、途中で少しうんざりしてきました。
生き物の環境に対する順応性。
住めば都という概念だろう。
そこに住む人と人との繋がりが生まれ、風景や馴れ親しんだ家や道具に取り絡められ、身動きができなくなっていく。
私も空調の効いた快適な部屋に居ながらも、もしかしたら砂のすり鉢の底にいるのかもしれない、自分から落ちたのかもしれない。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
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No.184:
(5pt)

21世紀的解釈は

安部公房は自分の叔母(夫は画家)が東京の世田谷区と調布市の境界にある仙川に住んでいた家の数軒先に住んでいました。
ノーベル委員会からノーベル文学賞候補にその名が挙がった日本人作家・安部公房の最高傑作。
主人公はそれまで所属していたそれなりに民主的な秩序ある安定した社会から、あるきっかけで、自分を一方的に支配し従属させようとする「共同体」の支配下に追いやられます。個人の意思や自由は認められず、「共同体」が提示する非民主的な「新秩序」への従属と引き換えに「共同体」から提供される生活を得る。最初は屈辱を感じて反発し、この「新秩序」から脱出する試みを何度も繰り返すが、ことごとく失敗し、やがて理不尽な従属に慣れて順応して行く主人公。
21世紀にこの作品をあらためて読むと、共産党独裁国家や社会主義独裁国家に住む市民の生活はこんなものかと感じます。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X
No.183:
(4pt)

思ってたのとは違った

実際に読んで、まず気付くのが、著者の昆虫や、砂に対する造詣の深さであろう。
全体は、サラリーマン生活の隠喩であるとされているが、実際に読んでみると、そのことはそれほど意識されない。
題にも『砂の女』とあるように、恋愛小説と読めないこともない。
とりま、一般に言われていることと、実際に読んで得られる印象というのは、概ね異なるものである。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X
No.182:
(5pt)

いまでもインパクトある文章と内容

〇 特殊な状況に置かれた男がどのように思考し行動するかを観察するための実験をしているようだ。穴の中に囚われるというその「状況」は読み手の意表を突くものだが、すぐにこれはあり得ないことでもないと思えて来るほどリアリティをもって描かれている。著者がそれだけよく調べているのだ、わが国における失踪者のこと、砂の持つ性質など。

〇 この小説が書かれた当時の時代も感じる。男が勤める学校の様子や、女がラジオを欲しがることなど、いかにもあの頃のことらしい。そのうえで穴の中で繰り広げられるのは時代を超えた世界の物語だ。だからこそ人間にかかる普遍的な実験になり得るのだ。この時代性と超時代性の併存という二重性は見事なものだと思う。

〇 文章にも特徴がある。野卑な言葉も含めた男の内心の言葉を基本としていること、次々に繰り出される振れ幅の大きい比喩、男の意識を追いかける叙述(これも「意識の流れ」なのだろうか)の影響か?)、・・・を含めた句読点の効果的な使い方が、きれいごとではない緊迫した空気を作っている。

〇 総じて、今日読んでも大きなインパクトを受ける小説だった。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X
No.181:
(5pt)

孤独地獄

孤独とは一人で居る状態と思っていたが、そうでもないみたいだ。

主人公が来るまで、深い穴の底に一人で居た女は、決して孤独ではなく、それまで社会生活を営んでいたはずの主人公が孤独であった。

砂から家を守ること。砂から水を得る装置を極めること。
このことが孤独を消し去り、むしろ生を与える。

砂は流動体であり、決して避けきることはできない。がしかし、その砂が気づけば人の生になっている。

ノンフィクションを生きる我々にも、見えない砂が与えられている。

気づくが幸せか気づかぬが幸せか。
砂の女 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:砂の女 (新潮文庫)より
410112115X

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