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天地明察
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天地明察の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.20pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全418件 321~340 17/21ページ
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改暦事業に取り掛かるまでに多くのページ数が費やされ、肝心の部分はワープ状態。 気がついたら終わってましたというのはどうなんだろうか? これだけ長い年月を掛けて行なわれたことなのであれば、その中での苦労話の方が 小説の題材になったのではないか?などと思ってしまう。前段部分が冗長で、少々 退屈であった。 | ||||
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歴史物や時代小説は得意ではない自分でも面白いと思えた。 ちなみに理系音痴でもあるけれど、解りやすくて夢中で読めた。 思わず応援したくなるような春海や、個性的な周囲の人々。 心に残る言葉やシーンが多く、清々しい読後感です。 「天地明察!!」その瞬間のための数多の人生に、感動に涙が何度も溢れました。 | ||||
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500ページあって全6章からなりますが、 枚数は多いのですが、内容は終始盛り上がりませんでした。 ネタバレすると、主人公たる渋川春海が、 一度失敗して、改暦に成功するんですが、 本の終わりの方で急に改暦に成功して ♪ハッピーハッピーボーイ みたいな流れなんです…。 まさに、プロットを読まされてる感じ 原因は、 科学的&歴史的な解説がなかったり、 主人公&執筆者が『大和歴』そのものに迫ってないからでしょう。 少なくとも、歴史小説じゃないと思います。 小学生の時に読んだ伝記シリーズ もしくは 歴史小説風ラノベ と思えば腹も立たんです。 映画どうすんだこれ? | ||||
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ラノベ作家の書いた歴史小説か、と思って読み始めた。導入部が気にいらなっかたが、読み進むうちにどんどん物語に引き込まれていった。渋川春海を主人公にしたという以外に新しさは感じなかった。登場人物も類型的だし、ストーリーも予想を外すことはない。ただ、最近の歴史小説にありがちな強引なフィクションがなく、フィクションが先走ったところで実際の歴史に沿った事実に引き戻すあたりに作家の良心を感じた。 だが、そんなことはどうでもいい。この小説を読んでいるあいだ幸福だった。それは渋川春海という恐ろしく幸福な人生を送った人間の幸福さだ。ひさびさに晴れやかな歴史小説を読んだ思いがする。 ぜひ、最近歴史に興味を持ち始めた小学校5年生の甥っ子に読ませてやりたいと思ったが、少し難しいかも知れない。これを200ページくらいの児童文学にできないだろうか?子どもたちに歴史と小説の醍醐味を教えてあげるのに絶好の題材だと思う。映画化と漫画化するくらいだから、児童文学化もありでしょう。 | ||||
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水戸光圀ではないが、思わず「うぬう」と唸りたくなるような傑作であり、もし些かでも文士を志す者ならば、この著作の前に、恐れ入りました、と平伏させる代物でもある。凡庸な草食系、算術好きの青年が日本独自の和暦を開発し、改暦の大事業を成し遂げた話であるが、豊富な語彙と詳細な時代考証に裏打ちされて、優れた文芸作品として昇華している。 さほど重々しく書いてはいないが、算術でも暦術でも自分の誤謬については決死の覚悟で臨んでいることが随所に現れ、武士ではない主人公にも武士の精神が十分に浸透していたことが伺い知れる。 とくに感心したのは保科正之の明晰さであろう。凶作にて重税を課すのはただの無為無策であるとし、改暦の必要性、手法、影響などをつぶさに検討して、大事を成す姿は現代の政治家にはぜひ見習って欲しい。 主人公がなんども失敗しながらも、少しずつ布石を重ねていって最後に改暦を成就させたのは、鮮烈な勝負の世界を見るようですがすがしい。 | ||||
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本屋大賞で知り、わくわくして手に取った一冊です。 私は物理の専門家でも、天文の専門家でも、数学の専門家でもありません。 しかし、この本を読んで、一つ似たような感想を抱いた、そして共感を抱いた 報道がありました。 光子よりも速い物質(粒子?)が存在する。と発表されたとき、その研究者の 名古屋大学の先生がおっしゃっていました。 「これを発表するには、勇気が要りました。」と。 アインシュタインのような天才であれば、E=mc2を唱えたとき、 「何だ、君達そんなことも気がつかなかったかい?」 てな感じだったのでは? 勇気は要らなかったのかもしれません。 (アインシュタインも勇気が必要だったのかもしれませんが。) 普通は違います。「これは教科書と違う。」と気がついた時、驚きます。 疑います。そして確かめます。何十回も確認します。確認のための確認を 行います。そしてようやくつぶやくのです。 「これこそが真実だ。」 つぶやく自分に自信を持つための勇気が、その繰り返す根気以上に必要です。 鈴木梅太郎も、ワトソン、クリックも、キュリー夫人も、みんなみんな そうだったんじゃないでしょうか。 そして、名古屋大学の先生も、そんな気持ちだったんじゃないでしょうか。 このお話の中では、関孝和が天才、春海がいわば凡才。関孝和とのやり取り での失敗。失敗に終わった暦法をやり直す根気。そして、ようやくたどり着いた 正解を、公表する勇気。 暦の歴史も、数学の問題も深くは考えなかったのですが、春海の根気と 勇気に、凡才研究者の生涯を見たようで、結構面白かったです。まあ、私から みたら、春海も天才ですけど。 暦の歴史も数学の問題も、誤りがあったようですが、それを読むために 読んだわけではありません。しかし、凡才研究者の心境の掘り下げは、実は もう少しかな。失敗しても成功しても、どうしても泣いてしまいますからね。 基本的にはお勧めします。85点かな。 | ||||
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ドラマ化決定の情報にちょっと興味もちました。本の梱包も丁寧でしたし傷もなくよかったです。 | ||||
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気持ちのいい人物が次々と出てきて、読み心地のいい小説でした。 会話が多くて動きは少なく、戦や決闘といった派手な見せ場もなく、そういった意味では起伏の少ないストーリーなので、映画化はどうなんだろうと首をかしげてしまいますが、小説としては最初から最後まで面白く読めました。史実をどのように小説にしたか、想像するだけでも楽しかったです。たとえば、主人公が再婚しているとわかったら、前から知り合いだったことにするとか、そういう感じなのかなあ、なんて考えながら読んでいました。 「からんころん」がちょっとしつこいかなと思いましたが、あとはすらすらと読めて、読書の喜びをたっぷりと与えてくれる小説でした。 | ||||
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本屋大賞をとっていると言う事で自分の中で期待値ハードルが高くなりすぎたせいか、、、設定は面白いのですが、いまいち入り込めませんでした。 最近の本屋大賞って「謎解きはディナーのあとで」もそうだけど、自分の好みに合わないものや何がそんなに面白いのか理解できない作品が多い。 | ||||
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私は読書家ではありませんし、文系学生として知っておくべき知識くらいはあるものの、日本史にも精通していません。 ただ、歴史を勉強するにしたがって、人々が織り成してきたドラマに目を向けるようになりました。 このことは歴史を楽しく学ぶことに大きく貢献してくれています。 日本人なら誰でも知っている織田信長、坂本竜馬、あるいは源頼朝など目立つ業績を残した人々の遍歴などはおおまかには誰でも聞いたことがあるでしょう。 大河ドラマでも取り上げられるし、彼らを題材とした小説を初めとしたさまざまな作品を目にします。 私たちは、彼らの活躍が殺人に立脚したものであろうと、欧米人の先進文明ありきの活躍であろうと、彼らが偉人であることは疑いません。 そのようなことは小学生高学年でもなんとなく分かるでしょう。 そして、彼らの人生は私たちには真の意味で想像できない波乱万丈なものであったであろう事も理解します。 しかし、この小説の主人公は渋川春海。 小学校でも中学校でも習わないでしょう。 高校生の教科書には載っていますが、それは文化史のページに数多く載っている人たちのうちの一人に過ぎません。 教科書の記述は「渋川春海が中国の授時暦を用いて貞享暦を考案し、天文方が設置された」などという記述。 日本という国に大きく寄与した100人を選ぼうとしたら、おそらく選ばない人も少なくないでしょう。 なぜなら、知名度が高くない上に、今の日本はグレゴリウス暦を採用しており、その意味では渋川の活躍は残っていないのでは、と素人には思えるからです。 知識がある方からは反論があるかもしれませんが、この本は専門書ではなく、大衆小説であることを踏まえて頂き、目をつぶってもらえると助かります。 結局、私が要領を得ない無駄の多い文章で言いたいのは、この本は 「一見目立った活躍をしていないように思われる人でも、このようなロマンに満ち溢れた人生を送ったのか!」 「歴史というのはありとあらゆる人々が凄まじい人生を送り、構成されて、私たちは今このような人生を送っているのか」 ということを再確認させてくれる本だということです。 歴史小説をよく読まれる方からの、何を今更、という声が聞こえてくるようですが、読書家ではなく一介の学生に過ぎない私には軽い衝撃でした。 先述している通り、ただの学生である私がありきたりな教育論を語ることは恥ずかしいですが、ある意味での当事者の生の声と思ってください。 今の日本の教育では、勉強の楽しさというものをなかなか伝えることが出来ていません。 私は、つい最近まで勉強に楽しさを見出したことはありませんでした。 ただ単に、授業に出て、眠かったら眠り、宿題をこなし、あるいはサボり、テストを受け、勉強不足のあまり赤点ギリギリのときもある。 完全に時間の無駄です。よっぽど頭のよくない限り、そのような状況では半月ですべて忘れるでしょう。というよりも、そもそもみにつけたとは言えません。 私の友人にも教師を目指している人たちがいますが、その人たち自身が勉強の楽しさを知りません。そんな人たちに楽しい勉強を教えられるはずがない。 好きな漫画のすぐに死んでしまうキャラクターの名前や細かい世界設定は覚えているのに、二次式の平方完成のやり方は覚えていない。 好きなバンドのドラムが使っているスプラッシュシンバルやスティックのメーカーは知っているのに、ナイティンゲールが何をした人なのかは分からない。 やはり、興味を持っているかどうかで全く違いますよね。 この漫画は好き。だから覚える。二次方程式に何の意味があるの。社会に出てから使わないだろ。 あのドラマーは格好いい。だから覚える。ナイティンゲール?あれでしょ。すごい看護婦でしょ。それで?俺の人生に何の意味があるの。 ……こんな感じですね。 もちろん、皆が皆勉強に面白さを見出せるとは言いませんが、今の状況は戦慄を覚えるほどひどい。 生徒に興味を持たせる為には、すべての教師は勉強の楽しさを知っているべきだし、それを伝える為にはさまざまな観点から深く理解する必要があると思います。 そして生徒はそれを受け入れる準備がないといけない。 平方完成をすれば実数の二乗は0以上であることから、数式的にもグラフ的にも頂点を求められる。それが分かれば最大最小も分かるし、視覚的に考えられるようになる。言われてみれば当たり前。 ナイティンゲールは比較的安定していたヨーロッパに衝撃を与えたクリミア戦争で活躍し、多くの命を救った。彼女の活躍がなかったら今の世界の人々の一部は存在しないし、赤十字社もなかった。 たかが高校レベルの勉強でもいろいろな視点から見れば楽しさを見出せるはずです。 小説のレビューの場をお借りしてこのような、私の日本教育に対する不満を吐き出して申し訳ありません。 改めてレビューを再開させていただきます。 この本はそのような学生にも歴史の面白さを伝えることが可能なのでは、と思うのです。 徳川家康のような有名な人たちだけでなく、目立たない人たちも含めた全ての人間が織り成したのが日本史。それが今の比較的安全な経済大国日本を作った。 数学を発展させたのも、万有引力を発見して宇宙に乗り出したのも、日本語や英語、スワヒリ語を作り出したのも全て人間。戦争ばかりの恐怖に支配された人たちに学問を発展させる暇はそうそうない。 歴史を学べば、先人たちが作り上げてきた平和を尊敬し、あらゆる学問を尊敬できる。 歴史をしっかり学ぶためには、歴史の楽しさをしれば百人力。好きな漫画やバンドと同じ。 好きな漫画は作者やアシスタント、編集者が作るもの。バンドの曲はメンバーやスタジオのスタッフやPAが作るもの。 歴史はめちゃくちゃ頭のいい学者が研究し、今までの人間全てが作り、今の私たち、私たちの子供たちがこれからも作っていく。 どちらが深いか、多角的な面白さが見出せるかは明らかではないでしょうか。 ただ、私は漫画もロックもメタルも大好きなので悪しからず。 私もまだまだ発展途上ですが、この本で成長できました。 この本で、歴史の楽しさを知ってください。 そして、あらゆることを楽しめる人間になる一助となると私は信じています。 | ||||
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囲碁侍として江戸城に登城する主人公の安井算哲(渋川春海)は、囲碁の世界で最高峰を極めようとするよりも、無類の数理好きで、神社の和算絵馬に書かれた算術の難問を即答したという関孝和に永らく会うことのないままに脅威と競争意識を持つ。やがて、会津藩主の保科公や幕閣の命を受けて、暦の改正をライフワークにして、その数理好きの能力も全面開花し多数の協力者にも恵まれて、ついに大和暦を採用するとの天皇の詔勅を得る。 しかし、そんなあらましの展開ではあるが、決して、たんなる成功物語ではない。もし自分が持てる何らかの能力を全開したとしても、欲望、羨望、妬みが渦巻くなかで、事業展開に必要な人の和を確保し、失敗にめげずにどこまでも真実を見極め、また世の人心をひきつけてゆくひたむきな努力が要求されるときに、自己の内面が敗れないでやっていけるだろうかと思う。この小説は、主人公の心の内面をよく描写している。この小説を読んで、主人公はよくやった、このような人物が実在したのかと祝福する温かな気持ち一杯にされた。 この本については、自宅近くの市立図書館で三百人以上が貸し出しのウエイティングをしていると聞いたので、思い切って買って読んだのは正解であった。さすが、本屋大賞を取っただけの本ではある。 | ||||
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恥ずかしながら歴史に疎く、途中で実在の人物なんだと気付かされました。 今、私たちの日常に当たり前にあるカレンダー、暦というものは、こんなに大変な作業を経てここにあるんだ…と非常に興味深く読みました。 数学というものが、算術として神に捧げられていた時代があったという驚きもありました。 歴史に疎いからこそ、壮大なエンターテイメントとして楽しむことができました。 岡田准一さん主演の映画の公開(2012年秋)が待ち遠しいです! | ||||
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昨年のことだが、第7回本屋大賞を受賞した「天地明察」が面白かった。 日ごろ何々賞とかの本に、それほど関心はないのだが、ニュースで絶賛していたのと、主人公がはじめて聞く歴史上の人物ということが気になり、さっそく本屋に行き手に取った。 この作品のおもしろいのは、登場人物のキャラクター設定が巧みで、彼らのイメージが鮮明に浮かび、 吸い込まれるように入ってしまうところである。 飄々とした主人公が、たくさんの個性的な登場人物に愛され期待されるのが、軽いタッチで表現され、読者もついつい彼の成功を応援せずにはいられなくなる。 神社に奉納された算術勝負絵馬の問題に一瞥で解答を記す天才数学者「関孝和」の存在を知ったときの驚きや、そのまだ見ぬ天才との算術勝負にかける思いにわくわくさせられ、彼を探してたどり着いた、算術道場の師範と明るく気の強い道場の娘「えん」との出会い、お抱え棋士の天才ライバル「本因坊道策」が彼に一目置くところなどもおもしろ可笑しい。 また、「北極出地」事業の二人の老上役に、緯度予測のシーンで主人公の才能や性格をすぐに気に入られてしまうところなどもなんともいえない。 そして、彼ら二人が事業の完遂を見届けられず主人公に託したり、事業の実質の指揮者「保科正之」やその配下の人たちなど、いろいろな人物に支援され、最後まであきらめずに事業を成し遂げる姿が印象深い。 | ||||
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個人的には囲碁棋士としてしか知らなかった安井算哲こと渋川春海が大和歴を創り上げるまでの過程を、関孝和、本因坊道策の二人の天才を初めとする多くの人々との係わり合いの中で描いた作品。本来なら重苦しくなってもおかしくない"改暦"という題材を、爽やかに描いた点に本作の魅力があると思う。普段は茫洋としているが、目標が定まると一心不乱に突き進む春海の性格付けが作品全体のムードを支配している。一部の人間を除き、春海の周囲の人々が善意に溢れ春海に好感を持つ様に設定されているのは、作者が敢えてそうしたのだと思う。 出会いから始まって、その後に到る"えん"との係わりも微笑ましいが、何と言っても関孝和、本因坊道策の使い方が上手いと感じた。同年齢の幻のライバル・畏敬の的として描かれる関孝和の登場のさせ方も巧妙だし、当時の囲碁界を考えればあり得ない(城碁の結果、憤死した棋士も居たと言う)安井家と本因坊家の相続候補同士の奇妙な友情関係という設定も面白い。また、江戸時代における武断政治から文治政治への変遷の流れと"改暦"とを自然にマッチさせている創りも上手いと思った。江戸時代において庶民にまで拡がっていた算術の隆盛も巧みに織り込まれている。作中では、関孝和が独自に考案した代数的解法や行列式が紹介されているが、実は微積分も殆ど完成していたのである。 そして何より魅力的なのは囲碁と天文という組み合わせである。現在の一流プロ囲碁・将棋棋士は盤上に宇宙を観ると言われている。そこに着眼した作者のしたたかさにも舌を巻いた(作中で何度か碁盤上の"星"に言及しているのは偶然ではあるまい)。夢とロマンに溢れた一級のエンターテインメントと言って良いのではないか。 | ||||
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ハードカバーで500P近いので重厚なのかと思えば、韻律の効いた文章でテンポよく読める。 が、あまり本を読まない人間向きに書かれていて、はっきり言うと、本を読む人間ほど読むのが辛くなる。 題材は非常に野心的なのだが、内容には著者が自慰に耽る姿を見せるハーレクインのような印象が残った。 悪い意味でポスト団塊ジュニア世代の気風を代表した小説だと思う。 某文学賞のある選考委員は、本書を「明かるすぎるといってよい作品である。しかし陰翳が足りない。」と評した。 お世辞にもこの論評もあまりほめられた文章ではないが、はっきりと面白くないと言っているのは評価できる。 著者なりには陰翳はあるのである。この本は主役がまさに著者の投影であって、多才な男がその才能の大半が二流であることに絶望して全く別の自分の道を見つけ出す、という自己へのナルシストじみた皮肉譚でもあるからだ。 ただ、その見つけた道もやっぱり二流である上に、根気よく続けて向上する気もいまいちなのが透けてしまうことが、はたして いいことなのだろうか。 率直に言って、この小説は表面が整っているだけだ。 文体は整っているのだが、主人公が有り余る自信を見せて回る鼻持ちならない男にしか見えないくらい描写力が甘い上に、暦を独自に作るという行為の価値や革新性を追求する部分を、物語のゆるさを確保するために意図的に捨てている。 読んでいて著者側の出し惜しみばかり目につく…というか、題材に著者の筆力が負けてこぢんまりとしているように見える。 著者の筆の走りで読者を引き込もうとしている部分で、過剰に力をセーブしすぎているように見えるし、対して丁寧な説明が求められる部分では文章が知性を失ってしまっている。 好き嫌い以前に、単純に小説としての実力が低い。 また何よりも、本作は作者の創作姿勢が後退し、逃げに入り出した様子を克明に記している。 殺伐とした世界観を売りにした作風に頼らず、平和な状況を舞台にした小説を書きたいという著者の本作への意図はわかるのだが、平和な雰囲気を大切にするがあまり、テーマを追求する姿勢がすべての面で弱くなっていて、作家として追求していくべき精神性がライトノベル時代よりも後退してしまっている。 こういう停滞はライトノベルならば「作者の個性」として許されるのかもしれないが、幅広い層の読者の目に晒される(本書は極端に読者層を絞っているが)一般向けの小説でこういった力の出し惜しみはどこまで続けられるのだろうか。 この姿勢がこのまま続くのであれば、著者と出版社の財布を潤す以外に新規の読者を参入させる理由はない。 少なくとも、漫画よりも時間がかかる媒体として読ませる価値はない。 やることなすことだけでなく自分の心の中の一番美しい信条に対してまでも「まあまあでいいじゃないですか、まあまあで」と言い訳する物語のどこがいいのか。 怠惰な人間を描く小説は物語として十分ありだ。 しかし、この小説は筆力の低さのせいで怠惰な生き方や姿勢を肯定するように読めてしまう。 本を読む人間が本に求めるのは、怠惰さの肯定ではなく、怠惰に生きざるを得ない心情の肯定ではないか。 多数のインタビューやエッセイで著者のパブリックイメージが確立されているが、一度それらを外して冷静な目で読んでみるといい。その姿には自分への諦めと世の中への無気力を優しく肯定するカルト性以上のものは見えない。 本書に文学的な賞を与えるのであれば、賞の対象に漫画を加えて青年誌以上で活躍する漫画家を候補に入れ、本書よりも先に該当する賞を与えるべきではないか。 少なくとも、本書よりも薄くて価値のある本は山ほどある。 なお、さんざん書いたあげくに著者を擁護するわけではないが、ネットにおける本作の資料の歪曲疑惑について述べる。 結論としては「時代小説の信憑性やディテールなどそんなもん」である。著者は時代小説界で許される範囲の想像・改変に従ったに過ぎない。 何せ司馬遼太郎でさえも、小説の設定として「江戸時代の医者の社会的地位は幇間と同程度であった」という暴論を書くのだ。 もともとジャンル全体が時代風俗を忠実に再現する意識をそれほど高く持っていないのである。 | ||||
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のですが…。 数学や碁の事などはちんぷんかんぷんなのでその指摘によるこの評価ではありません。 嫌味なキャラクターがおらず、読後感が良く十分楽しんで読めました。 大和暦が成る最後の布石の辺りをもっと緊張感を持って書いてほしかった気がします。 全体的に重みに欠けますが、爽やかさは十分味わえたと思います。 「こんな大人が居たらなあ」と思える清々しい人物が多く、春海の成長を見守っている様な彼らがとても好きでした。 ☆4つと迷ったのですが、歴史物の重量感には乏しいと思ったのと、 ある意味清々しすぎるのでそういう小説を「軽い」と思ってしまう人にはおススメしませんね。 あくどい人物があまりいない時点で、そこら辺の緊迫感やダイナミズムには欠けます。 個人的には☆4ですが、合わない人向けに☆3で。 | ||||
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江戸時代初期を舞台に、 幕府の庇護にあり、江戸城に勤めていた名門碁打ち一族・安井家の 長男・渋川春海が、算術に進むべき道を見出し、 その後、さまざまな人との出会いを経て 日本独自の暦・大和暦を作り、それが公認のものとして 朝廷に認められるまでを描く、青年の成長物語。 興味深い人物である渋川春海という人物を掘り下げて小説にしようとした ことですでに成功しているともいえる。 そして、明晰な知性を持ち純真にして誠実、ものごとにひたむきに取り組む魅力ある人物として 春海のキャラクターを造形することにも成功している。 江戸時代初期のさまざまな政治、社会事情、風俗を わかりやすく描き出した内容も興味深く、楽しく読める。 ハリウッドの有名アナリストは、 ドラマの重要な構成要素として ストーリーライン、キャラクター、アイデア、イメージ、セリフ という5つの項目を挙げている。 この小説はこういった物語を構成する要素にきちんと目配りして書いたように思われる。 読んだあと、嫌味なくいい気分になれるというのもうれしい。 ネガティブな要素がないのがいい。 しいて気になったところは、無垢な青年が社会の中でもまれ、 政治的なことも踏まえて立ち回ることのできる“大人”になる過程 そして大人になってからの主人公のキャラクター造形に 描写が不足しているように感じられたことか。 人物同士の激しいぶつかり合い、葛藤、そしてその後にあるクライマックス、 そのあたりがあっさりしているように私には思えた。 とはいえ、読後感はよかった。 どのように映画化されるのかも楽しみ。 | ||||
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史実考証が綿密で、文章は奇をてらわず丁寧で、好感の持てる小説(もっとも史実どおりなのかどうか、僕には確かめる手だてはないが)。 好感は持つが、面白いか面白くないかで言うと、あまり面白くない。それと長い。 暦、数学、碁。とにかく題材が地味。その足かせをつけたまま話を盛り上げようと最大限の努力をしたけども、大成功はしなかった……という感じ。 ただまあ、こういう本もあっていい。すべての小説で、人が死んだり世界が滅んだりする必要はない。僕の好みではない、というだけだ。「天地明察」が売れるということは、世の中は僕が思うほどには殺伐としていないということか。 個人的には新暦制定の大詰めの段階で、急に春美が「政治家」と化してしまったことが残念。それまで、無垢なまでに純粋に真実を求め続ける学者であった春美が、急に姑息とも言える数々の策を弄して多数派工作をおこなう。まあそれが史実どおりなんだろうから仕方ないと言えば仕方ないが、いずれにしても少々興ざめである。 | ||||
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この小説で一番面白かった点は、一番初めの序章で印象的に書かれていたのは、実は「負け」寸前の風景だったこと。 本文のラストに近いところで同じ光景が書かれ始めたから、あぁ、これでやっと主人公が長年取り組んだ念願の『改暦』=「勝ち」にたどり着いたかと思いきや、、、、結果はガクッと異なった。 若い頃は、算術で解けない誤問を世に出してしまったとき、消えてなくなりたいと切腹しかねないほどの恥を意識した少年だったけれど、 45歳の改暦の勝負のときには、「負け」さえ想定内に置き、そこからのシナリオを用意して、負けが決まった瞬間から、本当の勝負を見せた。 くりかえされた光景の先にあったもの。それは、必至の信念と、政治的な根回し。周囲の大人が与えてきた知恵であり、成熟した器だった。 その勢いったら、、怖かったわ〜。けど、楽しかった〜。 みごと機を熟させて改暦を成し、初期に出逢った少女としっかり一緒に歳を重ね、同じ日にこの世を去ってのハッピーエンド。 実在した人物の名をもって、改暦や算術や武家の世を題材にして、一見、小難しく思ったけれど、 内容はシンプルに一本筋の人生を歩むことの魅力を伝えるものでした。 次回作の主人公「光圀」を、インパクト強い短文で潜ませてあるあたりも、くすっ。 | ||||
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作者と他の作家さんとの対談を読んで、かなり期待して手に取ったのですが… 調べたことを、深く理解せず、自分の言葉として文章に起こさず、そのまんま羅列したって感じでした。 背伸びして深いテーマを「頑張って」書いてみました。って感じの文章です。 ところどころ筆が乗ったような面白い部分もありましたが、最後まで書ききれず尻すぼみに終わっているのが、とても残念です。 もう少し、他の話で筆慣らししてから取り組んだら、もっとこなれた面白いものになったと思います。 | ||||
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