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天地明察



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【この小説が収録されている参考書籍】
天地明察
天地明察(下) (角川文庫)
天地明察(上) (角川文庫)

天地明察の評価: 4.20/5点 レビュー 418件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.20pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全418件 361~380 19/21ページ
No.58:
(5pt)

夢中になりすぎて、降車駅を乗り過ごしそうになった

算数は得意だけれども、
数学は苦手なわたくし。
しかも、碁のルールも知らない。

序盤は、
「なんでこの本が本屋大賞の1位になったのか」
まったくわからないほど、読み進めるのに苦労をしたのですが、
気がつくと、主人公の生き様にグイグイと引き込まれ、通勤途中の、
電車内で、降車駅を乗り過ごしそうになってしまうほど、夢中になっている自分がいました。

人生論あり
恋愛論あり
友情論あり

この1冊に人の一生のすべてが綴られております。

読了後には「やっぱり1位はスゴイね!」と
感動に眼を潤ませながら笑顔で本を閉じました。

いやぁ、いい本をありがとうございました^0^
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.57:
(5pt)

非常に面白いです

読んでいると、どんどん物語に引き込まれていくような感じで、気付くと夢中で読んでました。最近読んだ本の中ではピカイチでした。ハッキリ言って、専門的な内容や時代背景はあまり分からないですが、そんな難しい事考えながら読む本ではありません。粗探しみたいな読み方をせずに、素直に一つの読物として見れば、良い作品だと思います。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.56:
(5pt)

あきらめないこと.

当時最新の数学と観測技術を基に日本のカレンダーを作った渋川春海.
予報が外れて何度も苦しい思いをしても,絶対に諦めない姿勢を学んだ.
科学者は昔も現代も,自分の仕事をひたすら信じ続けることが大事なのだ.

終盤では,最終的に自分のカレンダーが採用されるために,まるで碁を打つように
(実際に碁打ちなのだが)外堀を埋めていく作戦をとる.プロジェクトを成功させ
るためにはそういった才覚も必要なのだろう.

しかし主人公があんなにも草食系男子なのは,現代の小説だからなのだろうか.
それとも本当にそうだったのかな?
知る由もないが,一風変わった時代小説としても楽しめる.
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.55:
(4pt)

面白いけど、『ばいばい、アース』や『マルドッゥク・スクランブル』はもっと面白い

冲方丁の本。話題の本。2010年本屋大賞受賞の本。

内容紹介のなどから、この本がいわゆる時代小説とよばれる種類の本だとあったので、あまり読む気はしなかった。ただ、本人のブログなどを見て、色々と思い入れもあるようだし、何より冲方丁の作品であるので十分に信頼出来るので、(話題になっていたり、賞を取った本を読むというのは、少々癪だった。というか、そもそもこういう賞があること自体、今回初めて認識したし、面白い本が受賞するわけでもなく、まあ、宣伝の一種程度としか思っていなかったが、折角なので)読んでみた。

結論。面白い。冲方丁というブランドであるので、面白いというのは初めからわかっているつもりだったが、それでも面白いと思った。ただ、それでも、同時に物足りなさも感じた。『ばいばい、アース』や『マルドゥック・スクランブル』と比べたとき、単純に物量の差か、それとも、完全なフィクションと元となる史実があることによるものか、あるいは、雑誌に連載していたことによるのか、判然としないが、なんとなく物足りなく感じた。

これまでの『ばいばい、ー』や『マルドゥックー』では、ある場面の描写は、これでもかというほど、濃密に描かれているが、今作では、むしろその反対に、数年、十数年という長い時間を、圧縮して描いている。その辺りの書き方の違いが、物足りなさ、もっともっと濃い作品が書けるはずだと感じてしまう要因かもしれない。

そういった部分での欲求不満は残るし、個人的な好みとしてはやはり、『ばいばい、ー』や『マルドッゥクー』の方が好きだが、本書も勿論、非常に楽しめた。あるいは、暦や、和算についての解説本のようなものも別にあると面白いかもしれない。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.54:
(4pt)

暦!

熱い物語だった。国産の暦の誕生にこんなドラマがあったとは、
と大変勉強になりました。
いまの日本人ではここまで純粋に打ち込めない。
あの時代に生まれてここまで人生を捧げられた渋川春海が羨ましい。(1639-1715)
映画化した際には、主演には本村弁護士を薦めたい。
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No.53:
(5pt)

改暦という大プロジェクトに挑んだ男たちの物語

『マルドゥック・スクランブル』とかで有名なSF作家の冲方丁の初の時代小説。直木賞候補にまでなった。
その評価に違わず、とっても面白い、時代小説だった。しかもよくある戦国武将の話や江戸の庶民の暮らしの話とかではなく、改暦という歴史上の出来事と日本における算術、天文学の発展とをひとりの碁の棋士を主人公に描いている。

主人公である渋川春海という男の成長物語とも読めるし、それを中心に描かれていて、そこに面白さもあるんだけど、私としては、改暦という大プロジェクト自体が、春海というプロジェクトリーダの元、いろいろな失敗を重ねながら、関孝和を始めとする支援者の協力も得て、実現していくというところに興味を持った。自分自身がプロジェクトに携わることも多いので、こういったプロジェクトモノ好きなんだよね。著者の達者な表現力で泣けるプロジェクト小説になっていると思う。時代小説ということよりもそちらに感心した。

後半の駆け足の展開にはちょっと不マッもあるけど、もう、とにかく改暦というテーマに目をつけた時点で勝ちだろう。冲方丁のファンもそうでない人も楽しめる物語だ。


天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.52:
(4pt)

生涯を改暦に懸けた江戸時代の天文学者、渋川春海の物語

江戸時代、4代将軍家綱の治世。
碁の名門、安井家に生まれた算哲は
数学を学ぶうちに暦学の存在を知り、その研究にひきこまれていきます。
それは、彼の生涯を懸けた改暦事業の幕開けでした。

天文学者、渋川春海(安井算哲)の物語です。
関孝和、本因坊道悦、山崎闇斎、そして徳川光圀など、
随所に実在した人物が登場し、かなりリアリティがあります。

「囲碁侍」算哲が天才数学者関の存在を知り、挑み、挫折したこと。
全国各地を測量して回り、その結果授時暦への改暦を願い出たこと。
そして授時暦に代わる、研究の集大成たる「大和暦」を作り上げたこと。

これらの事実が、彼の清々しい言動を通し、明確に伝わってきます。
一貫して描かれているのは、一途かつ頑固な改暦への情熱です。
そしてその情熱を支える妻、えんの賢さ・温かさもいい味を出しています。

フィクションの部分も多いようですが、時代小説はこういうものかもしれません。
時代小説が好きな方におすすめします。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.51:
(1pt)

低価値・低品質の小説

知人の推奨があったので最後まで読通したが、ガッカリした。理由を列記する。
1.天文暦学者渋川春海にして囲碁の二代目安井算哲の話だが、著者の時代風俗への貧弱な知識が目について興ざめである。髪型を束髪とするがそんな髪型はない。また20歳過ぎの大人が前髪とはあり得ない。
2.碁打ちを描くには著者の囲碁知識はなさ過ぎる。初手天元を白が打ったように読めるのもオカシイ。囲碁は黒が先番である。また誰であれ素人が専門家に指導碁を打って貰うときは石を置いて教えをこうものだ。著者はそのような場面を経験していないようで、非常にオカシイ。また囲碁の勝敗では5目負けの次に3目負けになったとしても、技量の接近とは取らない。負けは負けなのだ。その辺りも無知だ。
3.江戸の富士塚があるように述べているが、江戸に富士塚第一号が築かれたのは1779年でこの小説の時代よりも百年ほど経っている。
4.文章中に「がっくり来る」などおよそ文章語と思えない言葉が登場する。品格に欠ける。
以上、直木賞に選定されなかったのも当然である。
囲碁を知っている者はイライラするだけなので読まないことを薦める。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.50:
(4pt)

等身大の主人公

歴史的な事実関係は知らずに読みました。
主人公を一般人の(?)読者と等身大に設定し、大業を成し遂げる
様は痛快です。なんとなく勇気が沸いてきますね。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.49:
(5pt)

青春小説として、素直に感動!

科学的事実や歴史的事実には詳しくないので他の評者が仰るような感じは
持ちませんでした。所々、これ本当?と思う箇所は勿論ありましたが。
ストーリー展開も平凡、主人公の個性も強く現れない。それでも、前半は
他人の布石に動かされる中ではSWOT分析等のマーケティング手法を用いたり、
水戸光圀や関孝和に陰に陽に応援され、粛々と自分の課題に取り組み、
最後には自らの布石の下、目的の為には手段を選ばず(面子にも拘らず)
淡々と過ぎてゆく展開。
青春小説として読めば、何度も泣く場面がありました。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.48:
(4pt)

今年2010年の本屋大賞受賞作、そして直木賞候補作

徳川四代将軍の時代。御城碁の打ち手であり数学の才に長けた青年・渋川春海が、運命にいざなわれるように日本独自の暦編纂に取り組んだ生涯を描く物語。

 時代小説はあまり読みませんが、テンポのよい文章にぐいぐい引っ張られるように読み通しました。
 「行こう。己は試されねばならない。試されてこその研鑽だった。」(232頁)
 一筋縄ではいかない暦編纂事業、妻こととの出会いと別れ、そして再び出会った女性えんとのほほえましい関係など、あの時代の青年・春海の健闘の日々を描くエンターテインメント小説として大いに楽みました。

 しかし、一つだけ拭えない疑問が残りました。
 中国伝来の暦が決して正確無比なものではなく、さらに精度の高い暦を必要とした事情についてこの物語は、飢饉の回避を一番に挙げています。その中国の暦は800年でわずか2日のずれというものであるにも関わらず、
「かくては農耕や収穫の開始の時節が失われ農事に不都合が生じて凶作となるばかりか、月の大小という万民の生活の尺度、日の吉凶というあらゆる宗教的根源が、全て無に帰してしまう」(350頁)というのです。
 これはかなり大仰ではないでしょうか。
 杓子定規に暦を守って、農耕収穫の日取りをピンポイントで細かく決めて農業が行なわれていたとも思いませんし、その2日のずれで「飢苦餓亡」が発生するというのであれば、長年の職業的勘を働かせて暦を無視して農耕日程を調整するだけの柔軟性くらい農民にもあったでしょう。
 高島俊男著「お言葉ですが…〈別巻3〉」にもこんな風に書かれています。
「農作業も暦にあわせておくらせてよい、というわけにはいかない。農作業は、暦ではなくお天道さまのごきげんにあわせてやるしかありません。」(85頁)

 であれば、暦を変更するのは飢饉の回避ではなく、もっと別の深い政治的理由が働いたのではないでしょうか。
 そんな風に思えてなりませんでした。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.47:
(3pt)

専門知識なしで読みました

なので、知識的な部分は深く考えず(それもどうかと思うけれど)、人間関係重視で読みました。

中でも好きだったのが春海&えん&成瀬のシーンで、
なんだかほっこりした気分で読んでいました。
また、関さんとの初対面のシーンは驚きました。
勝手に作り上げていた人物像とはすこし違っていたので、
そういう感じの人なのか〜と。

ラストは…ちょっと見送りすぎじゃないの!?
え、一緒にとかそんなうまいこと…という印象でした。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.46:
(3pt)

天地明察

「マルドゥク〜」でSF大賞を受賞した冲方 丁さんが本屋大賞を受賞したと聞き、手にしました。これだけの長編を一気に読ませ、なおかつ一般にあまりなじみのない分野の話を興味深いものに仕上げている力量はさすがだなと思いました。以前、別の本で読んだこともあるのですが、やはり大きく時代が移り変わる時だからなのか、多くの異才が排出されていた時代だったのだなあと改めて思いました。和算の関孝和や囲碁の本因坊道策、といった不出世の天才たち、稀代の名君、保科正之、水戸光圀……しかし、そういう人たちの凄みが残念ながら伝わってこなかったように思います。例えば関孝和や道策の天才ゆえの孤独や保科正之の為政者としての影の部分(人を殺したことがある、ということが彼の為政者としての姿勢を決めている以上、その部分をもっと書いてもよかったのでは、と思ってしまいました)……そういったところがもっと書き込まれていたらとか。晴海の成長を書いてほしかったな、とか(でも建部昌明、伊藤重孝のように子供のような無邪気さで学問を探求していく姿やさりげなく書かれている安藤有益の謙虚な姿勢は読んでいてすがすがしい気持ちになれました)。そうは言っても書き込みがされていたら、今ある話とはまた違ったものになっていたとも思います。あと、角川の帯の文句。一応歴史ものですし、「プロジェクト」「ミッション」はかんべんしてほしかったなあ、これも今の時代だからなんでしょうか。それからレビューの中に「地動説を知らなかったのでは?」という話もありましたが、うる覚えの記憶でしかありませんが、織田信長が宣教師たちから話を聞いた中で地球が球体であることと一緒に地動説を学んだように……?詳しくはないので、私の勘違いだったら申し訳ないのですが。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.45:
(4pt)

時代を拓く爽やかな物語

本書で、「息吹」と云う言葉にずいぶん久しぶりに出遭った。なんて良い言葉なんだろうと、あらためて思う。
 この本の、そこかしこに息吹を感じる。読後の爽快感は、類い稀である。
 思えば、暦とは、一つの国の、一つの時代のあらゆる方面の文化が集積されたものだ。主人公はそれを改めようと企てている。まさに大事業である。学問ができれば成し遂げられるというものではない。実務の能力があれば良いというものでもない。一国の文化の総体を観る眼も、政治的な手練手管も必要とされる。
 様々な挫折があった。そこから立ち上がる、意志の力は並大抵のものではない。だが、和算の世界にも、測量の世界にも政治の世界にも、新しい時代を作ろうとする人々の息吹があった。それなくして、一大事業は成らなかったはずである。
 関孝和に算術の問題を出題するところ、新しい暦の理論的な予見が的中するや否やのなりゆき。自ら問題を設定したことがある人、未知の問題に挑んだ自覚がある人にとっては、身につまされると同時に、大いに愉しめる場面だろう。あるいはまた、状況に右往左往する人々も、大局を見つめる為政者の姿も描かれる。江戸時代の囲碁の世界がどのようであったかも理解できるだろう。
 主人公の恋愛も含めて、この作品の世界は立体感があり、厚みを感じさせる。爽やかな物語を愉しみたいすべての人に薦めたい。

天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.44:
(2pt)

発想は良いが内容は凡作

江戸の数学者が主人公という着眼点は斬新でした
しかし登場人物は皆あまりにアニメ的な造形で、物語の深みも何もありません
文章も個性がなくおもしろくも何ともありません
帯に時代小説とあるのも謎です
実在の人物を書いて史実を追うなら歴史小説でしょう
編集者の無知でしょうか
絶賛されるほどではないです
ジュニア小説かと思いました
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.43:
(5pt)

ご明察!

と言って拍手喝采したい気分になりました。読み終わるのがもったいと思った作品は初めてです。
私は数学は苦手ですし、囲碁もしませんし、暦の事なども全く分かりません。
何故、江戸時代にこんな知識があるのかも不思議で仕方ありません。が、昔から算術とかあるんですよね〜。
こんなに知識のない人間が読んでも面白いのですから、やはり、登場人物の描き方が魅力的なんだと思います。
主人公の渋川春海はじめ、和算の天才関孝和、磯村塾の村瀬さんなどなど…私は村瀬さんの粋な感じが目に浮かぶようで
村瀬さんが登場するところはニヤニヤしてしまいました。春海の素晴らしい伴侶となるえんさんの強さも大好きです。
テレビドラマなどでお馴染みの水戸黄門こと水戸光国公が本当はこんなに豪快な方だったとはびっくりです。
本当に面白いです。歴史とは。先人達が造り上げた英知の上に今の日本があるのかと思うと、なんとも言いようのない、
感動が沸いてきて心が震える思いがしました。素晴らしかったです。また、是非このような本に出会いたいです。




天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.42:
(4pt)

さわやかな青春像

時代物へは苦手意識があったが、なんの問題もなく、面白く、読み進めた。さわやかな後味が残る。
天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.41:
(5pt)

太平の「終わらない日常」という平和な世界で自分を燃やすこと

素晴らしい小説でエンターテイメントでした。この著者の『オイレン・シュピーゲル』などのシリーズをぜひ読めぜひ読め、といろいろな人に言われていたんですが、まずはこっちが先に読了。とても読む意欲が湧きました。これだけの話を描けるとすれば大した小説家です。次には、水戸光圀を描く『光圀伝』を書くようですが、時代劇の、かつエンターテイメントとして読ませる(おじいちゃんくさくない漢字という意味)作品で、これだけ「売れ筋を外れている」チャレンジングな題材に挑戦することがまず素晴らしい。ある意味、池波正太郎でも吉川英治でも司馬遼太郎、隆慶一郎でもいいのですが、ある種、本流の時代劇や歴史小説ってあるじゃないですか?。こういった本流から外れた題材を扱い、しかもライトノベル作家が出自なので現代人に(特に若者にも)「面白く読ませる」という技術があるのがいい。似たような人では、沖縄の開国時期を舞台に描いた池上永一の『テンペスト』なんかも連想します。どちらかというと本流ではありますが、清朝の末期を描いた浅田次郎の『蒼穹の昴』『中原の虹』なんかも。いままでの定説であり「常識的な歴史」のスポットライトを浴びない部分(=売れない)をエンターテイメントにしてくれる、というのは、本当に読書界が豊穣になることなので、素晴らしい。もちろん、いろいろな人がコメントしているが、暦や数学については、相当な専門知識がいるだろうから、大きな枠を超えては完璧さを期するのは難しいかもしれない。けれども、それは、おろそかにしていいこととは思わないが、枝葉末節であるとも思う。だって、面白いんだもの。こんなマイナーなキャラで、マイナーな題材で、これだけ壮大でハラハラドキドキするエンターテインメントが体験できるんだから素晴らしい。

またこの作品の大きく支配するマクロの背景の設定が、とても今の時代に合っていると思う。というのは、3代家光政権の後の、武断政治による戦国時代から平和な民衆を中心とする社会を構築する、その境目の、これから始まる「終わりなき日常」への転換点を描き、そんな「大きなマクロので変化がない平和」な社会が構築されていく中で、その中でさえも、自己を燃やす世界を変えるようなことができる!という渋川春海の生きざまは、僕らにとても希望を投げかけてくれる。彼は、碁打ちの名家安井家の長男であり後継者ではあるが、「部屋住み」に近い身分。自分の「立場」がはっきりしない、「本当にやりたいことが見つからない」フラフラした人生を送っている。けれども、家業である碁も捨てきれない、という中途半端を絵にかいたような人生。そんなかれが、関という天才数学者と出会い、、、って実際になかなか出合わないのだが(笑)、自己の使命を見出していく様は素晴らしいビルドゥングスロマン。漫画の曽田正人さんの『昴』なんかを思い出したが、とにかく夢中(夢の中にいるように周りが見えなくなること)で生きていく人間の、ひたむきで、いちずで、天然さを凄く感じる。

話が前後したが、主人公の渋川がこの時代に日本の暦を変えるきっかけになるのは、日本に平和な民衆を基礎として社会を建設する!という保科正之の天才と理念がその背景にある。基本的に、あまりにいい人ばかりしか出ないので、きっといろいろな補正が物語的にかかっているのだろうとは思うが、それにしても、この保科正之という2代秀忠の御落胤にして、事実上の徳川政権の基礎を作った大政治家の凄味には圧倒される。話半分に差し引いても、この人が、徳川300年の平和社会を、江戸の社会を、織田信長にも、豊臣秀吉にも、徳川家康にもやりきれなかった軍人が社会を支配する時代から、軍人が必要とされない平和な大衆社会に移り変わる「大構造改革」をやりぬいた男・・・・大火の後に天守閣(軍事基地)を再建しないことや、軍事的に都市が丸裸になる玉川上水の建設、言い換えれば上下水道の整備など、、、軍事社会を基礎とする武士社会ではあり得ない政策の断行、そしてそ総決算として、「暦」を変える、、、公家、武士、僧侶、民衆を巻き込んだ一大イベントの挙行・・・・すべては、保科正之の天才と理念がその背景にあった、というのは、素晴らしく面白かった。もちろん、本当かどうか?は、単純ではないとは思うが、いろいろな本を読むにつけ、基本的なイメージは間違っていないのが分かってきた。物凄い傑出した大政治家であったことは間違いない。そういう物の一端を見れたことが、素晴らしく面白かった。


天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
404874013X
No.40:
(4pt)

表現の天才

登場人物が、物語の中で生き生きとしている。
表現、文章のリズムが心地よく入ってくる。

主人公が大役の命令を受け、覚悟を決めたときの
心情表現は、今まで読んだ3500冊以上の物語の中で
いちばん美しかった。

ただ、1つ残念なのは、連載のような構成が残っていて
一冊の本としてのながれで読むとやや違和感を感じる。

天地明察Amazon書評・レビュー:天地明察より
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No.39:
(5pt)

碁、算術そして暦

渋川春海の半生を描いた傑作時代小説
ただし、斬り合い等の戦闘シーンや下町人情話もありません

第31回吉川英治文学新人賞・第7回本屋大賞受賞作品

西洋科学(西洋天文学)がまだ日本に輸入されるていない四代将軍家綱の時代
そんな時代に精密な暦を作り上げるプロジェクトを描いた骨太でロマン溢れる作品

この時代、暦は現実と2日程ずれが生じていた
そして、暦を管轄しているのは公家達であった
しかし、暦を管理する術は失われつつあった

渋川春海の本職は碁打ち
しかし、彼は算術にも取り付かれていた
また、神道にも精通しており、京にもコネがあった
その経歴・実力をかわれ、精密な暦を作り上げるといった一大プロジェクトの長に抜擢されるのであった

武士が暦を作り、管轄するための策略はさすが冲方氏
冲方氏は布石を打ち、最後に大逆転を狙うといった作品が結構多いと思う








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