定職を持たない猿渡と小説家の伯爵は豆腐好きが縁で結びついたコンビ。

頑迷な男を襲う白昼夢。(「夕化粧」)人形作家の恐るべき新作。

人形を売買するだけの自分に、ものを作る人々の苦悩を理解することは不可能なのだろうか――スランプに陥った店の職人・冨永の言葉に傷つきながらも、せめて創作の一端に触れようと、老舗の人形店が開く教室に通い始めた「玉阪人形堂」の新人店主・澪。

さらば猿渡。少年の飼い猫は、見る者に運命を知らせる眼を持つ。

時は昭和三年―名探偵・唐草七郎の一番弟子にして閨秀の女探偵・岡田明子のもとへ舞いこんだ、摩訶不思議な依頼。

百年に一度生まれ、未来を予言するといわれる生き物「くだん」。

インパール戦線から帰還した男は、銃で妻と情夫を撃ち、出所後、小豆相場で成功。北の果ての海に程近い「司祭館」に住みつく。

戦時中のミッションスクール。図書館の本の中にまぎれて、ひっそり置かれた美しいノート。

降りしきる薔薇のはなびらで窒息することを夢見て、縊死した劇団員を描いた「薔薇忌」、水を汲んだ桶を覗きこむと、その人のために祈ってくれているなにものかが水に映るという「祷鬼」、現実のセックスでは不感症であるが、眠りの中で濃密な性の悦びを得られるという女を描い

結合双生児として生まれたゲオルクとユリアンの波瀾に満ちた数奇な人生。

異界と現し世を自在に行き交い、読者を迷宮へ誘う極上の語り。「結ぶ」―問答無用で縫われ、丸められていくからだ。

祖母の形見の零細人形店を継ぐことになった澪は、押しかけ従業員で人形マニアの冨永くんと謎の職人、師村さんに助けられ、なんとかお店を切り盛りしている。

黄昏の東京――。鞠谷雛子は、周防馨は、電柱の陰の、交差点の向こうの、ふとした廃墟の様相に“死者"を見る。

*本書は新潮文庫の書き下ろしシリーズとして刊行された『爛漫たる爛漫』『廻旋する夏空』『読み解かれるD』を加筆修正の上、「序章」(「Preludio」)と「単行本版あとがき」を書き下ろしたものです。

高校時代から、「ルピナス探偵団」として様々な事件に遭遇してきた、三人の少女と少年一人。

目を奪う美貌と、小学生とは思えぬ色香。転校生の目童たかりは、謎めいた美少女だった。

私立ルピナス学園高等部に通う吾魚彩子は、あるときうっかり密室の謎を解いたばかりに、刑事の姉から殺人事件の推理を強要される。

江戸川乱歩の造語である“奇妙な味”は、ミステリにもSFにも怪奇小説にも分類不能の、異様な読後感を残す小説を指す。

ヒキコモリ支援センター代表のカウンセラー竺原丈吉(JJ)は、いつも度の入ったサングラスを掛けて場当たり的に喋る、実に胡散臭い男だった。

冷凍庫のなかの子供の屍体を見つめる初老の男。

一九八〇年、吹奏楽部に入った僕は、管楽器の群れの中でコントラバスを弾きはじめた。ともに曲をつくり上げる喜びを味わった。

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室からあるはずのない屍体が発見された。

第一次大戦前夜、天賦の“感覚”を持つジェルジュは、オーストリアの諜報活動を指揮する“顧問官”に拾われ、その配下となる。

脅迫電話に呼び出された医師とその娘婿が、白衣を着せられ、首に針金を巻きつけられた奇妙な姿で遺体となって発見された。

連続放火殺人を解決、異常犯罪担当部署に配属された刑事カーソンには秘密があった。誰にも触れられたくない暗い秘密だ。

1999年初夏、親友が重症を負わされ恋人は行方不明となった大学生・崇は、犯人は都市伝説「トレチア」だという確信を深めていく。

きわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。

日常に倦み、無気力に生きるグラフィックデザイナーの入栄暁子は、祖母の遺品から出てきた夭折の詩人の日記を、その孫・古楽器職人の寒川耿介に返すため、尋ねていく。

刑事カーソンが漂流するボートから救い出した赤ん坊は、謎の勢力に狙われていた。

アポロンのように美しい少年、と噂される連続通り魔事件の容疑者。お笑い芸人志望の若者達の悲劇。

時は16世紀。スコットランドに生まれたアランは、17歳で戦士集団に加わり、アイルランドに渡る。

刑事カーソンが休暇で赴いたケンタッキーの山中で連続殺人が。

【アメリカ探偵作家クラブ賞（エドガー賞）最優秀長篇賞／英国推理作家協会賞スティール・ダガー賞／バリー賞最優秀長篇賞／全米図書館協会アレックス賞】　 けっして動かないよう考え抜かれた金属の部品の数々。

風が吹き荒さぶ中、闇を裂いてトラックがやってきた。運転する商人は葡萄酒を運んでいると主張する。

200年近い長い間、世界各国で圧倒的な人気をあつめてきた『巌窟王』の完訳。

2058年4月、上海大学で20世紀の探偵小説を研究していたユアン・チンルウは、国家科学技術局から呼び出される。

メキシコの麻薬撲滅に取り憑かれたDEAの捜査官アート・ケラー。叔父が築くラテンアメリカの麻薬カルテルの後継バレーラ兄弟。

御年88歳のメンフィス署の元殺人課刑事のバック・シャッツは、歩行器を手放せなくなっていた。

現世から冥界へ下っていく道を、古事記では“黄泉比良坂”と呼ぶ―。なだらかな坂を行く私に、登山姿の青年が声をかけてきた。

18世紀英国。

物語に、喰われちまえ。想像力の暴走に任せた、驚くべき古書幻想譚 また買ってしまった──。

私の中に巣喰う狂気が、さまざまな夢を見させる―さらなる広がりと魅力を増した皆川博子の恐怖世界。

いくつもの並行世界を行き来する少女たちの1度きりの青春を描いた表題作のほか、脳科学を題材として伊藤計劃『ハーモニー』にトリビュートを捧げる「美亜羽へ贈る拳銃」、ソ連とアメリカの超高度人工知能がせめぎあう改変歴史ドラマ「シンギュラリティ・ソヴィエト」、未曾有

1789年7月14日、民衆がバスティーユ監獄を襲撃。パリで起きた争乱は、瞬く間にフランス全土へ広がった。

突然の閃光と業火―それが路線バスを襲った。

失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公。彼の前に現われる幻想と瞑想に充ちた世界。

「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。

震災で妻を失ってうちに身を寄せることになった叔父は、心を瓦礫の下に置いてきたまま、ただ死を待ち望んでいる状態だった。

独立蜂起の火種が燻る、十九世紀ポーランド。その田舎村に赴任する新任役人のヘルマン・ゲスラーとその美しき妻・エルザ。

ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された。

意想外の設定と冴え渡るラストのひねり。

造形家である木根原の娘・理沙は、9年前に海辺で溺れて以来、昏睡状態にあった。

たまたま台所にあったボウルに入っていた食用かたつむりを目にしたのがきっかけだった。

雷の季節に起こることは、誰にもわかりはしない―。

島から一歩も出ることなく、判で押したような平穏な毎日を送る人々を突然襲った狂乱の嵐「東風」。