(短編集)
奇譚を売る店
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全1件 1~1 1/1ページ
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「また買ってしまった──。」の書き出しから始まる7篇の幻想奇譚。現代を舞台にしているのにどこかレトロな文章と幻想的な世界観が見事に組み合わさっていて面白かったです。個人的ベストは『こちらX探偵局/怪人幽鬼博士の巻』です。 | ||||
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「おじさんのトランク」「楽譜と旅する男」と作者さんの幻想小説を発表順とは逆方向へ遡っていよいよ第一作へ。他の二作は大いに楽しませて頂いたので当然ながら期待値は高い。 構成の方は連作短編なのだけれども、古書マニアである「私」の「また買ってしまった」という後悔めいた独白から入る冒頭が共通項となっている辺りに作者の遊び心を感じる。自嘲と共に買った物を読み耽っていると「私」はいつの間にか奇妙な事件や現象へと誘われていく……というのが主な展開。 各話で「私」が買うのは明治時代の精神科病院の案内であったり、戦後のカストリ小説誌であったり、既に廃刊したマイナーな児童向けマンガ雑誌であったり、制作されずにポシャった映画の企画書であったりと実に様々。ただ、展開自体は後発二作と比べると随分と怪奇調を帯びているというか、ホラーっぽい雰囲気を漂わせたものが多い。 少しばかりネタバレになるけれども後発の二作と通じる部分もあるのだが各話の独立性は本作が一番高いかも。何しろ「私」は毎回誘われた怪事件の末に悲惨な末路を辿るオチが殆どなのである。なので最初の話を読み終えると「あれ?主人公がえらい目に遭ったのにこれどう話を続けるつもりなの?」と戸惑われるかも知れないが、一章読み終えると次の話では何事も無かったかの様に「私」が古書を飼う場面から話が始まるので読者は再び「あれれ?『私』って同一人物じゃ無いの?」と大いに戸惑う事に(この点については最終章で意外な方向へと話が振られる) 怪奇っぽい話が多いとは申し上げたが、中にはメタフィクションっぽい実験作も混じっていたりする。特に「私」が子供の頃に読みながら続きが気になっていた児童漫画を漁り、投げっ放しな打ち切り同然のオチを突き付けられる「こちらX探偵局/怪人幽鬼博士の巻」は終盤でフィクションと現実という階層の異なるリアリズムが溶け合う様な奇妙な味わいとなっている。 また、あとがきによれば作者自身が古書マニアの様で、古書を漁る楽しみを伝えたいという想いが割とストレートに出ている所も感じられる。特に第二章の「這い寄る影」なんかは戦後すぐに大量に出版されたカストリ雑誌の中で有象無象の作家が書き散らした後の時代に残らない珍作を漁る楽しさみたいなものが漂ってくるので思わず「古書店漁りに挑んでみようかな?」と思わされる方もいるかも。 ただ、読み終えてからの感想を申し上げれば、正直後から発表した二作に比べると完成度という点からは見劣りがする。とにかく各章で主人公である「私」の芝居っ気が強過ぎるというか、主人公の立ち居振る舞いが目立って、折角の怪現象を食ってしまっている印象。後発の二作が幻想的な怪事件を淡々と「私」の視線を通じて読者に披露していたのに比べると作者も方向性を決めかねていた様に思われる。 特に最終章で明かされる、各章の「私」が別人の様にしか思えない構成の真実が明かされる展開は芝居っ気が強過ぎて少々辟易させられたというのが正直な所。無論、この部分についての読者の反応があまり芳しくなかった事から作者なりに修正したから後発二作では怪事件や幻想じみた状況が主体になったのだとも言えるけれども。 作者の幻想小説シリーズをどれから読まれるかは読者自身が決めるしか無いが、本シリーズに関しては完成度が高められた後発作品から読んで正解だったなというのが正直な所。 | ||||
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読んでいて、意味が分かりずらかった。途中でやめました。読みづらいです。 | ||||
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そそられるタイトルなので、アマゾンで購入。 作者は職業作家である以前にマニアというかオタクというか、特定の文化に対するこだわりが半端じゃない。 デビュー作『殺人喜劇の十三人』はサブカルに対する言及が多すぎて鼻についた。 反対にこだわりがプラスに出た例は、『紅楼夢の殺人』だろう。 本書はどうかと言えば、功罪半ばかな。 いや気に入った作のほうが多いので、功七罪三くらいだ。 古書マニアの妄念を描いた連作集である。毎回「また買ってしまった」という文章で始まる。 どうせ駄目だろうと思いつつも、忘れられた大傑作が埋もれているような気がして、今日も古本の山を漁る。 こういう「本好きあるある」は、通販と電子書籍の普及によってあと何年かで消えてしまうのかな。 そういえば本書も通販で買ったのだった。 気に入った作品は、 『帝都脳病院入院案内』病院のパンフレッドから、事件の謎を解く。 『這い寄る影』消えた三流作家に魅せられる。架空作品の俗悪ぶりが凄い。 難病や障碍者を本人の責任と考えたり、性犯罪被害者を悪人呼ばわりするのは、いかにもありそうだ。満天星子。 『こちらX探偵局/怪人幽鬼博士の巻』懐かしい少年探偵の世界が現実になる? 『時の劇場・前後篇』前篇だけで、後篇の見つからない本がある。そりゃストレスでしょうな。 古本の競売風景が面白かった。 残り二本は今ひとつだ。特に表題作は、屋上屋根のメタ過剰だ。 愛書家で古本屋になじみのある人にお勧めしたい。 | ||||
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芦辺拓という作家さんはこれが初読です。むしろ本格ミステリ作家として有名で、この種の本はめずらしいとか。ただ、あとがきにも書かれていますが、「幻想小説家としての資質も具えている」と以前から評され、ホラー小説のアンソロジーなども編んでおられるようなので、こういう傾向のものにも才能がおありなのでしょう。 どの短編も「また買ってしまった・・・」という古書愛好家のつぶやきから始まります。主人公は作者自身の分身ぽいですが、同じ人物ではなく、短編ごとに違うという設定のようです。どんどん本が増えていくばかりで、お金も減っていく、それなのについつい買わずにはいられない、本好きの心理がよく表されています。今の若い人はあまり古本屋には行かないと思いますが、奥のレジカウンターに座っているオヤジがじろりとにらむのが怖かったことなど、時代設定にもレトロ感があり、昭和の時代を生きた世代にはなつかしい素材があふれています。そして、ホラーやいわゆる”不思議な味”の小説が好きな人にはたまらないと思います。 「帝都脳病院入院案内」は、精神科医で作家でもある北杜夫氏(小説「楡家の人々」で有名)の生家で、実在した青山病院がモデルだということです。明治、大正の頃にはまだよく理解されていなかった精神病院のどこか怪しげな冊子。そしてその図面を基にしてジオラマの家を建ててしまう、そうしたらその中に何か動くものをみつけて・・・というあたり、これもなつかしい作家フレデリック・ブラウンの「人形」(”未来世界から来た男”収録)を思い出しました。 「這い寄る影」は、戦後、大量生産されたエログロB級大衆雑誌と、そこに寄稿する作家の悲哀、 「こちらX探偵局/怪人幽鬼博士の巻」は、販売日が待ちどおしかった少年漫画雑誌がテーマ、 「青髭城殺人事件/映画化関連綴」は、映画が最高の娯楽だった時代の話、実在の監督名などをもじった表記などは(円谷英二を葛谷瑛二とか)マニアの方にはクスっと笑えてとても楽しいと思います。 「時の劇場・前後編」は、希覯本に対するマニアの異様な情熱とオークション落札の話、 そして最後の表題作「奇譚を売る店」では和文タイプライターが登場。現在はパソコンのソフトやアプリですが、その前には文章を書く機能に特化されたワードプロセッサーがあり、さらにその前にはタイプライター、カナタイプライター、和文タイプライターがあったという変遷の話が、知っている人にはなつかしいでしょう。また、カナ横書きを普及させようとした団体”カナモジカイ”のことは初めて知りました。昔、小学校しか出ていない人が多かった時代に、漢字を多く含む文章では一般の人が文章を理解できないということで、カナの多用を推奨した団体だそうですが、1920年に設立され、一時期は一定の影響力があったようです。これが通っていたら、中国が簡易漢字を採用したり、韓国語がハングルのみで表記されるようになったのと日本も同じようになっていたかも??安易にそうならなくてよかったと思いますが。 話がそれましたが、この最後の短編で、とうとう現実と妄想、幻想の境目がなくなり、主人公、そして読者も取り込まれてしまうという流れになっています。 長くなりましたが、自分にはとても好みの作品でした。装丁と挿絵も内容の雰囲気にぴったり合っています。今度は著者の本格ミステリも読んでみたいです。また、こちらの雰囲気が気に入られた方には、井上雅彦「遠い遠い街角」もおすすめです。 | ||||
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古本屋で入手した古書を題材にした6つの短編からなる物語。古本屋という所は現実の世界と虚の世界と の接点なのでは?と思わせる怪しい雰囲気を内包しているようだ。各編ーまた買ってしまったーで始まる 物語の出だし、それはまるで魔法にでもかかってしまったかの様にお客を魅了する。 で、内容は江戸川乱歩の「押絵と旅する男」やA.シュワルツェネッガー主演映画「ラスト・アクション・ ヒーロー」に似た印象を受けた。新鮮味の少ない点が残念だった。 | ||||
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