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異邦人



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【この小説が収録されている参考書籍】
異邦人 (新潮文庫)
異邦人THE STRANGER (金原瑞人MY FAVORITES)

異邦人の評価: 4.43/5点 レビュー 223件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.43pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全223件 121~140 7/12ページ
No.103:
(5pt)

村上春樹好きな人には合う

現代の文学作者の中でも、このカミュは「文学者」と評価するに値する。
自分1人が他人と違う考えや感情を抱き、それが変だと思わず、周りの人間はどうなってるんだ?というような描写が、まさしくタイトルの「異邦人」。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.102:
(5pt)

不思議な本、巧妙な文体

読んだ直後の感想は、なんでこの本がこんなに有名になったのだろう?だった。

しかし、5日、6日、するごとに

あの不思議な、あたかも自分のことを他人のことのように語る文体の良さがジワジワと染みてきて

自分のなかの評価がぐんぐんと急上昇した。

私のなかで、この本は、不思議な本、であり、心地良い人物(主人公)に触れられる本。

カミュは、ペストの方が、万人が評価できる傑作だが、異邦人、も不思議な魅力を放っている本に他ならない。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.101:
(5pt)

無意識をもたない人間

「昨日、ママンが死んだ。」
この大変有名な冒頭だけを私は知っていた。
そしてなんとなくこの話を読んだことがある気がしていた。
超がつくほど有名な名作短編にはよくある現象だろう。国境のトンネルを越えると雪国だったあと、夜の底が白くなるところまでしか多くの人は知らない。しかし皆なんとなく知っている気がしている。
さて、その何となく知っている気がしていた名作をこのたびはじめて熟読してみた。
そして感動した。
感動というより強烈な眩暈のようなものを感じた。
私が今さら褒めるまでもないがこの話は凄い。
本当にものすごく凄い。

裏表紙のダイジェストによれば、主人公ムルソーは「母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画を見て笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える、通常の論理的な一貫性が失われている男」である。
実際に読む前、私はこの主人公を動物的な人間だと予測していた。過去もなく、未来もなく、追想も希望も論理的思考ももたない、ひたすら刹那の感覚のみに支配される人間。その予想は大きく外れてはいなかった。
しかし、彼は恐ろしく人間的だった。
刹那の感覚のみをつねに意識するムルソーは極度に理性的なのだ。獣は五感を意識はしない。ただ肉で感じるだけだ。ムルソーは頭で感覚を意識している。そして無意識の感情を知覚できない。
感情は媒体だ――詩的かつ陳腐に言い換えれば、人間の多くに共通する心の底の水のようなものだ。理性とは別の部分で湧き上がる単純な情動、悲しみや歓びや怒りや愛を私たちは共有している。
思考を忘れ、思考する自分を意識することを忘れてその水に浸るとき、人間の多くは孤独を忘れる。生の無目的さがもたらす虚無感も忘れる。
ムルソーはそこに浸れない人間だ。だからこそ、自分を「世間の人と同じだ」と必死で主張する。世間一般の人間が抱くだろう感情をつねに想像し、「こういうときにはこうするべきなのだろう」とつねに考えている。
とはいえ、彼に感情が無いわけではない。つねにあまりにも意識的なムルソーの知覚する世界は、ある意味では彼の内的世界と完全に一致している。彼の世界にはつねに陽が照り、優しい夜の無意識が訪れることはない。
その息詰まるような意識的世界に、彼の感情は名づけられないまままき散らされている。乾いた浜にきらきらと輝く貝の欠片や、白壁を照らす光や、シーツの上に残ったマリイの髪の塩の味という形で、たしかに燦めいている。
彼はそれらの感情の欠片を捕えようとしている。だが決して捕えられない。無意識に属する煌めきは、意識して手を伸ばした瞬間に逃げ水のように消える。そうして彼の世界は果てしなく乾いてゆく。
物語の後半、私は彼に胸倉を掴まれる神父と同じ心地で泣いた。「そんな風でいて、一体この大地をあなたは愛しているのですか?」――ムルソーはこの問いには答えられない。
ともあれ、最後の最後に彼にも夜が来る。
夜の優しい無意識に身を委ねて、彼ははじめてこの世の外に他者があることを知る――おそらく知るのだろう。断頭台に立つ前に、私は彼に平凡な後悔を知ってもらいたいと思った。彼が眩暈と共に殺した「アラビア人の男」が自分ではない誰かであったことを、彼の殺した相手にも愛しいマリイがあり、場合によっては養老院にママンがあったかもしれないことを、平凡に想像して悔いてもらいたい。それはおそらく神を信じなくてもできるはずのことだ。

 非常に長い感想だが、ともかくもこの話は凄い。冒頭の一文しか知らない昨日までの私のような方々、読まないと人生損します!
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.100:
(1pt)

面白くない

他にもニーチェの話が出ているが、同じように道徳観を投げかけてる本だと思う。果たしてこれらの、キリスト教の教えを貫いてきた西洋文明にとって分岐点とされている本が、今の日本でどれ程の意味を持つだろうか? もっと現代的な道徳観について投げかけている本が今では沢山あると思う。読書家よりも思想について流れを整理したい人向けなのかもしれない。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.99:
(4pt)

仲間とムルソーをいろいろ解釈して楽しんでいます

カミュの「不条理な論証」(新潮文庫「シーシュポスの神話」清水徹訳に収録されています)と参考に友人たちとムルソーの隠喩を解釈して楽しんでいます。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.98:
(3pt)

太陽を愛しているので、つつがなく生きていけない

カミュの代表作(1942年)。信仰などの「確たるもの」をもたない主人公ムルソー。ある日、養老院に入れていた母が死ぬ。休みをとって養老院へ向かい、いろいろと片付けた翌日、元タイピストのマリイと再会する。お互い憎くからず思っていたところなのでなんとなくいい雰囲気になり、そのまま同衾。これが伏線。同じアパルトマンの隣人であるレエモンが情婦ともめている。これも伏線。
 マリイは、ムルソーに「自分と結婚したいか」と聞く。ムルソーは、結婚してもいい、というが、それには何の意味もないしたぶん君を愛していない、という。マリイは、あなたは変わっている、自分はそのためにあなたを愛しているのだろうが、その同じ理由からきらいになるかもしれない、という。ムルソーはあくまでも虚無的。ムルソーは、マリイの体への欲情は確かに感じるが、「愛」というものにも思えない。
 ある日、レエモンが手切れした元・情婦の兄とその取り巻きのアラブ人に、レエモンとムルソーは襲撃されるがこれを撃退。そのあと、ムルソーはその一味の一人と出会う。なにもしなければなにもおこらない状況だったが、太陽が照りつけるなか、ムルソーはこのアラブ人をピストルで撃つ。更に4発のトドメ。逮捕。
 弁護士は、母を埋葬した日にムルソーが感動を示さなかったことをいぶかしむ。深く母を愛していたが、健康な人は誰でも愛する人の死を多少とも期待するものだ、と答えて弁護士は動揺する。また、敬虔な予審判事も、ムルソーを助けたいと思っているが、信心とは程遠いムルソーにはピンと来ない。裁判が始まり、ムルソーは非人間的であること、特に、母の死の翌日にマリイと楽しんでいたこと、しかも、裁判で動機を尋ねられたとき、自分の滑稽さを承知しつつ、それは太陽のせいだ、と陳述したことなどが決定打となり、ムルソーは非人間的なキャラクターとしてのイメージが確定し、死刑判決。
 そんな死刑確定のムルソーのもとに、司祭がやってきて説教すると、ムルソー爆発。司祭の信念は女の髪の毛一本の重さにも値しない、死人のような生き方をしている、私は両手は空っぽだが自信をもっている、と言い放つ。
 カミュは、自分はサルトルのような実存主義者ではない、といっている。また、カミュは本書について「母親の葬儀で涙を流さない人間はこの社会で死刑を宣告されるおそれがある、という意味は、お芝居をしないと、彼が暮らす社会では、異邦人として扱われるよりほかはない、ということである。ムルソーはなぜ演技をしなかったか、それは彼が嘘をつくことを拒否したからだ。・・・中略・・・生活を混乱させないためにわれわれは毎日嘘をつく・・・中略・・・ムルソーは絶対と真理に対する情熱に燃え、影を残さぬ太陽を愛する人間である」とわりと丁寧に解説してくれている。巻末の白井浩司さんの解説によれば、つまりムルソーは否定的で虚無的な人間に見えるが、真理のために死ぬことを承諾した、ある積極性を内に秘めた人間として造形されているらしい。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.97:
(2pt)

異邦人

異邦人は45年前に読んで、人生の選択肢になった。今回は、訳が残念だった。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.96:
(5pt)

言葉では説明しきれない感銘

私は、文学を読むことは、自分の心の中に言葉では語ることができない何かを刻み付けることだと思う。
それは名作であるほどより確固としたものを刻み付けることができると思う。
このカミュの「異邦人」もまたそういった名作の類であると思う。
私としては正直、解説にあるような「不条理」という言葉が、この作品にぴったり当てはまるとは思えない。
本書の中で数多く出てくる「太陽」とそれから発せられる「光」の描写に、私は大きな印象を持った。
そこに何か本当の世界性というか真なるものを感じた。
私はカミュの本を読むのは初めてで専門家でも何でもなく、ただなんとなしに興味を持ち本書を読んだ一読者に過ぎないが、この本は私の心にはっきりと言葉では説明しきれない何かを刻み付けた。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.95:
(5pt)

実社会ではお芝居が不可欠ということ

やや風変わりとはいえ普通の一般市民である主人公が、自身でも何がなんだかワケが分からぬうちに犯罪者となり、あれよあれよという間に判決が下される・・・
「不条理」をテーマにしながらも、そのあまりの迫真性のため、運命のいたずらによっては誰にでもこういう事が起こりうるという錯覚に陥らされる戦慄的な作品。

前半は主人公・ムルソーの日常生活の描写が中心で、母親の葬儀に涙一つ流さず翌日に女と海水浴に行き関係をさえ結ぶといった行状は、確かに世間的には不謹慎のそしりを免れないだろうが、だからといってこういう人間が全て犯罪を犯すというわけではなく、ましてやこれが重刑を下される一大要因になろうとは通常は考えられないのだが、ムルソーのギラつく太陽のような馬鹿正直ぶりに、検事の追及に終始シドロモドロの拙い弁護が重なってしまい、遂には理不尽ともいえる判決が下される・・・
憐れみに来た御用司祭への罵倒シーンは、文庫本からムルソーの唾が飛び出してくる程の凄まじさだが、最後まで素のままを貫き通した彼の意地・矜持が発露され、清々しい描写となっております。

著者・カミュの解説に、この社会ではお芝居をしないと異邦人として扱われ下手をするとムルソーのような憂き目に会う怖れがある、といったくだりがあるがこれは言い得て妙だと思う。
実社会も嘘まみれ、演技まみれ。
政治家も保身のために平気で嘘をつき変節さえもする。会社では嘘や演技は当たり前。社内では仏頂面した陰気な営業マンが客先では満面の笑みを浮かべて嘘吐きまくりのうえ大量受注、挙句の果てにはトップセールスに君臨し裕福な生活を送るなんて光景は今や珍しい事ではない。そして家庭でも、不倫をごまかし円満な生活を維持するためには俳優顔負けの演技さえ必要なこともある・・・道義的には不正とさえいえるこれらの行為も、実社会では立派な処世術であり出来ない正直者はおいおい社会から爪弾きにされるという現実が、この作品となぜかオーバーラップしました。

何度も読み返したくなる小説の最右翼といってもいい作品ですが、哲学的な要素をはらんだやや取っつき辛い、初読時は「???」で終わってしまう本かも知れません。
しかし噛むほどに味わいが増すスルメのような魅力が潜んでいるのもまた事実で、例えば「ペシミスティックで暗いだけの小説」というよくある第一印象が、再読時には一転して「爽快感さえ覚えた生涯忘れ得ぬ小説」へと変貌する可能性を秘めた不思議な本でもあります。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.94:
(5pt)

共感できてしまう自分が嫌になる、そんな本でした

なんとなく見覚えがある作家名と作品名(おそらく受験勉強で機械的に暗記していた「有名作家・作品名」の組み合わせ記憶の断片)だったので、暇つぶしにでもと思い手を取ったこの本。大学での無味乾燥な講義に飽き飽きし、かといってバイトやサークルに精を出すわけでもなく、ひそかに心寄せる人がいるわけでもなく、ただただ毎日をルーティーンワークのように無機質にこなしていた僕にとって、この主人公ムルソーというどうしようもない人間が嫌でも自分に重なってしまった。
あらゆる事柄に付随する”価値”や”意味”や”理由”といったもの。それは余りにも自然に僕たちの日常生活に溶け込んでいる。例えば、母親が死ぬことは悲しいこと、悲しいことがあったら涙を流すもの、というような事柄。ムルソーはそういったことに一切関知しようとしない。それも意識的に関知しないようにしているのではなく、彼にとって当たり前の事柄がたまたま一般的に当たり前とされている事柄とまったく合致していないのだ。当たり前であるから、彼は自分のことを至って普通の人だと思っている。しかし、そんな思いとは裏腹に彼は社会から阻害されていく。自分の信念から紡ぎ出す論理をどういうわけか社会は認めてくれないのである。太陽が眩しかった、だから銃の引き金を引いた。それが彼の論理だった。

そしてその論理故に彼は異邦人であった。と、同時にその論理ゆえに彼は「世界の優しい無関心」に心を開ける唯一の人でもあった。そんな風に思いました。

この本を読んでからどういうわけか「世界の優しい無関心」という言葉が頭の隅にこびりつきました・・・
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.93:
(5pt)

至高の不条理


 初めてこの本を読んだのは高校1年の時だったと思う。
形式的な倫理観を盾に「世間」から弾劾される「誠実な」主人公ムルソーに同情と共感した記憶がある。
「世間ってのは不条理なんだなー」と思いつつ本棚へ―――
 それから数年経った今、社会人として成長したのであろうか
自身をムルソーに置き換えることが困難になってしまった。かといって、「世間」に身を置くのも居心地が悪い。
ムルソーとは私であり、世間とは私であるからだ。

裁判所の場面でこんな記述がある
『もはや彼の知恵も、善意もつき果てたかのようにセレストは、私の方を振り返った。その眼はきらきら輝きその唇は震えているように見えた。これ以上何か私にできることはないか、そう私に問いかけるようだった。』

人生という証人台で「誠実さ」と「世間」の板挟みに為す術もなく立ち尽くす無力な証人こそ私たち自身なのではなかろうか?
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.92:
(4pt)

「?」な人は10年後にまた読んでみて

高校の頃「太陽が黄色いから」という箇所ばかりに目がいき、読んで意味不明だったのを覚えています。
しかし、大人になって読み返してみたら、若いころには気づかなかった何かが伝わってきた感がありました。

モラトリアムを抜けて社会の大きな流れの中で小さな歯車になったとき、どこかで感じた事のある「あれ…?」っていう感覚が作品内に出ている感じがします。

なんかわかる。でも うまく説明できない。そんな気持ちになります。
だから 薄いからという理由を先行させて読書感想文に使おうとすると痛い目に遭いそうですw。

あと邦訳に直訳感が強くて 受験英語の和訳解答のような 読みにくさを感じました。
固い文章で無駄に敷居を上げないで、「ライ麦畑で捕まえて」の邦訳論争みたいに もう少し違う邦訳も読んでみたいと感じました。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.91:
(5pt)

面白いです。

母親の葬式で淡白な態度を示していたことが、裁判で不利な要素となり、
断頭台に送られる破目になった殺人者:ムルソーの物語である。

物語は二部構成となっており、
第一部にはアルジェリアで気だるくも平穏な日々を送っていたムルソーがふとした弾みで殺人を犯すに至るまでの経緯が描かれ、
第二部には法廷劇および独房におけるムルソーの心境の変化が綴られている。

個人的には、平穏な日々を送っていた頃には妙に恬淡で没主体的であったムルソーが、
断頭台への時間を過ごすようになってから主体性を回復し、司祭の欺瞞に突っかかる下りに迫力を感じた。
そして、キリスト教の価値観に見合った人間性を示せねば被告をマトモな人間扱いしない法律関係者に戦慄を覚えた。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.90:
(4pt)

日本の中高校生が夏の太陽のもとこの本を読んで首をかしげ続けるのであろうことを思う

高齢者施設に暮らす母が亡くなったという知らせを受けたムルソーは、その死に対して涙を流すことなく、翌日には海水浴に行き、マリーと関係を結び、喜劇映画を見ていた。
 友人を通して関わったアラビア人を銃殺して逮捕され、裁判ではその動機を「太陽のせいだ」と答える。果たして彼には罪への償いの心はないのか…。

 今も<新潮文庫の100冊>に選ばれているこの『異邦人』を最初に読んだのはいつのことでしょうか。おそらく高校2年くらいのことでしょうから、今から30年以上も昔のことです。「きのうママンが死んだ」、「太陽のせい」といった断片的な言葉ばかりが記憶に残るばかりで、主人公ムルソーの殺害動機に一貫した何かがあったのかどうかも覚えていませんでした。

 今回再読しても、ムルソーの心模様を掴みかねる気持ちに変わりはありません。
 巻末の解説によれば、カミュ自身は自らを実存主義者ではないと明確に否定していたとありますが、それでもなお私は、この30年で学んだ実存主義思想の知識に照らして読んだほうがこの『異邦人』は理解しやすいように感じます。
 ムルソーの行動に理解ができない判事や検察、御用司祭の心に、「人間かくあるべし」とする気持ちが存在することに気づきます。その「かくあるべし」とするイデア的考えがアプリオリに存在することを否定することから出発する、そう考えているであろうムルソー。
 しかし一方で、この小説の最終場面のわずか後には彼が処刑台の露と消えてしまうことに、心むなしさを覚えないではありません。彼にはそこから出発して歩んでいくだけの十分かつ充実した時間があるとは到底思えません。出発しようとする意志だけが儚(はかな)く輝くだけです。

 この小説を読むことによって、読者に要求される「あるべき姿勢」とは何なのでしょうか。ムルソー的出発への意志を受け継ぎ、なおかつ処刑台への道のりを少しでも遠いものにすべく努めることでしょうか。
 人間に「あるべき姿勢」を求めることを否定するこの小説から、人間の「あるべき姿勢」を読みとるということの自己撞着に、私は今慄(おのの)き、震えるばかりです。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.89:
(5pt)

物語全体に降り注ぐ太陽の光……

【あらすじ】

母親の死を前にしても、ムルソーは涙を流さなかった。埋葬日の翌日には海水浴へ出かけ、
そこで偶然再会したマリイとの情事に及んだ。そして女衒のレエモンの問題に関わった
ムルソーは、殺人を犯してしまう。

独房での生活を余儀なくされたムルソーは、それでも自分は幸福だと言い切る。母親の死
に際して涙を流さなかったことで、人間の情を持たないと非難されようと彼の考えは揺ら
ぐことはない――

【感想】

一見何に対しても無関心に見えるムルソーですが、彼ほど世界を真っ向から見つめている
人はいないのかもしれません。彼はこれまでに悔恨の念を覚えたことがなく、彼にとって
は何一つ無駄なことはありません。彼はたった一日の想い出だけでも、刑務所の中で優に
百年は過ごせるとさえ言っています。

哲学抜きには語れない難しい本ではありますが、そういうことを抜きにしても、自分の
生活と照らし合わせて、人生を考えさせられる本だと思います。

『異邦人』という至ってシンプルなタイトルが付けられていますが、読み終えてみると、
この一言にこの本の全てが凝縮されていると感じました。

ここでカミュの言葉を引用します――

『母親の葬儀で涙を流さない人間は、すべての社会で死刑を宣告される恐れがある、という
意味は、お芝居をしないと、彼が暮す社会では異邦人として扱われる他はないということで
ある』(P.138 解説より)

世の中の常から外れた人は、この世界ではみんな異邦人だと言うのです。人の決めた道理
に支配された世の中だから、不条理が存在する……本当にその通りだと思いました。

そしてこの物語の中には、太陽の描写が数多く登場します。その描写のされ方が一つ一つ
違っているのも面白いです。その時、その時で見え方の違う太陽と同じように、『異邦人』
という本も読む度に違ったものが見えてくると感じました。

何度も読み返したい本です。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.88:
(5pt)

光が駆け抜けるが如く、読み切りましょう

異邦人。同名の歌も非常にいいですが、こちらは本です。

一度読んだら、年齢が変わった頃に、読み返しましょう。

薄い文庫本、大した読書時間ではありません。刹那です。

不条理、と本書内容を端的に表すのは簡単です。しかし。

読後の乾いた己の心情に怯え、また読み返すことになる。

読むべき本、とかリスト化することは大嫌いだけれども。

年に一度、カミュの異邦人を読む日を定めたらどうかな。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.87:
(4pt)

私たちはなぜこの世界に違和感を感じるのだ?

若い頃に読んで大きく揺さぶられました。二十年経ってふたたび読んでみたが、当時と同じ感じは受けない。より直接的に接している感がある。物語自体は変わっていないので、私が変わったことが明らかになった。

人間の社会や文化の滑稽さ。私たちの日々の営みはゲームであり、意味はとくにない。ただそうした事態に耐えられないからこそなにがしかの意味を付与しているだけの話なのだ。主人公はあえてその意味付けを行わない。虚無という深淵に浸っているのだ。そのため他者にとって彼は異端であり、脅威であり、認めたくない存在なのだ。抹殺されるのも至極当然のことなのだ。看護婦が言うように、ゆっくり過ぎず早すぎずにいるが、存在する上で大事だというわけだ。ただ、別の生き方も可能ではあろう。創造を行うアーティストとして、真理を探求する哲学者としての道などだ。自身がどういう立場にいるのかを把握することができたならば、そうした選択も主人公には可能だったろう。そうすれば彼が好んだ、あの炎天下の太陽の光をより多く浴びて、知らなかった境地を見出せたかもしれないから。
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4102114017
No.86:
(2pt)

歴史遺産の一種

まあ今どきこんなもの読んで感動するのはせいぜい十代だろう。大人の読むものじゃないね。歴史的に、かつてこんな小説が騒がれた時代もあった、という時代の里程標みたいなものだ。「太陽の季節」とか「限りなく透明に近いブルー」みたいに。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.85:
(5pt)

逃げ道(抜け道)はないのだ

R. バルトが絶賛したという『異邦人』のエクリチュールは、確かに綺麗だった。

窪田啓作氏の解説によると、かつて日本の論壇でも「『異邦人』論争」があったというが、
A. カミュが実存主義者であったかなんて、私にとってはどうでもいいことなわけで。
そういう小難しいことは抜きにして読んでも、なかなか興味深い作品だった。

ところで、主人公ムルソー(仏語で「死」と「太陽」の合成語らしい)は、
逮捕後、判事とやり取りする中で、神を信じていない旨を繰り返し述べている。
しかし、どう考えても彼は、態度レベルにおける敬虔な信仰心の持ち主である。
というのも、随所に登場する「太陽」こそ、まさに「神」を意味しているからである。

つまり、この物語は信仰に対する葛藤を暗に描いた作品なのだと思う。
ムルソーいわく、彼が自分と直接的には無関係なアラビア人を射殺したのは、
「太陽からのがれられな」かった結果であった(63ページ)。

ムルソーはいつも背後に「太陽」を感じ、「太陽」につき動かされていた。
それは、「自由人の考え方をしていた」(80ページ)彼にとって、辛いことであった。
だが、「抜け道はないのだ」(85、111ページ)。

そこで、彼はいつかの看護婦の言葉(21ページ)を思い出す。
ゆっくり行っても、急ぎ過ぎてもダメ。
「夏空のなかに引かれた親しい道が、無垢のまどろみへも通じ、
 また獄舎へも通じうる」(101ページ)ことを悟るのである。
もはや、「太陽」=「神」からの定めには逆らえない。

だから、ムルソーは自分と同じ人間によって裁かれることを嫌った。
彼に下された極刑は「下着をとりかえる人間によって書かれた」(113ページ)ものであった。
ムルソーはすっかり「異邦人」扱いである。

圧巻は最後の叫びで(124ページ〜)、
世の不条理を嘆きながらも、それらを全面的に受け入れるムルソーの心的過程が描かれる。
その意味で、やはりカミュは実存主義とはかけ離れた人物だったのかもしれない。

いずれにしても、ヨーロッパの哲学史を理解していなければ、
『異邦人』の傑作具合は分からないだろう。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017
No.84:
(5pt)

「実践理性批判」との結尾との関連が?

読めば読むほど大傑作。
サルトルの『嘔吐』のように冗長ではなく、
人物造形、磨きぬかれた乾いた文体、構成力、
内的な緊張感と充実度は素晴らしい。

カミュ自身は「実存主義者ではない」と言明していたし、
むしろ超越論的な飛躍を前提とした実存哲学や実存主義は
「哲学上の自殺」と呼んでいたが、
『異邦人』を読む限りにおいては
カミュ自身はニヒリズムとペシミズムという
フランクルの言う「実存的空虚」にはあったとはいえるのではないだろうか。

解説にて白井浩司は、
ムルソーの「全てが終わって、…」という文章をひき
イエスの臨終時の「わがことすべて終わりぬ」とを比較しているが、
私はむしろ、カントの『実践理性批判』の以下の言葉
 静かに深く考えれば考えるほど、 ますます常に新たに、
 そして高まりくる感嘆と崇敬の念をもって、
 心を満たすものが二つある。
 それは、我が上なる星空と、我が内なる道徳律である。
と、ムルソーの
 …このしるしと星々とに満ちた夜を前にして、
 私ははじめて、世界のやさしい無関心に心をひらいた。
 これほど世界を自分に近いものと感じ、
 自分の兄弟のように感じると、
 自分が幸福であったし、今もなお幸福であること悟った。
の比較のほうが面白い気がする。
異邦人 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:異邦人 (新潮文庫)より
4102114017

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