享保十三年、久留米藩領井上村。

ついに工事が始まった。大石を沈めては堰を作り、水路を切りひらいてゆく。

一九九八年、和歌山市内の夏祭りでカレーを食べた住民六十名以上が中毒症状を呈し、四名が死亡した。

1945年8月15日、日本敗戦。国内外の日本人全ての運命が大きく変わろうとしていた―。

とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。

「一度目」は戦時下の強制連行だった。朝鮮から九州の炭鉱に送られた私は、口では言えぬ暴力と辱めを受け続けた。

安房国で漁師をしていた見助は、京に遊学していたという僧侶と出会う。

歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。

パリで開かれた肝炎ウィルス国際会議に出席した佐伯教授は、アメリカ陸軍微生物研究所のベルナールと名乗る見知らぬ老紳士の訪問を受けた。

韓国沖合で大型旅客フェリー世月号が沈没、多くの犠牲者が出た。

代々、使譯(通訳)を務める“あずみ”一族の子・針は、祖父から、那国が漢に使者を遣わして「金印」を授かったときの話を聞く。

その男は決して屈しなかった。人が一生に一度出会えるかどうかの大傑作。

日系ブラジル人医師の津村は、北京の国際医学会で知り合った北朝鮮の医師に技術を伝えて欲しいと請われ、招聘医師として平壌産院に赴く。

日本占領下の東南アジアに、B29の大空襲を受けた東京に、原爆投下直後の広島に、そしてソ連軍が怒涛のように押し寄せる満州や樺太の地に医師たちの姿があった。

東西の壁が崩壊したベルリンで、日本の剣道の防具が発見された。

生殖と移植では「神の手を持つ名医」と評判の岸川卓也院長が率いる、贅沢な施設と高度な医療を誇るサンビーチ病院。

深夜、引き出しに排尿する男性、お地蔵さんの帽子と前垂れを縫い続ける女性、気をつけの姿勢で寝る元近衛兵の男性、異食症で五百円硬貨がお腹に入ったままの女性、自分を23歳の独身だと思い込む女性…様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた、相次ぐ患者の急死。

歴史学者・須貝彰は、南仏の図書館で世紀の発見をした。

エンブリオ―それは受精後八週までの胎児。

199X年度「ノーベル賞」には微かな腐臭がした―イギリス医学界の重鎮が受賞した「医学・生理学賞」の周辺に不自然な死が多すぎるのだ。

「町医者」が、ぼくの家の天職だった――。 大正時代、寄生虫退治で評判を取った初代。

恋人を交通事故で失って以来、北園舞子には、見るもの触れるものすべてが無意味に感じられた。

1900年万国博覧会で賑わうパリ。

その映像は、開けてはならないパンドラの箱だった!?大手放送局に勤務する川原庸次は、かつて学生運動に参加していたという上司からT大時計台闘争にまつわるスクープ映像の存在を聞かされる。

中学時代憧れていた山岡が、医師として村に帰ってきた。久しぶりの再会をした真紀だったが…。

分裂病と覚醒剤中毒の治療・研究に成果をあげている南仏、マルセイユの大学病院で首なし死体がみつかった。

宗像時子は父が遺した古アパート、扇荘の管理人をしている。

神よ、なぜ応えてくれないのですか?私はその答えを『沈黙』の中で雄弁に語り尽した。明かされる『沈黙』秘話。

絶滅したはずの天然痘を使って黒人社会を滅亡させようとする非人間的な白人支配層に立ち向かう若き日本人医師。

鮮烈な出会いと別れから五年。亡き恋人・達士との思い出を求めて菅生連山を訪れた、草野市議の俊子。

聖母が死んだ。 薬物や性暴力によって心的外傷を負った女性たちのシェルター「新アグネス寮」で発生した火災。

精神科医の小野寺は、殺人容疑者の精神鑑定を依頼された。

恩人の命令は、思いがけないものだった。 不当な理由で職場を解雇され、腹いせに罪を犯して逮捕された玲斗。

駅前交番から突然、刑事一課強行係に異動となった原田貢(みつぐ)は慌てていた。

衆人環視の中、首相が爆殺された。そして犯人は俺だと報道されている。

捜査のためなら、俺は外道にでもなる。

この熱量はすべての読者を圧倒する。 衝撃の松本清張賞受賞作。

多重人格カップルの友情と淡い恋心と殺人と――。

社運を賭け、巨大ビジネスとなる高純度人工水晶開発に取り組む藤岡は、インドのある町から産出された高品質の種水晶を求め現地に向かう。

十人に一人がHIVに感染している国南アフリカ。

鉄道のシステムがダウン。都市銀行も同様の状況に陥る。

関ヶ原の戦い、大坂の陣、 そして日本史上最大級の内戦・島原の乱。

男はなぜ、罪を重ねるのか? 涙腺崩壊必至! 心奪われる入魂のミステリ。 片桐達夫、五十九歳。

五人全員が死んだとき――本当の「事件」が始まる。

刑事たちの執念の捜査×容疑者の壮絶な孤独――。犯罪小説の最高峰、ここに誕生! 東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年。

博徒たちの間に戦後の闇が残る昭和57年の広島呉原。

検事を辞して弁護士に転身した佐方貞人のもとに殺人事件の弁護依頼が舞い込む。

頭脳明晰で剣の達人。将来を嘱望された男がなぜ不遇の死を遂げたのか。

白昼、老人が渋谷のスクランブル交差点で何もない空を指さして絶命した。正光秀雄96歳。

毎日が黄金に輝いていた12歳の夏、少年は川辺の流木に奇妙な印を残して忽然と姿を消した。

「いらっしゃーい」。伊良部総合病院地下にある神経科を訪ねた患者たちは、甲高い声に迎えられる。

平凡な郊外の町に、災いは舞い降りた。熱に浮かされ、痙攣を起こしながら倒れる住民が続出、日本脳炎と診断された。

あの晩、あの電話に出ていたら。同級生の殺人容疑で十四歳の息子・翼が逮捕された。

僕たちは「その日」に向かって生きてきた―。昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。

故郷を奪われ、生き方を変えられた。それでもアイヌがアイヌとして生きているうちに、やりとげなければならないことがある。

激化する独ソ戦のさなか、赤軍の女性狙撃兵セラフィマが目にした真の敵とは──デビュー作で本屋大賞受賞のベストセラーを文庫化