蠅の帝国: 軍医たちの黙示録
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初版刊行(参考)
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短編集
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あらすじ
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評判
蠅の帝国: 軍医たちの黙示録の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 B ランク
蠅の帝国: 軍医たちの黙示録の総合評価:
8.15/10点 レビュー 27件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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作家であり精神科の医師である帚木は、15人の軍医らが体験した事実と証言、歴史資料をもとに、15の短編小説として寓話を再構成している。大空襲下の東京本所で、広島の原爆野で、関東軍遁走後の奉天で、銃後の瀬戸内で、ソ連軍侵攻下の樺太で、米軍の弾薬降り注ぐ沖縄摩文仁の丘で、ジャワ島で、習志野で、満州チャムスで、大日本帝国の軍の将校であり、医師/医学生である彼らは、それぞれの任地で兵隊・捕虜・住民・患者らの求めに応じて、与えられた限られた物資と時間的制約の中で、判断し、必要な処置を行ってゆく。決してドキュメンタリーではないのだが、作家帚木が実に冷静な文体で、個々の軍医の実体験に基づいて「物語」を再構成しているので、読者はそれに引き込まれざるを得ない。
政治社会学的な読み方もできる。医師という存在は、国家と軍による人民支配の「道具」でもあること。だからこそ、医大を各地に増設し、軍医の「員数」増やすことが戦争国家の重要政策だったことも見て取れる。また、「命を守る能力がある専門職」と見做されるがゆえに社会から尊敬され「権威」が与えられているという「知識」の権力性や、「命を守る」という崇高な志と併存しうる、個々の医師の人格的多様性と「この世」を生きる人としての経済的欲望の存在も見える。国家、軍という組織の人間として「末端」とは言え「将校」として課せられる社会的責任。医学研究、症例・病態の研究に対する科学者としての意欲。社会における一種の「階級」であり「身分」であり「家業」である医師層の意識と生態はいかなるものか、を一般読者は垣間見ることもできる。魯迅の『賢人、馬鹿、奴隷』に例えるなら、軍医は間違いなく「賢人」、インテリであり、体制内「プチブル」でもあるのだが、ただそれだけという訳ではないのだ。抑圧構造を理解しえいない哀れな「奴隷」兵隊、庶民はあまた登場するのだが、残念ながら、「戦前」の日本に秩序=支配構造のアウトサイダーである「馬鹿」は登場しない。現代日本に必要なのは「馬鹿」であろう。
蛇足:出版社が付けたであろう副題「軍医たちの黙示録」は全く相応しくない。終末思想も神の啓示もない。黙示文学ではまったくない。端的に無教養な誤り。