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(短編集)
蠅の帝国: 軍医たちの黙示録
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蠅の帝国: 軍医たちの黙示録の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.07pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全27件 1~20 1/2ページ
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“新しい戦前” である現代に、2020年代を生きる現代人が読んでおくべき「戦記小説」というべきか。「戦争の」ではなく、「戦場」のリアル、戦争の勇ましい大言壮語や「正義」とは別次元に繰り広げられる、実に生々しい、死と病、生への執着、恐怖、絶望、諦念、残虐さ、親切さ、ずる賢さ、したたかさ、誠実さ、国籍の垣根を越えた人類愛、男女それぞれの性事情、人間持つ実に伸縮自在で身勝手な「身内―他者」による差別観念など、あらゆる角度から、「人間」のリアルを読者は疑似体験できる。ミサイルや爆弾、戦車や戦闘機を国がふんだんに所有すれば人々の平穏な暮らしが守られるなどと言う、政府のプロパガンダ、マスメディアが振りまく「妄想」から解き放たれるために、この国、ニッポンの人民が舐めた80年前の辛酸を、「思い出す」手掛かりにしてはどうか。 作家であり精神科の医師である帚木は、15人の軍医らが体験した事実と証言、歴史資料をもとに、15の短編小説として寓話を再構成している。大空襲下の東京本所で、広島の原爆野で、関東軍遁走後の奉天で、銃後の瀬戸内で、ソ連軍侵攻下の樺太で、米軍の弾薬降り注ぐ沖縄摩文仁の丘で、ジャワ島で、習志野で、満州チャムスで、大日本帝国の軍の将校であり、医師/医学生である彼らは、それぞれの任地で兵隊・捕虜・住民・患者らの求めに応じて、与えられた限られた物資と時間的制約の中で、判断し、必要な処置を行ってゆく。決してドキュメンタリーではないのだが、作家帚木が実に冷静な文体で、個々の軍医の実体験に基づいて「物語」を再構成しているので、読者はそれに引き込まれざるを得ない。 政治社会学的な読み方もできる。医師という存在は、国家と軍による人民支配の「道具」でもあること。だからこそ、医大を各地に増設し、軍医の「員数」増やすことが戦争国家の重要政策だったことも見て取れる。また、「命を守る能力がある専門職」と見做されるがゆえに社会から尊敬され「権威」が与えられているという「知識」の権力性や、「命を守る」という崇高な志と併存しうる、個々の医師の人格的多様性と「この世」を生きる人としての経済的欲望の存在も見える。国家、軍という組織の人間として「末端」とは言え「将校」として課せられる社会的責任。医学研究、症例・病態の研究に対する科学者としての意欲。社会における一種の「階級」であり「身分」であり「家業」である医師層の意識と生態はいかなるものか、を一般読者は垣間見ることもできる。魯迅の『賢人、馬鹿、奴隷』に例えるなら、軍医は間違いなく「賢人」、インテリであり、体制内「プチブル」でもあるのだが、ただそれだけという訳ではないのだ。抑圧構造を理解しえいない哀れな「奴隷」兵隊、庶民はあまた登場するのだが、残念ながら、「戦前」の日本に秩序=支配構造のアウトサイダーである「馬鹿」は登場しない。現代日本に必要なのは「馬鹿」であろう。 蛇足:出版社が付けたであろう副題「軍医たちの黙示録」は全く相応しくない。終末思想も神の啓示もない。黙示文学ではまったくない。端的に無教養な誤り。 | ||||
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戦時下、医薬品が少ない中、為す術も無い軍医達の無力感。兵隊達が死んで逝く。色々な戦地での各軍医の苦悩を集めた短編集。よく調べて書かれています。 | ||||
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帚木蓬生さんの本です。 最初、源氏物語の本かな、とか思っちゃったんですね。「帚木」(ははきぎ)も、「蓬生」(よもぎう)も、どちらも源氏物語の巻名だからね。 だから、ははきぎよもぎう、それで帚木蓬生なのかな、とか思ってたんですが、ちがうみたいね。「ははきぎほうせい」が正しい読み方のようです。 「空爆」「蠅の街」「焼尽」「徴兵検査」「偽薬」「脱出」「軍馬」「樺太」「土龍」「軍医候補生」「戦犯」「緑十字船」「突撃」「出廷」「医大消滅」の十編がおさめられています。 軍医で太平洋戦争を戦った人たちの短篇で、どれもが戦争体験の濃淡があったりします。 とりあえず、読むと、戦争という行為が、いかに人的リソースを消耗させるかがよくわかります。 | ||||
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陸軍の戦記を読むのが好きな人間にとっては、野戦病院の事は良く知っているのだが、陸軍は人気が無いせいか、一般人は意外と知らないのかも知れないね。 戦記と言っても、海軍や空軍の方が圧倒的に人気があるからね。 陸軍を題材にした映画も殆ど作られないし(野火くらいか)。 まあ、じんにくばっか食ってるから映画にもならないのだろうが、それにしても、ニューギニアやフィリピンやビルマの戦地が映画になる事は無い。 野火だって、野戦病院の描写はユルかったしね。 陸軍の戦記を読んでる人間からすれば、軍医さんが書いた戦記は沢山あるし、まずハズレは無い事で有名だから、結構読んでる事が多いね。 肌感覚で、アタリが多いのも分かるしね。 特にビルマは軍医さんの戦記が多いねえ。 ニューギニアの、柳沢玄一郎氏の戦記は有名だねえ。 フィリピンの守屋正氏の戦記も有名か。 ビルマは多すぎて分からん。 まだビルマに本腰を入れてないし。 では、戦地の野戦病院の事って、あまり知られていないのかね。 あんな素敵な世界を知らないなんて、人生損してるね。 兵隊さんの世界だと、野戦病院は誰もが行きたがらない場所だねえ。 行ったら、生きて帰れないから(笑)。 野戦病院に行く、というのは、死を意味するからね(笑)。 ジャングルに野晒しで放置されるだけだからねえ。 衛生兵が世話してる話なんて聞いた事無いし、水も食糧も与えられず、大抵は患者本人が、ブラブラと食糧探している。 食糧を探す体力が無ければ、そのままその場で餓死して、腐って白骨化していくだけの話だからねえ。 遺体も埋めないからねえ。 極たまに、塹壕の中で寝かせられる話もあるが、塹壕だって露天だし、水ハケが悪いんだから、下手すりゃ溺れ死ぬ。 遺体の処理は楽そうだが、それすら衛生兵はやらないイメージだねえ。 患者達の事を、冷酷な目で見てる印象がある。 少なくとも、人間扱いはしてないね。 衛生兵が、患者から略奪してる印象すらある。 | ||||
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帚木蓬生の作品は色々読んできたが、おすすめ作品が多い。ヒトラーの防具、三たびの海峡、逃亡、 日御子、安楽病棟、など。 戦記小説では殆ど出てこない軍医であるが、本作では軍医の目を通して、各戦地での状況が子細に客観的に 描かれている。満州、東京、沖縄、広島、樺太、北海道、支那、東南アジア。 「爆心地にも行ってみました。猫1匹おりません。(略)屍体はみんな上向きです。地面が見えんくらい、 屍体が横たわっとりました。歩くのに死んだ人の腰を踏むように進まねばなりません。ごめんなさい、 ごめんなさい、と言ってるうちに涙が出てきました。」P84 「これからお前たちは幾度となく失敗していくであろうが、その度に内省を加えれば、失敗は成功に繋がる。 その意味で、成功とは自己内省の加わった失敗の蓄積である。」p361 (トラックの脇で苦しんでいる兵がいる。両手両足を中途からもぎ取られていた。しかしもはや誰も 顧みるものはいない。軍医の私とて、構ってはいられない。)p474 (国民を守るべき軍だけでなく、役人すらも韋駄天走りで退去している事実に、私たちは開いた口が 塞がらなかった。)p543 (将校が言うには、こんな難行軍では赤ん坊もどうせ死ぬに決まってる。それよりはここで殺した方が 全滅の憂き目にあわずにすむと言うのだ。親たちは泣く泣く我が子の首を絞めたり、それが どうしてもできない親は、人に頼んで絞め殺してもらった)p565 巻末に掲載されている多数の軍医の手記その他資料に驚く。 それらを緻密に取材研究、再構成した労苦がうかがえ、膨大な作業を費やしたであろうと拝察されるが、 作者が伝えたいことは、日本人の誇りとか、反戦とかではなく、 史実を知って欲しい、平和な現代だからこそ、この国の過去を知って欲しいという思いであろう。 読んで楽しい小説ではないが、多くの方に読んで頂きたい。 | ||||
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戦時中の軍医の活動から戦争の不条理を改めて考えさせられました。この姿は平和な今だからこそ、語り継いでいかなければいけないと思いました。 | ||||
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通常の歴史の教科書には載っていない、先達の筆舌に尽くしがたい労苦などがわかり平和のありがたさが身にしみて感じられた一冊でした。軍記物は勝った負けたが軍人の立場から淡々と述べられることが多いですが、本書は軍医の目から見た戦記というべきもので一読の価値はあると思います。 | ||||
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短編集とは想定外でした。ひとつひとつの素材は素晴らしいのですが、まるで説明文を読んでいるみたいでした。それが作者の意図したところでしょうが・・・。内容が内容だけに面白くないと言うのは作者に失礼だし・・・と、扱いに困る小説でした。 | ||||
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舞台時代背景が太平洋戦争であるだけの、単なる小説。戦争を経験していない筆者が本物の戦記ものをかけるはずがないし、戦後の精神科医でしかない筆者が当時の軍医がいかに人の生死にかかわったかを十分記述できるはずもないが。内容が薄い。 気楽には読めます。 | ||||
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第二次世界大戦中、東京、広島、満州、樺太、東南アジア・・・各地の戦場に派遣された医師たちがいた。悲惨で過酷な状況の中で、彼らが体験したこととは・・・?帚木蓬生のライフワークともいえる作品。 武器も食料も医薬品もない。そして時には戦闘意欲さえない。そんな過酷で凄惨な状況の中、医師たちはできる限りのことをしようと奔走した。戦争は悲惨だ。そのことは充分わかっているつもりだった。だが、この作品を読んで、自分の認識がいかに甘かったかを思い知らされた。 「これが戦争なのか!」 この一言だけで、後は言葉が出てこない。悲惨、凄惨、残酷・・・。いったいどんな言葉を並べたらこの状況を説明できるというのだろうか。いや、どんなに多くの言葉を並べても、この状況を言い表すことはできないだろう。想像を絶するひどさだ。あらためて思った。「戦争は絶対にしてはならない。」と。私だけではなく、この本を読んだら誰もが「これから先どんなことがあっても戦争は絶対にしてはならない。」と思うに違いない。 ひとりでも多くの人にこの本を読んでほしい。そして、平和の尊さをあらためて考えてほしい。衝撃的な作品だった・・・。 | ||||
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なるほどと読みました。こんな記録が残っているとは知りませんでした。たいへん貴重だと思います。もっとおおぜいの人たちに呼んでほしいです。 | ||||
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アマゾンだと、本屋さんで探す手間等がなく読みたい本がすぐ買えるので便利です。 | ||||
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本書は、小生のようなミリヲタにはこたえられない大傑作です。ディテールが素晴らしい。 あとがきで、昔作者は「B29の戦隊が急降下で絨毯爆撃」と書いたりするくらい無知だったと告白していましたが、それからものすごい勉強をされたのでしょう、すごくしっかりした考証で「軍医」たちの世界を構築してみせてくれます。 そして、全体のトーンも素晴らしい。「お医者さん」の先輩である軍医たちへの尊崇の念がしみじみと感じられます。 一人称で事実を淡々と述べるタイプの、本来の意味でのハードボイルドな文体も美しい。 補給の絶えた最前線、大陸からの悲惨な引き揚げでの悲惨な話、ばかりではありません。徴兵検査を担当した若い軍医の視点、満洲の都市部の兵站病院で患者劇団を作った話、など、楽しく笑えます。あの名作戦争コメディ「マッシュ」顔負けのドライな明るさがあります。 あなたがミリヲタだったら、本書を読まずに死ぬと後悔しますよ。 普通の読書好きの人にも薦めたい。本当に良い作品、読後感の充実する作品を読みたいなら、本書はうってつけ。 森鴎外に始まる、モノを書く医者の系譜があると思いますが、箒木蓬生は一等星のひとつだと思います。 ただし、タイトルは変ですね。「帝国」はなんかピンと来ない。「黙示録」も意味ちがうでしょ。本来の黙示録は「鼠が一匹、龍が一匹」とか変な暗喩で語ることですよね。まさか「地獄の黙示録」にひっかけた? この素晴らしい作品にふさわしいタイトルをつけてもらいたかったです。 イーストウッドに映画化してもらいたいな−。いや日本の監督にこそふさわしいか。 | ||||
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今は聞くことの少ない戦争体験の数々・・・特に、冷静、客観的な見方も出来る軍医の記録を、このような形でまとめ、読みやすくして残してもらえたことに感謝したい。悲惨な話から少し心温まるエピソードなど、さまざまな話が語られるが、全編に、この作者らしいヒューマニズムが溢れる。子や孫の世代に、このような体験をして欲しくないという、作者の痛切な祈りが聞こえてくるようで、読後感は圧倒的に深い。大震災の記憶を忘れ、時代の雰囲気が怪しくなりつつある今、若い世代にとっては手に取りにくいタイプの本かもしれないが、是非読んで欲しい。 | ||||
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戦争中の軍医の働きぶりが、リアルに再現されている。ただ悲惨な描写ではなく、文学的香りを感じる書き方が気に入った。 | ||||
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これは小説なのだろうか?確かに「日本医療小説大賞」を受賞していることからも形の上では小説なのだろう。しかし、実際は15名の軍医あるいは戦時医師だった人が書いた短い手記をベースに他の多数の手記や資料、それに作家としての想像力で補うことによって、各人の体験を15編の短編に再構成したもので、そういう意味ではノンフィクションといって良いのではないか(巻末に参考資料として挙げられた手記の一つが載った雑誌を図書館で見つけたが、元の手記は非常に短いものではあるものの、プロットはかなり忠実に取り入れてあることが確認できた)。 とにかく、一人称で語られる話の一つ一つに非常なリアリティを感じた。それぞれの体験に対する意見、感情なども手記を書いた体験者自身の生の声を忠実に取り上げていると思われ、小説的脚色などはかなり排されている印象を受けた。個人的には、以前から興味のあった樺太(現サハリン)の戦後の状況について記した「樺太(サガレン)」の1編が特に印象に残ったが、それ以外のいずれの話も興味深く読めた。実際の戦場や原爆投下後の広島、東京大空襲、沖縄戦などを取り上げた話では勿論凄惨な場面も多数出てくるのだが、戦争の悲惨さを強調するというだけではなく、「徴兵検査」等かなり異色の手記も取り上げてあり、作者は医師の視点から見たありのままの戦争(および戦争直後)の姿を読者に提示したかったのではないかと思われた。 元になった手記は、いずれも多くの人が手に取れるような雑誌に載ったものではなく、今後は忘れ去られていくのみであったであろう。それらの中から、限られた数ではあっても、作者の手によって15の貴重な体験談がより多くの人の目に触れる形で復活した意義は大きい。戦争の記憶が急速に風化していく中で、出来るだけ多くの人に手にとってもらいたいと思った。 | ||||
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ほとんどの人わ戦争映画等でしか知識のない軍医、敵弾飛び交う前線で倒れた兵士の体から弾頭を取り出したり縫合したり、この本わその様なイメージの内容でわありません。軍医が最前線に居てわ体が幾つあっても同胞を助けることが出来ませんからね、その代わりに衛生兵(通称・赤チン)が簡単な手当てをしていたみたいです、それも末期になると軍医同様医薬品欠乏戦闘激化の為消滅して行った。私の父、祖父もそれぞれ中国大陸で終戦をむかえ武装解除を受けましたので幼い頃から良くも悪くも現代の常識でわ考えられないような想像を絶する戦時体験談を昔話のように聞かされました、親から聞いた話だけでも一冊の本が書ける内容なのにたぶんこの作者達も本当の本当わ書いていないという点が歯がゆいと言うかマイナスポイントです。 全15話、あまり血なまぐさい描写でないみたいなので夜就寝前に1話ずつ読みました、女性でも抵抗なく読める回顧録です。もし日本が又戦争になったら現代でも病気や事故でも満足な対応わ望めず自分で何とかして下さいでしょう。 戦争反対 先人達の願いである永久平和を望む方に。 | ||||
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本書後書きによれば、日中戦争から太平洋戦争に至るまでの間、若い医学生や医師は「ほとんど根こそぎ」軍医またはそれに準じる境遇に置かれたらしい。国内あるいは外地、病院あるいは戦場・被災地を問わず、彼らは戦闘に加わることこそほとんどなかった半面、死傷した将兵や市民に対する治療と死亡後の措置等に奔走したという。 似たような話が一つもない15編からなる本作は、戦前・戦中・戦後を生き抜いた彼ら15人の医学生・医師の「手記」等を素材にした、まるで中短編ノンフィクション集とでもいうべき作品集。原爆投下直後の広島、ソ連軍の突然の侵攻に直面した満州や樺太、軍民ともにもぐらと化して転戦した沖縄など、語り手である15人の「私」がそれぞれ人命を守り、救うという職業上の使命に邁進した模様が、冷静で客観的なタッチでどこまでも具体的に描かれている(中には、徴兵検査の担当医や馬術好きの軍医なども出てくるが)。みごとなものだ、と感じ入った。 | ||||
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太平洋戦争に従軍した軍医や候補生達を主人公とする短編集。戦闘員を描く 戦記は数多いが軍医の従軍記は珍しい。それも医師が著したものとなれば稀有 の作品といえよう。 本著作には司馬遼太郎の饒舌さや吉村明の緻密さはないが、15人の「私」が それぞれの戦争体験を淡々と語り継いでゆくことでじわりとした迫真力が出て いる。 徴兵検査の医官の生活を描いた「徴兵検査」。馬好きな軍医とその軍隊生活を 題材にする「軍馬」。沖縄戦で塹壕堀りと負傷者の世話に明け暮れる「土龍」。 原住民虐待の罪に問われ間一髪で死刑を免れる「戦犯」等。悲惨な体験記ばかり と思いきや平和で牧歌的な短編もあって、15の異なる体験が戦争の様々な 側面を描き出し飽きずに読むことができる。 その中の一編「軍医候補生」では、指導教官が生徒を次の言葉で送り出す。 「どうか諸君、健康に注意し給え。決して病死してはいかん。戦死もしては ならん・・・・諸君は軍医だ。最後まで生き抜いて傷病兵の手当てをし、不幸 にも戦死した将兵については、その骨を拾い、名簿を持って、生還してくれ。 そしてもし、諸君が軍医でなくなったときは、今度は国民の健康を守る医師 として、全力を尽くしてくれ給え」 戦時下、軍医(医者)は将兵(国民)の生命を預かる職業人として、極限状態 でも誇りと使命感そして次世代への希望を持ち続けたのだ。そしてそれが まさに彼らにとって戦争を生き抜く原動力となっていたことが感慨深い。 その心情は医者でなければ真に共感し得ないはずである。 医者でない私は評価を星四つとしたが、現代の医療従事者にとっては間違い なく必読の黙示録である。 | ||||
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軍医という存在に注目して、丹念に調査していただいたノンフィクションです。 | ||||
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