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奇想、天を動かす
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奇想、天を動かすの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.77pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全31件 21~31 2/2ページ
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「歴史的意義」という要素を除き、『仕上がりの完成度』という意味で、古今東西書かれたミステリー小説の最高峰に位置するのが当作品であると思う。(「歴史的意義」というのは、その小説の登場でミステリーの流れが変わるような作品を言う) 今では「ミステリー」と一括してくくられるが、本来は「本格探偵小説」「社会派ミステリー」という2つの流れがあり、その2つの流れを,最高の次元で統一したのがこの作品であるといえる。「怪奇性」「ロジック」「社会性」「時代」「人物」など、全ての要素が 信じられないくらいな高次元にバランスよく共存している。 | ||||
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事件部分だけを取り出して「本格」として読めば非常に面白く間違いなく5つ星にしてました。 それを無理やり「社会派」に仕立て上げようとしたせいでやや冷めます。 実にもったいないが、しかし面白い作品。 | ||||
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偶然捕まえた老人の過去を探る吉敷刑事が、老人の過去に秘められた事件の真相を暴くというお話。事件には大トリックが使われている。作品中には、冤罪、差別の問題等が取り挙げられているが、あまりそれには拘らない方が良い。 本作で使われる、「赤い眼をした怪物」等の解明は「暗闇坂」以降の"こじつけ"小説を思わせるが、本作では不思議と違和感がない。老人の悲しみ溢れる過去の祈りとうまく融合しているせいであろう。また、真相究明に関係する鉄道の路線図。そう昔はあんな感じだったんですね。私の亡父が元国鉄の職員だったこともあり、懐かしく見ました。 あまり社会的問題に拘らず、トリックの偶然性も気にしなければ、大いに楽しめる作品。 | ||||
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メイントリックは素晴らしい(ちょっと首をかしげたくなるものもあるが)。 そして、描かれている2つの社会問題も深く考えさせられるものである。 しかし、両者が「融合」しているという評価が適切かどうか。 はっきりいって社会問題を組み込まなくとも小説として成り立つ。 もっといってしまえば、強引に結びつけたという印象の方が強い。 私には両者が「併存」しているという印象である。 ただ、私は島田氏以外のいわゆる「社会派ミステリー」は読まない(興味がない)ので、 「社会派ミステリー」とはこのようなものなのかも知れない。 | ||||
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奇をてらいすぎて読み物としてはちょっとどうかな? 無理やり異常な状況を作り出した感は否めない。 それでも、その異常な状況をきちんと解決してしまうあたり、流石。 | ||||
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この本で告発しているいくつかの問題ですが、ここ十年間以上の間に何度もマスコミに取り上げられたりこれらに関するノンフィクションも出版されており、これらがこの本で書かれている事と違う事が既に判明しております。作者は日本社会に対して濡れ衣を着せてい言ったらさすがに言い過ぎでしょうが、現実にこの本に書かれている事を真に受けている読者の方々が、結構いる事に憂慮しております。だから、残念な事に老人を見舞った悲劇にも、無理解な上司に対して怒る主人公にも全く共感できませんでした。私は寧ろ、奇想が天を動かした結果による犠牲者達に深く同情します。老人と違って彼らは何にも悪いことはしていないのですから。トリックに関しては幾つかは即座に解っていまい、十分に楽しめませんでしたが、それでも一見現実離れしたトリックに関して合理的な解釈を用意してあるのは感心しました。とにかく、この本に書かれた事を鵜呑みにしないで、疑いを持ちつつ、インターネット上で調査しながら読む事をお勧めします。 | ||||
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この作品の根底にあるのは、戦前から連綿と受け継がれてきた日本社会の不条理さへの怒りと、その犠牲になった弱き立場の人々を思いやる島田氏のヒューマニズムである。そういう意味で本書は、純然とした社会派ミステリーだといえる。ところが、その骨太なテーマを彩っているのは、いかにも島田氏らしいケレン味に富んだ死体消失トリックと、ファンタジーの世界にしか存在しないはずの「白い巨人」の出現である。この現実にはありえない謎に整合性を持たせて、社会派との幸福な結婚を実現させた島田氏の非凡な力量にはいまさらながら脱帽させられるが、それと同時に読み終えた後のなんともいえないやりきれなさ……吉敷刑事の怒りが胸に痛いほど突き刺さってくる。 | ||||
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今は亡きかつての同僚(といっても当時とうに70歳を過ぎた方でしたが)に「ミステリーの最高傑作」だと薦められ、いただいた本です。祖父のように思っていた方に敬意を表する意味で読み始めたのですが、文字通り奇想天外なトリック、私の知らない泥臭い戦後史を背景にした厚みのあるストーリーに圧倒されるばかり。人間の恩讐、執念、因縁といった強い深い感情の底知れなさ、恐ろしさを克明に描写していて、殺人云々とは別の意味で薄ら寒くなります。ずっしり読み応えのある、いつまでも心に残る秀作です。 | ||||
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島田荘司が「占星術」「斜め屋敷」といった初期の、大胆でシンプルな一発大型奇想トリック路線から、現在も続く『まず異常な状況・超自然と思える事態を提示し、それに理屈で説明をつけて現実世界に回収していく』路線にかわった分岐点の作品。島田荘司自信が他の著作で、この「最初に提示される不可能状況」がいかに神秘的で魅力的であるかがそのまま作品の魅力となる、という主張をしており、本作はこの作者自信の意見を実践した内容になっている。従って、上記の意見に同調できる読者であれば、空飛ぶ列車・歩く死体、といった異常な道具立てとそれが理屈によって現実世界に回収されていく過程を楽しめると思います。同じ路線の「眩暈」「アトポス」等が楽しめた方には面白く読めるでしょう。しかし、逆に「ここはこういう理由で、ここはこういうトリックで、あんな不可思議な現象が起きたのですよ」と理屈で説明をされても「だから何?」と思ってしまうタイプの読者(私はこちらのタイプ)にとっては評価に困る作品です。作者のよしとするミステリの形式がそういうものなので、読者としては「作者と考え方がズレてしまった」と思って諦める他ありませんが、初期のとんでもない一発トリックで衝撃を与えてくれる路線を求める読者には不満が残るでしょう。また、吉敷ものは多くがそうですが、社会派要素や作者の一人語り的な要素が蛇足に感じられます。その後の作品ほど顕著ではありませんが、登場人物の思考、という形式をとって、ほとんどエッセイまがいの文章が突如として挿入されるのは、いささか面食らうところ。けっして駄作ではありませんしつまらない訳でもありませんが、ある程度読者を選ぶ作品だと思います。少なくとも「島田荘司入門編」には向かない作品。 | ||||
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後書きなどをみると、この作品、トリック重視の新本格派が増えたのをみて、社会派ミステリーというのも、やっぱり、必要なのでは、ということで書かれた作品らしいです。でも、本当に、社会性というものを、本格ミステリーに持ち込む必要は、あるんでしょうか? この作品を読むと、トリック部分のフィクション性と、事件の裏の社会性が、うまくあわず、分離しちゃっている印象を受けます。むしろ、トリックを持ち込むことで、社会性を茶化しているみたいで、かえって、逆効果なんじゃないかなって思えてしまいます。やっぱり、二兎を追うのではなく、一兎を追求する、というのが、良いのではないでしょうか。。。 | ||||
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島田作品の特徴である大掛かりで魅力的な謎を、これで もかと連発。ラストまでぐいぐいと読者を引っ張ってゆ く、その吸引力は尋常ではありません。特に冒頭に置か れた謎である、電車内のトイレからの瞬間消失は、その 描写、設定、真相とも、驚異のひとことです。 それでも読後長く印象に残るのは、壮大な犯行の中に秘められた、犯人の心の謎であり、大掛かりな謎とストー リーを通じてその肖像が浮かび上がる構図こそが、この 作品の最大のトリックでしょう。 ここに描かれる真相は、日本人が忘れてはならない、た だしあまり語られることのない、重要な歴史的事実が背 景となっていて、ラスト近く、吉敷が口にするあるセリフは、作者の真摯かつストレートな心情の表出とも思え て心に残ります。一見奇異に思えるこの作品のタイトル も、実は深い意味がこめられていて、うならされます。 この作品以後、さまざまな歴史的背景を大胆に作中に取 り込み、本格ミステリーをの可能性を追求してゆくこと になる、島田作品の中でも重要な位置をしめる作品です。 | ||||
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