占星術殺人事件
評判
占星術殺人事件の評価:
4.03/5点 レビュー 223件。 S ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全687件 61〜80 4/35ページ
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占星術殺人事件の評価:
4.03/5点 レビュー 223件。 S ランク
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私は、この冒頭にこそ本書の魅力が詰まっていると主張する。短編として終わらせるか、エンターテイメント小説として用いるかは著者の判断である。どの道を選んでも成功できる。
トリックにおいては、現代においては成立せず、当時の警察の捜査能力からいっても見抜けたのではないかと思えるが、その奇抜な発想は比肩する物がない。
最近の3分間クッキングならぬ3分間ミステリーの氾濫、あるいは文芸性や実験性に乏しい優等生型の小説の生産にはうんざりするものがある。令和の時代には、平成の作品群が廃れる一方、あらためて本作は評価されていくであろう。再読、もしくは若い世代ほど読むべきであろう。この点で星4つとしたい。
しかしながら、本書は以下の点で欠点がある。以下はネタバレがあるので未読の方は注意していただきたい。
1. 著者は歴史に関して知識が浅いため、梅沢手記では歴史的なことは省いたほうがよかったであろう。例えば、「日本帝国は誤った道を歩んで歴史を作ってきた」(41ページ)とあるが昭和11年の段階で、その思想を一介の芸術家や犯人である時子が持つことはない。「正しい道を歩んできた」というのが大日本帝国の根本思想で、そのために戦争や帝国主義、徴兵制が国民に受け入れられてきた。したがって、「朝鮮系の民族に支配され」(42ページ)るという思想は一般市民になく、また公にすれば思想犯として取り締まられる(憲法には、万世一系の「天皇は神聖にして不可侵」ということが記されていた)。
また、日本列島に台湾が含まれていない。さらに、沖縄が日本古来の領土というのは近代の認識である。琉球処分に見られるように戦前において、沖縄は独特の位置があった(そのため、沖縄戦では捨て石にされた)。領土というものが変遷するのが当時で、当時の社会常識が描けていない。
2. 肝心な手記の筆跡が偽造されていたという点。梅沢平吉が文字をほとんど書かなかったというのは不自然であり、関係者がこのことに誰も気づかず、40年も騙し通せるものではない。非常に文芸性の高い「梅沢平吉の手記」を犯人がなりすまして書く必要性が無くなり、整合性がなくなってしまう。
3. 竹越文次郎が時子の誘いに乗るかどうか際どい。以前から関係を持っていた方が良い。
4. 誰の助けもなく、何十年も時子が消息不明、目撃者なしは可能であるのか。また仲の悪い義姉妹を巧妙に誘い出すことができたのか。3を含め、偶然性が高く、世紀の知能犯を感じさせない点。
5. 時子は実母と実父の関係は良好であるため、これだけの大量殺人を行い、父を失い、母を苦しめる必要がなかったように感じた点。時子の遺書からは良心的、常識的に感じ、とてもこのような狂気じみた犯行を行えたように感じなかった点。
1~5の点は小説であるのでマイナス評価はしないが、やはり星をマイナス一つとせざるをえないのは犯行動機である。犯人の遺書を読む限り、8人も大量殺人をしないといけない理由が分からない。養母に冷遇されるというのは当時よくあったことである。過剰報復であり、遺書からは狂気性が見られない。この最後の犯人の遺書に、「梅沢平吉の手記」に見られたような狂気性が欲しかった。この娘ならこのような凶行もやりかねないと思えるような内容であればよかったであろう。「梅沢平吉の手記」の完全性ゆえに、それ以降はこれ以上のものが書けなかったのかもしれない。
個人的には、犯行が戦前、しかも二・二六事件の頃であるだけに、動機に奥深いものを期待してしまった(雉機関が実在し、その陰謀が行われたことを期待した)。よって、星一つ減の4つとしたい。