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白い僧院の殺人
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白い僧院の殺人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全23件 1~20 1/2ページ
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雪の上に家に入った足跡はあるのに出た形跡はない密室殺人が起こり我らの名探偵ヘンリー・メルヴィル卿が謎を解く 解決編を読めば なるほど犯人が第一発見者でないならその方法しか無いな と納得します 今回はカーらしい笑劇はあまり有りません | ||||
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カー作品にありがちな、登場人物がよく喋る、喋る。 たまーに、イギリスにいるのかアメリカにいるのか、誰がアメリカ人で誰がイギリス人なのか忘れてしまいます。 HM卿(だったりフェル博士だったり)が現場入りするのが待ち遠しい (作品によって、初めの数十ページが捗らない)。 HM卿がお屋敷に着いてからページがさくさく進むのは個人的な傾向なのですが、 トリックに脱帽。 トリックと呼ぶべきなのか、プロットと呼ぶべきなのかわからないけれども、 全体を通してカーらしく上手く伏線が張り巡らされていて、 犯人の心理に対するHM卿の考察と、それに基づく行動にも説得力があります。 HM卿以外は黙っていてもらいたいと(いつも)思いながら、それではお話にならないのでしょうが… 怪奇色がないところに些か物足りなさを感じるのは、そういう作品を読みすぎていたせいかもしれないけれど、 純本格物として十二分に楽しめます。 「最後の謎解きにあなたは必ず驚愕する」のコピーがこの本の帯にないのがおかしいくらい! | ||||
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もうカーって言うだけで★5 | ||||
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トリックそのものにはそれ程の驚きはないが、そういう事態に至る背景としての人間関係や種々の行動の流れが面白い。とにかく冗長な説明もなく、とても読みやすい作品です。 | ||||
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有名になったスターを「自分がBigにしてやった」なんて思っている人は得てしてよくいるものですが…。 ▼ ▼ この長篇における女優マーシャ・テイト殺しの真犯人・動機・残された一人分の足跡の理由もだけど、 真犯人が使った兇器を当てるのはちょっと無理だろ?…序盤でちゃんと手掛かりは提示されているけど。 舞台となる〝白い僧院〟。本館・屋根付き車寄せ・常緑樹の並木道・厩舎・別館(屍体発見現場)…。 それらの位置取りはやっぱり図があったほうが解り易く、実際に読んでいないレビュアーは知らんだろうが、 本書では翻訳者・高沢浩氏原案による見取図が8頁に載せられている。 本作は『黒死荘の殺人』(プレーグ・コートの殺人)より後の事件で、 主人公はアメリカからやってきた外交官で、ヘンリ・メリヴェール卿の甥っ子でもあるジェームズ・ベネット青年。 冬の早朝〝白い僧院〟に到着したベネット青年は別館の戸口にいたジョン・ブーン(屋敷の主モーリスの弟)によって、 〝蝶よ花よ〟扱いの女優の死を知らされる。毒入りチョコレート脅迫という前奏はあったが、誰が何のために…? これから読む人は「雪の降っていた時/やんでいた時」「飼われている猛犬テンペストの動き」に気を留めながら、 物語を追っていくといい。それと現場には絡んでこない新聞界のドンについてもしっかり把握しておかないと、 終盤の解決篇で明かされる〝もうひとつの関係〟がイマイチ理解できないかもしれない。 ▽ ▽ 作品自体は★5つでいいが、せっかくリニューアルした2019年新訳版なのに「ボロ状態のレア本ヤフオク転売をやめない人間」に解説をいまだに書かせているのには呆れる。心ならずも減点したのはこれだけが理由。 | ||||
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1934年に原著刊行されたヘンリ・メリヴェール卿物の長編第二作。 〈足跡の無い殺人〉テーマの古典的名作だが、メインの着想によほど自信があったのか、カーお得意の怪奇色は殆ど無く、登場人物たちが繰り出す多重解決的な推理合戦が興味を惹く。その上でメリヴェール卿が明かす真相はスマートそのもの。 余談だが横溝正史のいくつかの作品を想起させる要素が多々あり、カーが彼に与えた影響の大きさに改めて感じ入った。 | ||||
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クリスティー、クイーン、カーと黄金時代の巨匠の中で、個人的に最も読んでいないのがカーだ。ということは、それなりに面白いとされる作品を、けっこう読んでいないのである。本書もそんな1冊。裏表紙には「“不可能犯罪の巨匠”の残した数多くの名作の中でも代表作の一つ」とあるし、かの江戸川乱歩も本書を激賞したというから、カーのベスト10に入れていいんじゃないかと思う。 ※以下の文に少しネタバレを含みます。※※ 雪が密室状況を生む、という古典的なミステリである。しかも機械的なトリックではなく、心理的なトリックである。僕はミステリファンではあるが、機械的なトリックというものに興味が持てなくて、それゆえ密室物とその代名詞であるカーを避けてきたようなところがあるのだが、本書の心理的なトリックには「なるほど!」と感心した。ただ、密室状況が犯人の意図ではなかったことは少し残念だった。 本書はカーター・ディクスン名義なので、登場する名探偵はHMことヘンリー・メリヴェール卿だ。僕が熱心なカー読者ではない理由のひとつに、カーの創造した名探偵にどうもいまいち魅力を感じないことも挙げられる。本書ではアメリカから来た甥御のために一肌脱ぐHMだが、「ほ、ほ、ほ、このとんまめ!」とか言いながらドタドタ歩くこの太った老紳士にどう愛着を持てばいいのか、結局今回もわからなかった。 | ||||
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創元新訳カーシリーズの印象が良く、1930年代のJDC/CDを全部読みたい! で昔の文庫本を引っ張り出して再読。四十年ほど前に一度読んでいるのですが全く内容を忘れていました。状況設定はプレーグコート黒死荘とネガポジ?の関係、姉妹編といった印象です。JDC/CD的に工夫たっぷりの良くできた探偵小説なのですが、いつものように被害者を上手く描けていません。それに絵になる設定が多いのにイメージがはっきりと浮かばないのは描写がゴタゴタしてるからだと思います。ところでp85の注に“「黒死荘の殺人」(本文庫近刊)”となっていました(手元の版は1978年5月再版)… 実際の出版は2012年、35年後です… | ||||
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学生時代に最初に読んだ時はカーの最高傑作と感激したが30年以上経って再読してみると退屈で読みにくさが目立った。トリックの基本を記憶していたせいか読み進めるのに苦労した。思わせぶりな会話や話の脱線など読者を煙に巻くだけの冗長部分が作品としての完成度を落としている。また登場人物に魅力が感じられない。ロマンスも余計でかえって興ざめであった。 トリックはさすがに再読しても見事と思った。パズルとしての論理性も高いのだが、読者に最後までわからないようにしているのが、わざとらしく、もしもっとはっきりと証拠が提示されていたら真犯人が簡単にわかってしまうかもしれない。また、ジョン・ブーンの言動がキーになるわけだが、その根拠は今一つ納得がいかなかった。 一番面白かったのは「第13章 妖婦の夫」でここで語られるある人物像は迫真のものがあった。足跡トリックの別の解が2つ提示されるのも面白いが結果的には頁をかせぐだけの冗長感を禁じ得なかった。 | ||||
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怪奇ミステリーが好きなので、足跡トリックのあたりは身が入らず、よみとばしてしまいました。 結末だけ読んじゃった。 | ||||
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専売特許の怪奇・オカルト趣向を封印し、ひたすら「足跡のない殺人」(あるいは「雪上の不可解な足跡」)テーマに拘泥した作品。 このテーマには古今東西の幾多の作家が挑戦しているが、近年のミステリファンなら法月綸太郎の『雪密室』、有栖川有栖の『スウェーデン館の謎』、二階堂黎人の『吸血の家』あたりはお読みだろうか? カー自身もこのテーマに対する執着は強かったようで、『三つの棺』、『テニスコートの謎』、『貴婦人として死す』でもこのヴァリエーションを使っている。それらの端緒となったこの作品は、このテーマの古典と言っていいだろう。 状況設定は込み入っているようだが、トリックの根本は単純な「コロンブスの卵」的な発想の転換で、カーお得意の「○○の××」によるものだ。『帽子収集狂事件』もそうだが、江戸川乱歩はこの手のトリックがすこぶるお好きだったらしく、この作品も手放しで称賛している。 いつものゴシック・モードや幽霊譚でミス・ディレクションを引かず、女優マーシャ・テートを巡って渦巻く男たちの愛憎や嫉妬や利害から動機を導く、ベタな現代劇の手法はカーとしては珍しい。 この男たちが互いを裁断し合うために提示するもっともらしい仮説を巡って、プロットは二転三転する。 「雪上の足跡」トリックは、雪の降り始めから止んだ時までの特定時間内でしか成立しないから、その時間内での人物の行動のタイム・ラグが推理のキモになる。 真夜中に本館と別館を密かに行きかう登場人物たち、ロンドンから現場に到着する車、吼える犬・・・これらの時系列上の時間差は、カーの筆致の独特の曖昧さもあって、よっぽど注意深くメモでもしないかぎり頭に入ってこない。さらに、あまり要領がいいとはいえない翻訳が混乱に拍車をかける。 きちんと推理しながら読むのはほとんど体力勝負だろう。 体力勝負だよ、日本サッカー!! | ||||
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レヴューを読んで、H・Mシリーズも読みたくなり、次々と買っています。これも面白かった。このトリックも、全然わかりませんでした。うーん。またディクスンにしてやられた感じです。色のついたタイトル物はおすすめです。 | ||||
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正直期待していたような「もうこの状況が作り出せる経緯が考え付かない」という状態に陥らなかった。丁寧に書かれた 作品ではあるが、古典だからここまで持ち上げられるのか、如何せん意外性はない。確かに一見不可能な状況ではあるがまだ 一つの可能性が残っているのに誰もそれを考慮しようとしないし、まるっきり見当違いの考察を続ける、 というふうに仕掛が分かる人には思われるだろう。 それは作品の正当な評価といえるだろうか? 重要なのは読み手が何を期待して本書を求めるか、ということだ。 率直にいうと最近のミステリ作家は古典をしっかり読んで、それで新しい(と読者には思える)作品を書いているので 本書も例外でなく、勉強された古典作品の域を出ない。だから精緻に、徹底して考察を重ねて導かれる結論は、という 本来ならば称賛に値する手法では「もはや自明の結論」を浮き彫りにしてしまうのだ。 だが、それは古典を勉強したミステリ作家の作品を読み慣れている人だからいえることだし、トリックが容易に分かったからこの作品は駄作だ、などという浅薄な意見は退けられるぐらいの力をこの作品は持っている。そもそも唯一の可能性を読者がすぐに思い浮かべることが出来るのは、本書が作中でそれ以外の可能性を既に排斥しているからこそであり、故に模範的な推理小説という事実は揺るがない。 ではなぜ星三つなどという中途半端な評価なのかというと、まず先述の通り仕掛けを見抜くことが容易い構造の作品であり、現代ミステリを読み慣れた読者には猶更である、ということ。 だから、何が言いたいのかというと、人によっては眠くなる本ですよ、と言いたかっただけです、すみません | ||||
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一見すると複雑な事件に見えるこの作品、 実はよーく紐解いてみると かなり単純という実は視点を変えてしまうと がっかりな作品でもあるのです。 そんな事件を解決するのは ヘンリ・メリヴェール卿。 彼のせりふは毒がありますが それでも的確に事件を解決していきます。 でも、やはり手法は ある程度読みなれている人には ワンパターンという感が否めないことでしょう。 もちろん、読みなれていない人には ハラハラした展開、そして思わぬ事実に 驚いてしまうことでしょう。 | ||||
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犯行現場となった建物の周囲は雪に覆われ、残されているのは、ほんの少し前 につけられた、発見者の足跡のみであるにもかかわらず、被害者は、それよりも 何時間も前に死んでいたという不可能状況を、機械的仕掛けを用いず、心理的 に処理した《足跡》テーマの代名詞的作品。 作中では、犯人がいかにして足跡を残さず、移動できたかに焦点が絞られ、 さまざまな仮説が立てられますが、それ自体、作者による巧妙なミスリード で、終盤においてH・M卿が開陳する、事件の構図を鮮やかに反転させる 推理を効果的に見せる布石となっています。 また、殺人事件の背景には、映画のスポンサーと脚本家のトラブルといった背景が あり、それが事件の様相を複雑なものにしているのですが、犯行現場の邸で飼われ ている犬も、不可能状況の構成に欠かせない重要な境界条件となっているのが秀逸 です。 ただ中盤、容疑者にされた脚本家が遺書を残し、自殺未遂を起こすのですが、 遺書の内容も含め、あまりに不自然で、トリックを構成するための作者の都合 が透けてみえてしまうのが残念なところ。 | ||||
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カーが発明した不可能犯罪トリックの中でも、 もっとも優れたものと、 江戸川乱歩が激賞したとされる作品です。 乱歩の激賞というのは、 現代の私たちの感覚からすると 的を得ていないものもあるようですが、 本作品は違います。 なかなかの傑作といえる作品ではないかと思います。 <白い僧院>と呼ばれる邸宅に宿泊した女優、 マーシャ・テート。 翌朝、彼女は、別館の部屋の中で 殴殺死体となって発見されます。 邸宅の周りには、前夜降った雪が積もっており、 足跡は、死体の発見者のものしかありませんでした。 犯人はどうやって殺害現場に進入し、 脱出したのでしょうか? 名探偵、ヘンリー・メリヴェール卿の推理が光ります。 この作品のトリック、核心部分は極めてシンプルです。 ただ、この作品がきっちりと 長編小説として成り立っているのは、 複雑な事件の真相があり、 幾重にも張られた伏線がしっかりと活きているからです。 本作品で起きる事件は、 生前のマーシャ・テートに贈られた 毒入りチョコレート事件、 そして、物語の中盤以降に起こる 自殺ともう1件の殺人があります。 さらに、<白い僧院>とは離れた場所で起きた ある事件も関わってきます。 これら事件の複雑に絡み合った真相が どのように解かれていくのかという物語展開は、 読む者を飽きさせることはありません。 メイントリックだけを取り上げれば、 非常に簡潔なものですが、 小説として膨らみを持たせ、 長編として読ませる作者の手腕はさすがと言わざるを得ません。 雪密室の古典とも言える本作品は、 数ある密室ミステリの中でも、 屈指の傑作に入ることは間違いないと思います。 | ||||
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密室をテーマにした不可能犯罪物の中でも最高に属する一冊でしょう。個人的に一番最高な 密室物(一番好きな推理小説でもある)はガストン・ルルーの『黄色い部屋の謎』なんです が、この作品が持つ密室の構成要素は受動的で〈陰〉に近く、心理的に訴える部分が魅力で すが、本書のソレは対照的に〈陽〉に近く、絶対的で極限のパズラーとして向き合える魅力 があります。 カー独自の怪奇的趣味による装飾がほとんどされておらず、それ故に躍動する人間像がそこ にしっかりとあり、非常に人間くさい。事実が明らかになるに連れ取って付けたような胡散 臭さを感じる推理小説は沢山あるが、本書は上記のような理由からそう感じない。 何より事件解決に乗り出すH・M(ヘンリ・メリヴェール卿)が、やたら人間くさくて滅法素敵 なんですね。 まあ、とかく完成度が高い事は請け合いであって細々とした批評は必要ないですね。この密室 の、どうしようもない程の不可能さ加減を是非満喫してみてください。 | ||||
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本書はカーター・ディクスンの最高傑作で、本書の密室トリックについては、江戸川乱歩が「カーが発明した不可能犯罪のトリックの内でも、最も優れたものの一つ」と激賞しているとおりである。 カーター・ディクスンは、最初の作品『弓弦城殺人事件』と、ヘンリ・メリヴェール卿初登場の『プレーグ・コートの殺人』から2作目の本書、3作目の『赤後家の殺人』までは、当初ディクスン・カーをひっくり返した「カー・ディクスン」という名前であった。 そしてこのカー・ディクスン名義の作品(とくにHMが登場する作品)に、後にカーター・ディクスンに統一されたディクスン名義の傑作が集中している。 (以後の作品でこの3作に匹敵する作品は、『ユダの窓』ぐらいだろう。) 本書を始めとするこの3作に共通して言えるのは、そのトリックの独創性と切れ味のほか、張りめぐらされた伏線がきちっとパズルのピースの一片であるがごとくにあてはまる、作品全体の緻密な構成にある。 とくに本書においては、死体の発見された別館の入り口には発見者以外の足跡が残っていないという「雪の密室」の謎と、複雑にちりばめられた伏線に対し、HM卿のたった一言でトリックの全貌が明らかにされる、その単純明快さゆえの「ああ、そうだったのか!」という衝撃が実に心地よく、その衝撃と快感は、ディクスン・カー名義の最高傑作『皇帝のかぎ煙草入れ』に匹敵するものである。 しかし『皇帝のかぎ煙草入れ』もそうであったが、本書にはカー独特の怪奇趣味が薄いため、残念ながらカーの真価を味わうには十分とは言えない。 とはいえカー初心者には、『皇帝のかぎ煙草入れ』よりも本書の方が、密室という不可能犯罪に正面から挑んでいる分、カーの持ち味(ほんの「さわり」ではあるが)を知るのに適していると思う。 | ||||
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"雪の上の足跡もの"として著名なカーの代表作。カーとしては珍しく荘厳さを重要視しているようで、いつものドタバタ騒ぎは起こらない。事件が起こる場所も<白い僧院>。場所も凝っている。 雪の中、この建物内で殺人事件が起きるが、発見者(犯人ではない)以外の足跡が見当たらないという不可能犯罪状態。冒頭で大きな謎を仕掛けて結局竜頭蛇尾に終るといういつもの悪癖とは無縁。登場人物の行動、伏線、人間模様、建物の構造等で謎がロジカルに解ける。 読者の頭上にも雪が舞い落ちるような透明感の中、不可思議な謎が解けていく快感が味わえるカーの傑作。 | ||||
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周囲に雪が積もった建物の中で死体が発見されるが、犯人が逃走の際につけたはずの足跡が存在しないというパターンのいわゆる“雪の密室”は、推理小説の中でもかなり多用されており、本作がオリジナルというわけでもありません。しかし、“白い僧院”という語句が“雪の密室”の代名詞として使われるくらい、この分野における本作の存在感は群を抜いています。発表から70年も経ってから読むと、さすがにトリックはシンプル過ぎて物足りなく感じられる面もありますが、その分“雪の密室”が構成された事情に不自然さがなく、かつ謎として魅力的であるという、極めて両立の難しい2つの価値が見事に両立しています。 カーター・ディクスン(ディクスン・カー)の殆どの作品と同じく本作もイギリスが舞台ですが、ハリウッド女優や映画監督がイギリスを訪問するという趣向によって、ややアメリカ的な色が導入されているのが面白いと感じました。エラリー・クイーンのハリウッド・シリーズを想起させ、彼が本来アメリカ人であるということを思い出させてくれます。また、本作では得意の怪奇趣味が排除されていますが、本作のスッキリしたトリックにはそれがよく合っています。彼は単に怪奇趣味が好きだから導入しているわけではなく、ちゃんと小説上の効果を考えて使っているのだということに気づかされました。 | ||||
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