蝋人形館の殺人
- 名探偵アンリ・バンコラン (6)
- 蝋人形館 (1)
- 館 (42)
- 館もの (69)
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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へんな結末 | ||||
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久々のカー作品。しかもハヤカワ・ミステリでしか刊行されていなかったバンコラン物の作品で、さらに新訳と来ている。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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著者の初期作は評価されることが少ないが、読んでみると雰囲気たっぷりでなかなか面白い。全体的な雰囲気は乱歩的でおどろおどろしい展開となっているが、その中で当時のパリの街の様子がとても魅力的に描かれている。カーはトリックテラーとして有名だが、この作品はトリックやストーリー以上に、作品が醸し出す雰囲気を楽しむのがよい。 | ||||
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事件の発端から最後まで、期待した通りの展開ではあったが、意外性はなく中庸の評価です。 | ||||
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スタンリー・キューブリック映画『アイズワイドシャット』の中で、素性を隠した男と女のいかがわしい目的の為の、 余計な詮索をすると災いをなす、館の仮面パーティーが出てきます。本作においてパリの夜を牛耳っている、 エティエンヌ・ギャランの経営するナイトクラブもきっとあれに近い、情事の場をセッティングする魔窟なのでしょう。 世間体が大事な上流階級の人間は特に、こんな世界と関わりを持ってはいけない訳で・・・。 ▼ ▼ 酒・シンガー・踊り子・楽隊。ムーラン・ルージュに彩られたジャズ・エイジ達の退廃の街。そこは「表」の顔と、 「裏」の顔が存在している淫楽の空間。そこで予審判事アンリ・バンコランは知ることになる。 オーギュスタン蠟人形館で目撃された後に姿を消した令嬢オデット・デュシェーヌが死体となってセーヌ川に浮かび、 オデットの親友クローディーヌ・マルテル嬢までが刺殺され蠟人形館の中で怪物サティロスの像に抱かれているのを。 令嬢殺しの‶ある伏線〟は最初の数章に張ってあるので再読し確認する愉しみの形は出来ているものの、 カーにとって初期の仕事なのでプロットのダイナミックさよりも、まだまだムード作りのほうが先行している。 のちの傑作だったら怪奇極まる前半のパートを後半の推理パートが切れ味鋭く追走していくのだが。 以前は抄訳ゆえにいろいろ問題があって正当な評価を下すのが難しかった、この長篇。 本書にて初めての文庫化というだけでなく完訳がなされているという。ちなみに、 昭和20年代に妹尾アキ夫が訳したポケミス版と今回和爾桃子が訳した本書、各章のタイトル訳を比べてみる。 ◇ポケミス版→◆本書=創元推理文庫版 ◇茶色の帽子→◆幽霊は茶色い帽子をかぶる ◇緑の灯影→◆緑光の凶行 ◇赤い滴→◆通路の血だまり ◇幻の女→◆幻が現実に ◇秘密クラブ→◆銀の鍵クラブ ◇エステル嬢→◆歌手エステル ◇デュシェーヌ夫人→◆第二の仮面 ◇棺のそば→◆棺越しの密談 ◇ドミノの家→◆ドミノの家 ◇黒い影→◆死の黒い影 ◇あの声!→◆赤鼻氏のお道楽 ◇クラブへ侵入→◆潜入捜査 ◇屏風の陰→◆ジーナの反抗 ◇ナイフ→◆ナイフ! ◇二重生活→◆秘そやかな愉しみ ◇死人、窓を開ける→◆死人が窓を押しあける ◇腕時計→◆蠟人形館の殺人者 ◇黒いケイプの男→◆正々堂々たる一撃 ◇スペイドの三→◆青酸にカードを一枚 カーの原文は同じ筈なのになんでこんなに違いが生じてくるのか、どうにも笑ってしまう。 全ての読者が旧訳本を所有しているとは限らないのでどこが省かれていたのかを解説で丁寧に指摘し、 誰でもわかるようにしてほしい。さらに私はこの訳者の言葉遣いのセンスが気になってしょうがない。 相変わらず和爾桃子が作品のムードにそぐわぬ日本語を時々当ててしまうのには萎えてしまうのだ。 ▽ ▽ バンコランの相棒であり語り手でもあるジェフ・マールが後半危地に潜入する緊迫した場面での独白で(216頁)、 ドロシー・セイヤーズのハリエット・ヴェインみたいな女性キャラならともかく彼は大のオトコなのに‶おでこ〟なんて言うか? ‶額(ひたい)〟だろ? 英語から日本語へtranslateする時に正しい言葉を選べなければプロではない。 | ||||
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怪奇趣味ミステリーの大家カーが蝋人形と言う格好のモチーフで描く本格ミスチリ。果たして、不気味な蝋人形を生かしたおぞましい連続殺人や、当時のパリの風俗が趣深い佳作となった。もっとも翻訳であるためか、横溝正史や江戸川乱步のような実感に根ざした恐怖は感じられないが、それは外国文学の宿命で仕方ないだろう。 本作の特徴として、過剰なまでのミスリードを繰り出した挙げ句の、とても読者には予想出来ない意外な真犯人や、ワトスン役の助手マール君の大活躍、そして名探偵役を超えたバンコランと真犯人の手に汗握るラストシーン、などが挙げられるが、公平に見て演出過剰のそしりは免れないと思う。それこそカーの真骨頂とも言えるのだが。特に、登場シーンが少なくて唐突に出現する感がある真犯人は本格ミステリとしては犯則ギリギリ。やはりある程度出番が多くて馴染んだ人物を真犯人に設定して、読者が推理する余地を残すのが本格ミステリの常道と思うのだ。 しかしながらいかにもカーらしい怪奇趣味と過剰な演出が楽しめるので、ファンにはたまらない作品だと思う。だにでも向くとは思えないが。 | ||||
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この『蝋人形館の殺人』は、蝋人形館をめぐって起こる名家の令嬢の連続殺人を発端に、衝撃的な解決までスリリングな展開を見せ、重厚さやリアリティには欠けるが、実に面白い。 また処女作の『夜歩く』、第3作目の『髑髏城』に続いて、魅力的な女性が次々と登場する。特に会員制の秘密クラブを巡る3人の令嬢の愛憎劇は十分今日的であるし、事件解決の鍵を握る女性の意外な正体もドラマ性を盛り上げる。 そして後年の作品と違うのは濃厚にエロティックな味付けがされている点であり、初期のカーの作品に登場する女性たちについてあまり語られる機会がないのは非常に残念だ。 個人的に嬉しかったのは、昔『絞首台の謎』(創元推理文庫)の解説で読んだ、夜のパリに出没するバンコランの服装にまつわる逸話のくだりが、作中に出てくる事だ。同じ本に掲載されていた武部本一郎画伯によるバンコランの肖像画を懐かしく思い出した。 ありふれた俊敏な探偵と評されるバンコラン。一般的にカーのキャリアにおいて、バンコランシリーズはあまり重要視されることはなく、全盛期の傑作の数々を生み出す前の習作期のような扱いをされることが多い。 ただ本作を読む限り、作者はこの探偵の性格造形に深い思い入れと愛着を持っていたことは間違いない。 バンコランからフェル博士、ヘンリー卿への探偵役の交代の理由は、作者の英国への転居、舞台のフランスの政変、作者の興味の変化などが言われているが、ファンの一人からするとひどく惜しい気がする。 悪鬼のような残虐な怪人が跋扈し、難攻不落の密室と人智を超えた不可能犯罪が連続し、そして探偵バンコランが縦横無尽に活躍し快刀乱麻の推理で事件を解決する。そんな代表作の一つとも言うべき作品が、執筆される可能性はなかったのだろうか。 本作を読み終えて、そんな思いを抱いてしまう。 | ||||
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