二人のウィリング
- ベイジル・ウィリング博士シリーズ (13)
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「やっぱりね」と思う読後感。 登場人物が多いけれど、実は素直に読むと案外単純なストーリー。 | ||||
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登場人物が多く、読んでいて、その関係がわからなくなる。 ゆえに、読むのを途中でやめまいた。 | ||||
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何冊かヘレンマクロイを読んでますが、独特の時代背景描写や、ウィリング博士のスマートさは他ではないものです。 | ||||
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半世紀以上もの訳出の遅れはあるもののそのお陰で今も決して古びない本格推理の楽しみを与えてくれる近年の再評価が著しい米国女流本格推理の人気作家マクロイ女史の長編13作目となる中期の傑作です。ちくま文庫からのマクロイ作品第2弾となる本書では、あとがきと解説のダブル仕様で親切丁寧に作品世界の良さを教えてくれておりますので、レビューを書くのがますます難しいなと思える今日この頃なのですが、私としては素人なりに常に違う事も少しは書きたいなと何時も考えていますので冒頭に一つだけ気づいた事を記しますと、最初の被害者の本名ジャック・ダガンは著者が冒頭で献辞を捧げた巨匠ジョン・ディクスン・カーと頭文字が最初の部分「J・D」で一致しているのは決して偶然ではないのだろうなと(おそらくは著者の洒落た遊び心なのだろうと)私には思えますね。それから、ちくま文庫さんのカバーは担当された女性お二方の個性が光り何とも不気味で不思議な感覚を見る者の脳に呼び起こさせる実に良いセンスだなと思いますね。 ある四月の雨の夜、ウィリング博士が立ち寄った煙草屋で男がタクシー運転手に自ら「私はウィリング博士だ」と名乗るのを聴いて驚き彼は咄嗟に次に来たタクシーで男を尾行する。やがて辿り着いたパーティーが催されている家で男に対して自分の名前を告げたウィリング博士は、その後男と共に家を出て近くのフランス料理店で事情を聞くのだが、男は「鳴く鳥がいなかった」という奇妙な言葉を最後に残して彼の目前で事切れるのだった。 まず、タクシー運転手に自分の名前を名乗る人が果たしているのだろうか?という疑問が湧いたのと同時に本人がそれを偶然に耳にする確率がどれぐらいあるのか?と考えてこの冒頭の設定が相当に疑わしく思えたのでしたが、実際には必要以上に考え過ぎでこれには複雑な裏はなく結論として「悪事はどういう形であれ暴かれる運命にある」という著者が拵えた冒頭の相当に派手でショッキングな偶然の悪戯だったのですね。まあ、この点は良いとしてもう2つの突っ込み所は、1)どうして偽者でなくウィリング博士本人が雇われなかったのか?その方がもっと上手く行く確実性が増しただろうに。2)「鳴く鳥がいなかった」と自覚する程の危険を感じていた男が(しかも彼の十分に危険が覚悟される職業からしても)どうしてこんなに無防備で易々と殺されてしまったのか?ですが、私がこれを書いたのは決して著者を責める為ではなく、ミステリーというのはそれ程に完璧に矛盾がなく書くのが難しいジャンルなのだと言いたかったからなのですね。こんなに理屈っぽい事を長々と書いて本当に申し訳ありませんが、これもひとえに私の本格ミステリーに対する真剣な愛情と強い思い入れ故の事ですので、どうかお許し願いたいと思います。さて、本書のメイン・トリックは「殺す者と殺される者」「逃げる幻」に続いて私が読んだ著者の3冊目の「モデル小説」としての趣向で、幸いにも堂々と手掛かりで出された作品があまり有名ではなかったお陰で最後まで真相に気づかずに済んでその意外性を100%心行くまで楽しめましたね。それからダイイング・メッセージのシンプルだけど何て不気味で恐ろしい意味を込めた謎解きだった事か!知的興味が満たされただけでなく誠に心胆寒からしめる思いで背筋を凍りつかされましたね。唯、訳者の方が感心されていた毒殺トリックについては前の「逃げる幻」での密室トリックの時と同様にそれ程に上等とは感じなかった事だけは正直に言っておきたいと思いますね。また著者の作品によく見られる戦争への強い憤りを込める趣向の中では本書が「強制収用所」を連想させるだけに最も深いインパクトのある内容だと感じましたね。そして本書を読んで改めて感じた事は、著者の作品テーマの暗さ重たさが精神科医探偵ウィリング博士の健全性と安心感によって随分と救われているなあという思いですね。最後に本書で私があのクリスティー女史が作品に込めた想いと共通する趣向だなと感じた点について書きますと、ある短編作品で「探偵はいつも殺人が終わった後に後追いで事件の謎を解くだけで決して未然に人命を救えない」というジレンマを反省されてかその不満を解消する内容を書かれていたのですが、やはり一流の作家は同じ事を考えるのかマクロイ女史はまさにそれと同じ理由から本書を書かれたのに違いないと思えますね。ウィリング博士が最初の二人の殺人は防げなかった物の、チャンスを確実にものにして後の2人の命を救った事には本当に深い感動の思いが込み上げて来ましたね。この派手ではなく地味だけれど肝心な時には不言実行で確かに良き行いを為す筋金入りの善良さだけを取っても、私は今回もやっぱり彼が心から大好きな探偵だと声を大にして言いたいと思いますね。 ちくま文庫からの翻訳が二冊続いて創元推理文庫の方は打ち切りになったのかはまだ不明ですが、確実に著者の作品が年に一冊は紹介される流れになっていると感じられますので、この調子でどんどん未訳作品が読めます様にと祈りながら今後も大いに期待して待ちたいと思いますね。 | ||||
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原題 Alias Basil Willing 原著1951年刊行 ウィリング博士の名を騙る男が博士の面前で怪死するという謎めいた発端から快調に物語に引き込まれる。初期の端整でオーソドックスながら創意に満ちたフーダニットに比べれば、スリラー的傾向の強い作品だが、何気無い会話の端々に秘められた伏線が明らかになる終盤の謎解きは本格ミステリを読む快楽そのものだ。とりわけ「鳴く鳥がいなかった」というダイニングメッセージをめぐる謎の解明は秀逸。 ある精神科医のクライアントである階級や身分も様々で多彩な登場人物たちを僅かな紙数で描き分ける筆力も見事で、作者ならではの冷徹さと温もりが合わさった人間観察に基づく、マクロイの著作を愉しむ大きな魅力の一つである。 事件の真相は意外かつ唖然とするものだが、傑作『逃げる幻』などにも見られる、この時期のマクロイ作品に顕著な第二次世界大戦が残した人心の荒廃や社会不安の影響が色濃く感じられる。本書の主題は現代人が抱える孤独や絶望にも通じ、今も小説としての豊かさを失わない、そのアクチュアリティには驚かされる。 | ||||
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