(短編集)
怪盗ニック全仕事3
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短編ミステリーの神さま、ホックが生み出したヒーローの中でもファンの間で一際人気の高い怪盗ニックの全作品集成の第3弾です。初めにこれが私の書いた通算2016件目のレビューでありまして、とうとう現在の西暦の数字に追いつきました。すみません、勿論こんなどうでもいい個人的な事を書くべきではないのですが、どうにも書きたい気持ちを抑えられずにご迷惑をお掛けしました事を皆様に深くお詫び致します。どうかお許し下さい。さて、本全集も3冊目になると解説を書かれる木村二郎氏も大変でかなりご苦労されているなとお察ししますが、それでも笑いや機知の大好きな私には解説のオマケとも言える帯の「そして、あなたの時間も盗みます!」や「怪盗ニックを見たら泥棒と思え」といったベタなキャッチ・コピーは中々に楽しめましたので、これはこれで考えるのも大変でしょうけれどこれからも期待したいですね。今回は日頃から思っていた事を幾つか書きますが、怪盗ニックは基本的につまらない物ばかりが盗みの対象のせいなのか(でもきっちりと依頼人から報酬を得ているのですがね)、警察から真剣に窃盗犯としてマークされてはおらず多分に目こぼしされているみたいなのが面白いですよね。それから偶然ながら本全集で一冊毎に怪盗ニックと恋人グロリアとの関係性がそれぞれ微妙に変化しているのが興味深く、第1集では何の疑いも抱いていないのが、第2集になると政府の役人なのだと勝手に思い込んで、そして本第3集では遂に正体がバレて隠し事が一切無くなるという風に段々とお互いの気遣いが減ってハッピーになるのが読者にとっても喜ばしくスッキリとして一安心出来ますよね。シリーズもこれで3冊目となると無理もなく内容的に謎が段々と小粒になって来た感がありますが、でもベテランの著者ならではの常に堅実な本格推理の大技小技で楽しませてくれますので全編から満足感が得られますし、ちなみに次巻からは著者が新機軸としてライバルの商売敵「女怪盗サンドラ」を登場させて気分一新しマンネリの打破を図られていますのでまた新たな楽しみが期待できますね。 『つたない子供の絵を盗め』高が子供の絵に二万ドルも払うというのがどうにも不自然で引っかかりますが謎解きはまずまずの出来で、別にグロリア誘拐の一幕もあってニックの彼女への強い愛を確認出来たのが収穫でしたね。『家族のポートレート写真を盗め』一見して明白な動機の誘拐事件の裏に隠された複雑な企みの真相に唸らされましたが、ニックが自ら報酬を拒否するラストは信じられない程の本当に稀なケースでしょうね。『駐日アメリカ大使の電話機を盗め』今回の依頼主はCIAという事で(勿論これは架空の話ですが)目的の為なら手段を選ばずに犯罪者をも雇うアメリカの柔軟さを感じましたね。日本が舞台のスパイ・スリラーですが、当然ながら同盟国の日本についてそんなに悪くは書けない所為で結末を無難にまとめた感があり期待した割には盛り上がらず惜しかったです。『きのうの新聞を盗め』ニックがグロリアに十三年目に初めて告げた真実に対する反応が依頼料金の5千ドル値上げを忠告した事というのが愉快でしたね。見え見えだけどアリバイ工作トリックはお見事な出来で、またニックが依頼人だからといって手加減せずに正義を貫く姿勢に人としての公正さを感じましたね。『消防士のヘルメットを盗め』この依頼人はどうしてもっと安価な方法を考えないのか?節約家の私には到底理解できませんが、放火犯殺人事件の謎解きに感心しニックの情ある見逃しには胸が熱くなりましたね。『競走馬の飲み水を盗め』やり手の女新聞記者に弱みを握られ大ピンチに陥るニックですが、鋭い推理で意外な犯罪を暴いて窮地を脱する鮮やかな手際が何とも痛快ですね。『銀行家の灰皿を盗め』運悪く引き受けた依頼をキャンセルされ無駄働きになりそうなピンチにスンナリと引き下がらず何が何でも報酬を得ようと奮闘するニックの執念が素晴らしく2回の仕事で報酬は1回分という結果に不満なガメツさ(潔癖さ?)も愉快ですね。『スペードの4を盗め』即興で非常に困難な良い仕事を為し遂げたのに珍しく今回のニックはタダ働きとなり誠に不運としか言えず踏んだり蹴ったりでしたね。『感謝祭の七面鳥を盗め』何と大胆にもニックとグロリアが共働きするという珍しいケースで、私は最初の方でニックが胸の内を吐露する独白「グロリアがいなくなれば、百万ドルなんてなんの意味もない」に強い感動を覚えましたね。特殊な知識がなければ解けない推理ではありますが、悪党が自ら墓穴を掘る筋書きが痛快な読み心地ですし、ニックの恋人を愛する想いの深さにも触れられて大満足でしたので、私は本作をぜひ本書のベストに推したいですね。『ゴーストタウンの蜘蛛の巣を盗め』やや信憑性は薄いですが単なる蜘蛛の巣を盗ませるなどというけったいな発想は著者にしか出来ないでしょうね。ニックには名探偵の腕前をちゃっかりと報酬に代えてみせる逞しさがあるなと感心しますね。『赤い風船を盗め』上院議員の州祭りでの演説会での暗殺計画と別の殺人事件の解明にも孤軍奮闘して意外な真相を突き止めたのに無報酬とはツキに見放されたとしか言い様がなくニックが誠にお気の毒ですよね。本巻ではこういう事が多くなって来ましたので(世知辛い世の中の所為なのか)依頼料金の値上げは正解と言えますね。『田舎町の絵はがきを盗め』ご主人に忠実な店の番犬を騙すニックの作戦が秀逸で、最後に鮮やかなどんでん返しが味わえる好編ですね。『サパークラブの石鹸を盗め』警察が絡んでまたもや無報酬になりそうな危機をそうはさせまいと脛に傷を持つ奴からきっちり金を取り立て、プロの捜査官には鋭い推理で導き出した真実をわざわざ教えてやるニックは本当にカッコいいですね。『使用済みのティーバッグを盗め』今回も警察絡みの事件で、こうして見ると意外にもニックはその筋から確かな腕に対し厚い信頼を得ているんじゃないかと思わざるを得ませんね。今回も警察の上を行く名推理で真相を暴き出し犯人逮捕のお膳立てまでやってのける段違いの腕前には惚れ惚れとしますね。 最後に短編ミステリー職人の著者にとってはミステリーの切れ味と完成度はもはや当たり前で朝飯前の仕事で、私としては最高にユニークなキャラクター、ニック・ベルベットの悪党とは決して呼べない彼の人間くさい性格の一端がうかがい知れるエピソードをもっと読みたいと思っていますので、推理だけではなくその部分にも今後ますます注目して行きたいですね。 | ||||
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収録作品 「つたない子供の絵を盗め」 「家族のポートレイト写真を盗め」 「駐日アメリカ大使の電話機を盗め」 「きのうの新聞を盗め」 「消防士のヘルメットを盗め」 「競走馬の飲み水を盗め」 「銀行家の灰皿を盗め」 「スペードの4を盗め」 「感謝祭の七面鳥を盗め」 「ゴーストタウンの蜘蛛の巣を盗め」 「赤い風船を盗め」 「田舎町の絵はがきを盗め」 「サパークラブの石鹸を盗め」 「使用済みのティーバッグを盗め」 価値の無い物だけを盗み出すプロフェッショナル、ニック・ヴェルヴェットものを日本独自編集したシリーズ第三集。 如何に盗むかのハウダニットの魅力と、何故無価値に思える物を手に入れたいかというホワイダニット、さらにニックが時に探偵役となる犯人探しの興趣が融合した面白さが本シリーズの特色だが、本書では依頼人の意図を探るホワイダニットの方に力点が置かれた短編が目立つ。その点、奇想天外な盗みの手口やアイデアの魅力は初期作品に比べ控え目だが、個々の短編ごとに趣向を凝らし読者を飽きさせない職人芸は変わらず見事。 子供の絵が意外な陰謀を炙り出す冒頭作、フーダニットの傑作「消防士のヘルメット〜」、秀逸なアイデアの「ゴーストタウンの蜘蛛の巣〜」、逆転の構図も鮮やかな「使用済みのティーバッグ〜」などが印象に残るが、日本が舞台の「駐日アメリカ大使〜」はシリーズ屈指の異色作。ニックがオークラに宿泊したり、三越で買い物するのも楽しいが、第二次大戦綺談とも言うべきエスピオナージュ風物語の結末には絶句必至。 | ||||
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