愚者たちの棺
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イギリスの片田舎で起こった怪事件。被害者や容疑者、関係者はもとより、署長から検視官に至るまでクセの強い面々。パーブライト警部はシニカルな皮肉屋とはいえ比較的普通の常識人です。 ホームズやポアロのようないかにも天才的というタイプではないですが、きちっとした推理を組み、最後の思いもよらないどんでん返しにまで失敗することなく導きます。そして事件の顛末を振り返る後日談までも、なかなかにキツいシャレが仕込まれていて最後まで飽きることはありません。 一度読んで驚き、もう一度地の文にちりばめられている証拠がいかにカモフラージュされているかを楽しみ、そしてもういちど全部わかっていてもなお、細部の新発見を楽しんで読める逸品です。 シリーズがどんどん翻訳されるといいなと期待してます。 | ||||
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不思議な事にこれまで半世紀以上もの長きに渡って全く注目されず紹介されなかった英国本格推理の実力作家ワトスンのデビュー長編小説です。私は本書で解説を書かれている森英俊氏の著作「世界ミステリ作家辞典 本格派篇」を今回ひもといて見たのですが著者の名は全く記載されていなくて驚いたのと同時にまだまだ知られざる古い時代の実力作家は他にもたくさんおられるのに違いないなと改めて思いましたね。英国本格の人気作家ディヴァインと著者を比較しますと似ているのはどちらも寡作だった点ぐらいで、ディヴァインの方が一作毎に素人探偵を主人公にしているのに対して、ワトスンは名探偵パーブライト警部が主役のシリーズの執筆を貫き通した事(寧ろ女流作家ロラックのマクドナルド警部そっくりですね)や、ディヴァインが悪の他にも男女の恋愛ドラマを好んで織り込んでいるのですが、著者の場合はそういった人間愛の描写は皆無で徹底して人間のネガティヴな悪の面を追及する姿勢が感じられる等々という部分から見て極めて対照的だなと思えますね。人情としてはどうしてもディヴァインの方が好まれる分がありそうですが、著者の作風の救いはパーブライト警部の明るさとほのかなユーモア、そして玄人好みのトリッキーなプロットの素晴らしさがありますので、日本の厳しい推理ファンの人気を獲得して順調よくシリーズ全12作の紹介までめでたく漕ぎ着けられるかどうかこれから気長に見守って行きたいと思いますね。 英国の架空の港町フラックスボローの大立者キャロブリート氏の地味な葬儀から七ヶ月が過ぎた或る日新聞社社主グウィルが感電死するという奇怪な事件が起きる。地元警察で頼りない署長チャブの下で働く賢明な名探偵パーブライト警部は事件が他殺であると確信し、何やら怪しげな町の有力者達に聞き込みを開始するが、続いてまたもや関係者の一人弁護士グロスが殺されてしまう。 本書には古典ミステリにはつきものの容疑者の退屈な訊問シーンが数多く続きますので、その面ではどなたもかなり我慢を強いられる事を覚悟しなければならないでしょう。また著者の持ち味であるユーモアもそれ程に強烈な物ではなくて大笑いするというよりはクスリと微苦笑を誘われるぐらいの淡い物ですので全く気にも邪魔にもならないでしょうね。そして容疑者達のアリバイに阻まれ共通する殺人の動機も全く不明で関係者が何かを隠している気配を感じたまま決め手を欠き五里霧中の状態で最後に迎える事件の意外な真相には誰もがあ然となり漸く長い辛抱が報われて大いに満足される事でしょう。冷静に考えると最初の殺人が不自然にすぎて警察から怪しまれる結果を招くのが犯人の最大の不手際ですが、まあこれはミステリの掴み(落語の枕の様に)のど派手な趣向ですので致し方ないですね。またメインの大ネタの大トリックの他にも小ネタながら暗号の符丁が中々に巧みで面白かったですね。さて、名探偵パーブライト警部は悪党どもを断じて許さぬきっぱりとした正義感の持ち主ですが、でも部下達と気楽な会話を楽しむ余裕があって堅苦しくはないのが良いですね。唯仕事一筋で人間性や私生活が見え難いのはやや残念ですが、それは追々今後の作品に期待しましょうね。そして何とも頼りないチャブ署長はパーブライト警部がいなければ悪党どもになめられてしたい放題にされる無能な人物みたいですが、最後のシーンでは著者の仕掛けた意地悪な(考え方次第で善悪のどちらとも取れる)ある疑惑が頭を過ぎってとても愉快でしたね。それから最後に海外の作家は題名に対して無頓着な方が多いと常日頃から感じていますが、本書の場合もかなり気前の良すぎるヒントとなる表現となっていますので、どうかくれぐれも本書を読み終えられてから原題の意味を調べられる様にと老婆心ながらお奨め致しますね。 | ||||
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原題 Coffin Scarcely Used 原著刊行1958年。 著者コリン・ワトスンの名はかつてCWAのアンソロジーなどで見かけた程度で、本書も予備知識なしで読んだのだが、いやはや英国探偵小説のマニアには堪らない捻りの効いた作品だった。 版元の惹句ではD・M・ディヴァインが引き合いに出されているが、濃密な人間描写が特徴であるディヴァインに比べ、遥かに軽快でコミカルな作風だ。そのユーモアも明朗さよりも皮肉で辛辣な風刺の効いたもので、結城昌治の初期の警察もの(『ひげのある男たち』など)を思わせるところがある。 冒頭提示される奇妙な感電死の謎の解決には若干不満が残るものの、最終盤の意外な展開やシニカルな結末は秀逸。一筋縄ではいかない登場人物たちの丁々発止のやり取りも面白い。その点では、北欧ミステリを思わせる厳しい邦題が内容を反映しきれていないのは、やや残念に思われる。 森英俊氏の解説にもあるようにエドマンド・クリスピンなどの英国クラシック・ミステリの愛好家なら大いに愉しめるだろう。続いて刊行予定の作品も期待出来そうだ。 | ||||
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