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蝋人形館の殺人
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【この小説が収録されている参考書籍】
蝋人形館の殺人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.11pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全18件 1~18 1/1ページ
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著者の初期作は評価されることが少ないが、読んでみると雰囲気たっぷりでなかなか面白い。全体的な雰囲気は乱歩的でおどろおどろしい展開となっているが、その中で当時のパリの街の様子がとても魅力的に描かれている。カーはトリックテラーとして有名だが、この作品はトリックやストーリー以上に、作品が醸し出す雰囲気を楽しむのがよい。 | ||||
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事件の発端から最後まで、期待した通りの展開ではあったが、意外性はなく中庸の評価です。 | ||||
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スタンリー・キューブリック映画『アイズワイドシャット』の中で、素性を隠した男と女のいかがわしい目的の為の、 余計な詮索をすると災いをなす、館の仮面パーティーが出てきます。本作においてパリの夜を牛耳っている、 エティエンヌ・ギャランの経営するナイトクラブもきっとあれに近い、情事の場をセッティングする魔窟なのでしょう。 世間体が大事な上流階級の人間は特に、こんな世界と関わりを持ってはいけない訳で・・・。 ▼ ▼ 酒・シンガー・踊り子・楽隊。ムーラン・ルージュに彩られたジャズ・エイジ達の退廃の街。そこは「表」の顔と、 「裏」の顔が存在している淫楽の空間。そこで予審判事アンリ・バンコランは知ることになる。 オーギュスタン蠟人形館で目撃された後に姿を消した令嬢オデット・デュシェーヌが死体となってセーヌ川に浮かび、 オデットの親友クローディーヌ・マルテル嬢までが刺殺され蠟人形館の中で怪物サティロスの像に抱かれているのを。 令嬢殺しの‶ある伏線〟は最初の数章に張ってあるので再読し確認する愉しみの形は出来ているものの、 カーにとって初期の仕事なのでプロットのダイナミックさよりも、まだまだムード作りのほうが先行している。 のちの傑作だったら怪奇極まる前半のパートを後半の推理パートが切れ味鋭く追走していくのだが。 以前は抄訳ゆえにいろいろ問題があって正当な評価を下すのが難しかった、この長篇。 本書にて初めての文庫化というだけでなく完訳がなされているという。ちなみに、 昭和20年代に妹尾アキ夫が訳したポケミス版と今回和爾桃子が訳した本書、各章のタイトル訳を比べてみる。 ◇ポケミス版→◆本書=創元推理文庫版 ◇茶色の帽子→◆幽霊は茶色い帽子をかぶる ◇緑の灯影→◆緑光の凶行 ◇赤い滴→◆通路の血だまり ◇幻の女→◆幻が現実に ◇秘密クラブ→◆銀の鍵クラブ ◇エステル嬢→◆歌手エステル ◇デュシェーヌ夫人→◆第二の仮面 ◇棺のそば→◆棺越しの密談 ◇ドミノの家→◆ドミノの家 ◇黒い影→◆死の黒い影 ◇あの声!→◆赤鼻氏のお道楽 ◇クラブへ侵入→◆潜入捜査 ◇屏風の陰→◆ジーナの反抗 ◇ナイフ→◆ナイフ! ◇二重生活→◆秘そやかな愉しみ ◇死人、窓を開ける→◆死人が窓を押しあける ◇腕時計→◆蠟人形館の殺人者 ◇黒いケイプの男→◆正々堂々たる一撃 ◇スペイドの三→◆青酸にカードを一枚 カーの原文は同じ筈なのになんでこんなに違いが生じてくるのか、どうにも笑ってしまう。 全ての読者が旧訳本を所有しているとは限らないのでどこが省かれていたのかを解説で丁寧に指摘し、 誰でもわかるようにしてほしい。さらに私はこの訳者の言葉遣いのセンスが気になってしょうがない。 相変わらず和爾桃子が作品のムードにそぐわぬ日本語を時々当ててしまうのには萎えてしまうのだ。 ▽ ▽ バンコランの相棒であり語り手でもあるジェフ・マールが後半危地に潜入する緊迫した場面での独白で(216頁)、 ドロシー・セイヤーズのハリエット・ヴェインみたいな女性キャラならともかく彼は大のオトコなのに‶おでこ〟なんて言うか? ‶額(ひたい)〟だろ? 英語から日本語へtranslateする時に正しい言葉を選べなければプロではない。 | ||||
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怪奇趣味ミステリーの大家カーが蝋人形と言う格好のモチーフで描く本格ミスチリ。果たして、不気味な蝋人形を生かしたおぞましい連続殺人や、当時のパリの風俗が趣深い佳作となった。もっとも翻訳であるためか、横溝正史や江戸川乱步のような実感に根ざした恐怖は感じられないが、それは外国文学の宿命で仕方ないだろう。 本作の特徴として、過剰なまでのミスリードを繰り出した挙げ句の、とても読者には予想出来ない意外な真犯人や、ワトスン役の助手マール君の大活躍、そして名探偵役を超えたバンコランと真犯人の手に汗握るラストシーン、などが挙げられるが、公平に見て演出過剰のそしりは免れないと思う。それこそカーの真骨頂とも言えるのだが。特に、登場シーンが少なくて唐突に出現する感がある真犯人は本格ミステリとしては犯則ギリギリ。やはりある程度出番が多くて馴染んだ人物を真犯人に設定して、読者が推理する余地を残すのが本格ミステリの常道と思うのだ。 しかしながらいかにもカーらしい怪奇趣味と過剰な演出が楽しめるので、ファンにはたまらない作品だと思う。だにでも向くとは思えないが。 | ||||
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この『蝋人形館の殺人』は、蝋人形館をめぐって起こる名家の令嬢の連続殺人を発端に、衝撃的な解決までスリリングな展開を見せ、重厚さやリアリティには欠けるが、実に面白い。 また処女作の『夜歩く』、第3作目の『髑髏城』に続いて、魅力的な女性が次々と登場する。特に会員制の秘密クラブを巡る3人の令嬢の愛憎劇は十分今日的であるし、事件解決の鍵を握る女性の意外な正体もドラマ性を盛り上げる。 そして後年の作品と違うのは濃厚にエロティックな味付けがされている点であり、初期のカーの作品に登場する女性たちについてあまり語られる機会がないのは非常に残念だ。 個人的に嬉しかったのは、昔『絞首台の謎』(創元推理文庫)の解説で読んだ、夜のパリに出没するバンコランの服装にまつわる逸話のくだりが、作中に出てくる事だ。同じ本に掲載されていた武部本一郎画伯によるバンコランの肖像画を懐かしく思い出した。 ありふれた俊敏な探偵と評されるバンコラン。一般的にカーのキャリアにおいて、バンコランシリーズはあまり重要視されることはなく、全盛期の傑作の数々を生み出す前の習作期のような扱いをされることが多い。 ただ本作を読む限り、作者はこの探偵の性格造形に深い思い入れと愛着を持っていたことは間違いない。 バンコランからフェル博士、ヘンリー卿への探偵役の交代の理由は、作者の英国への転居、舞台のフランスの政変、作者の興味の変化などが言われているが、ファンの一人からするとひどく惜しい気がする。 悪鬼のような残虐な怪人が跋扈し、難攻不落の密室と人智を超えた不可能犯罪が連続し、そして探偵バンコランが縦横無尽に活躍し快刀乱麻の推理で事件を解決する。そんな代表作の一つとも言うべき作品が、執筆される可能性はなかったのだろうか。 本作を読み終えて、そんな思いを抱いてしまう。 | ||||
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新訳というだけあって、すごく読みやすい。カーの作品というと、反則ぎりぎり大仕掛けの一発トリック芸という感じがしますが、この作品はクリスティのような繊細さが感じられます。 | ||||
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立ち並ぶ蝋人形の間から死体が浮かび上がる恐怖は、古くからホラーものの常套手段だが、カーのやりかたは一風変わっていて、伝説のサチュロス(獣人)の蝋人形の腕に死体を抱かせるという趣向である。この、そこまでやるか?的なグロテスクな演出を、ドロシー・セイヤーズは「不調和な狂気に満ちた恐怖」と呼んだ。カーの専売特許である。 でも、こういったグラン・ギニョール趣味はこの作品ではそれほど膨らませていなくて、むしろカーの描写の大半は、パリの裏街をめぐる風俗の描写に割かれている。これが巧い。旧訳では茫漠として伝わらなかった、カーの風俗小説的な筆の冴えや、妙々たるストーリーテリングの才を、巧みに訳出してくれたこの新訳に感謝したい。 いささか唐突に明かされる真犯人は、フェアプレイ的規範からすると反則寸前というべきか。 そして、最後にバンコランが犯人に強いる行為は、何気なくやるのが常套だが、ここまで執拗に強制するのは他に読んだことがない。冷徹なメフィストフェレス=バンコランの面目躍如といっていい。が、やはりチョットやりすぎか? 初期のバンコランものの中では最上の一作にして、ある種の問題作でもある。 | ||||
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カーの初期作品でアンリ・バンコランが探偵を務める長編の第三作目に当たる。(一作目は「夜歩く」、二作目は「絞首台の謎」) 初期のカー作品は抄訳、誤訳などがあり、評価が必ずしも正当に扱われてなかったと思う。新訳では整備され、非常に読みやすいので、是非ご一読を願う次第である。 | ||||
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セーヌ河に浮かんだ女性の他殺死体を捜査する過程で、予審判事アンリ・バンコランが辿り着いた蝋人形館。そこで、バンコランは、サテュロスの人形に抱かれた新たな女性の刺殺死体を発見する。殺害現場に残された黒いドミノ仮面、現場で目撃されだ第三の女性、蝋人形館に隣接する秘密社交クラブ。1930年のパリの猥雑な夜。謎は混迷を深めていく ・・・ 至極真っ当な推理小説。本書を読み終えたときにの第一印象だ。 奇をてらったような演出や、不可能犯罪のためにつくられたような舞台装置を持ち込んでいない。伏線がきっちりはられていて、ラストまで、ストーリーが破たんせずに進んでいく。バンコランの友人で、本書の語り手(いわばワトソン役) ジェフ・マールの秘密社交クラブ潜入捜査も、ドキドキの展開で、盛り上がりをみせてくれる。 例えるならば、70年代の2時間サスペンスドラマだろうか。家族の団欒を氷つかせる淫靡な雰囲気と、ミステリとしての、そこそこの満足感。あくまで第一印象は。 気になるのは、最後の一行。 メフィストフェレスと表現されるバンコランの、サディスティクな追及に真犯人がもらす一言が秀逸なのだ。捜査の途中、バンコランがジェフに苦悩を吐露するシーンがある。 世間というのは人を実物以下に見つもるきらいがある。だから私だって世間並みに自分を実物以上に見せようとつとめてきた。 これを踏まえると、ラストの真犯人との対話は、バンコランが突きつけた個人的な挑戦状にみえてくる。お前はどうなんだ と。 僕は正反対の一行を予想していた。同年代の作家、例えばアガサ・クリスティならばどう決着をつけただろう。はたして、同じ一行を書いただろうか。この最後の一撃が、本書を味わい深いものにしている。単なる2時間ドラマ的ミステリと異質なのだ。 | ||||
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パリ警察の予審判事バンコラン(カバー絵の人物) と友人(ジェフ・マール)の活躍が描かれる、云わず と知れた大家ディクスン・カーの作品です。1932年の ものですから、既に古典といってよいかと。 意外な犯人というミステリの基本は当然のことなが ら、古(1900年代)のパリの描写が堪らないです。 なにせ、本作のメインの舞台は、仮面で顔を隠した 男女が集う館ですから。カバーの絵(燕尾服、ステッ キ、シルクハット等)を見てピンと来たら是非読んで みて下さい。 最後に犯人と対峙する際の描写も痺れます。 | ||||
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評判の高いカーの作品はあらかた読んでしまった私も未読であった本作品、「新訳&文庫版」で登場ということで、手に取ってみましたが、想像以上の出来の良さに大満足です。 【新訳のうまさか?】 カーの作品を読んでいると、「誰のセリフなのかよく分からない」会話文に出くわします。 それが、本書の場合は全くなし。 「〜と、○○が言った。」という文章がなくても、セリフの言い回しで、どの登場人物か分かる−−という、大抵の小説では当然のことが、カー作品で出来ていなかったのは、これまでの訳が良くなかったのか、それとも本書の訳が優れているからなのか…。 少なくとも、本書の訳は、「分かり易さだけを求める読者」に媚びることなく、難読漢字(もちろんルビあり)も所々使っているところは、好印象。 極端に現代的になり過ぎることなく、1930年代という近過去の作品であることにも配慮が行き届いていました。 【ミステリとして良質】 芸術家達が多く集まり、夜も華やかであったという1930年代のフランス・パリ。 その陰にひっそりと立つ「蝋人形館」での殺人という舞台設定もさることながら、「本格ミステリ」としてのストーリーテリングが際立つ良作であると思いました。 特に、本書の優れている点は、「意外な犯人」。 −−と言っても、「トリック分類」に出てくるようなものではなく、読者をうまくミスリードして「意外性」を出すという、「小説としての技巧」を感じさせる点が、ミステリ好きには、堪らない部分です。 もちろん、真相解明で明らかになる「伏線の巧妙さ」も最高の出来と言えるでしょう。 さらに、最後の一行は、思わず唸らざるを得ないほどの「奇妙な味」。 もし、本作品が、カーお得意の「不可能犯罪」を描いたものであったなら、「初期の傑作」どころか、「全作品を通しての傑作」となっていたのではないでしょうか。 | ||||
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アンリ・バンコラン、この印象的な響きの名を持つパリの予審判事こそカーの最初のシリーズ・キャラクターである。 (おそらくは漫画『パタリロ』に登場するあのキャラクターも彼に由来するのだろう) カーすなわち不可能犯罪の巨匠というイメージを持つ読者には物足りないだろうが、まるで戦前の乱歩の通俗長編のようなセンセーショナルな幕開けから、スピーディーな展開、鮮やかな幕切れに至る本書こそ、悪魔的名探偵バンコラン・シリーズの最高作。 妙訳のみしか存在しなかった本書の完訳版の刊行を慶びたい。 | ||||
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設定は非常に面白いかと思います。 いかにも事件が起きそうな蝋人形館ですし、 その蝋人形館にもさまざまな裏があるのです。 しかしながら、少々残念なのは ある人物が際立ってしまうせいで 肝心のバンコランの場面がどうも薄れてしまっているのです。 そのせいか最後もなんとなくぱっとしない感じ。 ちなみにこの作品はあまりバンコランは 残酷ではないのできつくない作品ですよ。 | ||||
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設定は非常に面白いかと思います。 いかにも事件が起きそうな蝋人形館ですし、 その蝋人形館にもさまざまな裏があるのです。 しかしながら、少々残念なのは ある人物が際立ってしまうせいで 肝心のバンコランの場面がどうも薄れてしまっているのです。 そのせいか最後もなんとなくぱっとしない感じ。 ちなみにこの作品はあまりバンコランは 残酷ではないのできつくない作品ですよ。 | ||||
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生涯に渡って不可能犯罪興味と怪奇幻想趣味に情熱を燃やした巨匠カーの初期秀作第四長編。著者は作家生活の初期作では密室物は処女作の「夜歩く」のみで全作品に怪奇幻想趣味は濃厚ですが、意外な事に左程不可能犯罪興味にこだわらずに普通に近いミステリーを書いていました。著者の十八番の密室の謎が無ければさぞ物足りないだろうなと思うと、決してそんな事はなく一作毎にミステリーの趣向に工夫が凝らされ著者が巨匠と呼ばれる由縁の一流の才能を見事に証明しています。 ホ−ムグラウンドのパリで警視庁探偵のバンコランと友人のアメリカ人マールが若きオデット嬢の変死事件の調査に出向く。彼女は蝋人形館に入ったまま出て来ず、翌日セーヌ河に浮かぶ死体となって発見されたのだ。バンコランとマールに被害者の婚約者ショーモン大尉を加えた一行が蝋人形館主人オーギュスタンを尋問し、件の蝋人形館の内部を調べる内に何と不気味な獣人に抱かれた女の死体が新たに見つかる。女はオデット嬢の女友達クローディンであった。 まず、本翻訳書は1954年の出版で訳文が相当に古風だったり「矢釜しい」等の当て字が使われたりと読み慣れるまでかなり時間が掛かるでしょう。現在は仕方がありませんが、ぜひ何時か新訳刊行される事を望みたいです。ミステリーの趣向としては、蝋人形館と通路で繋がった男女の密会の場である秘密マスク・クラブ、バンコランのライバルでクラブの経営者の悪党ガラン、そして読者の盲点を突く意外な犯人と犯行の動機に加えておぞましい蝋人形の獣人が人間心理に及ぼす影響力も強く印象に残ります。ここまで著者の初期四作を読んで改めて感じたのは、全ての犯人が根っからの悪人でなく動機に同情の余地があるという点です。尚、本書ラストでの慈悲深いバンコランと超然とした犯人との命を賭けたトランプ勝負は異様な緊迫感に満ちた名場面ですので誰もが大満足して頂けると思います。 | ||||
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生涯に渡って不可能犯罪興味と怪奇幻想趣味に情熱を燃やした巨匠カーの初期秀作第四長編。著者は作家生活の初期作では密室物は処女作の「夜歩く」のみで全作品に怪奇幻想趣味は濃厚ですが、意外な事に左程不可能犯罪興味にこだわらずに普通に近いミステリーを書いていました。著者の十八番の密室の謎が無ければさぞ物足りないだろうなと思うと、決してそんな事はなく一作毎にミステリーの趣向に工夫が凝らされ著者が巨匠と呼ばれる由縁の一流の才能を見事に証明しています。 ホ−ムグラウンドのパリで警視庁探偵のバンコランと友人のアメリカ人マールが若きオデット嬢の変死事件の調査に出向く。彼女は蝋人形館に入ったまま出て来ず、翌日セーヌ河に浮かぶ死体となって発見されたのだ。バンコランとマールに被害者の婚約者ショーモン大尉を加えた一行が蝋人形館主人オーギュスタンを尋問し、件の蝋人形館の内部を調べる内に何と不気味な獣人に抱かれた女の死体が新たに見つかる。女はオデット嬢の女友達クローディンであった。 まず、本翻訳書は1954年の出版で訳文が相当に古風だったり「矢釜しい」等の当て字が使われたりと読み慣れるまでかなり時間が掛かるでしょう。現在は仕方がありませんが、ぜひ何時か新訳刊行される事を望みたいです。ミステリーの趣向としては、蝋人形館と通路で繋がった男女の密会の場である秘密マスク・クラブ、バンコランのライバルでクラブの経営者の悪党ガラン、そして読者の盲点を突く意外な犯人と犯行の動機に加えておぞましい蝋人形の獣人が人間心理に及ぼす影響力も強く印象に残ります。ここまで著者の初期四作を読んで改めて感じたのは、全ての犯人が根っからの悪人でなく動機に同情の余地があるという点です。尚、本書ラストでの慈悲深いバンコランと超然とした犯人との命を賭けたトランプ勝負は異様な緊迫感に満ちた名場面ですので誰もが大満足して頂けると思います。 | ||||
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バンコランもの。悪訳&抄訳のせいで、また作品としても極端な不可能興味がないせいか評価は低いです。ですが、改訳されればずっと評価は変わるはずです。蝋人形の妖しさ、仮面クラブ、バンコランの政治的手腕、きわめて独自の信念を持った犯人……それらは現代でこそさらに輝くはずです。ノスタルジックでありつつも、先鋭的な探偵小説に、驚かされます。 | ||||
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バンコランもの。悪訳&抄訳のせいで、また作品としても極端な不可能興味がないせいか評価は低いです。 ですが、改訳されればずっと評価は変わるはずです。蝋人形の妖しさ、仮面クラブ、バンコランの政治的手腕、きわめて独自の信念を持った犯人……それらは現代でこそさらに輝くはずです。 ノスタルジックでありつつも、先鋭的な探偵小説に、驚かされます。 | ||||
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