九人と死で十人だ



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初公開日(参考)1999年12月
分類

長編小説

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九人と死で十人だ (創元推理文庫)

2018年07月30日 九人と死で十人だ (創元推理文庫)

第二次大戦初期、エドワーディック号は英国の某港へ軍需品を輸送すべくニューヨークの埠頭に碇泊していた。危険きわまりないこの船に、乗客が九人。航海二日目の晩、妖艶な美女が船室で喉を掻き切られた。右肩に血染めの指紋、現場は海の上で容疑者は限られる。全員の指紋を採って調べたところが、なんと該当者なし。信じがたい展開に頭を抱えた船長は、乗り合わせた陸軍省の大立者に事態収拾を依頼する。そこへ轟く一発の銃声、続いて大きな水音! ヘンリ・メリヴェール卿シリーズ、初文庫化作品。(「BOOK」データベースより)




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九人と死で十人だの総合評価:8.21/10点レビュー 24件。Bランク


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(7pt)

戦時下に乗り合わせた名のある乗客たちのミステリ

HM卿シリーズ11作目の本書は1999年に国書刊行会から刊行されたものの改稿版。約19年を経てようやく文庫化となった。

そんなディクスン作品でも希少な部類に入る本書の舞台はなんと船上ミステリ。第二次大戦下のニューヨークからイギリスへ渡航する大型客船で起きる殺人事件を扱っている。

本書の冒頭で作者のディクスンは自身が第二次大戦開戦直後に経験したニューヨークからイギリスへの船旅の経験を基に作られたことが記されている。1本の作品にするほどこの船旅は作者の印象に強く残ったそうだ。

更に本書は第二次大戦下での客船の大西洋渡航という設定がミソとなっている。それはつまり大型客船でありながら、イギリスへの軍需品を輸送するミッションを負っているため、乗船が許されたのは喫緊にイギリスに渡る必要のある9人しか乗れなくなっているのだ。つまりこれは海上の館物と云っていいだろう。

その9人のメンバーは以下の通り。

主人公を務めるマックス・マシューズは元新聞記者で乗船した客船の船長フランシス・マシューズの弟。彼は火災現場の取材中に事故に遭い、片脚に大怪我をしたが、幸いにして全快したものの、取材に同行していたカメラマンを事故で喪い、そしてそのまま辞職した。そして新天地ロンドンで新たな職にありつくために渡航している。

ジョン・E・ラスロップはニューヨークの地方検事補で、ある殺人犯を追っている。しかも凶悪な恐喝犯カルロ・フェネッリのお目付け役でもある。

トルコ外交官夫人でもうすぐ離婚する予定の妖艶なエステル・ジア・ベイ夫人。

イギリスの実業家ジョージ・A・フーパーは息子が重病のため、急遽帰国することになった。

その他医師のレジナルド・アーチャーにフランス軍人のピエール・ブノア。謎めいた若き女性ヴァレリー・チャトフォードと貴族の子息ジェローム・ケンワージー。

そして最後に隠密裏にイギリスへと戻るHM卿ことヘンリ・メリヴェール卿。

しかし上に述べたようにそれぞれの乗客に急遽イギリスに戻らなければならない、のっぴきならない事情があるとは明確に書かれていない。今回の事件でエドワーディック号に乗船した本来の動機が明らかになるのはブノア、チャトフォード、ケンワージーぐらいである。

第2次大戦時下という緊迫した状況下での軍需品輸送の密命を帯びたイギリス渡航中の客船を舞台にディクスンが仕掛けた謎は船上での殺人現場に残された指紋に船内に該当する人物がいないという実に奇天烈な物。単に船内の登場人物に限定しない第三者の介入と、更に陸地にある館とは異なる、どこからも部外者が侵入できない船上で第三者の介入がなされたという不可解な謎を用意しているのだ。

更に殺人事件はそれだけに留まらず、第2、第3の殺人が起きる。

久々に読んだカーター・ディクスン作品だが、謎また真相は小粒でありながら全てが収まるべきところに収まる美しさが本書にはあった。同じ客船を舞台にしたドタバタ喜劇が過剰な『盲目の理髪師』よりもこちらを私は買う(ところで本書でも客船での理髪師とHM卿のやり取りが殊更ユーモアに書かれている。これは前掲の作品に呼応したものだろうか?)。

特に指紋のトリックは21世紀でありながら私は本書で初めて知った。

また犯人特定の鍵に使われた様子のない髭剃り用のブラシに着目するところはクイーンのロジックの美しさを感じさせる。

つまりある意味カーター・ディクスンらしからぬロジックの美しさが感じられる作品なのだ。

また注目したいのは本書の舞台が第2次大戦時下というところだ。
複数の国を巻き込んだこの世界大戦において無数の人間が死ぬ状況。そんな中で軍需品輸送の密命を帯びた客船に同乗した9人の乗客とその船員たちはそれぞれに名を持ち、そしてそれぞれに使命を、希望を、そして思惑を持っている。大量に人が死ぬ時代に9名の人間が意志ある人間として描かれ、そして殺人劇が繰り広げられているところに本書の意義があるように思える。

世界中で人が次々と死に、誰がどこでどのように死んだのかの確認が後手後手になり、結果、名もなき兵士たちによる死屍累々の山が築かれる中、名を持った人間たちが戦争に加担する船に乗り込み、そして命を落とすところが意義深い。

しかしこうも順調にジョン・ディクスン・カー及びカーター・ディクスン作品が新訳刊行されていることは非常に喜ばしい。
HM卿シリーズで未読の作品は残すところ3作品となった。そのいずれもが早川書房からかつて刊行された作品であるが、もはや著作権は切れているのでこの際東京創元社から引き続き新訳刊行してもらいたいものだ。ギデオン・フェル博士シリーズも、その他歴史ミステリ、いやカー作品を全て網羅してほしいものだ。

私が生きているうちにカー作品コンプリート出来ることを願っている。


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No.23:
(4pt)

なかなか巧妙な本格ミステリ

船上で殺人が起こり、犯人の血染めの指紋が残されている。
だが、船内にいる全員の指紋を調べても一致する指紋がない、というストーリー。

トリックはシンプルですが、実に巧妙なプロットに仕上げてある思います。

また、伏線の中には細かすぎたり知識を要するものだったりもありますが、一方で思い込みを利用した大胆なミスディレクションは見事としか言いようがありません。

ただし、第一の事件については、まったく無意味な行動で手がかりを残して捜査側にわざわざトリックのヒントを与えているし、第二の事件については、真相に至るための手がかりがほぼ皆無なのが残念でした。
九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)Amazon書評・レビュー:九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)より
4336041563
No.22:
(5pt)

うん

確かに九人と死で十人です。
そしてこれ以上かっこいいタイトルの本を私は知りません。
九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)Amazon書評・レビュー:九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)より
4336041563
No.21:
(3pt)

カスタマー

船内で起きた殺人事件を捜査する物語です。
最初から最後の解決まで判りやすく読むことができました。
1点だけ指紋については、実際にできるのかどうか、と思っています。
九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)Amazon書評・レビュー:九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)より
4336041563
No.20:
(4pt)

読みやすい。

トリックそのものはあっと驚く様なものではないが、極めてテンポよく読めて、一気に最後まで読み切ってしまう作品である。
九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)Amazon書評・レビュー:九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)より
4336041563
No.19:
(5pt)

〝戦時下サスペンス航海小説〟の仮面を被った〝本格もの〟

印鑑をキレイに押すのが下手だったりしないですか? まさに私がそうです。
まっすぐ押そうとしてなんとなく歪んでしまったり、朱肉に印面をつけすぎたり反対につけるのが薄かったり。
シャチハタや拇印なら問題ないんですけどね~。 〝拇印〟といえば・・・。


本作は『ユダの窓』『白い僧院の殺人』後の事件。

アメリカ東海岸からイギリスへ、爆撃機四機と高性能爆薬を輸送する大型客船エドワードディック号。
ひとたび北太平洋へ出たら敵国ドイツの潜水艦にいつ攻撃されるかわからない〝死と隣り合わせ〟の旅、
乗船した訳ありな客はほんの数人たらず。荒れた暗黒の海上を進む二日目にマックス・マシューズは発見した。
残忍に喉元をブチ切られたエステル・ジア・ベイ夫人の屍体を。頼るべき警察はいない。屍体にはクッキリ残る血の指紋。

数少ない乗客に容疑は絞られ正確な指紋採集が行われるが、屍体上のものと一致する該当者がなく、
クローズドな状況で加害者の船外逃走もありえない。では誰の仕業か?
そんな中もうひとり隠れたる乗客が・・・体重二百ポンドのあの人物、ヘンリ・メリヴェール卿(H・M)だった・・・。

作者カーが序盤で匂わせているように誰かが出航時に全乗客をもれなく観察しとけば事件は防げたかも。
この事がすべてのトリックに繋がっていくので頭の片隅に置いて犯人のたくらみをあばいてみてほしい。
動機が軍事スパイと関係あるのかないのか、そこも最後まで読んでのお楽しみ。

甲板でマッチ一本つける事も憚られる海上の闇と、波に揺らぐ閉ざされた船中の不安な空間・・・。
トリックもさながらその雰囲気描写が見事で、時間にゆとりがあれば一日で一気に読み終えられる位に面白い。
もちろん堂々たる〝本格〟探偵小説だし、また第二次大戦時下サスペンス航海小説として読むのも可能だ。

原題は『Nine – And Death Makes Ten』といって『九人と死で十人だ』と人数を強調することで、
ここでもカーは読者に目くらましを仕掛けてるのだろう。もっとジャストなタイトル訳がありそうにも思うけど。


エンディングで謎解きを求められてH・Mは、私語が多くおとなしく耳を傾けようとしない人々に怒ったり、
説明を終わって「感謝のかけらもない!」とムクれる大人げないキャラクター。こんな人に私はなりたい。
解決後の謎解き場面でやたら周りの人々を立てて謙遜がいちいちわざとらしい金田一耕助より、
いいひと感の押し付けがないこの罵詈雑言男のほうが名探偵としてふさわしい。
九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)Amazon書評・レビュー:九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)より
4336041563



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