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九尾の猫



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九尾の猫の評価: 7.40/10点 レビュー 5件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.40pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全5件 1~5 1/1ページ
No.5:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

どんでん返しの底には

探偵としてのアイデンティティの喪失に苦しむエラリー・クイーンに、ニューヨーク市長から特別捜査官に任命されたのは、今ニューーヨークを震撼させている連続絞殺魔の事件を解決するため。
同じ手口で何人もの人が殺されるのはどう見ても同一犯の仕業。しかし、被害者にはなんのつながりも見いだせないためクイーン警視は苦慮していた。
ミッシングリンクを埋めるものは何か? 犯人にとって一見無関係に見える人たちを連続して殺害するのには何かしらの法則があるはず。そこをこれまでの事件のデータを精査し推理を加えて犯人像に迫るエラリー。
というのが今回のお話。雲を掴むような作業をクイーン警視と共に調べを進める探偵エラリー・クイーン。そこを読ませていくにはどうするか、いろいろと趣向を凝らせて読者を引っ張る手腕は流石です。
そして犯人像を掴めたときこれで決まりかと思わせておいて最後にひっくり返すサプライズ。 だがこのドンデン返しはどうなんだろう。
精神医学のアレコレなどを持ち出して補強しているように見えるが、個人的には真犯人の犯行動機がちょっと薄まったように感じる。 それはアリなんだろうか?
それで九人も殺すか? 一人二人は理解できる。だが九人となるともっと強烈な動機があるべきじゃないのか。 個人的にはこの真犯人にはこの動機は少し弱いと思います。
ですから、ひっくり返さずにまったく犯人像が掴めない事件をコツコツと調べるエラリーの捜査の過程を楽しみたかったと思うのです。
お疲れ、エラリー。

ニコラス刑事
25MT9OHA
No.4:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

探偵の苦悩、さらに深まる

前作『十日間の不思議』で探偵としての自信を喪失したエラリイが今度対峙したのは、今までの事件とは毛色が異なる連続絞殺魔による無差別殺人事件。そして舞台もライツヴィルではなく、元々のホームフィールドであったニューヨークだ。

とにかく色んなテーマを孕んだ作品である。
一番解決が困難とされるのは動機も関係性もない人物が通りがかりに人を殺す事件だと云われている。本書はエラリイのロジックはこのような無差別通り魔殺人事件にも通用するのかが表向きのテーマであろう。

しかしそれを取り巻いて人種の坩堝と云われるニューヨーク市で起こる様々な移民が殺される状況下で想定される市民の暴動、さらに探偵としての自信を喪失したエラリイの奮起も読みどころの1つである。

そして犯人こと絞殺魔<猫>の正体は意外にも物語半ば、全400ページ弱のうち220ページ辺りで判明する。明確になった犯人対名探偵の対決という構図を描きながら、しかし最後にどんでん返しを用意しているのが実にクイーンらしい。

事件の特色も国名シリーズやドルリー・レーンシリーズ、そしてライツヴィルシリーズなどの作品からガラリと変わってきている。

今までエラリイが遭遇してきた事件は限られた空間・状況で限られた人間の中で起きた殺人事件が語られてきた。したがってエラリイは限定された人物の行動と性格を探り、それを論理的に検証して最も当てはまる人物を堅固なロジックで指し示すというものだった。
しかしライツヴィルシリーズ第1作の『災厄の町』では街の名士一家に起こる事件が小さな町ライツヴィルの民まで影響を与え、スキャンダルと狂乱を生み出す様子を表した。そこから更に事件の及ぼす外部への波及効果を広げたのが本書であろう。しかも殺人の対象は名士一家といった限定されたコミュニティではなく、ニューヨーク市民全員。無差別に絞殺し続ける正体不明の絞殺魔だ。
この影響範囲の拡大・事件の拡張性はクイーンとしても非常に大きな挑戦だったのではないだろうか。

連続絞殺魔対名探偵。これはパズラーでもなく、本格推理小説でもなく、もうほとんど冒険活劇である。
クイーンが古典的本格ミステリから現代エンタテインメントへの脱皮を果たした作品だと云えよう。

しかしそんな特異な事件でもクイーンのロジックは冴え渡るのだから驚きだ。クイーンのロジックの美しさを久々に堪能した。

そして理詰めの犯人追求ではなく、次の事件を予見してからの現行犯逮捕という趣向は今までの諸作でも見られたが、従来の場合はエラリイの意図を悟らせず、エラリイが犯人を罠に掛ける有様さえもサプライズとしていたのに対し、本作ではそのプロセスを詳らかに書くことで臨場感とスリルをもたらしている。

そして本編には戦争の翳が物語の底に流れている。笠井潔氏が提言した本格ミステリが欧米で発展した根底に戦争による大量死があったとされる「大量死体験理論」を裏打ちする内容が書かれている。
つまりこの作品は戦争という災厄によって無駄死にを強いられた多くの人間に対する弔魂歌なのだ。

誰が犯行を成しえたかを精緻なロジックで解き明かしてきたクイーンのシリーズが後期に入り、犯罪方法よりも犯人の動機に重きを置き、なぜ犯行に至ったかを心理学的アプローチで解き明かすように変化してきている。しかしそれは犯人の切なる心理と同調し、時には自らの存在意義すらも否定するまでに心に傷を残す。
最後の一行に書かれた彼がエラリイに告げる救いの言葉、「神はひとりであって、そのほかに神はない」がせめてエラリイの心痛を和らげてくれることを祈ろう。
次の作品でエラリイがどのような心境で事件に挑むのか興味が尽きない。


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Tetchy
WHOKS60S
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

殺人鬼<猫>vsクイーン親子

第二次世界大戦直後、1940年代後半のニューヨークで発生した連続絞殺事件。
犠牲者の数が増えると、絞殺犯にはやがて新聞紙上で、被害者を殺害した絹紐を尻尾に見立てた<猫>という異名がつけられた。
被害者はニューヨーク市民であること以外は年齢、性別、人種、職業、素行全てがバラバラで共通点が見えず、無差別に行われる連続殺人にニューヨーク全土は絞殺魔<猫>の恐怖に包まれる……

一見異常者による動機なき無差別殺人だが、その裏に犯人の真の動機や意図があるはず……
というホワイダニットな作風はクリスティの『ABC殺人事件』を意識し、挑戦しているような所がうかがえました。
(実際『ABC事件』の根底に関わる部分のネタバレに近い台詞もあるので、未読の方は先にそちらを読むべきだと思います)
しかしもちろん真相は全く違った形が用意されていました。

連続殺人犯<猫>に対する、ニューヨーク市民の恐怖によって発生するさらなる問題や、
名探偵という存在があるがゆえ、殺人をはじめとする悲劇が起こる、所謂「後期クイーン問題」に対する、クイーンの苦悩が描かれるなど、見所の多い作品です。
完成度も高く感じ、楽しく読めました。


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マリオネットK
UIU36MHZ
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

九尾の猫の感想


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氣學師
S90TRJAH
No.1:
(7pt)

ニューヨークの風景

エラリィ・クイーンの中では珍しい設定だと思いました。

わたろう
0BCEGGR4

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