盤面の敵



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初公開日(参考)1977年11月
分類

長編小説

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盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)

1977年11月01日 盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)

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書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

盤面の敵の総合評価:7.50/10点レビュー 6件。Cランク


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(7pt)

第2の『Yの悲劇』?

犯人との推理合戦とでも云おうか、連続殺人事件を画策する「Y」なる人物とエラリイの推理の闘いという原点回帰の作品だ。

後期クイーン問題と現在でも称されているように、国名シリーズの後は探偵の存在意義について深く悩むエラリイの姿が作品のテーマになっており、そのためか純然たるパズラーとして読者との知恵比べを前面に押し出した知的ゲームの要素は成りを潜め、登場人物の家庭に潜む問題や人間関係の軋轢などを深く描き、事件は地味ながらも、人間の心がもたらす犯罪を扱っていた。

しかし本書では原点に立ち返ったかの如く、限定された土地に構えられた4つの城に先代の遺言に従って住まう一家の人間達に起きる殺人計画へのエラリイの挑戦という、犯人対探偵の図式を前面に押し出しているのだ。

舞台はヨーク・スクエアなるヨーク家の4つの城が四方に立ち並ぶ一角。そこに住まうそれぞれの城主たち、とおよそ20世紀とは思えない閉鎖的な空間と限られた登場人物たちで構成される、本格ミステリど真ん中な設定。そんな古典的な設定を敢えて晩年期のクイーンが持ち出したことに私の関心は向かってしまう。

しかしこの『Yの悲劇』との近似性は一体何だろうか?
題名にもなっている盤面の敵である匿名の犯人が使う名前はYだし、『Yの悲劇』で一番最初に死体で発見されたのはヨーク・ハッターならば本書の連続殺人の被害者はヨーク一族。そして何よりも両者とも示唆殺人であるところが一致している。
以前私は『Yの悲劇』の感想で「『Yの悲劇』はまだ終わらない」と締め括ったが、本書は舞台を変えた『続Yの悲劇』とも云えるのではないだろうか?

後期クイーン問題を経て、再び『Yの悲劇』の主題に立ち返ったと思われる本作。さて件の作品から約30年経って著されたのだが、そこに何かの発展があったかといえば確かにこの作品にはあるだろう。しかしそれは現代から見れば使い古された設定に過ぎない。

しかし新しい物は生まれた時点で廃れる運命にある。本書は当時の先進性ゆえに現在では逆に古さを感じる内容になってしまった哀しい作品であるのだ。

しかし本書をそれだけで論じてしまうのには早計だ。題名にあるようにクイーンならではの遊び心が横溢している。
チェスに見立てた登場人物設定と、「クイーン」という名が犯人と探偵とのチェス・ゲームにマッチしている妙味はやはり枯れてもクイーンかと思わせる発想の冴えを思わせる。

クイーンの諸作を発表順に読み続けている私はどうしても彼の過去の作品を対照化して考えてしまうため、そこに隠されている作者の意図を考えずにいられない。したがって前述のように本書は第二の『Yの悲劇』として意識して読んだきらいはある。それゆえ自分の中の期待値のハードルを挙げてしまったのだが、それを差し引いても本書が現代に残るべき作品なのか真相を読むだに疑問だ。
しかし作者クイーンがミステリに対していかに新たな血を注ごうかと精力的であったのは存分に窺える。本書を読む人はそんな背景も汲んで是非とも臨んでいただきたい。


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No.5:
(3pt)

クイーン的多様性

1963年のエラリイ・クイーン作品。盤面の敵とは、つまり犯人のことである。この辺の時代になってくると、名探偵というものが何だか浮世離れした存在に思えてくる。そこで「現実的」に名探偵が成立する世界観を模索してみた、というのが本作なのだろう。

しかし、これがあんまり面白くない。最後になって少し読ませる感じはあるが、おしなべて退屈だった。クイーンらしいロジックの妙も、「親指の指紋がなぜ手紙の上の隅に集中しているのか」という謎の解明において少し感じられる程度で、物足りない。

何より、作中でエラリイ自身が居心地のわるさを訴えている。「すべてが、どこかのまったく頭のわるい見知らぬ他人に起こったように思えてくる。その知らない他人というのは、科学技術が彼からゲームの相手を奪ってしまったために、なにかほかのものを相手にしなければならなくなった人間なのだ」(P371)

「探偵小説を『お化け屋敷』の掛小屋からリアリズムの外に出したかった」と言ったのは松本清張だが、本作にもそんな試みがあるように思う。今となっては「みんなちがって、みんないい」だが、本作は同じ作家による同じ主人公のシリーズにおいて追求された多様性としては、異彩を放っているかもしれない。
盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)Amazon書評・レビュー:盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)より
4150701075
No.4:
(3pt)

時間かかりました

読み終わるのに時間がかかりました。 …と言うことは、私的にはそんなに面白くはなかったのかな。 。 。 確かにこの時代では犯人の性質?が珍しかったというのもあったかと思いますが、今では結構ある話しなので、新鮮さが損なわれた感があり残念でした。
盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)Amazon書評・レビュー:盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)より
4150701075
No.3:
(5pt)

勝利や敗北といった語感を宿しながら 永遠に有効であり続ける空間

そして、打ち手が頭に浮かんだ。
彼は即座にそれを打ち消した。そんなバカな打ち手はない、ナイトを取られてしまうじゃないか・・・・・・どの駒にどの頭がついていたのか
思いだせさえしたら!特に・・・・・・その打ち手が、忍びよるようにまた頭に浮かんだ。彼はすぐにそれを踏みつぶした。そして別の打ち手を
考えた。それでもさっきの打ち手はつぶされずに、そのあたたかい頭を彼のくるぶしにもたせかけて、満足そうにごろごろとのどを鳴らした。
彼はそれを蹴とばそうとした。だがそれはもうしっかりと彼に爪をたてていた。彼はとうとう降参して、それを膝に抱きあげた。そして特に
念入りになでてやりながらいった。どれ、それではおまえを見てやろうか・・・・・・
1963年の作品。四つの城と庭園を持つヨーク館における莫大な遺産をめぐる連続殺人事件。始まりはヨーク家の下男、ヘンリー・ウォルトに
Yと名乗る人物から届いた手紙だったんだね。その終始一貫した、神とも見紛うほどのYの人格、その希求するもの、それに感化され神話作りに
手を貸すウォルト。。このジャンルにおける新機軸、操り殺人をテーマにした一冊なんだな。
科学技術の高度の発展によって、名探偵は忘却の彼方へと追いやられている・・・と、ぼやくエラリー。それはつまり作者のぼやきでもあるわけ
なんだけど、ぼやきながらもそれを覆すものを創成してしまう熱意!ある意味誰もが普通に思えることを本当の意味で普通にやってしまう神秘
だったりする。決して意図して創造したとは思えないその神秘。歴史と時代経験の隔たり、今からみれば先駆的だが、当時はひとつの神秘。
表現の神秘じゃなしに、表現をするという行為の神秘。無私でありながら、しのぎを削りつつ進歩を目指すという空間がある。エモーションが。
なんだろう・・・その愛すべき空間ってのがいつの間にかなくなってしまったんだなあ。。それに逸早く気づいてのは黒澤明だと思うが、つまり
その空間内における育てるという行為を放棄したということに気づいたという意味だが。愛すべき空間の削除、取り除き。
しかし物事の面白さってやつはやっぱり二律背反になっていて、それによってめまぐるしいまでの独創性と斬新さが生まれるのは事実なんだ。
こう・・・説明するのがめんどくさくて(笑)、一言でいってしまえばダウンタウン以降のお笑いの流れってことになるんだけど、これは結局、
似ているということはつまり口実にすぎなくて、斬新な表現に固執するね。それ自体が様式に従属させられる、符号として構成させられる、
空気を読めの空気的な様式化、そんな高度な様式化を遂げたんだね。完璧な制御。
だが失ってはじめて気づくこともあり、もはやそこでジャズの即興演奏的に勝負するとなるとあまりに儚いんだね。一瞬だけの帝王。しかし
マイルス・デイヴィスがジミ・ヘンドリックスを認めたように、つまりロックな感覚も認めながら、それでさえまだ斬新なジャズの帝王で
いられるという・・・そこにこそ面白さがあるはずなんだ。何が一番滑稽かって、1+1=2という風に信じられないスピードで社会を成熟させる
ことは結構なんだが、なにも人間関係まで1+1=2にする必要はなくて(笑)、それは6にでも7にでもなるものなのに!愛すべき偏愛の必然性。
黒澤が三船敏郎を見い出したようにね。これは今の世の中の風潮でも同じことだけど、ただ批判しても意味がなくて、なぜならそれ自体は
斬新であり素晴らしいんだから。批判ができない、ゆえに進歩しないブルジョア的なれ合い。必要なのは表現に対する再分配ではなしに、
表現するという行為に対する再分配なんだ。出来た表現ではなく、まずエモーションから。若者が駄目だとか、良い人材がいないだとかいうのは
幻想。機会を与えずいいように操ろうとしている大人の下品さ。。自己嫌悪で終わり(笑)。おっと、今回のヒントはPERIDOTSのオールライト!
盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)Amazon書評・レビュー:盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)より
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No.2:
(4pt)

《操り》テーマの「型」のオリジナル

ヨーク家の莫大な遺産の相続権をもつ四人の相続人のもとに、
アルファベット一文字が記された奇妙な形のカードが次々と送られ、
そのたびに、送られた人間が殺されていく連続殺人事件が発生した。
のちに、カードを送っていたのは、“Y”と名乗る者から手紙で指示を
受けた、ヨーク家の下男ウォルトであることが、判明するのだが……。
果たして、“Y”とは何者なのか?
本作は、《操り》テーマの新機軸を打ち立てたといえる作品で、
のちに、本作の趣向を導入した作品が、山ほど作られました。
そのため、現在の目から見ると驚きはありませんが、
当時の読者には、かなり衝撃的だったと思います。
冒頭ではエラリイが、科学捜査が発達したことにより、自分のような探偵は、
不要になったと嘆いているのですが、“Y”という科学捜査を無効化する、
新しい犯人像(「神」!)をつくり出すことで、作者が本作で、“名探偵”
延命の可能性を懸命に模索している様子が伝わってきます。
盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)Amazon書評・レビュー:盤面の敵 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 3-7)より
4150701075
No.1:
(4pt)

《操り》テーマの「型」のオリジナル

ヨーク家の莫大な遺産の相続権をもつ四人の相続人のもとに、
アルファベット一文字が記された奇妙な形のカードが次々と送られ、
そのたびに、送られた人間が殺されていく連続殺人事件が発生した。

のちに、カードを送っていたのは、“Y”と名乗る者から手紙で指示を
受けた、ヨーク家の下男ウォルトであることが、判明するのだが……。

果たして、“Y”とは何者なのか?

本作は、《操り》テーマの新機軸を打ち立てたといえる作品で、
のちに、本作の趣向を導入した作品が、山ほど作られました。

そのため、現在の目から見ると驚きはありませんが、
当時の読者には、かなり衝撃的だったと思います。

冒頭ではエラリイが、科学捜査が発達したことにより、自分のような探偵は、
不要になったと嘆いているのですが、“Y”という科学捜査を無効化する、
新しい犯人像(「神」!)をつくり出すことで、作者が本作で、“名探偵”
延命の可能性を懸命に模索している様子が伝わってきます。
盤面の敵 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)Amazon書評・レビュー:盤面の敵 (1977年) (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
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