さらなるテロの危険に日本政府は福岡を封鎖する。いまや九州は反乱軍の占領下となった。

暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。

日本はもう一度、焼け野原になるべきなのか? 経済の衰退した近未来の東京。

突然変異の人類“クチチュ”らと共に旅を続けるアキラは、生への執着から解き放たれた人々が猿のように生きる村や、ロボット制御の病院で人間が管理される残酷な姿を見届け、遂に宇宙空間へと向かう。

激動する世界の中で、平和を謳歌する日本。しかし、戦争と暴力への想像力を失ったとき、致命的な危機が忍びよる…。

5分のずれで現われた、もうひとつの日本は人口26万に激減していた。

謎のカルト教団と革命の予感。自分の元から去った女性は、公安から身を隠すオカルト教団の中へ消えた。

一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。

第153回芥川賞受賞作 「早う死にたか」 毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、 ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。

今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろう―たぶん。

1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。

致命的な記憶の死角とは?失踪したクミコの真の声を聴くため、僕は井戸を降りていく。

あなたのことは今でも好きよ、という言葉を残して妻が出て行った。

9歳のさきちゃんと作家のお母さんは二人暮し。毎日を、とても大事に、楽しく積み重ねています。

タイム・マシンを発明して、直前に起った出来事を眺める「笑うな」など、ユニークな発想とブラックユーモアのショートショート集。

カスミは、故郷・北海道を捨てた。が、皮肉にも、北海道で幼い娘が謎の失踪を遂げる。

名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」。

この世の物とは思えない奇妙な恋の物語 22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。

精神病院を退院して三日後に出会った男に、贅沢な旅を約束され、パリにやって来たマチコ。

雅子、43歳、主婦。弁当工場の夜勤パート。

27歳のタクシードライバーをいまも脅かすのは、親に捨てられ、孤児として日常的に虐待された日々の記憶。

良いニュースと悪いニュースがある。 多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。

21世紀はこの小説で始まる。点状出血、内臓溶解、骨格筋の爆発的なケイレン。

さようなら、3フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。

わたしは「みんな」を信じない、だからあんたと一緒にいる―。

自分は少女誘拐監禁事件の被害者だったという驚くべき手記を残して、作家が消えた。

あいつの人生が終わり、僕たちの長い旅が始まった。

組織によって選ばれた「社会的要人」の弱みを人工的に作ること、それがユリカの仕事だった。

ドタバタとは手足がケイレンし、血液が逆流し、脳が耳からこぼれるほど笑ってしまう芸術表現のことである。

ロケットエンジンのバルブシステムの開発により、倒産の危機を切り抜けてから数年――。

ニードルが乳首を貫くとき、美と勇気は現れる。惨劇は、殺人衝動を持つ男と、自殺願望を持つ女が出会った夜に始まる。

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。

時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。

記憶が80分しか持続しない天才数学者は、通いの家政婦の「私」と阪神タイガースファンの10歳の息子に、世界が驚きと喜びに満ちていることをたった1つの数式で示した…。

無活用ラテン語で書かれた小説『猫の下で読むに限る』で道化師と名指された実業家のエイブラムス氏。

研究者の道をあきらめ、家業の町工場・佃製作所を継いだ佃航平は、製品開発で業績を伸ばしていた。

猫は戻り、涸れた井戸に水が溢れ、綿谷昇との対決が迫る。壮烈な終焉を迎える完結編。

42歳の青山は、再婚相手を探すため「オーディション」を行う。

夫が突然、逝ってしまった。残された妻、敏子は59歳。

北から南へ、そして南から北へ。

子どもの殺人に原因はないよ、幼児が迷子になるのに原因がないのと同じだ、親が目を離したから?それは原因じゃなくて子どもが迷子になる過程の一つにすぎない。

物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。

中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変るひと月あまりを、西の魔女のもとで過した。

昭和三十七年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。

愛―、それは気高く美しきもの。そして、この世で最も恐ろしいもの。

恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性店員、「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻、舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦、親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師、働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性、ホテル経営者も複雑な事情を

神よ、なぜ応えてくれないのですか?私はその答えを『沈黙』の中で雄弁に語り尽した。明かされる『沈黙』秘話。

「大きくなること、それは悲劇である」。

伝説の男が帰ってきた…。ニューヨークのダウンタウンでホームレスに身をやつし、隠遁していた謎の男・ヤザキ。

第二次大戦下のニューヨークで、居並びセレブの求愛をさらりとかわし、社交界を自在に泳ぐ新人女優ホリー・ゴライトリー。

その地に着いた時から、地獄が始まった―。1961年、日本政府の募集でブラジルに渡った衛藤。

村内先生は中学の臨時講師。言葉がつっかえて、うまくしゃべれない。

長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」―15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。

“私の事を、父は「ガラスの人形」だと呼んでいた。脆い、脆い、透き通ったガラスの人形だと。