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マッチマッチ さんのレビュー一覧

マッチマッチさんのページへ
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.55pt

レビュー数321

全321件 1~20 1/17ページ

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No.321: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

天使が消えていくの感想

日本のミステリーの女王と称される夏樹静子のデビュー作にして、かつ代表的長編作。
手にした文庫本。初版は昭和50年。何と50年前の作品である。
それにしては、さほど古さを感じない。見事な筋書きと展開である。

内容的には、真犯人・黒幕探しの正統的ミステリー小説のようなのだが、読み終わってその表情がよい意味で裏切られる。

▼以下、ネタバレ感想
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天使が消えていく (光文社文庫)
夏樹静子天使が消えていく についてのレビュー
No.320:
(6pt)

猫鳴りの感想

沼田まほかる氏というと、「ユリゴコロ」・「九月が永遠に続けば」など有名で、評価も結構高い。
どちらも読んだが、当方も、ともに高得点を付けた。
内容的には、イヤミス感・ホラー感・サスペンス感が当方にとって、ツボに嵌る。好きな作家だ。

さて、そういうことで手にした一冊であるが、読み始めはすこぶるイイ!
子を授かり損ねた中年夫婦の前に現れた一匹の捨てられた仔猫。
この仔猫への接し方がイヤミス感たっぷりで、この後、なにか不穏な出来事が起こりそうな気配を濃厚に漂わせます。
このゾクゾク感、なかなかイイですね。
そしてその後夫婦の前に現れた、トカゲのような一人の少女。

▼以下、ネタバレ感想
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猫鳴り (双葉文庫)
沼田まほかる猫鳴り についてのレビュー
No.319: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君にの感想

どこかのサイトで見つけたこの小説。
タイトルだけメモしていました。
今回たまたま手に入れるチャンスがあったので、読んでみたのですが、かなり出来がいいですね。
サイト評価はAですが、国内ランキングでは1000位までにも入っていません。
十分、100位以内でもOKのような気がしますが、、

事前情報無しで読み始めましたが、正直最初は失敗したかなと思いました。
表紙のタイトル画、いかにもライトノベルティ。
かつ、序盤の内容が中高生向きのような軽ーい恋愛小説。
また、主役の男の子が情けない程覇気がない。要するに真面目過ぎて面白味がないんです。
しかし、その後やや不穏な雰囲気が漂い始めます。

▼以下、ネタバレ感想
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たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に (祥伝社文庫)
No.318: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

さかさ星の感想

特級長編ホラーということで期待しながら読み始めましたが・・・?
怖さはほとんど無いですね。ホラー系よりオカルト系の方が強いのではないでしょうか。
でも、当方は、SFファンタジー小説の感覚で読み終わりました。

とにかく呪物・呪物・呪物の嵐です。
古今東西の呪物の博覧会のような様相です。

物語の舞台は、戦国時代から続く名家・福森家の屋敷。この屋敷で起こったという凄惨な事件。
この事件現場に、惨殺された福森家主の甥である亮太と霊能者賀茂禮子が訪れたところから、物語は始まります。
冒頭から、庭木の吉凶の話題、風水、鬼門、魔除け・・・。
屋内に入ってからは数々の呪物のオンパレード。この呪物の紹介が長々と続きます。

そして、驚くべきはその呪物の謂れ因縁・怨念・歴史を、賀茂禮子が一目見ただけで得々と語るのです。
見ただけでというのも少々浅はかだが、霊視が出来るスーパー霊能者として位置付けるならオカルト小説として許容範囲でしょう。
問題なのはその解説が微に入り細に入り淡々と語られること。
こうして呪物の解説が長々と続くわけなので、ちっとも怖くない。
呪物の博物館で、展示物を眺めながら解説をじっくり読んでいるような感覚なんですね。
著者の作品に「黒い家」とか「天使の囀り」という名著があるが、こちらは、何とも言えない得体の知れない怖さがありました。まさに一級です。
本書にはそれが全く無いんです。
その原因の一つとして前述のことが影響しているでしょう。

▼以下、ネタバレ感想
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さかさ星
貴志祐介さかさ星 についてのレビュー
No.317: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

マイナス・ゼロの感想

A評価であるのをこのサイトで見つけ、読んでみるかと手にした。
タイムスリップものであった。
昭和初期から昭和30年代後半までの昭和レトロ感満載のノスタルジーを感じさせる作品である。
ストーリーも良くできている。とにかく重苦しくない。
星新一氏のショートショートの長編版という感覚である。(解説も星新一氏であった)
タイムマシンの理屈を論理的に説明しようとしているところもあるが、当方は、そこはサラーっと流した。
ユーモアもあって、オチの読後感もいい。
読み終わって、本サイト国内ミステリランキング37位の天藤真「大誘拐」を思い出した。
同じ程度に評価されてもいいと思う。
マイナス・ゼロ 広瀬正・小説全集・1 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)
広瀬正マイナス・ゼロ についてのレビュー
No.316: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

パレートの誤算の感想

生活保護を扱った社会派ミステリーと銘打たれているが、うーんどうなんだろう⁈
読み終わった直後の感想は、まあ、ありきたりな2時間サスペンスドラマを見終わったような感想。
生活保護の実態を描こうと、登場人物の口から様々な状況が語られるが、特段、よく知られているようなことばかり。

▼以下、ネタバレ感想
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パレートの誤算 (祥伝社文庫)
柚月裕子パレートの誤算 についてのレビュー
No.315:
(8pt)

インドクリスタルの感想

ハードカバーの方を呼んだが、総ページ数500ページ超え、しかも2段組み。
かなりのボリューム感である。とはいえ、中だるみすることなく、息つく暇もなく読み終えることがた。

物語は簡単に言うと、日本の水晶デバイスメーカーの社長である藤岡が、超高純度の水晶原石を求めてインドの奥地で悪戦苦闘するお話である。
これがエンタメ風に書かれているのだが、それがそう単純な話ではない。もし、それだけの話であったなら、これは単なる企業エンタメ小説、ビジネスエンタメ小説となっていたであろう。
本書のポイントは、藤岡が現地で出会った先住民の少女ロサ。驚くべき知性と能力を持つ。
この少女とインド特有の文化・風習・制度が複雑に絡み、さらに僻地開発と環境問題・経済格差問題まで扱い、多岐多様なまさに混沌とした話であった。。

当方は、読み終えて、著者のテーマを少女ロサの思考と行動を善とする女性自立を扱った社会派エンタメ小説と感じた。
まさに本書が書かれた時代を先駆けるダイバーシティを扱った社会派小説なのである。

長い割には大きな起伏や驚くべき展開があるわけではない。
でもそれが、逆にリアルで、巷の陳腐なエンタメ小説とは一線を画す良書となった。
アマゾン評価4点としよう。
インドクリスタル 上 (角川文庫)
篠田節子インドクリスタル についてのレビュー
No.314: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

弥勒の掌の感想

著者の「殺戮にいたる病」という作品が、あまりにも衝撃的であったのに対して、同じ著者なのかと思うほどの軽い、ライトノベルのようなミステリー作品であった。
おそらくこのラストのオチが最初に考えられ、そのオチありきで、作品の構成がなされたのであろう。
まずもって、ストーリーそのものが軽いし、緊張感が感じられないまま終わってしまった。

さてその原因はなんだろうか?
ポイントは、2つの事件に関係がありそうな宗教団体。
この団体の描き方が軽かった。
怪しいのか怪しくないのか?団体に近づくに伴っての、ひしひしと迫る恐怖・緊迫感。
この辺りをもう少しリアルに、ヒリヒリと描いて欲しかった。
その緊張感のあと、このオチが決まるともう少し楽しめたと思う。

▼以下、ネタバレ感想
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弥勒の掌 (文春文庫)
我孫子武丸弥勒の掌 についてのレビュー
No.313: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

出版禁止 ろろるの村滞在記(いやしの村滞在記)の感想

読み進めるに従い、何となく違和感・うーん?という感覚が沸いてくる。

▼以下、ネタバレ感想
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出版禁止 ろろるの村滞在記
No.312:
(9pt)

八日目の蝉の感想

非ミステリーではあるが、全編を通じて漂うこの切なさと哀しさ、そして緊張感と不安感、これは何なのだろうか。
ミステリーでは無いが、一種のサスペンスである。とは言っても、決して怖いわけではない。愛が溢れているのである。

物語の主人公は、二人の女性。
産まればかりの女児を誘拐した希和子とその女児薫。
第1部は希和子の逃亡劇をその目線と心情で、第2部は成長した薫の現在の環境と心情を描く。
本書の評価のポイントは、不倫・誘拐・逃亡という行為を理知的に読むか、女性の心情・親子愛をエモーショナルに読み進めるかによって全く異なるであろう。当方は、後者のスタンスで最後まで読み、相当に印象に残り、評価もかなり高くなった。

『その子は、朝ごはんを、まだ、食べていないの、と』に表される希和子の愛。
今の自分を全て希和子の所為と割り切れない薫の心情。
泣かせます。
アマゾン評価5点です。
非ミスであっても楽しめますし、心に残ります。
八日目の蝉 (中公文庫)
角田光代八日目の蝉 についてのレビュー
No.311: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

東京二十三区女の感想

東京23区にまつわるいわく因縁を基にしたオカルト的ホラーミステリー小説。
とは言え、全く不気味でぞわぞわするようなお話ではない。
主人公は霊感の強いフリーライターの原田璃々子。そして、その相棒である先輩の民俗学講師島野。
両人が、23区の中で今回は5区を回り、妙な噂を取材する5話からなる連作短編集。

ご当地にお住まいの方なら、興味深くよりリアルに楽しめたのではないでしょうか。
ただ当方の様に縁もゆかりも無い者にとっては、やや薄味に感じる。
そういう意味では、評価が少々低くなってしまった。
どちらかというと、現実の人の怖さが秀でて感じられた。
第2話の「渋谷区の女」のお話。ラストの母の怨念と息子の恐怖。爆笑するくらい怖かった。まさに怖面白い。

▼以下、ネタバレ感想
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東京二十三区女 (幻冬舎文庫)
長江俊和東京二十三区女 についてのレビュー
No.310:
(7pt)

水の眠り灰の夢の感想

村野ミロシリーズ三作目。
と言っても、ミロは出てこない。雑誌記者だった親父さん(村野)のお話。
このシリーズは二作目の「天使に見捨てられた夜」を最近読み、読み易く面白かったので手にした。
読んで、あれっ!ミロは出てないんだと思ったが、ミロの出生の秘密が明かされ、それはそれで面白かった。
ミロシリーズのスピンオフ作品という位置づけでもいいと思う。

小説自体は、まあ、典型的なハードボイルド小説。
この手の小説が好きな方には、どんぴしゃりであろう。
昭和38年の草加次郎事件をベースに、村野が巻き込まれた少女殺人事件の真犯人を追い求める物語。
東京オリンピックが開催されたのが昭和39年のことだから、丁度その頃の話で、当時の懐かしい言葉や地名・フレーズがたびたび出て来て、当時の情景が思い起こされた。
ただ残念なことに、懐かしい言葉は多数出てくる割には、オリンピック開催前の当時のむんむんとした熱気、騒々しさはあまり感じられず、少々物足らなかった。
それが、真犯人を追いかけるストーリーに影響したのか、やや展開が淡々と進んだ印象であった。
ハードボイルド小説なのだから、もうちょい、緊張感・躍動感ある筋書きがあって良かったとも思う。
まあそれでも、卒なくまとめられており、アマゾン評価の4点としたい。
水の眠り 灰の夢 (文春文庫)
桐野夏生水の眠り灰の夢 についてのレビュー
No.309: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

坂の途中の家の感想

心理サスペンス小説ということで、期待感一杯で読んだが、なかなかしんどいお話であった。
とにかく主人公里沙子の思考にイライラする。
本文中にも「・・・そんな具合に、ネガティブな思考のループにはまりやすい自分を里沙子は自覚していて、心底面倒だと思っているのだが。・・・」
まさにこの一文に尽きる。

主人公は三歳の娘を育てている普通の主婦である。夫陽一郎もその娘を可愛がるどこにでもいるような普通のサラリーマン。
そのどこにでもあるような普通の家庭の普通の主婦が、裁判員制度の補充裁判員に選ばれ、刑事裁判に臨むことになったというお話。
刑事裁判の被告は、我が子を湯船に沈めて虐待死させた女性水穂。
当方読み始めて本書の展開は、「被告や証人の証言や主人公の発言・行動が複雑に絡み交錯しつつ、事件の真相が思わぬ展開を迎える」というエンタメ的なストーリーを予想したが、実際は全く異なっていた。

事件そのものは、この小説の本題ではない。
要するに、主人公里沙子が被告水穂に自分を重ね、自分の生い立ち・環境・家庭・家族・結婚生活・子育て・躾け・虐待・嫁姑・自立・専業・共稼ぎ等を考える社会派的家族小説である。
安直に言うと、若い男女が結婚するに当たっての指南書・啓蒙書とも言っていいかもしれない。
男性側から見ると、里沙子のような超面倒な女性は遠慮したい。
女性側から見ると、陽一郎のような一見理解があるようだが、女性の内面を知ろうとしない無理解・マザコン男はもう無理。こういうことだろう。
だから、円満な結婚生活を送るためには、この本を読んで男女の特性差を知り、些細な一言も気を配って結婚しましょう。ということではないか。
勝手ながら、当方、著者の意図をそういう風に捉えてしまった。

アマゾンの感想を読んでいると、里沙子の心情に共感するというコメントが多いことになるほどと思う。
無理解男が世に多いということの証左でもある。
まあしかし読みながら、うじうじ思考の里沙子には、もっとガツーンと言ってやれよと言いたくなった。
もしかすると、著者はダメ女性の例として里沙子を描き、世の女性たちに「もっと自立せよ!」って発破をかけているのかとも思った。

エンタメ小説では無く、ちょっと本サイトでは範疇外という印象なので、中庸点の5点とした。
坂の途中の家 (朝日文庫)
角田光代坂の途中の家 についてのレビュー
No.308:
(7pt)

熔果の感想

お馴染みの伊達・堀内シリーズ第4弾というところですね。
文庫版が発行されるのを待って、読んでみました。
いつものごとく、安心して楽しめる定番の娯楽小説です。

元大阪府警。ヤメ刑事の2人のコンビが今回シノギとして狙うのが、密輸された行方不明の金塊。
半グレ集団やヤクザと対峙しながら、金塊を追いかける。
この間のやり取りは、もうシリーズ4冊目となってマンネリ化しているのだが、それが分かっていてもハラハラドキドキで楽しめる。
2人の会話も面白いし、旨そうな食い物の話題や伊達の鬼嫁のエピソードは、いつものように良い味だ。
事件の詳細は控えるが、数年前に福岡であった金塊強奪事件の裏事情も垣間見れる。

さて、読み終えて気になったのは、少し陰が見えてきた堀内の言動。妙に刑事時代を思い出し、懐かしむ。
当方読んでいて、最後に堀内が死んでしまうのではないかと想像しながら読んでいた。
実際は、最後はすべて一件落着。ハッピーエンドで終わったわけであるが、もし第5弾があるのなら、そちらで片方が亡くなり、このシリーズが終わりになるのではないかと想像する。
著者の黒川氏もそれなりの高齢である。解説の最後には、黒川氏は75歳の今でも執筆意欲に衰えが無いと書かれていたが、当方はシリーズを終わらせる布石を第4弾で打ったものと感じた。
恐らくノー天気なキャラの誠やんがチンピラに刺されて死ぬのであろう。そして、堀内が杖を突きながら静かに二人のコンビを懐かしむのであろう。
数年後の第5弾の発行を楽しみに待ちたい。
熔果 (新潮文庫 く 18-6)
黒川博行熔果 についてのレビュー
No.307: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

催眠の感想

オリジナル版の文庫本を手にしました。
表紙画の血走った眼(マナコ)。
芸能人くずれのエセ催眠術師。
雷鳴とともに女性の甲高い笑い声。
「ワ!タ!シ!ハ!ユ!ウ!コ!ウ!テ!キ!ナ!ウ!チ!ュ!ジ!ン!デ!ス!」という奇声。
「ワタシハ、ファティマ第七星雲ノ、アンドリア、デス。・・・」
まさにこの後、なにか不可解なことが起こりそうな気配です。

いやー、この辺りでかなり期待感が高まりましたね。

おっと、この小説、当たりかも?!
映画化されたらしく、これから、どんな奇想天外な展開が待っているのか?!
もちろん、当方この小説の事、映画化されたということ位しか知りません。
ワクワクしながら読み進めました。

ということで、読後の結論ですが、正直ハズレでした。
この後は、単なる催眠術と催眠療法との違いであったり、精神疾患や多重人格についての執筆当時の知見が語られるだけ。
特に稚拙なのが、警察捜査と第三者のカウンセラーの関わり。
この嵯峨という第三者が、なぜに横領事件捜査に関与できるのか。あまりにも非現実的。

▼以下、ネタバレ感想
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催眠―Hypnosis (小学館文庫)
松岡圭祐催眠 についてのレビュー
No.306: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

風葬の感想

著者作初読み。
200ページ少々の小品ではあるが、軽くはなく読みごたえがある。
「涙香岬」・「書道」というのが鍵となり、文学的な雰囲気を醸し出し、味わいがある。期待を持って読み進めることができた。

では期待の結果はどうであったかというと、思っていたよりエンタメ感も高く、ミステリー要素も多い。「裏表紙には桜木ノアールの原点ともいうべき作品」と記載されているが、ノアール感はほとんど感じない。小ぶりにまとまったサスペンス小説という所であった。

夏紀の出生の秘密などの結末は、殆ど予想された通りで、特段大きな驚きは無いが、気になったのは川田親子の最後の有り様。
特に息子川田隆一の描き方。悪に徹しきれない中途半端さが、上手く描ききれていない。年に2回50万ほどの金を30年もの間、無名で弁護士に預託する。そんな良心を持った男が、平気で人を始末しようとする。なにか、釈然としない。
どうなんだろう。もう少し、ちぐはぐにならないよう捌けなったのだろうか・・・
前半から終盤に至るまでの雰囲気がよかったこともあり、ラストの三流サスペンスドラマのようなドタバタ感は、やや安っぽく感じてしまった。

母夏江と娘夏紀。そして、ひょんなことから彼らに絡んでしまった元校長の父徳一と息子優作。北海道釧路地方の自然と風土を背景に、この2つの親子の人間模様をもう少し掘り下げ描いていれば、より品の良い作品に仕上がったのではないだろうか。
風葬 (文春文庫)
桜木紫乃風葬 についてのレビュー
No.305: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

天使に見捨てられた夜の感想

桐野夏生氏の初期作。
女性版ハードボイルド小説という触れ込みである。
読んでみたが、まあこれは面白いし、読み易い。悪くはない。
特に主人公の女性探偵村野ミロ、この娘のキャラがいい。
いいと言っても、ハードでないところがいい。固ゆででない半熟・未熟なゆで加減いい。
そういうちょっとよれよれの探偵というのが、この小説の重要ポイント。

そして、このちょっとだらしない素人っぽい女性探偵が、失踪したAV女優を追いかけるというお話。
ミステリー感もあり、なかなか失踪女優の正体がつかめないストーリーも楽しめる。
さらに90年代のアダルト業界、歌舞伎町の風俗等、が多く扱われていて、社会派的な一面も見られる。
しかし、もっとも楽しめたのは、女性の描き方。ミロだけでなく、依頼人で活動家の渡辺房江。依頼人の支援者で著名な料理研究家である八田牧子。この辺りが華を添える。
桐野氏の作品はさほど多くを呼んだわけではないが、さすが女流作家だけあって、女性を描かせたらその生態・心理の描写が妙にリアルで面白いですね。
そこそこのオチも準備されており、素直に楽しめるお話です。
ある程度、ボリュームもあり、十分にアマゾン評点4点は与えられるでしょう。
新装版 天使に見捨てられた夜 (講談社文庫)
桐野夏生天使に見捨てられた夜 についてのレビュー
No.304:
(9pt)

エトロフ発緊急電の感想

シンプルに面白かったです。
いよいよ太平洋戦争勃発か!というギリギリの状態の頃の米国と日本を舞台にしたお話。
ハッキリ申しまして、これはもう飛び切りのエンタメ娯楽アクション小説ですね。
当時の日系人の米国での扱い、日本軍の南京虐殺、アイヌ差別、朝鮮人徴用、混血偏見、軍国主義・・等々社会派的要素が散りばめられてはいますが、これは正直グリコのおまけの景品みたいなもの。
欲しいのはグリコのキャラメルであり、これが本命で美味しいのです。

米国から派遣された日系人スパイ賢一郎。訳ありで殺し屋家業を営む。
こやつが日本海軍の動向を調べ、憲兵に追われながらも択捉島までたどり着き、ハワイ真珠湾奇襲の情報を本国に伝送するというストーリー。
まさにスパイ小説です。
主人公の日系人スパイ以外の脇役も、それぞれいい味を出しています。
米国人スパイ養成女性教官キャスリン、朝鮮人スパイ金森、クルル人アイヌの宣造、憲兵脇田、ロシア人ハーフのゆき、この辺りがストーリーにいいアクセントとなって楽しめます。

史実ではハワイ真珠湾攻撃は大成功で終わり、それは明白なのです。
なのに、なぜかハラハラドキドキ、スピード感よくサクサクと読める。
正直、大衆娯楽小説はこれでいいと思います。
アマゾン評価の5点は十分でしょう。
よって、サイト評価9点としました。
エトロフ発緊急電 (新潮文庫)
佐々木譲エトロフ発緊急電 についてのレビュー
No.303: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

首無の如き祟るものの感想

当サイトSランクの未読本を読んでみようと、手にした1冊。
当サイト評価Ave8.70。アマゾン評価Ave3.55。
かなりの差が見られる。
それこそ、本書の特徴を如実に示している。
いわゆるミステリー好きが多いこのサイトでは、評価が高く、多様な趣向の読み手が多いアマゾンサイトでは、中庸点。
まさに読者層を選ぶ1冊であった。

当方にとって、まず登場人物の名前が読みにくくて覚えづらい。
最初に主な登場人物の名前と続柄等が書かれてはあるが、なぜだかなかなか頭に入らない。
さらに登場地の地名や事件現場の建物名、建物の構造・位置関係などが全く整理できない。
それに、この事件に関係があるのかないのか良く分からない中で、ミステリー作家が多く出てきて、これまた混乱の一因。
当方、深くは考えず、まずは筋書きだけを読みきることに専念して、読み終えた。

二転三転ありで、面白くはあったが、なかなか難しい本であったなと、そういう感想を持った。
これは、本当のところは、二度読み必須なんであろう。恐らく概略を知った上で、二度目をじっくり落ち着いて読むと、筆者が落とし込んだ餌が次々と点と線で繋がり、謎解きのミステリーを楽しむ醍醐味が得られると思う。そういう類の本だと思う。
しかし、当方にはちょっと無理っぽいかもしれない。
とは言え、読後のこの微妙なホラー感。この味は面白い。すべての解答を与えず、読み手に不可解な消化不良感を残す。
それが謎解きとは別の本書の本当のところの醍醐味である、そういう気がした。
ということで、当方の評価はアマゾン評価の3.5点。すなわち当サイト評価7点とした。
首無の如き祟るもの (講談社文庫)
三津田信三首無の如き祟るもの についてのレビュー
No.302: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

木挽町のあだ討ちの感想

2023年の第36回山本周五郎賞かつ第169回直木三十五賞作品である。
なぜこれまで手にしなかったのかというと、時代小説という触れ込み。
正直、苦手なんです。外国ミステリーと時代物ミステリーは、いま一つ読みづらい。
ということで、避けてきたわけですが、最近当サイトのレビューで10点という高得点。
このサイトでは、なかなかお目にかからない高評価が眼に留まりました。
そこで、お気に入りに登録しておいて、最近読んだというのが、ことの真相です。

久し振りにこれは大当たりですね。なかなか、よく出来ている。
それに、時代小説ではあるが、全く気にならない。楽々と読めます。
場所は江戸の町の芝居小屋が立つ木挽町。雪の降る1月の夜に、ある見目麗しき若者によって仇討ちがなされます。
そして、この仇討ちの様相が、町の関係者から語られるわけだが、この語りが面白い。
関係者は5人。その全ての語りが独白である。独白が長々と続くので、少々退屈に思いそうだが、実際はそうならない。引き込まれる。
それぞれの独白が人情味に溢れ、なかなか奥深いし、それぞれにストーリーがある。5話の短編のようでもある。
そして、5人の関係者が、仇討ち現場近くの芝居小屋にかかわる人物。
芝居の紹介をする呼び込み屋。芝居の殺陣(タテ)の指導者。芝居衣装の裁縫職人兼女形。小道具職人夫婦。芝居の筋書き作家。という役割。

▼以下、ネタバレ感想
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木挽町のあだ討ち
永井紗耶子木挽町のあだ討ち についてのレビュー